文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通して社会に貢献していくことを不変の基本方針としております。こうした基本理念を堅持しつつ持続的に成長し、中長期的に企業価値を向上させていくためには、適正なコーポレート・ガバナンスに基づき経営の透明性、公正性を確保するとともに、イノベーションをキーワードに、保有する経営資源を最大限活用して成長戦略を果断に立案・実行していくことが重要であり、以下の基本的な考え方に沿って、コーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組んでまいります。
(ⅰ)株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行う。
(ⅱ)株主を含むステークホルダーの利益を考慮し、それらステークホルダーと適切に協働する。
(ⅲ)会社情報を適切に開示し、透明性を確保する。
(ⅳ)取締役会の戦略等基本方針決定機能及び経営の監督機能を重視し、それらの機能の実効性が確保される体制の整備及び取締役会の運営に注力する。業務執行については、権限及び責任を明確化し、事業環境の変化に応じた機動的な業務執行体制を確立することを目的として、執行役員制並びに事業本部制を導入している。また、経営の健全性確保の観点から、監査役監査の強化を図ることとし、独立社外監査役と常勤の監査役が内部監査部門や会計監査人と連携して適法かつ適正な経営が行われるよう監視する体制としている。
(ⅴ)持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するよう、合理的な範囲で、株主との建設的な対話を行う。
[住友事業精神]
住友の事業は、今から約400年前、銅と銀を吹き分ける「南蛮吹き」と呼ばれる技術による銅精錬事業に遡り、その後別子銅山における鉱山業を中心に発展を遂げてきました。こうした事業の隆盛を支えてきた精神的基盤が「住友事業精神」であり、住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を礎とし、住友の先人により何代にもわたって深化・発展を遂げてきたものです。その要諦は、1891年に改訂された住友家法の中で「営業の要旨」として端的に示されています。
営業の要旨 ※ここでは、住友合資会社社則(1928年制定)より抜粋しました。
第一条 我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし
第二条 我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、
苟も浮利に趨り、軽進すべからず
この他にも、『技術の重視』、『人材の尊重』、『企画の遠大性』、『自利利他、公私一如』といった精神が今に至るまで脈々と受け継がれています。
[住友電工グループ経営理念] ※創業100周年を機に明文化(1997年6月)
住友電工グループは、
・顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します。
・技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます。
・社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します。
・高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します。
・自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます。
(2) 経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、住友事業精神、住友電工グループ経営理念といった「今後とも変わることのない企業の人格的な価値を示す言葉であるGlorious」を堅持しながら、「Excellent、すなわち優れた業績を収める企業」、あわせて「Glorious Excellent Company」をありたい姿として目指しており、これに向けての中期的な目標として「Vision」を定めております。
2018年5月25日に公表した当社中期経営計画「22VISION」においては、「総力を結集し、つなぐ、つたえる技術で、よりよい社会の実現に貢献する」のコンセプトのもと、現在の5つの事業セグメントを強化・伸長させるとともに、イノベーションによりさらなる成長を目指しております。この成長戦略を実現するために、「モノづくり」「人材・組織」「財務」の3つの基盤を強化しながら、「モノづくり力のさらなる強化」「グローバルプレゼンスの向上」「トップテクノロジーの創出・強化」に重点的に取り組み、2022年度の最終目標として、売上高3兆6,000億円、営業利益2,300億円、ROIC*9%以上、ROE*8%以上を掲げております。
* 投下資産営業利益率(ROIC)=営業利益/(総資産-無利子負債)
* 自己資本当期純利益率(ROE)=親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本
