当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、米国及び欧州では、年度前半においてワクチンの更なる普及や政府による経済対策等を背景として消費活動や経済活動の正常化が進んだものの、年度後半にかけては感染再拡大や供給制約の長期化、原材料及びエネルギーの供給懸念に伴う価格の高騰や輸出減少等が企業活動にも影響を与え始めるとともに、個人消費の下押し圧力ともなっています。中国においても、好調な外需を受けて輸出は拡大傾向にありますが、個人消費については、年度前半は早期の経済活動の再開により堅調に推移したものの、年度後半においてはゼロコロナ政策に伴う活動制限の強化により低迷しています。わが国経済においては、度重なる緊急事態宣言の発出により雇用や個人消費の回復は遅れたほか、海外経済の回復を受けて業績の改善が続いていた製造業においても半導体の供給制約や資源価格の高騰により減速を余儀なくされ、年度後半にかけて一定の持ち直しの動きは見られたものの、新たな変異株の感染拡大や中国経済の低迷、ウクライナ情勢の悪化による影響も今後の大きな不透明材料となっています。
当社グループの主要な事業基盤である自動車業界における新車販売は、米国及び欧州においては各国の経済活動の立ち直りにより前年に比べ増加し需要は堅調に推移していましたが、車載向け半導体などの部品不足の影響の長期化が車両の生産活動の制約となっています。中国においては、上記に加え半導体不足の影響や新型コロナウイルスの感染再拡大による工場の稼働停止といったマイナス要因も生産活動の制約となっています。
一方、半導体製造装置業界においては、5Gの普及やテレワークの定着、データセンター向け投資の活発化等による世界的な半導体需要の拡大を背景として設備投資は堅調に推移しています。
その結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は4,917億33百万円(前連結会計年度比15.0%増)、営業利益は755億12百万円(前連結会計年度比59.3%増)となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は602億円(前連結会計年度比56.9%増)となりました。
売上収益営業利益率(営業利益/売上収益)は前連結会計年度11.1%に対して4.3ポイント上昇し15.4%となりました。親会社所有者帰属持分利益率(親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分)は前連結会計年度末の9.1%から12.5%と3.4ポイント上昇し、基本的1株当たり当期利益は、前連結会計年度の188円59銭から296円04銭と107円44銭増加しました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後の報告セグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
<自動車関連>
当事業は、車載向け半導体の供給不足や原材料価格の高騰が当社販売及び利益に影響を与えているものの、原材料価格高騰分の価格転嫁などを行い、欧州及び北米を中心とした補修用製品の販売が好調に推移したことで業績をカバーしました。
この結果、当事業の売上収益は3,877億75百万円(前連結会計年度比14.5%増)、営業利益は743億42百万円(前連結会計年度比31.4%増)となりました。
<セラミック>
当事業は、自動車関連向け機械工具の出荷は回復基調であり、半導体製造装置用部品については今後も拡大が予測される世界的な半導体需要に対応する旺盛な設備投資により当社販売も堅調に推移しました。
この結果、当事業の売上収益は954億61百万円(前連結会計年度比19.2%増)、営業利益は146億83百万円(前連結会計年度は2億25百万円の営業損失)となりました。
<新規事業>
新規事業については、売上収益は46億円(前連結会計年度比0.5%増)、営業損失は136億5百万円(前連結会計年度は95億円の営業損失)となりました。
<その他>
その他の事業については、売上収益は59億34百万円(前連結会計年度比11.8%増)、営業利益は92百万円(前連結会計年度比82.5%減)となりました。
② 財政状態
資産合計は、8,231億81百万円であり、前連結会計年度末比518億87百万円(6.7%)増加しました。これは主に政策保有株式の一部並びに当社が保有していた株式会社日本エム・ディ・エムの株式を売却したことにより投資有価証券及び持分法で会計処理されている投資が減少した一方、現金及び現金同等物並びに棚卸資産が増加したことによるものです。
負債合計は、3,051億93百万円であり、前連結会計年度末比144億73百万円(4.5%)減少しました。これは主に未払法人所得税が増加した一方で、借入金の返済により減少したことによるものです。
資本合計は、5,179億88百万円であり、前連結会計年度末比663億61百万円(14.7%)増加しました。これは主に配当金の支払により減少した一方で、当期利益の計上による利益剰余金の増加及び為替換算調整の影響によりその他資本の構成要素が増加したことによるものです。
これらにより1株当たり親会社の所有者に帰属する持分は、前連結会計年度末の2,206円18銭から2,530円01銭となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して為替相場の変動による換算差額47億47百万円を加算した純額で330億64百万円増加し、1,725億85百万円となりました。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動によるキャッシュ・フローにおける収入は、前連結会計年度から85億12百万円増加の719億10百万円となりました。これは、主に棚卸資産の増加により資金が減少した一方で、営業債権及びその他の債権の増加額が減少したこと、並びに税引前利益の増加により資金が増加したことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は425億23百万円の支出に対し、102億34百万円の収入となりました。これは、主に満期を迎えた有価証券の償還並びに政策保有株式の一部及び当社が保有していた株式会社日本エム・ディ・エムの株式を売却したことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は281億66百万円の収入に対し、538億27百万円の支出となりました。これは、主に前連結会計年度においては長期借入による収入があった一方で、当連結会計年度においては借入金を返済したことによるものです。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は売価換算により計算されています。
2 生産高には委託生産高を含んでいます。
自動車関連の製品のうち、新車組付用は自動車メーカーの生産計画を基準とし、また、補修用は自動車の稼動台数、その他市場の動向、過去の販売実績、代理店の意向等を勘案してそれぞれほぼ確実な見込み生産を行っています。
セラミックの製品の大部分及び新規事業の製品は注文生産品であり、その受注状況は次のとおりです。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は外部顧客への売上収益を示しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成しています。
この連結財務諸表の作成に当たり、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定の設定を行っています。当社グループは、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の業績はこれらの見積りとは異なる場合があります。当社グループが採用した重要な会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (6) 見積り及び判断の利用」に記載しています。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析、検討内容
経営成績等の状況に関する分析、検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況」に記載しています。
③ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは円滑な事業運営を支える運転資金を確保することと、将来の機動的な設備投資を可能にするための中長期的資金への計画的準備を図ることにより、安定的経営と変化への対応に備えることを財務方針としています。そのため、資金計画に基づく当座資金の維持管理をはじめ、債権債務・棚卸資産の効率性を上げるための継続的取り組みを行うとともに、投資リスク軽減のための決裁規程等の整備、インベストメントコミッティ等の各種組織運営に注力しています。
資金調達の方法としては、短期資金需要に対しては内部留保資金の他、間接金融により調達を行っており、また中長期的資金需要に対しては社債の発行等を通じて直接資本市場からの調達も行っています。
お知らせ