課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは、いかなる経営環境の変化にも対応できる企業体質を確立することを重要課題と認識し、競争力ある事業の育成を通じて、持続的かつグローバルに発展することを経営の基本方針としております。

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
 

(1)経営環境及び対処すべき課題

① 当社グループの現状認識について

  当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの影響により大幅に悪化した経済活動の回復が進んでいます。建設機械業界においては、昨年度後半から急回復した需要は引き続き好調が見込まれます。また、自動車業界においては、半導体をはじめとする部品供給不足が続くと予想されるものの、国内及び海外の需要は回復が進んでいます。一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰と円安影響による生産コストの増加に加え、中国におけるロックダウンやロシア・ウクライナ情勢等もあり、先行き不透明感が増しています。

こうした状況の中、当社グループでは、全社的なコスト構造改革及び財務体質強化などの取り組みを行って まいりました。課題となっていた海外事業の収益性改善については、北米ばね子会社( MSSC )の損益が大幅に悪化しています。一方、インドネシア特殊鋼子会社( PT.JATIM TAMAN STEEL MFG. )は、 2020 年度下期より黒字転換を達成し、成長局面へと移行しています。また、国内においては希望退職者の募集をはじめとした固定費削減を行い、損益分岐点を引き下げることで事業環境に左右されずに利益を確保できる事業体質への変革を行っております。

 足元では、原料炭・スクラップ・合金鉄及びエネルギー価格等の高騰や急激な円安に伴う原材料コスト増加への対応と、マージン回復が大きな課題となっています。収益確保に向けて、販売価格の改善に引き続き注力してまいります。また、北米拠点において、半導体をはじめとする部品不足や新型コロナウイルスの影響が続く中、主要需要先である自動車メーカーの急激な生産変動や材料調達の不安定化等による、生産混乱が発生しています。現在、安定在庫の確保や三菱製鋼室蘭特殊鋼㈱を含めた複社購買による材料調達体制の構築等の各種施策を進めており、 2022 年度下期中での解消を見込んでおります。

 なお当社は、本年4月の東証市場再編に際しプライム市場へ移行しておりますが、上場維持基準の適合判定時においては、流通株式時価総額の項目が基準未達でありました。足元の株価水準では基準を満たしているものの、さらなる業績の改善に加え、中長期的な企業価値向上に向けて、各種取り組みを推進してまいります。

 

②  中長期的な企業価値の向上

 当社グループは、中長期的な企業価値向上を目指し、サステナビリティに関する取り組みを強化しております。

2021年11月には、サステナビリティに関する基本方針を定めるとともに、当社グループの持続的な成長を担保するための施策を協議・立案することを目的として、「サステナビリティ委員会」を新設しました。また、サステナビリティ委員会の下部組織として、従来の「地球環境委員会」に加え、「カーボンニュートラル委員会」と「ESG分科会」を新設、当社のサステナビリティ推進に向けて、全社横断的に対応できるマネジメント体制にしております。

なお、サステナビリティ委員会の議論の内容については、適宜取締役会にも報告・審議する体制としており、2021年度では「カーボンニュートラルの取り組み」や「人権の取り組み」について、報告・審議を行っております。

 


 

  [(E)環境への取り組み]

 カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、CO2排出量削減目標とカーボンニュートラルに向けたロードマップを公表しております。

 

                     [CO2削減目標]

2030年度までに、2013年度比
 
  鋼材部門:(事業拡大のため)原単位で10%削減
その他の部門:総排出量50%削減
オフィス部門:カーボンニュートラル
           ↓
     2050年カーボンニュートラル実現

 

 

      (カーボンニュートラルに向けたロードマップ)

 


 

また 、各事業部においてお客様のニーズを集めて以下のコンセプトで製品開発を行う等、当社製品を通じた環境負荷低減にも取り組んでおります。

 

・特殊鋼鋼材事業: お客様の工場のエネルギー消費削減に貢献する製品開発

・ばね事業      : EV社会に向けて自動車部品の更なる軽量化への対応

・素形材事業    : 省エネに役立つ金属素材の開発

・機器装置事業  : 再生エネルギー・資源循環ビジネス関連機器への取り組み

 


                     軽量化ばねの開発    熱処理時間を大幅に短縮する鋼材の開発

                             (建設機械向け大型歯車)

 

 

[(S)社会への取り組み ]

 従業員の人材育成と働き方改革及びダイバーシティに取り組んでおります。新人事処遇制度の導入を行い、社員ひとり一人の働き甲斐やモチベーションの向上を図るとともに、特に女性が働きやすい職場環境づくりや制度面の整備を進める等、多様な人材の活躍を目指した取り組みを進めております。


 また、DX推進室を設置し、DX活用による業務の付加価値化や、業務スタイルの変換も進めてまいります。

 

