(経営方針)
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献することを企業理念に掲げて事業を行っています。
<日本製鉄グループ企業理念>
基本理念
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。
経営理念
1.信用・信頼を大切にするグループであり続けます。
2.社会に役立つ製品・サービスを提供し、お客様とともに発展します。
3.常に世界最高の技術とものづくりの力を追求します。
4.変化を先取りし、自らの変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
5.人を育て活かし、活力溢れるグループを築きます。
(経営環境)
中長期的な環境変化については、次のとおり想定しています。
世界の鉄鋼需要については、インドも含めたアジア地域を中心に確実な成長が見込まれます。また、カーボンニュートラルに向けた新規ニーズを含め高級鋼の需要は拡大が見込まれます。一方で、国内の鉄鋼需要については、人口減少・高齢化や需要家の海外現地生産拡大等に伴い引き続き減少していくことが想定されます。また、製造業における地産地消・自国産化の傾向が、新型コロナウイルスの影響で加速し、グローバルに繋がっていた市場の分断が進展すると考えられます。さらに、世界の鉄鋼生産量の5割強を占める中国における需要の頭打ち等により、海外市場における競争が一層激化することが想定されます。
世界的に気候変動に関する問題意識が高まるなか、カーボンニュートラルの実現は官民を挙げた総力戦となり、他国に先駆けたカーボンニュートラルスチールの製造技術の確立が、今後の鉄鋼業界における競争力、収益力、ブランド力を決める鍵となると考えています。
2022年度については、世界経済においては、「中国の経済成長の減速」、「半導体関連を中心とした供給制約」及び「グリーンフレーションを背景としたエネルギー・資源価格の高騰」といった主として3つのリスクの規模が、足元のロシア・ウクライナ情勢により増幅しています。こうした情勢下で、日本においては円安の急激な進行による貿易収支の悪化等の新たなリスクが発現する一方で、欧米を中心に鋼材市況は急激に高騰するなど、外部環境は通常の経済合理性を超えて変動しており、先行きは極めて不透明な状況にあります。
(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
当社グループは、製鉄事業を中核として、鉄づくりを通じて培った技術をもとに、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しています。製鉄セグメントは、当社グループの連結売上収益の約9割を占めています。
当社は、昨年後半より鋼材需要の回復が減速しているなかで、2020年度に断行した抜本的コスト改善による損益分岐点の大幅な引下げに加え、紐付き価格の是正、一貫能力絞込みによる注文選択の効果、海外グループ会社の収益力の向上等により、外部環境に関わらず高水準の事業利益を確保し得る収益構造の構築に取り組んでまいりました。 2022年度においては、前述の事業環境のもと、従来からの抜本的な収益構造対策の継続・推進に加え、世界の鋼材市場の需要面・供給面の変化を見据えた臨機応変な対応(業務サイクルの短縮)を行うことで収益の最大化に取り組み、高水準の収益の実現を図ってまいります。
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」の概要と進捗は次のとおりです。
<日本製鉄グループ中長期経営計画(2021年3月5日公表)の概要と進捗>
当社は、「総合力世界No.1 の鉄鋼メーカー」を目指し、日本製鉄グループ中長期経営計画を定め、その4つの柱である「国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化」、「海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進」、「カーボンニュートラルへの挑戦」及び「デジタルトランスフォーメーション戦略の推進」の実現に向け、諸施策に着実に取り組んでおります。
1.国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化
(1) 国内製鉄事業の再構築・早期の収益力回復
「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として、国内製鉄事業の最適生産体制を構築するとともに、競合他社を凌駕するコスト競争力の再構築と適正マージンの確保による収益基盤の強化を推進しています。
最適生産体制の構築に向けて、製品製造工程及び鉄源工程の生産体制スリム化・効率化、戦略商品への投資(次世代型熱延ライン新設、高級電磁鋼板製造体制の強化)を実施しております。主な案件の進捗・見通しは以下のとおりです。
a. 生産設備構造対策
b. 設備新鋭化
(2) グループ経営の強化
連結事業収益力向上・企業価値最大化に向けて、「各社の競争力・収益力強化」、「『選択と集中』によるグループ構造最適化」、「当社及びグループ会社相互間の連携の深化並びにマネジメント基盤の整備・強化」等に取り組んでおります。
2.海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進
