当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
なお、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。このため、前年同期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご確認ください。
当連結会計年度(2021年4月~2022年3月)における当社グループを取りまく経営環境は、自動車業界において、半導体等の部品供給不足の長期化により、生産減の影響は続いているものの、国内及び海外の需要は回復が進んでいます。一方、建設機械業界においては、昨年度後半から急回復した需要は、引き続き好調を維持しています。
このような状況下、当社グループの連結売上高は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた前期からの反動増により、前期比484億8千7百万円(49.6%)増収の1,462億9千2百万円となりました。連結営業利益は、売上げの回復、増産によるコスト改善と、前期に実施した固定費削減に加え、特殊鋼鋼材事業における昨年度の高炉改修に伴う一過性費用の解消等により、前期比112億1千4百万円増益の62億7千万円(前期は営業損失49億4千3百万円)となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、当社グループ会社であるMSSC Ahle GmbHにおける工場火災に伴う特別損失を計上したものの、損害の一部に対する保険金や政策保有株式及び遊休不動産の売却に伴う特別利益の計上を行ったことから、40億6千8百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失55億2千8百万円)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
特殊鋼鋼材事業の売上高は、建設機械及び産業機械・工作機械メーカーの需要増に加え、新型コロナウイルス影響からの回復もあり、前期比416億2千3百万円(92.7%)増収の865億3百万円となりました。営業利益は、国内事業では売上数量増、増産によるコスト改善効果と、昨年度の高炉改修に伴う一過性費用の解消により、大幅な増益となりました。一方、インドネシア事業では、構造改革の施策の進捗に加え、旺盛な需要にも支えられ、今年度は営業黒字化を達成し、再建から成長の局面へと移行しています。特殊鋼鋼材事業全体としては、国内外ともに原材料価格上昇の売価反映タイムラグによるマイナス要因があったものの、前期比102億3千5百万円増益の66億1千5百万円(前期は営業損失36億1千9百万円)となりました。
ばね事業の売上高は、自動車向けは世界的な半導体等の部品供給不足による生産減の影響は続いているものの、新型コロナウイルスの影響からの回復が進み、建設機械向けについても需要が堅調に推移し、前期比100億9千8百万円(26.3%)増収の485億5千5百万円となりました。営業利益は、売上げの回復により、国内を中心に損益が改善したものの、北米では損失が拡大しました。北米子会社では、上期において材料メーカーの破綻に伴う日本からの緊急供給対応による一過性輸送コストが発生しました。下期は、この影響が解消し、米国工場からカナダ工場への生産移管も計画通りに進捗しているものの、半導体等の部品供給不足と新型コロナウイルスの影響が継続する中、自動車メーカーの挽回生産に向けた急激な生産変動、一部材料メーカーからの供給不足、豪雪やトラック運転手によるデモ等に伴う生産混乱により、生産性の低下や特便費用が発生しました。その結果、ばね事業全体としては、前期比2千9百万円の改善に留まり、18億2千7百万円の損失(前期は営業損失18億5千7百万円)となりました。
素形材事業の売上高は、新型コロナウイルスの影響からの回復による需要増に加え、特殊合金粉末及び精密鋳造品の新規受注品の売上げが好調に推移したことにより、前期比19億4千万円(23.1%)増収の103億5千7百万円となりました。営業利益は、売上数量増、増産によるコスト改善により、前期比8億3千5百万円増益の8億5千7百万円(前期は営業利益2千1百万円)となりました。
機器装置事業の売上高は、受注から売上げを計上するまでの期間が比較的長いことから、新型コロナウイルスの影響による昨年度の商談遅延の影響を受けたものの、大型案件の売上計上により、前期比6億5千1百万円(7.3%)増収の95億8千4百万円となりました。営業利益は、前期比1億7百万円(23.7%)増益の5億6千万円となりました。
なお今期の受注は、注力している洋上風力発電関連機器を中心とした大型受注が積み上がり、前期実績を上回る進捗となりました。
その他の事業は、流通及びサービス業等でありますが、売上高は、前期比9億6千8百万円(34.2%)増収の38億2百万円、営業利益は、前期比4千6百万円(83.6%)増益の1億2百万円となりました。
当連結会計年度末の総資産は1,429億6千2百万円で、前連結会計年度末と比較し106億4千2百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。
