課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は「MADE BY JMC」を経営理念にしており、ビジョンは「ものづくりに知性を。」です。

 経営理念には、製造業におけるJMCという強固なブランドを確立し、私たちが先頭に立って日本の製造業を変えていくという、強い想いが込められています。

 そして、ビジョンでは、製造方法や設備によって自らの事業を定義するのではなく、「社会に求められているもの」や「時代にふさわしいサービス」をとことん考え抜き、既存のものづくりの枠組みに縛られない事業展開によって“最強のサプライヤー”を目指す、当社の姿勢を表現しました。

 

 (行動指針)

 当社の使命は、全てのステークホルダーの利益を尊重しつつ、革新的な製品及びサービスを提供し、顧客満足度を最大化できる価値を創造しつづけることです。

 我々は社会的責任を持って公正かつ倫理的に事業を行い、公平な雇用をし、職場の安全性を守り、我々の業務に適用される全ての法律を遵守します。

 

① 法令等遵守の徹底

 法令・社会的規範、社内諸規程・マニュアル等を遵守します。また、適正な会計処理を行い、事実に基づいた経理処理や証票類の記載を行います。

 

② 高品質とスピードを両立したサービス提供

 関連する法律・ルールを遵守したうえで、お客様の視点を踏まえて、そのニーズを反映した良質なサービスを迅速にご提供します。

 

③ お客様の声への適切な対応

 ご意見、お問い合わせ、クレーム等いかなる「お客様の声」にも誠実に対応するとともに、今後のサービス提供や業務改善に反映します。

 

④ 人権を尊重する職場環境の実現

 職場における差別、各種ハラスメント等の人権侵害行為を許容せず、相互の信頼と良識のある職場環境を実現します。

 

⑤ 快適な職場環境の整備

 社員が能力や個性を存分に発揮するとともに、能力を積極的に向上できる、快適で働きやすい職場環境を整備します。

 

⑥ ステークホルダーとの関係

 ステークホルダーとの関係は、健全かつ節度を保ち、疑義を招くような接待・贈答を行ったり受けたりしません。

 

⑦ インサイダー取引の禁止

 インサイダー取引となりうる株式等の売買は行いません。そのために、当社及び取引先等の内部情報は厳重かつ適切に管理します。

 

⑧ 業務の相互牽制と管理

 あらゆる業務活動において、社員が相互に牽制を働かせるとともに、管理者は所管の業務活動の遂行状況を適切に管理・把握します。

 

⑨ 適切かつ透明な意思決定の確保

 業務活動におけるあらゆる意思決定は、法令や社内の諸規程に則り、合理的根拠に基づいて第三者に説明することを前提として実行します。

⑩ 適切なリスク管理

 あらゆる業務活動において、リスク管理をはかるとともに、各種のリスクを常に適切に管理できる内部管理体制を構築します。

 

⑪ 情報の適切な管理

 当社及びお客様の機密情報に加えて、社員のプライバシーに関わる情報についても守秘する義務があることを意識し、常に適切に管理します。

 

⑫ 適切かつ公正な情報開示

 当社の経営状況及び企業活動への正確な理解を促進するために、ステークホルダーへの適切かつ公正な情報開示に努めます。

 

⑬ 知的資産の適切な保護

 あらゆる業務活動において、第三者が保有するすべての知的資産を尊重するとともに、当社が保有する知的資産を適切に保護し役立てます。

 

⑭ 反社会的勢力との関係の拒絶

 反社会的な団体や勢力との関与を断固として拒絶し、そうした活動を助長する行為は一切行わず、毅然とした姿勢で臨みます。

 

(2)経営戦略等

 当社の経営戦略の現状と見通しは以下のとおりです。

 

(3Dプリンター出力事業)

 試作はものづくりの上流に位置する工程になります。当社は、ハイエンド樹脂3Dプリンターなど、新しい装置を適宜導入しており、事業拡大に貢献する3Dプリンターを積極的に利用する考えであります。3Dプリンターに対する認知度の向上に加え、AM(Additive Manufacturing)サービスの提供による量産品受注体制の確立も進めるとともに、協業プロジェクト「3D innovation Hub」においては、あらゆる領域での3Dプリンターを用いた製品化ニーズの発掘を開始しており、今後も受注状況は底堅く推移するものと考えております。

