業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における当社グループの経営環境は、経済回復のペースが国・地域ごとに異なるものの、新型コロナウイルス感染症抑制策や景気対策等により、経済活動の正常化に向けた持ち直しの動きが見られる状況で推移いたしました。
 主原料の鉄スクラップ価格につきましては、各国・地域での建設活動の状況等を反映し、価格調整局面が繰り返されつつも総じて上昇基調が続いた後、ロシアのウクライナ侵攻によって世界的に鉄鋼製品・原料の供給不安が広がり、急騰いたしました。また、鉄鉱石価格につきましては、海外を中心とした鉄源需給の逼迫から騰勢を強めた後、中国での粗鋼減産等を受け、夏場に一時急落したものの、再び反発し上昇基調に転じるなど価格は乱高下いたしました。加えて、合金鉄や燃料価格の上昇など主原料以外のコスト上昇圧力も強まっております。
 当社グループの主要製品であるH形鋼等の土木・建築用鋼材の需要に関しましては、国・地域ごとに回復度合いに濃淡がありますが、中国における輸出抑制策や粗鋼減産等を受け需給が引き締まっていることや、鉄スクラップ価格が高値圏で推移していること等を背景に、製品価格は強含みで推移しております。

 

日本におきましては、主原料である鉄スクラップ価格の騰勢に加え、合金鉄や電力料金・燃料費の値上がりなど、コスト高先行局面が継続しております。需要面では、大型建築案件は底堅く推移しているものの、中小建築案件が少なく市中の荷動きが改善していないことから、H形鋼等の需要は力強さを欠く状況が継続しております。ヤマトスチールにおきましては、高炉メーカーが鋼板等の製品に注力するなか、積極的に新規顧客の開拓に取り組んだ結果、受注は堅調に推移し、販売数量は前期比で増加いたしました。また、販売価格の上昇により、売上高は前期比で増収となりました。営業利益につきましては、コスト高先行局面の影響が大きく、前期比で減益となりましたが、資源価格高騰の影響を最小化すべく、技術力によるコスト低減や設備の内製化に努め、また、販売価格の押上げを図るなど、収益性の回復に向けた取り組みに注力し、一定の利益を確保しております。

 

連結子会社を有するタイ、また持分法適用関連会社を有する米国、バーレーン、サウジアラビア、ベトナム、韓国におきましては、いずれも2021年1月~12月の業績が当連結会計年度に反映されます。

 

タイのサイアム・ヤマト・スチールカンパニーリミテッドにおきましては、タイ国内は大規模公共投資等が形鋼需要を牽引しましたが、感染症再拡大による建設活動停滞の影響を受けております。輸出市場におきましては、全体的には感染症再拡大による形鋼需要のスローダウンが見られたものの、中国における輸出増値税還付の撤廃や粗鋼減産等により同国メーカーの輸出圧力が低下したことに加え、韓国メーカーのASEAN市場への輸出が減少したことを受け、下期には競争環境の緩和が見られております。販売数量につきましては、輸出市場におけるシェア上昇への取り組み等により、前期比で増加いたしました。営業利益につきましては、鉄スクラップ高等によるコスト上昇があったものの、輸出市場での販売数量の増加及び形鋼価格の上昇が貢献し、前期比で増益となっております。

 

米国の持分法適用関連会社につきましては、本格的な経済回復や力強い非住宅建設需要に牽引され形鋼需要が回復するなか、積極的な受注活動により需要を捕捉したことから、販売数量は前期比で増加しております。熱延コイル等の一部の鉄鋼製品には価格の軟化が見られたものの、形鋼価格については、鉄スクラップ価格の上昇を上回る値上げが実現し、鋼材マージンの改善基調が継続しております。業績につきましては、販売数量の増加及び鋼材マージンの拡大により、前期比で大幅な増益となりました。

 