世界の鋼材消費は、2025年さらに2030年に向けて引き続き緩やかな成長が見込まれています。当社は、規模及び成長率が世界的に見ても大きいアジアを中心に事業を展開しており、マーケットの規模や成長を当社の利益成長につなげ得るポジションにあります。
このような環境のもと、需要の伸びが確実に期待できる地域において、当社の技術力・商品力を活かせる分野で、需要地での一貫生産体制を拡大し、現地需要を確実に捕捉することで、日本製鉄グループとして、「グローバル粗鋼能力1億t体制」を目指しています。2021年度の具体的な取組みとしては、2022年2月にタイ電炉・熱延メーカーのG Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limitedの買収・子会社化を実施し、当地で成長する汎用熱延鋼板需要の捕捉を図ってまいります。さらに、インドのArcelor Mittal Nippon Steel India Limitedの能力拡張を推進、米国のAM/NS Calvert LLCにおいて電炉新設を計画(2023年度上期稼働予定)するなど、今後も海外市場における需要地での一貫生産体制拡大を目指してまいります。
3.カーボンニュートラルへの挑戦
脱炭素社会に向けた取組みにおいて欧米・中国・韓国との開発競争に打ち勝ち、引き続き世界の鉄鋼業をリードするべく、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、経営の最重要課題として諸対策を検討・実行しています。
2030年においては、現行の高炉・転炉プロセスでのCOURSE50(*)の実機化、既存プロセスの低CO2化等によって、対2013年比▽30%のCO2排出削減を実現します。2050年に向けては、電炉による高級鋼の量産製造、高炉水素還元法の開発を通じたCO2の抜本的削減、水素による直接還元鉄製造等の超革新的技術にチャレンジし、カーボンニュートラルを目指します。
カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年4月に専任プロジェクトを設置し、3つの超革新技術(高炉水素還元、100%水素直接還元プロセス、大型電炉での高級鋼製造)を他国に先駆けて開発・実機化するための取組みを推進しております。当期は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、当社を含む4社による共同提案を行い、2021年12月に採択されました(支援規模:1,935億円)。今後、波崎研究開発センターに小型電気炉(2024年度試験開始)、小型直接還元炉(2025年度試験開始)を設置し、早期実機化を目指してまいります。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、自動車軽量化に資する超ハイテン、EV向けモーターや変圧器の効率性向上に資する電磁鋼板等のエコプロダクツ®の提供や、欧州子会社Ovako ABにおける加熱炉での水素利用・カーボンフリー水素製造プラント建設等、多方面からの取組みを進めています。
(*)高炉での原料炭による鉄鉱石の還元を一部水素に置き換える技術等
4.デジタルトランスフォーメーション戦略の推進
デジタルトランスフォーメーション戦略に5年間で1,000億円以上を投入し、鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指しています。データとデジタル技術を駆使して、生産プロセス改革及び業務プロセス改革に取り組み、事業競争力を強化します。具体的には、IoT、AI活用による遠隔操業支援、設備保全の可視化及び予兆監視等による生産性向上、注文から製造までのデータ一元管理による生産管理の全社最適化等に取り組んでいます。当期は、製造現場の重機操業をAIによりデジタル化することで、熟練作業の効率的な技能伝承を実現するためのデータ解析基盤を構築し、東日本製鉄所君津地区で実証実験を開始しました。また、国内最大出力のローカル5G無線局免許を取得し、室蘭製鉄所(現 北日本製鉄所室蘭地区)の広大な敷地内で、大量のデータ通信を用いたローカル5G適用検証を開始し、製造現場のDX推進に取り組んでいます。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「日本製鉄グループ中長期経営計画」の収益・財務体質目標等については、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。
(注) 上記(経営環境)と(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)の記載には、2022年5月10日決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれている。これらはその発表又は公表の時点において当社が適切と考える情報や分析、一定の前提等に基づき策定したものであり、かかる見積りに固有の限界があることに加え、実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性がある。かかる要因については、後記「2 事業等のリスク」を参照されたい。
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