    [(G)ガバナンスへの取り組み ]

2021年度には、コーポレート・ガバナンス体制の基盤整備を行い、経営の客観性・透明性を確保すべく、新体制へと移行しました。今後もさらなる企業価値の向上に向け、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図ってまいります。

・取締役の任期短縮(2年→1年)
・社外取締役による牽制機能の強化(取締役会における社外取締役比率1/3以上)
・ガバナンス委員会の指名報酬機能強化
・執行役員制度への移行
・政策保有株式の売却(純資産比率 15%→4%)
・SR活動の取り組み強化(社外役員の参加等)

 

 

③ 中長期的な経営戦略

    当社は、 2020 年5月に、 2020 年度~ 2022 年度の3ヵ年を対象とする「 2020 中期経営計画」を公表いたしました。

 初年度である 2020 年度は赤字海外事業の構造改革に注力し、海外子会社の収益性改善を進めるとともに、希望退 職を含む固定費削減により、損益分岐点の引き下げを行いました。その結果、 2021 年度では3期ぶりの最終利益黒字化を達成しました。また、中期経営計画で掲げた3大方針については、北米 MSSC の再建を除き、概ね計画通り進捗しております。

 最終年度となる 2022 年度では、北米 MSSC の損益改善を徹底的に進めるとともに、さらなる企業価値の向上に向けて、次期中期経営計画の策定を進めてまいります。

 

2020 中期経営計画」の概要は以下のとおりです。

a.「 2020 中期経営計画」スローガン

   素材から製品まで一貫したモノづくりでお客様に付加価値を提供する

 

b.目指す姿

  ・グループ総合力の発揮による利益率の向上と収益安定化を図る

  ・お客様のニーズの半歩先行く製品を開発し、新たな価値として提供する

 

c.3大方針

    ◆海外事業の構造改革<海外拠点の早期収益力アップが急務>

     ・インドネシア JATIM の黒字化と北米 MSSC の早期止血・立て直し

     ・海外事業・拠点の統廃合の実施

    ◆製品力のさらなる強化<顧客ニーズの半歩先を行く製品>

     ・お客様の声をスピーディに汲み上げ、製品に反映する総合力の強化

     ・メリハリをつけた技術開発項目見直しによる開発スピードアップ

    ◆素材から一貫生産ビジネスモデルの拡大

 ・三菱製鋼室蘭特殊鋼(株)の鋼材を用いた軽量化ばねや、JATIM材を用いた板ばねの一貫生産ビジネスモデル

   を、建設機械用ばねやスタビライザ等に展開し、当社の素材から一貫生産の強みを発揮する

 ・単品的な製品ラインナップに留まっていた素形材製品を、その上下流含めた一貫生産ビジネスモデルとし

   て 強化する

 

 

 d.重要経営指標( KPI

       2022 年度目標

       ・売上高 1,500 億円

       ・営業利益 70 億円

       ・ ROE  8%以上

 

(2)各事業における重点施策

 [特殊鋼鋼材事業]

新型コロナウイルスや半導体不足の動向に加えて、ロシア・ウクライナ問題等、先行きが不透明な中、原料 炭・スクラップ・合金鉄など資材価格やエネルギー価格高騰への対応とマージン回復が大きな課題であり、収益確保に向けて、販売価格の改善に引き続き注力してまいります。

また、インドネシアのPT.JATIM TAMAN STEEL MFG.については、操業安定化に向けた設備投資や取り組みが進み、業績への効果が現れてきました。今後は国内事業同様、原材料や資材価格の高騰に対応する、価格転嫁の時期ズレ短縮に引き続き注力してまいります。

 

[ばね事業]

国内では、軽量化・性能向上を軸に製品力強化を継続するとともに、マザー工場として海外子会社のモノづくり力強化を進めてまいりました。その結果、国内・海外各拠点において、提案強化による新規受注が順調に増加しております。今後も継続して製品力強化を推進することで、さらなる拡大を進めてまいります。

海外では、課題である北米拠点の黒字化について、再建計画として、カナダ工場への生産移管を進めてまいりました。また原材料価格上昇への対応として、市況変動に対する売価反映指標の一致は完了いたしました。材料価格が高止まりする中、需給ひっ迫によるベース価格上昇や購入部品代高騰が続いておりますが、これに対しては販売価格への反映を進めてまいります。また足元では、世界的な半導体をはじめとする部品の需給ひっ迫が続く中、自動車メーカーの急激な生産変動や材料調達が不安定となったことから、新型コロナウイルス感染拡大や、豪雪・トラック運転手デモによる物流影響等も重なったことにより、生産混乱が発生しています。これに対しては、アメリカ工場一時再稼働による安定在庫の確保と、自社を含めた複社購買による材料調達体制の構築の推進等により、受注変動に対応できる体制を整え、  2022 年度下期中の解消に向けて、取り組みを進めてまいります。