 心臓カテーテルシミュレーター「HEARTROID」においては、様々な顧客ニーズに応え、脳梗塞に対する脳血管内治療のシミュレーショントレーニングを行うことができる「NV(Neurovascular:脳血管)モデル」の開発を新たに行い、発売いたしました。今後もラインナップを増やしていくことで、規格製品の売上増を見込めると考えております。

 

(鋳造事業)

 砂型鋳造については、一部の試作・少量量産において価格競争が発生しておりますが、当社においては「短納期」・「高品質」を強みに顧客との信頼に基づく試作・少量量産の受注に注力しており、今後も同様の方針を採用してまいります。

 一方、量産用鋳造部品の受注を開始したことにより、試作・少量量産との製造の両立を進め、量産用鋳造部品製造においては、トヨタ生産方式の導入により、一定の受注増加に対応できる体制の準備を進めております。

 また、より大型サイズの試作・開発需要への対応と一層の内製化推進のため、伊豆木産業用地の第7期棟に熱処理設備を増設し、主に鋳造工程を行う新工場棟(第8期棟)を建設し、当面は量産用鋳造部品の専用工場棟として、2023年の稼働に向けた準備を進めます。

 現状、量産用鋳造品製造比率は、試作・少量量産より少ない状況ですが、今後、比率が増加することを見込んでおり、一時的には試作・少量量産を上回る時期があることも想定しております。

 量産用鋳造部品増加により安定的な売上高を確保できるものの、受注増加に対応可能な製造キャパシティが確立できるまでは、製造設備や人員を優先的に量産用鋳造部品製造に配置し、試作・少量量産においては、外部委託業者を活用することも実施しており、総合的に製造を増加させることに注力いたします。

 また、レストア用パーツの製造販売を行うプロジェクト「JMC BASE」においても、様々な展開を計画しており、事業全体で売上高は増加すると見込んでおります。

 

(CT事業)

 検査・測定サービスでは、物体の内部形状の測定、評価、非接触検査による製品の品質検査及び部品のスキャンサービスを行っております。当該サービスの需要はWEBを活用したセミナーの継続的な実施や、当社WEBサイトに希少生物をスキャンして掲載(CT生物図鑑)、スキャンデータの活用事例の開示等、コンテンツ拡充、メディアへの出演及びデータ提供を積極的に進めた結果、学術研究分野からのスキャン需要の喚起につながりました。また、製品評価やリバースエンジニアリング等、非接触での内部形状評価及びデータ化をはじめ、スキャン対象物のデジタルデータ取得など、新たな需要の発掘も進んでおります。顧客の大型プロジェクト案件が終了したものの、様々な産業用CTの活用について、市場への浸透を図る施策を継続することにより、今後も需要は堅調に推移するものと考えております。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標について、数値的な目標を特段定めておりませんが、中長期視点で経営基盤を確立するために、売上高、営業利益、営業利益率を重視した経営管理を行っております。

 

(4)経営環境

 少子高齢化社会の到来による消費力の減少、人件費の高騰による製造部門の国外流出、さらには新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に伴うサプライチェーンの分断等、「ものづくり」を取り巻く環境は厳しい状況となっております。

 また、当社の主力事業である鋳造事業における主要顧客の輸送用機器分野は「100年に1度の変革期」と言われており、CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)による効率化や先進国の高齢化と人口減少による販売台数の減少、世界各国の環境規制への対応などにより業界構造が大きく変化する可能性があります。このような経済環境のもと、当社は、3Dプリンター、鋳造工法及び産業用CTを融合した独自のものづくり技術を駆使して、大量量産を生業とする従来の製造業の枠にとらわれない、サービス業のサービスレベルを持った付加価値の高い生産物やサービスを提供する事業に取り組んでおります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社が、事業推進上重要課題と認識している点は、以下のとおりであります。

 

(3Dプリンター出力事業)

① 心臓カテーテルシミュレーター「HEARTROID」の普及

 当社は、心臓カテーテルシミュレーター「HEARTROID」においては、国内外医療機関や関連商材を取扱う商社でTAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)トレーニングモデルを中心とした旺盛な需要を背景に積極的な販売推進に取り組んでまいりました。医療現場における新たな手技・症例に対応したトレーニングシステムの開発を続け、更なる市場拡大に向けて、積極的な国内外への営業活動に注力し、製品の普及を図り収益拡大に努めてまいります。