[22VISIONの重点取り組み項目]
ものづくり力のさらなる強化 |
・“世界トップの安全企業”を目指す ・継続的カイゼンによる“強い工場”づくり ・技術、ベストプラクティスのグローバルな共有/横展開による強み発揮 |
グローバルプレゼンスの向上 |
・グローバル顧客のシェア向上 ・グローバルな市場環境の変化を先取りした新しいビジネスモデルの創出 ・マーケティング機能の強化 |
トップテクノロジーの創出・強化 |
・材料からプロセスに至る幅広いコア技術の更なる強化 ・自動車、エネルギー分野の変革を先取りするイノベーション創出と迅速な事業化 ・社会変革をもたらす革新技術へのチャレンジ |
22VISIONのセグメントごとの経営戦略は次のとおりであります。
・自動車関連事業
ありたい姿 |
ワイヤーハーネスをコアとするメガサプライヤーを目指す |
成長戦略 |
・客先コンセプトイン活動の推進 ・社外連携強化 ・当社グループ内リソース結集による事業基盤の強化 ・グローバル顧客への拡販 ・CASE*関連新製品の創出 |
当社の強み |
・住友電工・住友電装・オートネットワーク技術研究所の三位一体体制によるワイヤーハーネス事業の総合力と市場プレゼンス ・グローバル展開力 ・電力、通信、産業素材事業の実績と車載製品への応用 |
* CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared
(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。
・情報通信関連事業
ありたい姿 |
ハイエンドの光ファイバ/接続技術・伝送デバイス/化合物半導体・アクセス機器技術をコアに、大容量ネットワーク・インターコネクト市場でリーディングサプライヤーを目指す |
成長戦略 |
・IoT社会を支えるコア技術の追求 ・顧客の期待の一歩先を実現する独創製品の提案・開発、グローバルプレゼンスの向上 ・IoTを用いた生産技術革新、グローバル事業基盤整備 |
当社の強み |
・大容量高速通信向け極低ロス光ファイバ製造技術 ・超多芯光ケーブル製造技術 ・光学精密成型/メカトロニクス技術 ・映像、光アクセス機器のソフトウェア開発力 ・光/無線用化合物半導体での材料からデバイスまでの垂直統合による連携開発 |
・エレクトロニクス関連事業
ありたい姿 |
モバイル端末、移動体エレクトロニクスを中心に高機能配線と高機能部材でグローバルトップサプライヤーを目指す |
成長戦略 |
・北米、中国、アジアを中心としたグローバルな販売・製造体制の強化 ・高精細、高速伝送、高強度軽量化等の新機能要求に対応する独創的な製品の提案・開発体制の強化 ・事業サイクルの短い顧客要求にもタイムリーに応えるモノづくり・事業基盤の強化 |
当社の強み |
・成長市場をリードする顧客との強固なパートナーシップ ・高速伝送、高耐熱、高精細化、多孔質、電子線照射等、独自の材料開発・設計・加工技術 ・高機能配線材・保護材・機能製品等、グローバル顧客に対応できるサプライチェーン |
・環境エネルギー関連事業
ありたい姿 |
環境エネルギー関連製品及びシステムをグローバルに提供するトータルサプライヤーを目指す |
成長戦略 |
・電力インフラ市場でのグローバルなプレゼンス向上 ・再エネ増加やEV等普及で変化するエネルギー市場に対応する製品・システムの提供 ・自動車の電動化、環境対応を支える新製品開発 |
当社の強み |
・国内トップの事業基盤、実績 ・高付加価値新製品を生み出す特長技術 ・インフラに関わる多種多様な製品群とサービス ・エネルギーシステムに関する企画提案力 ・有力な関係会社を含めたグループ総合力 ・原材料から製品までの一気通貫での開発体制 |
・産業素材関連事業他
ありたい姿 |
世界トップレベルの材料技術を活かした高性能・高機能製品のグローバルサプライヤーを目指す |
成長戦略 |
・コア技術の強化・革新 ・顧客への提案力強化 ・海外事業展開の加速 |
当社の強み |
・材料開発力:独自材料/リサイクル技術で他社と差別化 ・モノづくり力:生産技術力ならびに製品評価を活かした顧客製造ラインの高度化/効率化に寄与 ・グローバル供給体制:顧客のグローバル対応をサポート |
(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の経済情勢は、新型コロナウイルスの新たな変異株の感染拡大リスクが残るほか、ウクライナ情勢など急速に高まる政治的・地政学的リスクや、半導体の供給不足等による自動車生産の減産、資材価格高騰・物流混乱の長期化なども憂慮材料であり、引き続き不透明な展開が続くものと予想されます。
