課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループが掲げる「NGKグループ理念」と「NGKグループビジョン Road to 2050」は以下の通りです。

 

<NGKグループ理念>
 私たちの使命 
   「社会に新しい価値を そして、幸せを」
 
 私たちが目指すもの 
   「人材 挑戦し高めあう」 
   「製品 期待を超えていく」
   「経営 信頼こそが全ての礎」

 

<NGKグループビジョン Road to 2050>

2050年の未来社会を見据え、カーボンニュートラルの実現とデジタル社会への爆発的進化という大きな流れを新たな発展機会と捉え、①ESG経営の推進、②収益力向上、③研究開発への注力、④商品開花への注力、

⑤DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進の5つの変革に取り組み、“Surprising Ceramics.”をスローガンに当社独自のセラミック技術を活かし、「第三の創業」に向けて事業構成の転換を図ってまいります。

 

(2)主要な経営指標と資本政策

当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。株主・投資家との透明で適切なコミュニケーションで資本コストの引き下げに努めると共に、これを上回る収益性確保に向けて事業計画の立案や設備投資の意思決定プロセスを回してまいります。また、配当性向及び純資産配当率等を参照して積極的な株主還元に努めます。これらにより財務健全性との両立を図りつつ、ROEを構成する利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に維持することを目指します。

更に、新たな管理指標として、営業利益にCO 2 排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-Added)を導入しました。短期の収益性や中長期の成長性といった「財務価値」に加えて、超長期的に社会性を高めていくために、将来の競争力の源泉となる人的資本や知的資本の向上に継続的に取り組むと共に、環境負荷の低減や人権尊重への取り組みなど多岐にわたる社会的責任を果たしてまいります。このような取組みにより「非財務価値」も高めて企業価値を向上してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

新型コロナウイルスの終息が見通せない中、ウクライナ情勢の緊迫化により原材料価格の高騰やサプライチェーンの混乱が長期化し、不透明な状況が続くことが予想されます。一方、中長期の観点では、脱炭素社会実現への世界的潮流の中で、カーボンニュートラル、DX等の技術革新を背景に事業機会が拡大されると期待されます。2050年の未来社会に向けて、NGKグループビジョンで掲げた「5つの変革」を確実に推し進め、事業構成の転換を図ってまいります。

 

2022年度における当社グループの重点課題は以下のとおりです。

 

① ESG経営の推進

当社グループは、海外19カ国に37のグループ会社(うち製造会社19社)でビジネスを展開しております。ESGを経営の中心に位置づけて、経営の透明性と自律性を高めるべく、グループで働く全員が公正な価値観や国際的な水準の判断基準にしたがって行動できるよう環境整備を進めています。2022年4月には、従前の「ESG会議」を、社長を委員長とする「ESG統括委員会」に改め、経営レベルでESG/SDGsの要素を含む当社グループのサステナビリティ課題の取り扱いを強化し、取締役会がその活動を適切に監督してまいります。

また、全構成員が持続可能な社会の実現、人権尊重、コンプライアンスを実践できるよう様々な対話の機会を設けて「NGKグループ企業行動指針」の周知徹底を図っております。

 

 

〔環境(E)〕

2021年4月、NGKグループビジョンと併せて「NGKグループ環境ビジョン」を策定しました。2050年までにCO排出量ネットゼロとする目標を掲げ、カーボンニュートラル、循環型社会、自然との共生への寄与を骨子とした取り組みを推進してまいります。目標実現のための「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定し、2021年度についてはこれまでの最大排出量2019年度87万トンから20%削減とした目標値70万トン(基準年2013年度比4%削減)を達成いたしました。2025年度は同55万トン(2013年度比25%削減)、マイルストーン(中間目標)とする2030年度には同37万トンの排出量(同50%削減)とする目標を設定し、目標達成を前倒しで実現するため、水素やアンモニア、CCU・CCS(COの回収・利用・貯蔵)、再エネ関連製品とサービスの開発・自社実装・提供を推進します。また、その取り組みへの一環として、海外拠点で使用する電力の全量を2025年度までに再生可能エネルギー由来に切り替える方針です。これにより、2025年度時点で当社グループの使用電力の約6割が再生可能エネルギー由来となる見込みで、年間約33万トンのCO削減を目指します。また、2021年12月には当社初となるグリーンボンド(無担保社債)を発行し、環境効果のある製品・サービスの提供、自社の事業活動・生産活動におけるカーボンニュートラルへの取り組みなどに充当してまいります。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)については、「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」の4項目に沿ったシナリオ分析結果に関する情報を2022年4月に当社ウェブサイトへ公表しました。今後も社会的な要請に遅れることなく関連情報の開示を拡充してまいります。