バーレーンの持分法適用関連会社スルブカンパニーBSC(c)(以下、SULB)におきましては、世界的な鉄鋼需給の引き締まりを受け、GCC域外からの輸入材の圧力が低下し、また、鉄スクラップ等の原材料高を背景とした形鋼価格の押上げが徐々に市場に浸透するなど、市場環境には改善が見られました。一方で、過去の油価低迷等により、GCC域内での建設活動の本格的な回復には時間を要する状況から、顧客は在庫積み増しに慎重な姿勢を継続いたしました。その様ななか、SULBにおきましては、GCC形鋼市場での採算重視の営業活動と生産量確保のための形鋼輸出や中間材の販売等のバランスをとることに加え、2021年9月末に完成した自社港湾施設の活用による物流コストの削減を含むコスト低減への取り組み等も寄与し、業績につきましては前期比で改善し、黒字を確保いたしました。

 

 

ベトナムの持分法適用関連会社ポスコ・ヤマト・ビナ・スチールジョイントストックカンパニー(以下、PY VINA)におきましては、建設活動は経済回復に伴う改善と感染症再拡大による悪化により一進一退の状況が継続し、形鋼需要は本格的な回復には至っておりません。一方で、原材料高のなか、操業改善等によるコスト削減の取り組みを強化するとともに、世界的な鋼材市況の上昇や同国への輸入材の圧力低下を背景に、販売価格の押し上げに注力した結果、業績は底堅く推移しております。なお、ベトナムにおいては、PY VINAの働きかけにより、マレーシアからの輸入H形鋼に対するアンチダンピング調査が2020年8月に開始されておりましたが、2021年8月に関税率10.64%(5年間)の措置が発効されており、輸入H形鋼に対する貿易障壁としてベトナム国内のH形鋼市場安定化に寄与することと期待しております。

 

韓国の持分法適用関連会社ワイケー・スチールコーポレーション(以下、YKS)におきましては、住宅建設等の増加を背景に、鉄筋需給バランスが改善を見せたことから販売価格が上昇し、業績は堅調に推移いたしました。なお、現地パートナーである大韓製鋼社とYKSとの製販両面での連携強化により、YKSの更なる収益性向上を図るため、大韓製鋼社のYKSへの出資比率を51%から70%とし、当社グループの出資比率を49%から30%へと変更いたしました。これに伴い、2022年3月期の第3四半期以降は、YKSの業績の30%が当社の持分法投資損益に反映されております。詳細については、「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」をご参照ください。

 

上記に加え、営業外収益では、当社が保有する外貨建資産(関係会社貸付金等)の評価替えにおいて、2022年3月末の為替レートが円安に動いたことに起因した為替差益を計上しております。

 なお、当連結会計年度の経営分析の結果は以下のとおりです。

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高は150,029百万円であり、前連結会計年度に比べ14,004百万円増加しました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

当連結会計年度の売上原価は123,788百万円であり、前連結会計年度に比べ10,441百万円増加しました。また、販売費及び一般管理費は12,950百万円であり、前連結会計年度に比べ289百万円増加しました。

 

(営業外収益、営業外費用)

当連結会計年度の営業外収益は44,637百万円であり、前連結会計年度に比べ32,980百万円増加しました。これは、主に持分法による投資利益が40,348百万円と前連結会計年度に比べ31,826百万円増加したことによります。また、営業外費用は282百万円であり、前連結会計年度に比べ176百万円増加しました。

 

(特別利益、特別損失)

当連結会計年度の特別利益は8百万円であり、特別損失は281百万円でありました。

 

(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)

当連結会計年度の法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の総額は13,659百万円であり、前連結会計年度に比べ8,387百万円増加しました。

 

(非支配株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は3,797百万円であり、前連結会計年度に比べ2,283百万円増加しました。

 

