文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、引き続き新型コロナウィルス感染症(以下、「感染症」とする)の流行により、2度にわたる緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発出を受けて飲食・サービス業を中心に個人消費回復の遅れ等の影響を受けた他、2022年1月以降の第6波による感染者・濃厚接触者の急増に伴い、製造業においても自宅待機による一時的な生産休止等の影響を受けましたが、国際的な経済活動制限の緩和による需要増の動きを受け、輸出の増加などによる景気の緩やかな回復が続きました。
ステンレス特殊鋼業界におきましては、生産用機械等の設備投資が引き続き堅調に推移し、半導体等の電子部品や自動車等の輸送機器の生産量回復、また中国を筆頭とした個人消費の回復に伴う電気機器向けの輸出拡大により需要は増加しました。一方、LMEニッケル相場や原油相場の上昇をはじめとした原材料・資材・エネルギー価格の上昇基調が継続し大幅なコストアップ要因となる中、2022年2月にロシアがウクライナへ侵攻したことによりLMEではニッケルの取引が一時中断されるなど市況は大きく混乱したまま新年度を迎える事態となりました。
当社グループの戦略分野である高機能材につきましては、中国での太陽光発電向けの他、半導体製造設備向けや家電製品用のシーズヒーターやバイメタル向けの需要が引き続き堅調に推移した他、原油価格の上昇に伴う石油・ガス関連分野での需要回復の動きが見られました。
当社グループではこのような外部環境に対応し、高機能材の更なる生産性向上やリードタイム短縮に取り組んだ他、原材料価格の上昇に見合ったロールマージンの確保及び徹底したコストダウンを実施した結果、当連結会計年度の販売数量につきましては前年度比16.6%増(高機能材24.4%増、一般材15.0%増)となり、売上高は148,925百万円(前年度比36,443百万円増)となりました。また、利益面につきましては、営業利益13,966百万円(前年度比7,822百万円増)、経常利益12,807百万円(前年度比7,817百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益8,471百万円(前年度比4,707百万円増)となりました。なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)の適用により、売上高は4,460百万円減少しております。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は187,494百万円となり、前連結会計年度末比26,263百万円増加しております。これは主として棚卸資産の増加(16,711百万円)、売上債権の増加(7,404百万円)、機械装置及び運搬具の増加(5,250百万円)、建物及び構築物の増加(3,393百万円)及び建設仮勘定の減少(4,363百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における負債の額は125,324百万円となり、前連結会計年度末比19,221百万円増加しております。これは主として借入金及び社債の増加(16,916百万円)、仕入債務の増加(7,468百万円)によるものであります。
当連結会計年度末における純資産の額は62,169百万円となり、前連結会計年度比7,042百万円増加しております。これにより自己資本比率は33.2%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(7,058百万円)、棚卸資産の増加(16,711百万円)、売上債権の増加(7,404百万円)等により、697百万円の支出(前連結会計年度比11,879百万円の支出増加)となりました。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得(16,028百万円)等により、15,656百万円の支出(前連結会計年度比8,880百万円の支出増加)となりました。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行(8,000百万円)、短期借入金の調達(6,075百万円)、長期借入金の調達(8,081百万円)及び返済(5,167百万円)等により、15,049百万円の収入(前連結会計年度比23,044百万円の収入)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、換算差額を含めて12,545百万円となり、前連結会計年度比1,283百万円減少いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
(注)1.金額は製品製造原価によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと以下のとおりであります。
(注)1.主要な販売先はいずれも総販売実績に対する販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
当連結会計年度の経営成績に関する分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。
b.財政状態
当連結会計年度末時点の資産の状況は、当社川崎製造所において建設中であった高効率電気炉設備が操業を開始したこと及びその他の設備投資により建設仮勘定が4,363百万円減少したこと、建物及び構築物が3,393百万円増加したこと、機械装置及び運搬具が5,250百万円増加したこと及び棚卸資産が16,711百万円増加したこと等により、総資産の金額は前年同期比26,263百万円増加の187,494百万円となりました。
負債につきましては、将来の設備投資資金及び実際の資金需要の動向に見合った資金調達を社債の発行及び借入金の新規借入により調達したため、借入金及び社債の合計残高が16,916百万円増加したこと、仕入債務が増加したこと等により、負債の総額は前年同期比19,221百万円増加の125,324百万円となりました。
以上により当連結会計年度末時点における純資産の金額は前年同期比7,042百万円増加の62,169百万円となりました。その結果、当連結会計年度末時点における自己資本比率は33.2%となり、前年同期比で1.0%下降しました。
