課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項に記載した将来や想定に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針及び経営環境

私たちを取り巻く世界や日々の暮らしは変化を続けております。しかし、より豊かで快適な住まいで暮らしたいという人びとの願いは、いつの時代も変わりません。

「LIXIL’s Purpose」(存在意義)は、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」にあります。この存在意義こそが、当社グループが製品やサービスの提供を通じて人びとの住まいと暮らしを支え、持続的な成長を通じて社会に貢献するための指針となっております。

また、当社グループで働く従業員は強い目的意識を持ち、日々の業務の中で「LIXIL Behaviors」(3つの行動)を実践することで、存在意義の実現に取り組んでおり、当社グループの価値創造の原動力となっております。

 

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上記の「LIXIL’s Purpose」のもと、当社グループは、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水回り製品と窓、玄関ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しております。また、ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通して、世界をリードする技術やイノベーションで、人びとのより良い暮らしに貢献しております。世界150カ国以上で事業を展開する当社グループは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えております。

 

当社は、起業家精神にあふれ、高い競争力を持ち、持続的な成長を通じて社会に貢献できる組織の構築に向けて、様々な変革を進めてまいりました。当社の完全子会社であった株式会社LIXILとの合併を2020年12月に完了し、持株会社体制からより迅速な意思決定を可能にする事業会社体制へと移行して、新生LIXILとして新しいスタートを切りました。この合併は、このような組織変革における大きな節目であり、機動的な組織の構築、意思決定の迅速化やガバナンスの強化を通じてさらなる企業価値の向上につながるものと考えております。

 

 

この2年間、私たちは、2011年の5社統合によるスタート以来10数年間で最も大きな事業環境の変化に直面し、適応力と弾力性を兼ね備えた組織への転換を迫られました。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、私たちのライフスタイルは大きく変わり、国内外の事業環境においても様々な変化が加速しました。各国・各都市におけるロックダウンにより、原材料から最先端の半導体部品に至るまで厳しい調達難に直面し、価格が高騰しました。また、サプライチェーンの寸断や物流のひっ迫を受け、生産の一部を日本に移管して部品の安定供給を確保いたしましたが、その反面、製造コストの増加につながりました。

さらに、コロナ禍において自宅で過ごす時間が増えたことで、消費者の購買行動のデジタル化が進みました。在宅勤務への移行が加速する中で、より柔軟な働き方を求める人が増えております。優秀な人材の獲得競争が激化する中、企業には、従業員が潜在能力を十分に発揮でき、キャリアを伸ばし、働き甲斐を実現できる環境を提供することが求められております。

加えて、年明けには現代において起こり得るとは誰もが予測し得なかった武力紛争が欧州で勃発し、混乱はさらに加速いたしました。これにより、さらなる原材料不足、資材・エネルギー価格の急騰、及び世界の輸送網の混乱を招きました。

 

過去40年で最も急速な物価上昇が発生している海外市場もあり、インフレ圧力に拍車がかかっております。これに対し、各国の中央銀行は政策金利の引き上げに踏み切りましたが、住宅や関連製品の需要への影響はいまだ計り知れない部分があります。私たちは今、大きなパラダイムシフトを経験しております。これまで長らく通用してきたビジネスの前提条件は、もはや成立しなくなってきております。

 

このような変化に対応するためには、価格の適正化をより柔軟に行うなどの短期的な施策と、グローバル人材戦略を推進するための長期的な施策の両方が必要です。これらの施策を通じて、顧客志向を徹底し、外部環境に対する組織の弾力性を高めることができると考えております。

原材料、生産、物流のコスト増に対しては、コスト低減を図るため、引き続き代替素材への転換などを進めるとともに、販売価格への転嫁を推進いたします。欧米などの海外市場では当たり前のことですが、日本ではこれまで、デフレ経済を背景に価格上昇への抵抗が強く、価格転嫁が思うように進みませんでした。しかしながら、多業種にわたる企業が卸・小売の双方において値上げを実施する中、消費者からも一定の理解が得られるようになってまいりました。

一方で、供給網の寸断に対応するため、サプライチェーンの冗長化を進めるとともに、ベトナムや中国で生産していた部品の一部を日本で代替生産することで納期を担保しております。また、原材料価格が高騰する中、一部の製品においては、銅から安価な亜鉛や樹脂製部品に代替していくなどの施策も進めております。