なお、ベトナムのPY VINAにつきましては、2020年3月末に持分法適用関連会社となったことから、前連結会計年度の連結業績には同社の4~12月の業績が反映されております。また、韓国のYKSにつきましては、2020年9月に、ヤマト・コリア・ホールディングスカンパニーリミテッド(以下、YKH)が営む棒鋼事業を会社分割により新設されたYKSに承継し、YKS株式の51%を大韓製鋼社へ譲渡し、YKSは持分法適用関連会社となったことから、前連結会計年度の連結業績にはYKHの棒鋼事業の1~8月の業績が連結子会社として反映され、9~12月の業績が持分法投資損益として反映されております。(前連結会計年度には「鉄鋼事業(韓国)」の売上高33,851百万円、営業利益2,507百万円が含まれております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項」の(セグメント情報等)をご参照ください。)

 

 

以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比14,004百万円増150,029百万円となりました。利益につきましては、営業利益は前連結会計年度比3,272百万円増13,290百万円、経常利益は前連結会計年度比36,077百万円増57,646百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比34,932百万円増39,917百万円となりました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益を更新しております。

 

 セグメントの業績は、次のとおりです。

① 鉄鋼事業(日本)

主原料である鉄スクラップ価格の騰勢に加え、合金鉄や電力料金・燃料費の値上がりなど、コスト高先行局面が継続しております。需要面では、大型建築案件は底堅く推移しているものの、中小建築案件が少なく市中の荷動きが改善していないことから、H形鋼等の需要は力強さを欠く状況が継続しております。ヤマトスチールにおきましては、高炉メーカーが鋼板等の製品に注力するなか、積極的に新規顧客の開拓に取り組んだ結果、受注は堅調に推移し、販売数量は前期比で増加いたしました。また、販売価格の上昇により、売上高は前期比で増収となりました。営業利益につきましては、コスト高先行局面の影響が大きく、前期比で減益となりましたが、資源価格高騰の影響を最小化すべく、技術力によるコスト低減や設備の内製化に努め、また、販売価格の押上げを図るなど、収益性の回復に向けた取り組みに注力し、一定の利益を確保しております。

以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比17,426百万円増57,354百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比880百万円減2,346百万円となりました。

 

② 鉄鋼事業(タイ国)

タイ国内は大規模公共投資等が形鋼需要を牽引しましたが、感染症再拡大による建設活動停滞の影響を受けております。輸出市場におきましては、全体的には感染症再拡大による形鋼需要のスローダウンが見られたものの、中国における輸出増値税還付の撤廃や粗鋼減産等により同国メーカーの輸出圧力が低下したことに加え、韓国メーカーのASEAN市場への輸出が減少したことを受け、下期には競争環境の緩和が見られております。販売数量につきましては、輸出市場におけるシェア上昇への取り組み等により、前期比で増加いたしました。営業利益につきましては、鉄スクラップ高等によるコスト上昇があったものの、輸出市場での販売数量の増加及び形鋼価格の上昇が貢献し、前期比で増益となっております。

以上により、当事業の売上高は、前連結会計年度比30,315百万円増82,452百万円、セグメント利益(営業利益)は、前連結会計年度比7,075百万円増12,724百万円となりました。

 

③ 軌道用品事業

当事業の売上高は、前連結会計年度比868百万円減7,179百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比304百万円減532百万円となりました。

 

④ その他

その他の売上高は、前連結会計年度比981百万円増3,043百万円、セグメント利益(営業利益)は前連結会計年度比147百万円増171百万円となりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は以下のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

58,891

+43.4

鉄鋼事業(タイ国)

88,340

+68.9

軌道用品事業

7,115

△11.9

その他

2,468

+46.0

合計

156,816

+17.1

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

② 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

68,077

+66.1

16,238

+194.4

鉄鋼事業(タイ国)

81,462

+50.4

8,453

△10.5

軌道用品事業

6,752

△17.1

829

△34.0

その他

2,491

+50.4

93

+80.5

合計

158,783

+4.8

25,614

+57.5

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

鉄鋼事業(日本)

57,354

+43.6

鉄鋼事業(タイ国)