このような情勢のもと、当社グループは、「Glorious Excellent Company」を目指して、社員の健康と安全、サプライチェーンの維持確保を引き続き最優先としつつ、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のレベルアップに努めてまいります。資本効率向上の取り組みにおいては、重要指標としているROICの改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の最適化、設備投資案件の厳選実施に努めるとともに、高採算品へのシフトや資材価格・物流費の売値への転嫁などの取り組みを一層強化してまいります。これらにより、中期経営計画「22VISION」の最終年度である2022年度を、中期目標の仕上げの年として、各事業において次の施策を進めてまいります。
自動車関連事業では、世界的な半導体供給不足等の影響で自動車生産動向が不透明な状況下、一層のコスト低減と生産の効率化に取り組み、需要変動に耐えうる筋肉質な事業体質の構築をさらに進めてまいります。併せて、ワイヤーハーネスをコアとするメガサプライヤーの実現に向け、客先への提案型マーケティングの強化により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタといったいわゆるCASE関連の新製品創出・拡販、軽量化のニーズに対応したハーネスのアルミ化を加速するとともに、海外系顧客の一層のシェア拡大に取り組んでまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム・ホースなどにおいて、グローバル対応の深化や国内外事業拠点の統合・集約、コスト削減によって収益力の回復を図ることに加え、次世代自動車に向けた新製品開発にも注力してまいります。
情報通信関連事業では、クラウドサービス*市場の拡大や第5世代移動通信システム(5G)の本格立ち上がりに対し、超多心光ケーブルをはじめとする各種光ケーブルや光配線機器、光デバイス等のデータセンター関連製品の生産能力増強と需要の確実な捕捉に努めるほか、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、5G基地局用の電子デバイス、高速大容量通信を可能とするアクセス系ネットワーク機器など、社会動向や市場ニーズに応じた高機能製品の開発・拡販に引き続き取り組んでまいります。また、徹底したコスト削減にも取り組み、収益性の改善に努めてまいります。
* クラウドサービス:従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するもの。
エレクトロニクス関連事業では、FPC(フレキシブルプリント回路)においては、微細回路形成技術を活かした高機能品の拡販や生産性改善による収益力向上に引き続き取り組むとともに、車載用途への拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速してまいります。照射架橋技術を活かした電動車の電池端子用リード線(タブリード)、電動パーキングブレーキ用電線、熱収縮チューブ、さらにはフッ素樹脂加工技術を活かした水処理製品についても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、㈱テクノアソシエとの事業シナジーの拡大にも引き続き取り組んでまいります。
環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルについて、国内の設備更新需要の捕捉に引き続き取り組むほか、脱炭素社会に向けて世界的に市場が拡大している国家・地域間連系線や風力発電など再生可能エネルギー関連の受注拡大に努めるとともに、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化に注力してまいります。また、電動車向けのモーター用平角巻線については、増加する需要を着実に取り込むためのグローバルな生産能力増強とコスト低減による収益力の向上を進めてまいります。さらに日新電機㈱や住友電設㈱を含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。
産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな販売力強化により堅調な需要を確実に捕捉するとともに、電動車部品や航空機部品用工具の新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、今後の事業発展に向けて、電動車向けの拡販と、グローバルに展開する各製造拠点のコスト競争力の一段の強化に取り組んでまいります。PC鋼材やばね用鋼線については、グローバルな製造販売体制の強化と新製品の開発により収益力の向上を図ってまいります。
研究開発では、オリジナリティがありかつ収益力に優れた新事業・新製品の創出に努めてまいります。具体的には、超電導製品、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体デバイス、レドックスフロー電池などの新事業に注力するほか、5つの現事業セグメントを支える次世代の製品として、ポスト5G及び次世代移動通信システム、データセンター、光海底通信用途などの伝送機器、デバイス、光ファイバやエレクトロニクス製品、また環境負荷低減に寄与する電力ケーブル材料や車載・産業用の材料など、社会ニーズを踏まえた新製品の開発にも産官学の連携による社外の知見も積極的に活用して注力してまいります。また、製造現場でのAIやIoT活用による生産革新にも取り組むとともに、事業部門や営業部門との連携を一層強化し、研究開発活動のさらなる活性化とスピードアップを進めます。