1 流動資産:137億3千9百万円増加
需要回復等による売掛金及び電子記録債権の増加87億7千9百万円、生産増等による棚卸資産の増加76億5千2百万円等によるものであります。
2 有形固定資産:1億4千6百万円増加
設備投資による増加26億2千3百万円、減価償却による減少32億3千9百万円、為替変動による増加11億1千2百万円、減損損失による減少2億6千9百万円等によるものであります。
3 無形固定資産:4億3千7百万円減少
減価償却による減少4億5千3百万円等によるものであります。
4 投資その他の資産:28億6百万円減少
投資有価証券の売却等による減少45億2百万円、退職給付に係る資産の増加13億6千7百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の負債総額は943億1千5百万円で、前連結会計年度末と比較し67億6千8百万円の増加となりました。その内訳は次のとおりであります。
1 流動負債:92億7千4百万円増加
生産量増加による仕入債務の増加55億9千万円、利益増による未払法人税等の増加29億8千4百万円、火災損失関連の支出に備えるための引当金増加8億6千9百万円等によるものであります。
2 固定負債:25億6百万円減少
借入金返済による減少6億1千5百万円、リース契約解消等によるリース債務の減少11億4千9百万円、退職給付に係る負債の減少9億3千6百万円等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、486億4千7百万円となり、前連結会計年度末と比較して38億7千3百万円の増加となりました。これは利益増による利益剰余金の増加39億1千7百万円、投資有価証券の売却によるその他有価証券評価差額金の減少23億1千5百万円、退職給付に係る調整累計額の増加23億4千6百万円等によるものであります。
この結果、自己資本比率は29.8%となり、前連結会計年度末と比較して0.4%増加いたしました。
また、1株当たりの純資産額は、前連結会計年度末の2,528円35銭から2,774円13銭となりました。
当連結会計年度のキャッシュ・フローは営業活動による19億2千4百万円の支出、投資活動で19億6千7百万円の収入、財務活動では35億2千3百万円の支出となりました。
この結果、現金及び現金同等物は当連結会計年度に30億2千8百万円減少し、当連結会計年度末残高は199億5千1百万円となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税金等調整前当期純利益84億4千8百万円、減価償却費37億2百万円、需要回復により生産量を増加したことによる仕入債務の増加52億3千1百万円があった一方、売上債権の増加85億3千9百万円や棚卸資産の増加68億9千7百万円等の支出がありましたので、営業活動全体として19億2千4百万円の支出となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
有形固定資産の取得による支出24億6千4百万円があった一方、有価証券の売却による収入44億1千8百万円がありましたので、投資活動全体として19億6千7百万円の収入となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
借入金による収入が63億7千3百万円あった一方で、長期借入金の返済81億9千3百万円、リース債務の返済15億1千1百万円等により、財務活動全体として35億2千3百万円の支出となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)金額は販売価格によっております。
当社グループでは、主に国内外の需要家への最近の納入実績、各需要家の予測情報などに基づいた生産を行っており、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前年同期比増減率は記載しておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
1 資金需要
当社グループの主な資金需要は、製品製造のための材料や部品の購入及び設備投資によるものであります。
2 財務政策
当社グループは、設備投資を厳選して実施することで財務の健全性を保ちながら、営業活動によるキャッシュ・フロー収入を基本に、将来必要な運転資金及び設備資金を調達していく考えであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積り及び前提条件は、以下の事項及び「第5 経理の状況(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
当社グループは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係) ※8減損損失」に記載のとおり、当連結会計年度において減損損失(269百万円)を計上しております。
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