c.キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(7,058百万円)、棚卸資産の増加(167,11百万円)、売上債権の増加(7,404百万円)、仕入債務の増加(7,464百万円)等により、697百万円の支出となり、前年同期比で11,879百万円の支出増加となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出(16,028百万円)等により15,656百万円の支出となり、前年同期比で8,880百万円の支出増加となりました。
以上により営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、△16,353百万円となり、前年同期比で20,759百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金及び社債の増加による収入(16,912百万円)の他、当期中に支払った1株当たり合計70円の配当金の支払による支出(1,056百万円)等により、15,049百万円の収入となり、前年同期比で23,044百万円の収入増加となりました。
②資本の財源及び資金の流動性の状況
当社は「中期経営計画2020」の基本戦略の1つである「戦略設備投資の実行と技術力の更なる向上による競争力強化」に向けて、戦略的設備投資を実行してまいります。
この他、経常的な事業活動の継続にあたり一定の運転資金を必要としておりますが、これらの財源は自己資金・借入金及び社債にて充当する方針です。
資金の流動性については、担当部署にて定期的にモニタリングされた資金需要の状況に応じて受取手形の譲渡・割引等による売掛債権の流動化を適宜実施していることに加え、一部の連結子会社との間で構築しているCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を利用することによりグループ全体の資金活用の効率化が図られており、一定の流動性が確保されているものと認識しております。
③経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況に関する分析・検討内容
当社グループは、成長分野である高機能材事業を拡大しつつ、高付加価値材、一般材を含めてお客様のニーズ(品質・コスト・納期:QCD)に沿った製品提供が求められているなか、今後2025年に迎える創立100周年、さらにその先も持続可能な企業であるために、製造現場の安全・安定を大前提に、業界トップレベルの品質、納期、対応力でお客様から信頼され続けることを目指します。
上記の「目指すべき姿」の実現のため、当社は2020年度を初年度とする3ヶ年計画である「中期経営計画2020」を策定しております。「中期経営計画2020」の詳細につきましては、1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 〔中長期的な会社の経営戦略〕に記載の通りであります。
「中期経営計画2020」で掲げている数値目標と実績は下表の通りです。
(注1)中計目標は「中期経営計画2020」の最終年度である2022年度における達成目標であります。
(注2)2021年度の総還元性向は、2021年度に実施した合計120円の配当に加え、2022年5月10日~2022年5月31日に実施した自己株式取得を加味した数値であります。自己株式取得の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載があります。
2021年度実績を踏まえた「中期経営計画2020」の進捗状況についての認識(評価)は以下の通りです。
・高機能材売上高比率につきましては、前年とほぼ横ばいの実績となりました。今後も引き続き「中期経営計画2020」に則り、販売力の強化・コストダウン施策を着実に推進していくほか、世界的な需要構造の変化等についても注視しながら、高機能材の拡販を進めてまいります。
・連結の営業利益につきましては、中計目標を1年前倒しで達成いたしました。
・ROEにつきましては、順調に改善が進捗し、中計で掲げた最終年度における目標を達成することができました。
・ネットD/Eレシオにつきましては、中計で掲げた目標数値を下回る水準を維持しております。
・総還元性向につきましては、剰余金の配当と自己株式取得により目標数値並みの実績となりました。
・設備投資計画につきましては、中計の施策に従い、競争力の強化・事業基盤の強化・ESG課題への対応に資する案件を順次実行しております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 及び 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載があります。
a.繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性の判断にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
b.退職給付債務の算定
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、予想昇給率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2.確定給付制度 (5)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
c.固定資産の減損処理
当社グループは事業用資産については各事業単位、遊休資産については個別物件単位に資産のグルーピングを行っております。収益性の低下等により、投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。事業用資産の回収可能価額につきましては正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額となりますが、正味売却価額につきましては主として不動産鑑定評価額、使用価値につきましては割引前将来キャッシュ・フローに基づき算定しております。遊休資産の回収可能価額につきましては、正味売却価額により測定しており、固定資産税評価額を基に算定しております。
なお、当連結会計年度において減損損失5,786百万円を計上しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※6 減損損失」に記載のとおりです。
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