業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、経済活動が制約を受ける中、設備投資等において持ち直しの動きが見られるものの、個人消費は弱い動きが続き、景気の足踏み状態が続きました。加えて、2月に発生したウクライナ危機や直近の急激な円安により、原材料や資源等の価格高騰、サプライチェーンの混乱等が懸念されています。

 また、当社グループが事業展開しているアセアン地区におきましては、ベトナムでは感染症が急拡大し社会的隔離措置が強化されたことにより、厳しい経済環境が続きました。ミャンマーでは、昨年2月のクーデター発生後、社会情勢の混乱は収まりつつあるものの経済の停滞が続いております。

 当社が主として属するコンクリートパイル業界は、官需に加え物流倉庫等の民需も増加したことから、全体の出荷量は前期比若干の増加となりました。

 このような事業環境のもと、当社グループは5か年計画の3年目として、日本国内及びアセアン地域における最高の技術力と最大の基礎建設能力を有するグループを目指し、引続き体制整備に取り組んでまいりました。

 国内事業では、新工法「Smart-MAGNUM工法」の拡販に注力するとともに、同工法推進に向けた施工・生産設備の増強に取り組んでまいりました。また施工現場におけるICT導入を推進し、施工管理業務の向上と効率化に取り組んでまいりました。海外事業では、ベトナムの事業子会社のPhan Vu Investment Corporation(以下、PV社という)は、国内事業子会社のジャパンパイル㈱との協働による今後の新たな事業展開を目指し、施工技術の向上に取り組んでまいりました。ミャンマーについては、経済活動が停滞し建設需要が大きく落ち込む中、ミャンマーの事業子会社VJP Co., Ltd.(以下、VJP社という)は規模を縮小して事業継続してまいりました。

 売上高につきましては、国内事業では、新工法「Smart-MAGNUM工法」を広くお客様に知って頂くための販促に注力したことにより、大型物件を中心にコンクリートパイルの受注が順調に推移したこと、鋼管杭、場所打ち杭の完工も堅調に推移したことから前期比増収となりました。海外事業では、ベトナムのPV社において風力発電等再生可能エネルギー分野での基礎工事関連事業が堅調に推移し、前期比増収となったことから、全体で増収となりました。その結果、当連結会計年度の売上高は931億76百万円(前期比6.9%増)となりました。また利益面では、国内事業で、新工法の販促とそれに伴う施工効率の一時的な悪化による粗利率の低下、施工機材の追加設備等のコスト増加に加え、鉄材を中心に原材料価格が上昇したことにより減益となりました。海外事業では、原材料価格の急騰により原価が上昇したこと及び新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、工事の採算が悪化したことにより減益となりました。結果全体としての営業利益は21億84百万円(同34.6%減)、経常利益は21億69百万円(同29.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は14億94百万円となり、前連結会計年度においてはシントク工業㈱の株式取得に伴う負ののれん発生益10億72百万円、VJP社の減損損失7億77百万円をそれぞれ特別損益に計上した関係から、前期比38.7%の減少となりました。

 

 なお、セグメント別の経営成績は以下の通りです。

国内事業 売上高 764億29百万円(前期比7.0%増) 営業利益 15億85百万円(同32.7%減)

海外事業 売上高 168億14百万円(前期比5.0%増) 営業利益 6億30百万円(同47.5%減)

 

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は142億25百万円となり、前連結会計年度末より1億18百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動において得られた資金は、前年同期比36億76百万円減少し36億28百万円となりました。この要因は、売上債権の増加54億87百万円などにより減少しましたが、税金等調整前当期純利益の計上22億15百万円、減価償却費の計上29億98百万円、ファクタリング未払金の増加26億60百万円などにより増加したことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動において使用した資金は、前年同期比18億88百万円減少し26億60百万円となりました。この要因は、有形固定資産の取得による支出24億91百万円などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動において使用した資金は、前年同期比9億75百万円増加し11億31百万円となりました。この要因は、長期借入れによる収入15億12百万円、長期借入金の返済による支出14億73百万円、配当金の支払額8億39百万円などによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