 

〔社会(S)〕

当社グループは、人権に関する国際規範を遵守します。人々の多様性を尊重し、人種・国籍・性別・年齢・宗教・信条・障がいの有無・性の多様性などによる差別は行いません。2021年度におきましては、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、グループの事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのないように「NGKグループ人権方針」を定めたほか、英国現代奴隷法に関する声明を提出いたしました。今後は当社グループにとどまらず、サプライチェーン全体に人権尊重の取り組みを拡大してまいります。

当社グループは、NGKグループ理念で「人材」を私たちが目指すもののトップに位置付けています。また、NGKグループビジョンに掲げたありたい姿を実現していくためになすべき「5つの変革」を牽引するのは人材です。社員それぞれが置かれた環境の中、自律的な成長に取り組むことが出来るような多様なキャリアパスの提供や、テレワーク活用といった柔軟な働き方、長時間労働の削減を中心とする社内環境整備などの施策にも取り組んでいます。

多様性の観点において、女性活躍については、新卒採用に占める女性比率の数値目標を設定すると共に、配属先・異動先での職域拡大を図っています。また、育休・産休取得者のキャリア早期再開を促すための早期復職支援制度の導入、育休からの復職者研修の実施、男性の育児休業取得の促進などの制度面からのアプローチに加えて、仕事と家庭の両立への理解を深めることを目的とした社内講演会を開催するなど、女性が活躍しやすい環境づくりに取り組んでおります。

また、当社グループ従業員約20,000人のうち、約13,000人が海外に所在しています。グループ運営において、それぞれの地域の事情、文化、習慣に基づく素早く適切な意思決定を行うためには現地人材の活躍が不可欠と考えており、海外拠点の部長層も現地化するなど、現地人材の積極的な登用に努めております。

社会貢献活動の一環として、当社は海外からの留学生支援を行っております。1930年代から海外に出張所や駐在員事務所を開設し、これまで世界各地に生産拠点等を展開し事業拡大を図ってきました。現地の地域社会や人々に温かく迎えられ支援を頂いた感謝の気持ちから、1997年に留学生に対する宿舎提供と奨学金支給を柱とする留学生支援事業を開始し、翌年3月に「財団法人エヌジーケイ留学生基金」を設立しました。2022年4月、同法人の公益性の更なる強化を目的として「公益財団法人日本ガイシ留学生基金」へ移行しました。

 

〔ガバナンス(G)〕

コーポレートガバナンスについては、取締役会の更なる機能発揮の観点から、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に役割・責務を果たす資質を備えた独立社外取締役を選任し、その数を全取締役の3分の1以上としております。また、経営の透明性を確保し取締役会の監督・監視機能を強化するため、独立社外取締役を過半数として構成する指名・報酬諮問委員会で役員の人事及び報酬決定等に係る公正性の確保及び透明性の向上を図ると共に、社外役員を主要な構成員とし役員等が関与する不正及び法令違反等への対応を取り扱う経営倫理委員会を設置し、取締役会への答申または報告、勧告等を行うこととしております。役員等が関与する不正・法令違反に歯止めをかける仕組みとして、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度とは別に、社外弁護士を通じて経営倫理委員会に直結する内部通報制度「ホットライン」を設置し、経営陣から独立した通報体制を設けるなど、コンプライアンス体制の充実を図っております。

