(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症におけるワクチン接種やいわゆる「ウィズコロナ」の進展等から、個人消費を中心に景気の持ち直しの動きがみられましたが、資源・エネルギー価格の上昇に加え、半導体をはじめとする各種資材・原料等の供給制約の影響もあり、不安定な状況が続きました。
世界経済においては、欧米では新型コロナウイルス感染症拡大のピークアウトなどから個人消費を中心に回復基調にありましたが、中国においては不動産市場の調整やいわゆる「ゼロコロナ政策」による都市封鎖の影響などから経済成長が鈍化しております。さらに2022年に入り、ロシアのウクライナ侵攻に加え米国の金融引き締め政策への転換などから、世界経済は極めて不透明な状況に転じております。
鉄鋼業においては、日本国内では、住宅建設着工や機械受注の持ち直しなどによる改善がみられましたが、半導体の供給制約の影響に伴う自動車生産の減少などから、期間の後半にかけ市況は力強さを欠く状況となっております。
海外鉄鋼市場においても、期間の前半は各地域において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に加え、市況に先高観があったことなどから比較的堅調に推移しましたが、期間の後半は中国における経済成長の鈍化や各種製品価格の高止まりなどの影響から、市況は伸び悩む状況となりました。
当社グループは、原材料・エネルギーなど各種コストの過去に類をみない急激な上昇のなか、お客様への製品の安定供給と自助努力によるコストダウンにつとめるとともに、再生産可能な製品販売価格についてお客様のご理解を得られるよう丁寧な説明につとめました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高201,655百万円(前期比55,691百万円増)、営業利益14,349百万円(同6,469百万円増)、経常利益17,916百万円(同8,125百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益9,789百万円(同3,531百万円増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、売掛債権・棚卸資産の増加、営業活動によるキャッシュ・フローの減少、金融商品市場の下落に伴う投資有価証券等の評価減などの差引により前連結会計年度末より18,666百万円増加し244,671百万円となりました。負債は、仕入債務の増加、繰延税金負債の減少などの差引により前連結会計年度末より7,025百万円増加し52,733百万円となりました。純資産は、利益剰余金、為替換算調整勘定等の増加、その他有価証券評価差額金の減少などの差引により前連結会計年度末より11,640百万円増加し191,937百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
鋼板関連事業
売上高は192,428百万円(前年同期比55,329百万円増)、営業利益は14,213百万円(前年同期比5,958百万円増)であります。
ロール事業
売上高は2,689百万円(前年同期比345百万円増)、営業利益は8百万円(前年同期比420百万円増)であります。
グレーチング事業
売上高は3,443百万円(前年同期比86百万円減)、営業利益は109百万円(前年同期比65百万円減)であります。
不動産事業
売上高は1,263百万円(前年同期比24百万円増)、営業利益は857百万円(前年同期比13百万円減)であります。
その他事業
売上高は1,829百万円(前年同期比77百万円増)、営業利益は445百万円(前年同期比248百万円増)であります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ12,154百万円減少し、30,961百万円となりました。これは主に、営業活動によるキャッシュ・フローにおける資金の支出によるものです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の支出は10,645百万円(前年は資金の増加17,149百万円)となりました。売上債権・棚卸資産の増加と当期営業利益の差引が主な要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は1,985百万円(前期比2,687百万円減)となりました。これは主に有形固定資産の取得等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は1,226百万円(前期比2,771百万円減)となりました。これは主に、配当金の支払、借入金の増加などの差引によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
鋼板関連事業(百万円) |
194,015 |
48.6 |
ロール事業(百万円) |
2,682 |
16.7 |
グレーチング事業(百万円) |
3,484 |
1.4 |
不動産事業(百万円) |
- |
- |
報告セグメント計(百万円) |
200,182 |
46.8 |
その他(百万円) |
158 |
14.4 |
合計(百万円) |
200,341 |
46.8 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
鋼板関連事業 |
200,063 |
39.6 |
29,002 |
35.7 |
ロール事業 |
3,365 |
62.5 |
1,829 |
58.6 |
グレーチング事業 |
3,433 |
△3.2 |
187 |
△5.5 |
不動産事業 |
1,263 |
2.0 |
- |
- |
報告セグメント計 |
208,126 |
38.6 |
31,019 |
36.5 |
その他 |
1,970 |
△47.0 |
444 |
46.7 |
合計 |
210,096 |
36.6 |
31,464 |
36.7 |
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
鋼板関連事業(百万円) |
192,428 |
40.4 |
ロール事業(百万円) |
2,689 |
14.7 |
グレーチング事業(百万円) |
3,443 |
△2.4 |
不動産事業(百万円) |
1,263 |
2.0 |