国内事業

21,134

112.3

海外事業

11,760

132.0

合計

32,895

118.6

 (注) 金額は、製造原価によっております。

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

国内事業

78,319

122.7

32,761

122.4

海外事業

23,015

116.1

10,345

202.6

合計

101,334

121.1

43,106

135.2

 (注)1.受注金額には、工事代金が含まれております。

2.国内事業は主要な子会社であるジャパンパイル㈱の受注実績を記載しております。

3.国内事業における受注残高の算出については、前連結会計年度は工事完成基準における受注残高から工事進行基準による取込み額を控除し、当連結会計年度は工事完成基準における受注残高から工事進行基準及び原価回収基準による取込み額を控除しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

国内事業

76,361

107.3

海外事業

16,814

105.0

合計

93,176

106.9

 (注)1.セグメント間の取引つにいては相殺消去しております。

2.販売金額には、工事代金が含まれております。

3.主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありませんので、記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

(資産)

 総資産は前連結会計年度末に比べ75億35百万円増加し、857億55百万円となりました。主な要因は、棚卸資産が合計で16億54百万円減少しましたが、受取手形、売掛金及び契約資産(前連結会計年度は受取手形及び売掛金)が94億97百万円増加したことなどによるものであります。

(負債)

 負債は前連結会計年度末に比べ58億50百万円増加し、448億66百万円となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金が22億79百万円、ファクタリング未払金が28億15百万円、社債及び借入金が合計で8億31百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

(純資産)

 純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益計上による増加14億94百万円、配当金の支払いによる減少7億61百万円、為替換算調整勘定の増加6億25百万円、非支配株主持分の増加5億26百万円などの結果、前連結会計年度末に比べ16億84百万円増加し408億89百万円となりました。

 

b.経営成績

(営業損益)

 当連結会計年度の売上高は931億76百万円(前期比6.9%増)、売上原価は817億81百万円(同9.2%増)、売上総利益は113億94百万円(同7.6%減)となりました。主力のコンクリート杭は、主に新工法「Smart-MAGNUM工法」を広くお客様に知って頂くための販促に注力したことにより、大型物件を中心にコンクリートパイルの受注が順調に推移したことで、売上高は前連結会計年度に比べ43億9百万円増加し730億79百万円(同6.3%増)となりました。鋼管杭は大型公共工事案件があったこともあり51億11百万円(同58.3%増)、場所打ち杭は123億20百万円(同4.0%減)で若干の減少となり、全体としては前期比増収となりました。利益面では、国内事業で、新工法の販促とそれに伴う施工効率の一時的な悪化による粗利率の低下、施工機材の追加設備等のコスト増加に加え、鉄材を中心に原材料価格が上昇したことにより減益となりました。海外事業では、原材料価格の急騰により原価が上昇したこと及び新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、工事の採算が悪化したこと等の結果、連結の売上総利益率は1.9ポイント低下し12.2%となりました。

 販売費及び一般管理費につきましては、貸倒引当金繰入額が増加したことを主因として、前連結会計年度に比べ2億23百万円増加し、92億10百万円(同2.5%増)となりました。

 これらにより、営業利益は前連結会計年度に比べ11億56百万円減少し、21億84百万円となりました。

(経常損益)

 営業外収益は保険解約返戻金や保管料収入が増加したことを主因として、前連結会計年度に比べ1億50百万円増加し、4億46百万円(同50.6%増)となりました。また、営業外費用は支払利息が減少したことを主因として、前連結会計年度に比べ94百万円減少し、4億61百万円(同17.0%減)となりました。

 これらにより、経常利益は前連結会計年度に比べ9億12百万円減少し、21億69百万円となりました。

(特別損益)

 特別利益は、上場株式を売却したことに伴い、投資有価証券売却益を39百万円計上いたしました。

 特別損失は、設備の更新に伴う固定資産売却損と除却損を合わせて15百万円計上いたしました。

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ9億43百万円減少し、14億94百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費などの非資金項目に加え、営業活動に係る債権・債務及び税金等の加減算を行った結果、営業活動によるキャッシュ・フローは3,628百万円の獲得となり、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フローによる支出3,791百万円が若干上回りました。投資活動による支出は主に工場投資関連及び施工機材の投資に伴うもので、財務活動による支出は配当金の支払いが主体であります。

 資金の流動性につきましては、財務の健全性の維持を前提として事業活動に必要な流動性を確保しております。また、引き続き新型コロナウイルス感染症が事業展開に与える影響が不透明ですので、手元流動性を確保するために㈱三井住友銀行及び㈱みずほ銀行との間で合計4,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