 

[素形材事業]

特殊合金粉末及び精密鋳造品の新規拡販推進に加え、千葉製作所内に新設した千葉AMC(アドバンスト・マテリアルズ・センター)については、先端材料や将来テーマに向けた新製品等の開発を全社レベルで推進する組織体制とするため、事業部から分離し、その機能を技術開発センターに統合しました。これにより、精密鋳造試作ライン、VIM(真空誘導溶解炉)、ガスアトマイズ粉末量産設備を用いた各種研究開発を加速してまいります。また、広田製作所に新設した金属微粉末製造用の水アトマイズ試作ラインも最大限に活用し、「製品力の向上」「新技術の開発」「モノづくり力の強化」を推進し、国内外拠点の支援強化を図ってまいります。

 

[機器装置事業]

三菱長崎機工()では、既存事業における製品力強化による受注確保とコア技術を生かした新たな事業基盤の再構築を進め、お客様の多様なニーズへ対応する総合エンジニアリングメーカーとして持続的成長を目指してまいります。特に、今後需要が高まると見られる洋上風力関連設備等を中心に、新たな事業機会を追及してまいります。

また、三菱製鋼グループ内の連携を強化し、製品コスト削減と輸出の拡大を進めてまいります。

 

(3)来期の見込みと配当

当社グループの主要な取引先である建設機械業界においては、需要は引き続き好調に推移すると見込まれます。また自動車業界においては、半導体をはじめとする部品供給不足が少なくとも上期中は続くと予想されるものの、需要の回復が進んでいます。一方で、原材料・エネルギー価格等の高騰と円安影響に加え、中国におけるロックダウンやロシア・ウクライナ情勢等もあり、先行き不透明感が増しています。
 こうした状況のなか、当社グループの2023年3月期の通期業績見通しについて、売上高は、原材料価格高騰分の価格転嫁が進むことに加え、自動車需要の回復が進むことから、増収を見込んでいます。
 営業利益は、ばね事業において、売上数量の回復に加え、北米における材料メーカーの破綻に伴う輸送コストの解消により、損失が減少するものの、特殊鋼鋼材事業において、さらなる原材料価格上昇に値上げが追い付かず減益となり、全体としても減益となる見込みです。
 以上のことを踏まえ、2023年3月期の業績予想は連結売上高1,700億円、連結営業利益45億円、連結経常利益31億円、親会社株主に帰属する当期純利益27億円を見込んでおります。

 


 

(4)中期経営計画の進捗

■海外拠点の収益性改善
    ◇競争力のある製品開発で拡販が進捗、人員整理を伴う固定費の削減を断行。
  ◇2021年度は、北米MSSCとドイツを除く海外子会社が黒字化。
  ◇北米MSSCの再建達成が最大の課題。


■インドネシアJATIM社


 

◇インドネシアJATIM社再建計画進捗

・再建計画の施策に基づき生産性改善に注力、2020年に従来受注量で営業赤字解消まで改善。

・2021年はコロナ禍の影響で一時的な操業低下もあったが、旺盛な需要に支えられ、黒字化を達成。

・現調化支援及び品質が評価され、トヨタインドネシア様より“Excellent in Local Material Development”賞を受賞。

・なお、2022年度は、スクラップの一段高に加え副資材・エネルギーの急騰もあり、それらの売価反映を進める。

・今後は、財務体質強化や室蘭との2本柱化に向けて次の一手を検討するステージへ。

 

■北米MSSC(アメリカ・カナダ工場)

 

 

今中計は、JATIMと北米MSSCの

再建なくして完了とは言えない。
       ⇓
今期は北米MSSCの改善を徹底的に
進める。

 

 

 


 

 

 ◇北米MSSC再建計画進捗

 ・カナダへの生産移管による生産性改善が途上の中、第3四半期以降に受注急増・急な発注変更及び材料供給

  不足が重なり、生産混乱となったことで損益が大幅に悪化。
   ・また、期を通じて原材料価格が高騰(材料指標の統一は完了も、材料ベース価格や購入部品等が高騰)
  <生産混乱への対策>
   ・US工場の一時再稼働による製品在庫の積み増しや、調達先追加(自社材を含む)による材料調達の安定化に

   より、受注変動耐性を高めて安定操業を図る。
   ・また、設備故障の対策(保守強化)を行っているが、投資を行ってでも故障率を引き下げる。
  <材料高騰への対策>
   ・材料高騰の影響は、市況変動、ベース価格、購入部品代に分けられる。
   ・市況変動の売価反映指標の一致は完了。材料価格が高止まりする中、需給ひっ迫によるベース価格上昇や購

   入部品代高騰の売価転嫁も進める。

 

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