コンプライアンスの観点からは、当社グループで働くすべての人が倫理観を持って正しい事業活動を行うための道しるべとしてNGKグループ企業行動指針を策定しており、その周知徹底に取り組んでおります。2021年度には、コンプライアンス活動を国際的な水準に照らして評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、新たに「コンプライアンス活動基本要領」を制定しました。

競争法及び海外腐敗行為防止法などの法令遵守については、継続的な経営トップのメッセージ発信、国内外グループ会社の役員・従業員向けのコンプライアンス教育の実施、国際的な水準に沿った競争法遵守プログラムの運用、「競争法遵守ハンドブック」の活用などにより徹底を図っております。

品質コンプライアンスについては、経営トップによる品質活動や品質委員会の直接指導の実施などの仕組みを強化すると共に、経営層及び従業員に対する品質教育の徹底など企業体質の改善に取り組んでおります。労働環境の安全面では、国内外グループ会社のリスクアセスメントの推進による重大災害リスクの特定と未然防止対策の強化に加え、グループ全体の現場マネジメント力の強化を図り、業務災害リスクの低減に取り組んでまいります。

リスクマネジメントについては、経営レベルの視点から重要と考えるリスクを事業環境、戦略、内部要因に分類し継続的に見直しを行っております。また、アンケートの実施や内部統制プロセスにおける特別リスクの評価などを通じてリスク分析を行い、コンプライアンス委員会をはじめとする各委員会や各担当部門が中心となって事業ごとにリスクの回避・予防に努めております。

こうした取り組みを通じて、より一層グローバル経営を支えるコンプライアンス意識の向上、リスク低減、ガバナンス体制の強化・充実を図ってまいります。

 

② 既存事業の収益力向上と新規事業創出に向けた取り組み

当社は独自のセラミック技術で社会に新しい価値を提供する企業を目指し、「5つの変革」を推進して事業構成の転換を図ってまいります。企業価値を高めるために事業ポートフォリオ方針を定め、NGK版ROICを用いた収益性と、売上高成長率を用いた成長性の二軸で精査しております。コア事業や今後の成長が期待される事業群への経営資源の投入を検討するほか、低成長・低収益に区分される事業については、今後の事業継続の判断において単年度および中期的な経営計画に基づく計数面での評価に加えて、長期的な視点での成長可能性、収益性等を個別に社内の戦略会議等で議論し、経営に関する重要な事項として取締役会が監督してまいります。また、設備投資の意思決定にあたっては、個別の投資の回収期間のほか、NGK版ROICや2022年度より導入したインターナルカーボンプライシング(ICP)を用いたESG視点での価値評価も加えて判断してまいります。

また、既存事業の収益力向上の施策として、2021年度より「モノづくり∞(チェーン)革新」をスタートしました。製品の開発から製造、販売といった一連のプロセスチェーンを通じて競争力強化につながる活動を目指しております。モノづくりチェーンにおける理想と現状のギャップを埋める「生産革新活動」、工場単位のロス削減により製造原価を改善する「原価低減活動」を柱とし、デジタル技術の活用によりモノづくりの見える化とグローバル連携を進め、競争力強化に繋げてまいります。

 

事業構成の転換に向けて、2022年4月に大きく2つの組織変更を行いました。ひとつは、事業セグメントの見直しで、中長期ビジョンで注力分野と位置づけた「カーボンニュートラル」と「デジタル社会」関連の事業領域で、組織をシンプルにすることにより技術や環境変化への対応力を高め、部門間のシナジー効果を生み出すことを狙いに、4事業本部体制から3事業本部体制に再編しました。