82,452

+58.1

軌道用品事業

7,179

△10.8

その他

3,043

+47.6

合計

150,029

+10.3

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

   至 2021年3月31日

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

    至 2022年3月31日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

阪和興業㈱

18,485

12.3

 

3 前連結会計年度の阪和興業㈱への販売実績につきましては、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2) 財政状態

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は167,710百万円であり、前連結会計年度に比べ17,709百万円増加しました。増加の主な要因は、商品及び製品の残高が7,732百万円増加したことによります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は247,217百万円であり、前連結会計年度に比べ37,430百万円増加しました。増加の主な要因は、出資金の残高が24,337百万円増加したことによります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は19,411百万円であり、前連結会計年度に比べ3,580百万円増加しました。増加の主な要因は、支払手形及び買掛金の残高が3,505百万円増加したことによります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は19,830百万円であり、前連結会計年度に比べ1,671百万円増加しました。増加の主な要因は、繰延税金負債の残高が1,862百万円増加したことによります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は375,686百万円であり、前連結会計年度に比べ49,889百万円増加しました。増加の主な要因は、利益剰余金の残高が25,044百万円増加したことによります。

また、自己資本比率は84.4%であり、前連結会計年度に比べ0.4ポイント増加しております。

 

(3) キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動によるキャッシュ・フローは11,457百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローは76,736百万円増加し、財務活動によるキャッシュ・フローは15,904百万円減少しました。これに資金に係る換算差額の増加4,014百万円を加えた結果、前連結会計年度末に比べ76,304百万円増加し、当連結会計年度末の資金残高は95,467百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は11,457百万円であり、前連結会計年度に比べ15,585百万円減少しました。これは主に、当連結会計年度において、棚卸資産の増減額が△11,865百万円(前連結会計年度は217百万円)であったこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、投資活動による資金の増加は76,736百万円であり、前連結会計年度に比べ101,114百万円増加しました。これは主に、当連結会計年度において、定期預金の払戻による収入89,004百万円(前連結会計年度は5,637百万円)であったこと等によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は15,904百万円であり、前連結会計年度に比べ5,966百万円増加しました。これは主に、当連結会計年度において、自己株式の取得による支出△6,881百万円(前連結会計年度は△2,580百万円)であったこと等によります。

 

 

② 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料、副資材、電気代、燃料代等の製造費用と販売費及び一般管理費等、営業費用によるものです。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、安定収益源としての既存設備の維持更新、生産効率向上・品質強化・省力化及び省エネルギー化等を伴う既存設備能力の戦略的増強のための投資、将来の成長に向けた新たな事業拠点・事業領域への投資や環境対策等によるものです。当社グループが事業を営む業界では、新規工場建設、買収資金等の投資額が非常に多額となること、市況産業であることから業績は景気変動に大きく影響を受けること、当社が展開している中東事業において、多額の貸付金、債務保証等を実施していること等を踏まえ、今後も財務健全性の維持に努めながら、将来の成長投資にも積極的に手元資金を配分していく方針です。なお、株主還元につきましては、毎期の営業キャッシュ・フロー未使用分を適切に配分してまいります。配当につきましては、連結配当性向30%を目処に毎期の配当額を決定するとともに、継続的かつ安定的な配当の維持に努めてまいります。また、自己株式の取得につきましては、中長期的に株主価値を高める観点から、市場環境や事業投資機会などを総合的に勘案し、機動的に実施を検討してまいります。

 

③ 資金調達

当社グループの運転資金及び設備投資資金については、営業活動により獲得した資金及び内部資金を充当することを基本方針としております。また、戦略的な資金についても主として内部資金によって充当していく方針です。なお、不測の事態に備え、当社と金融機関3行との間で10,000百万円のコミットメントライン契約を設定しており、資金調達が適時滞りなく実施可能と認識しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、可能な限り合理的な根拠に基づいた仮定を用いて会計上の見積りを行っております。

 

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