(契約債務)

 2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

7,247

7,247

長期借入金

3,833

1,246

1,818

768

リース債務

417

154

80

73

109

 上記の表において、連結貸借対照表の流動負債に計上されている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。

 

(財務政策)

 当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金、借入または社債により資金調達することとしております。このうち、借入または社債による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備・施工機械などの長期資金は、長期借入金または社債で調達しております。

 2022年3月31日現在、長期借入金の残高は1年内返済予定を含めて3,833百万円であります。また、当連結会計年度末において、㈱三井住友銀行及び㈱みずほ銀行との間で合計4,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高-百万円、借入未実行残高4,000百万円)。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、重要な会計方針の選択・適用、資産及び収益・費用の報告及び開示に影響を与える見積り承認に関しては定期的に開催する取締役会において、通常のものは権限規定に基づき稟議手続きによって随時行っております。

 当社グループの重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた主要な仮定は、以下のとおりであります。

イ 国内事業の固定資産減損の検討

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上いたします。

 当連結会計年度において、国内の主要子会社ジャパンパイル㈱の一部工場において減損の兆候が見られたため、減損損失の認識の判定を行った結果、資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が資産グループの固定資産の帳簿価額を上回ったため、減損損失は認識しておりません。当該検討における主要な仮定は、顧客からの受注に基づく売上予測及び事業計画後の成長率であります。

 顧客からの受注に基づく売上予測については、当連結会計年度末の受注残高、翌期以降の受注見込み及び過去の受注実績の動向を加味しております。

 事業計画後の成長率については、市場の成長率の範囲内で見積った成長率を使用しております。

 これらの会計上の見積り及び主要な仮定については合理的に判断をしておりますが、見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

④ 経営方針・経営戦略を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、品質の向上と効率化により施工及び生産体制の強化を実現し、安定した経営基盤の確立を図ることの経営指標として、営業利益、自己資本当期純利益率(ROE)を重視しております。当連結会計年度におけるROEは、目標値の8.0%に対して4.1%となり、前連結会計年度に比べ2.8ポイント減少しました。

指標

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

営業利益

3,340百万円

2,184百万円

1,156百万円減(34.6%減)

自己資本(A)

(純資産-非支配株主持分)

36,127百万円

37,286百万円

1,158百万円増( 3.2%増)

親会社株主に帰属する当期純利益(B)

2,437百万円

1,494百万円

943百万円減(38.7%減)

ROE(自己資本利益率)

(B/A)

6.9%

4.1%

2.8pt減

 

⑤ 次期の見通し

 今後の見通しにつきましては、新型コロナ感染症はワクチン接種の進展等により厳しい状況が緩和されつつある中で、景気の持ち直しが期待されておりますが、ウクライナ情勢等による先行き不透明感が強まり、鉄材を中心に原材料の価格急騰やサプライチェーンの混乱等のリスクが大きくなりつつあります。

 このような環境のなか、当社グループは5か年計画の4年目として、日本国内及びアセアン地域における最高の技術力と最大の基礎建設能力を有するグループを目指して、引続き体制整備を進めてまいります。

 国内では、総合基礎建設業におけるリーディングカンパニーの位置づけをさらに高める体制づくりに注力してまいります。特にコンクリートパイル部門では、新工法「Smart-MAGNUM工法」の施工性能の優位性を核に、積極的な提案営業を展開してトップシェアを目指してまいります。また、引続きタブレット端末を活用したICT化を全施工現場に導入し、更なる施工品質の向上と効率化を進めてまいります。そのほか、シントク工業㈱との連携を強化し、継手金具の品質向上、生産の効率化にも注力してまいります。

 海外においては、ベトナムのPV社は施工の技術・能力の向上と生産の一層の改善を目指し、採算重視の受注活動を継続するとともに、国内のジャパンパイル㈱との技術面での連携を強化してまいります。南部で一昨年より継続している風力発電の基礎工事関連プロジェクトは昨秋に完工いたしましたが、引続き再生エネルギー関連の基礎工事関連プロジェクトを推進してまいります。ミャンマーのVJP社につきましては、前連結会計年度において現況を踏まえた減損損失を計上いたしましたが、引続き事態の推移を注視しつつ、適切な対応を講じてまいります。

 

 

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