また、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。なお、住友事業精神と住友電工グループ経営理念の基本的な価値軸はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)にも相通ずるものであると考えており、特に環境への取り組みにおいては、2030年までにパリ協定要求レベルの温室効果ガス排出量削減を目指し、2050年カーボンニュートラルの達成に向けた対応を強化してまいります。
* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。
信用確実:何よりも信用を重んじること。
不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。
最後に、様々な社会変革が起こりつつある中で当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定し、2022年5月に公表いたしました。この長期ビジョンでは、「グリーンな地球と安心・快適な暮らしの実現」に向け、当社グループが総力を結集し、さまざまな価値を提供していくための方向性について説明しております。また、この長期ビジョンのもとでの具体的な事業計画として、2023年度より3カ年を区切りとする中期計画を策定し、刻一刻と変化する事業環境に的確に対応して中長期的な企業価値向上を果たすべく経営の舵を取ってまいります。
住友電工グループ「2030ビジョン」策定
当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定いたしました。株主様をはじめステークホルダーの皆様のご理解のもと、当社グループが一体となり企業価値向上に取り組み、「Glorious Excellent Company」の企業像実現を目指してまいります。
住友電工グループ「2030ビジョン」 グリーンな地球と安心・快適な暮らし - その実現へ技術で挑戦し続けます - Connect with Innovation |
住友電工グループ「2030ビジョン」の具体的な内容は、以下のとおりです。
(経営方針)
「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」を堅持し、「事業を通じて公益に資する」という経営哲学のもと、常に公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図っていくことを基本思想としています。そして、この基本思想のもと、これからも「トップテクノロジー」を追求し、グループの総合力とイノベーションにより、世界のインフラ・産業の発展を支えていきたいと考え、当社グループの存在価値(パーパス)を次のように定義しました。
住友電工グループの存在価値(パーパス) トップテクノロジーを追求し、つなぐ・ささえる技術をイノベーションで進化させ、 グループの総合力により、より良い社会の実現に貢献していく |
今後も様々なリスクに的確に対応しながら、世界で活躍する当社グループ28万人の従業員による新たな価値の創造を通じ、グローバル市場の多様なニーズに応え、永続的な企業価値向上に取り組んでいきたいと考えています。
(2030年の社会像と事業領域)
当社グループは「安心」「快適」な社会への貢献に加え、「グリーン」な環境社会の実現に、グループの総力を挙げて取り組みます。そして、この目指す社会像の実現に向けて、これからも幅広く「インフラや産業を支える製品・サービス」を提供します。
(事業の方向性)
「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を3つの注力分野と位置づけ、取り組んでいきます。
また、これらの注力3分野を支える高機能製品の提供や、グリーン化に向けた様々な取組みを展開します。
(経営基盤と目標)
ビジョンの実現に向けて、「的確・迅速・柔軟」に変化に対応できる強い組織づくりを進めるため、3つのグ
ループ共有資本(人的資本・知的資本・財務資本)の充実を図るとともに、3つの推進力(研究開発・サプライ
チェーン・モノづくり)の強化に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指します。
また、2023年度から3カ年毎に、中期計画として具体的な事業計画を策定いたします。
当社グループは、「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」づくりにこれからも技術で挑戦し続けます。
<当社Webサイト 特集ページ>
https://sumitomoelectric.com/jp/company/segvision2030
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