もうひとつは、新設した「NV推進本部」で、様々な事業領域を担当する人材を各事業本部や本社部門から集結し、国内外で約100名規模の体制でスタートいたしました。同本部を主体にマーケティング機能を推進し、研究開発本部の差別化技術、製造技術本部のモノづくりと共に、3本部連携で「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めてまいります。2022年度からは、社内の研究開発及び事業化プロセスの全体を統括し、方針策定を担う上位の会議体として「開発・事業化委員会」を設置しております。2030年に新事業化品売上高1,000億円以上とする「New Value 1000」を目標に掲げ、研究開発費を10年間で3,000億円、このうち8割をカーボンニュートラルとデジタル社会関連に配分してまいります。そのためのインプットとして、開発人員を現体制の約4割増強するなど、将来有望なテーマに対しては重点的に経営資源を投じてまいります。また当社が保有する大量の実験データをデータベース化しAI技術を組み合わせるマテリアルズ・インフォマティクスの推進により、短期間で革新的なセラミック材料の開発につなげることを目指します。更には、外部とのアライアンスなどにより新製品・新規事業の創出を積極的に推進し、事業構成の転換を図ってまいります。

 

2022年4月には「NGKグループデジタルビジョン」を公表しました。DXを変革の推力として「第三の創業」を実現し、カーボンニュートラルとデジタル社会に貢献してまいります。2021年4月に新設した「DX推進統括部」が全社横断的な部門として、「人材」(経営層から一般社員まで全従業者へのDX啓蒙、データ活用人材の育成、ブリッジ人材の育成)、「デジタル」(データ利活用基盤の構築、次世代技術の開発、強固なITセキュリティー)、「組織・風土」(経営層のコミットメント、グローバルでの連携・推進、NGKグループ全員の意識改革)、これら3つを柱に2030年にはデータとデジタル技術の活用を当たり前とする企業に変革することを目指します。

 

 

セグメント別の重点課題は以下の通りです。各事業を構成する主要製品については、「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な後発事象)1.セグメント区分の変更)」をご覧下さい。

 

エンバイロメント事業〕

世界の自動車市況の回復や各国の排ガス規制強化により、当面は需要拡大に対応しつつグローバルでの安定供給体制を構築し利益最大化を目指します。電気自動車の普及拡大により将来的には内燃機関ビジネスは漸減するものの、従来の自動車関連製品に加えて、ガソリンセンサーや電気加熱式触媒(EHC)等の新製品の開発スピードを加速させると共に、世界的に市場拡大が期待されるカーボンニュートラル関連市場も取り込み、広義に環境関連を包含する事業として、高付加価値品の投入を進めてまいります。

 

デジタルソサエティ事業〕

NGKグループビジョンで掲げた「デジタル社会」関連の事業領域は、IoT、5Gの進展に加え、メタバースを使った新たなビジネスが顕在化するなど、今後も半導体関連市場の拡大が期待されています。顧客価値の向上を目標に、DX活用による国内外製造拠点での生産性の向上、新技術の提供などを進め高収益事業を目指します。また、デジタル社会に貢献する製品群を集約することにより、社内外の情報を結びつけ、独自のプロセス技術と新たな材料を組み合わせることで新しい分野への展開も目指します。

 

エネルギー&インダストリー事業〕

エナジーストレージ関連では、2050年のカーボンニュートラルを目指し再エネ導入に向けた検討が進んでおり、蓄電池の重要性が高まっております。NAS®電池の本格的な需要拡大には暫く時間を要しますが、大容量、長時間放電の特性を生かしたビジネスモデルの構築に取り組んでまいります。NAS®電池と独自のエネルギーマネジメントシステム(EMS)を組み合わせることで、NAS®電池の容量の有効活用、エネルギーリソース価値の最大化が可能となり、従来の「モノ売り」に加え、サービスや価値を提供する「コト売り」ビジネスへの展開も加速してまいります。がいしは、国内電力会社の設備投資抑制が継続する中、中長期の市場変化を想定して事業を運営してまいります。また、産業プロセス事業は、セラミック膜をコアコンピタンスとして、CO分離や窒素分離、バイオエコノミーといった社会の環境ニーズに貢献できる製品や設備を投入し、新たなカーボンニュートラル製品の受け皿となる事業領域を目指します。

 

当社グループは、こうした取り組みを通じて経営基盤の更なる強化に努め、持続的な成長と企業価値の向上を実現し、資本効率重視、株主重視の経営を継続してまいります。

 

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