 また、「全ての患者さんが安全に心臓カテーテル治療を受けられることを目指す」をスローガンに、心臓疾患に留まらず、他領域のカテーテル治療にも対応できるトレーニングシミュレーターのプラットフォーマーを目指し、国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科と協力し、研究開発を継続してまいります。

 

② 樹脂3DプリンターAM(Additive Manufacturing)サービスの普及

 当社は、EOS Electro Optical Systems Japan株式会社と協同で樹脂3Dプリンター関連市場の拡大に向けたAMサービスを提供いたしております。樹脂によるAMサービスは、日本国内では黎明期であり、今後樹脂素材のニーズの高まりを受けて新規顧客へ普及させることが必要不可欠であります。当社ではEOS社製ハイエンド樹脂3Dプリンターを導入するとともに、WEBセミナーをはじめ、営業活動に注力することで市場の開拓を進め、売上拡大に努めてまいります。

 

(鋳造事業)

③ 内製化の拡大と外部委託業者の活用

 当社は、加工工程の生産体制を拡充し、技術的難易度の高い案件ニーズに技術的に対応することと「鋳物製作+追加工」ニーズの試作・量産案件の受注を増加させることを目的に、2020年2月にミーリングセンターを稼働し、2021年4月には大型品、量産品に対応した熱処理工程専用の工場棟を建設いたしました。今後も、多品種・小ロットから量産まで、加工レパートリーの拡大と内製化を進める一方で、自社設備もしくは自社人員で賄いきれない受注については外部委託業者との協力体制の下で、品質・納期・価格面で高次元な顧客満足度を追求することで、新規ならびにリピート受注を増加させ、収益の改善・向上を図ってまいります。

 

④ 量産品製造への対応

 当社は主として、顧客の研究・開発部門を中心に、試作から少量量産品の製造を行っておりましたが、アルミニウム、マグネシウムによる薄肉鋳造技術や製品品質が顧客から支持され、FA(ファクトリーオートメーション)関連の量産用鋳造部品を受注し、製造を行っております。量産品製造では、効率的な製造方法や品質不具合による再作を極限まで減少することで歩留まり改善を進めるなど、製造課題の認識が試作品の場合と異なる部分も多いことから、当社では外部コンサルタントを活用した「トヨタ生産方式」を導入することで、量産品製造の技術向上に努めております。また、量産用鋳造部品の需要増加に柔軟な対応をおこなうため、コンセプトセンターの拡張検討を開始しており、伊豆木産業用地への新たな工場棟の建設を推進してまいります。

 

(CT事業)

⑤ 検査・測定サービスの市場開拓及び技術普及

 当社は、産業用CTの全ての領域(ミリ/マイクロ/ナノフォーカス/高エネルギーX線)を顧客ニーズに応じて使い分け、ソフト面、ハード面ともに国内最高水準の検査・測定サービスを提供しております。

 更なる売上高の拡大には、当社の産業用CTによる検査・測定サービス技術を新規分野へ普及させることが必要不可欠であり、WEBによるセミナーをはじめとした営業活動に注力し、市場での認知度を高めることで技術普及を図り、売上高拡大に努めてまいります。

 

(全社)

⑥ 人材の確保、育成

 変化する事業環境に最適な企業構造を保ちつつ、長期的な成長を担保するために、優秀な人材の確保、育成が急務であります。当社では、3Dプリンター出力事業と鋳造事業及びCT事業、また製造部門と営業部門を横断できるゼネラリスト型の人材と、製造業特有の技術・知識に長けた職人型の人材の両面の育成が課題であり、これらに関し中長期的視野で取り組んでまいります。

 

⑦ ブランドの知名度向上

 当社が完成品メーカーの単なる下請けではなく、3Dプリンターと鋳造工法による高品質なものづくりを行うことや、産業用CTによる検査・測定において、対等なパートナーとして主体的に関わっていくためには、製品の品質やサービス等に裏付けられたコーポレートブランドを確立していくことが重要と考えております。そのため、営業活動におけるサービスや採用活動において、費用対効果を見極めながら広報宣伝やIR、PR活動を推進させることを課題と認識し、工場の設計からウェブサイトや各種パンフレットに至るまで一貫したコンセプトで作成し、コーポレート・アイデンティティの構築とそのブランディングに取り組んでまいります。

 

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