報告セグメント計(百万円) |
199,826 |
38.6 |
その他(百万円) |
1,829 |
4.4 |
合計(百万円) |
201,655 |
38.2 |
(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
㈱佐渡島 |
32,529 |
22.2 |
40,316 |
19.9 |
阪和興業㈱ |
- |
- |
20,340 |
10.0 |
(2)経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
<売上高>
日本国内・海外ともに各種コストが急激に上昇する厳しい事業環境ではありましたが、各地域において新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴う需要の捕捉につとめるとともに、再生産可能な製品販売価格の実現に取り組みました。
日本国内および台湾の子会社であるSYSCO社で販売数量が回復傾向にあったこと、また中国の子会社であるYSS社の中国国内におけるブランド認知の進展により販売量が伸長したことなどから、連結売上高は増収となりました。
<営業利益>
日本国内においては、各種コストの上昇が販売価格の改善に先行する厳しい状況が継続しましたが、販売量の回復に加え在庫評価の利益押し上げ効果などから増益となりました。
海外子会社においても厳しい事業環境ではありましたが、SYSCO社の損益が海外鉄鋼市況の上昇に伴い大きく改善したこと、またYSS社が黒字化したことなどから、連結営業利益は増益となりました。
<経常利益>
営業外収益における為替差益の計上、受取配当金・投資有価証券売却益の計上増などから、経常利益の増益幅は営業利益と比べ増加しております。
<親会社株主に帰属する当期純利益>
法人税等合計額における法人税、住民税及び事業税の計上増などから連結当期純利益の増益幅は経常利益と比べ減少しております。また連結当期純利益における増益要因として非支配株主比率の高いSYSCO社の影響が大きいことから、親会社株主に帰属する当期純利益では連結当期純利益と比べ増益幅は縮小しております。
当社グループの資本政策の基本方針については、持続的な成長のための積極的投資と株主への最大限の利益還元に必要な資金の確保、並びに強固な財務基盤の維持を目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出に努めております。
当連結会計年度末時点で外部からの資金調達を必要とする重要な資本的支出の予定はありませんが、当面の運転資金及び設備投資資金については、主として自己資金から充当し、必要に応じて金融機関からの借入により調達していく方針です。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、2020年5月に策定・開示しております「淀川製鋼グループ中期経営計画2022」において、「連結経常利益(2022年度)90億円以上」としております。
当期におきましては、日本国内および海外のいずれにおいても各種コストが急激に上昇する厳しい経営環境の中、当社グループの強みである機動力を発揮し販売価格の改善、新規顧客の開拓などの企業努力を重ね、2022年度の目標値を上回る連結経常利益を計上することができました。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
鋼板関連事業
鋼板業務
日本においては、比較的堅調であった建築需要などにより、特にひも付き(特定需要家向け)において各品種で販売量が回復しました。また、ひも付きおよび店売り(一般流通向け)いずれにおいても販売価格の改善につとめたことに加え、在庫評価の利益押し上げ効果もあり増収・増益となりました。
海外では、台湾のSYSCO社は、台湾国内向けおよび輸出ともに販売量が回復し価格も改善したことから増益となりました。中国のYSS社は、中国国内向けカラー及びめっき鋼板の販売量の増加などにより営業黒字となりました。タイの子会社であるPPT社は、一進一退の状況が続いておりましたが、小幅ながら増益となりました。
建材業務
建材業務では、エクステリア商品では前期にいわゆる巣ごもり需要のあった影響などから販売量は減少しました。外装建材商品ではヨドルーフの販売方式変更などの要因から減収となりました。
以上から、鋼板関連事業としては増収・増益となりました。
ロール事業
鉄鋼向けの販売量が堅調に推移したことなどから増収・増益となりました。
グレーチング事業
官公庁、道路案件の減少などから減収・減益となりました。
不動産事業
売上についてはほぼ前年並みに推移しましたが、賃貸用不動産の改修などによる償却負担増等により減益となりました。
その他事業
物資販売事業の売上増や倉庫運送事業の扱い増などにより増収・増益となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、資本政策の基本方針のなかで、「グローバルな経済の変動に経営環境が大きな影響を受けるなかで、企業理念に基づく経営戦略を着実に実現し、持続的な成長のための積極的投資と株主への最大限の利益還元を両立させるために、強固な財務基盤を維持する」こととしており、営業活動によるキャッシュ・フローを安定的に獲得すべく事業活動に取り組んでおります。
2022年3月期の連結キャッシュ・フローの状況としては、営業活動によるキャッシュ・フローは10,645百万円の資金の減少、投資活動によるキャッシュ・フローは1,985百万円の資金の減少、財務活動によるキャッシュ・フローは1,226百万円の資金の減少、現金及び現金同等物に係る換算差額は1,702百万円の資金の増加となり、現金及び現金同等物の残高は12,154百万円減少しました。
このうち、固定資産の取得・売却等による資金の減少は8,033百万円、配当金の支払(非支配株主への支払含む)による資金の減少は2,499百万円であります。
当期におきましては、前期に新型コロナウイルス感染症の影響等で落ち込んだ販売量からの回復と各種コストの大幅な上昇から運転資金負担が増大したこと、また、前期に続き福井ヨドコウ㈱における新工場建設など固定資産の取得が高水準であったことなどから、上記のとおりの資金の減少となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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