また、リスク低減のため、部品の共通化も進めてまいりました。さらに、コロナ禍の先行きが不透明な中で消費者の購買行動は変化し、馴染みがあり、安心感を与える製品が求められるようになりました。これにより、安定供給の確約ができる一定の製品への絞り込みが可能となりました。

事業へのインパクトはまだ限定的ですが、気候変動の影響も重要な問題です。既に生産施設に影響を及ぼしかねない異常気象が増加しております。気候関連リスクを低減し、レジリエンスを高めるために、固定費の削減やプラットフォーム化の拡充による柔軟な生産体制の構築を進めております。

気候変動の問題に根本から立ち向かうためには、私たちの職場や生活環境を抜本的に変える必要がありますが、当社グループはその変革を牽引してまいります。日本では、既存住宅の90%以上にあたるおよそ6,200万戸が現行の省エネ基準を満たしていないと言われておりますが、当社グループの高断熱の窓やドア、壁・天井・床など家全体の断熱性を高めるリフォーム工法により、こうした住宅のエネルギー効率を向上させることができます。それが冷暖房の節約につながり、日本の脱炭素化に大きく貢献することが可能となります。

また、当社グループでは、アルミサッシや樹脂サッシにおけるリサイクル素材の利用、廃プラスチックや廃木材を利用した循環型素材の開発・製品化を進めております。これらの事業活動を通じて、資源の循環利用を促進することで、環境負荷の低減と温室効果ガスの削減に貢献してまいります。

日本における高品質な住宅に対する需要、従来型の建替えにかかるコスト増は、リフォーム需要の拡大につながると考えております。リフォーム用商材を拡充し、リフォームのメリットを示すことで、新築市場が縮小する傾向にある日本においても、持続的な成長を実現することができます。

さらに、社内においても、本社の縮小と移転、生産体制の再構築、人員配置の最適化など、様々な取り組みを行っております。これらの施策により、無駄を省き、生産性と収益性を高めてまいります。

 

 

加えて、当社グループでは、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを通じて社会に貢献することを目指し、当社グループにて培った技術や知見を活かして、グローバルな社会課題への対応を継続的に進めてまいりました。具体的には、事業を展開する地域で特に緊急性が高く、当社グループの専門性や事業を通じて貢献できる社会課題を特定し、その解決に向けて、コーポレート・レスポンシビリティ(CR)戦略に基づく重点的な施策を推進しております。事業活動を通じて社会に貢献することは、企業としての使命であり、社会全体に利益をもたらすだけでなく、当社グループの長期的な持続可能性を高める上でも非常に重要であると考えております。

当社グループは、CR戦略の3つの優先取り組み分野として「グローバルな衛生課題の解決」、「水の保全と環境保護」、「多様性の尊重」を掲げており、それに加えて「強固なガバナンス基盤の構築」を通じて、企業としての存在意義の体現を目指しております。

 

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[ 重要課題の特定について ]

当社グループは、持続可能な社会を実現するため、当社及びステークホルダーの皆さま、並びに社会にとって重要性が高く、持続可能な成長や企業価値の向上に向けて取り組むべき課題を「重要課題」として特定いたしました。これらの重要課題に対応する目標の進捗状況を確認しながら、事業活動を通じて解決に取り組んでおります。

 

重要課題は、社会の現状や課題とともに、LIXIL’s Purpose(存在意義)や価値創造プロセス、中期計画、コーポレート・レスポンシビリティ(CR)戦略などの事業戦略、ステークホルダーのニーズや期待などを踏まえ、リスク及び機会の両面から課題の抽出や評価を行い、特定されております。また、当社グループ及び社会を取り巻く環境の変化に合わせ、重要課題の見直しを行っております。起業家精神にあふれ、持続的な成長を通じて社会に貢献できる組織の構築を目指し、中期計画の4つの柱に基づいた主要施策を着実に推進しております。

 

前連結会計年度においては、所定のプロセスに基づき、2016年3月期に特定した重要課題の見直しを行い、20の重要課題を特定いたしました。各重要課題については、ESG評価機関における重みづけを踏まえたリスクの度合いや、当社及びステークホルダー、社会への影響度の観点から、下記の優先度を設定しております。

 

① 「優先」

当社が強みを活かして主体的に取り組むことにより、課題解決に大きく貢献し、ステークホルダー及び社会に大きな影響を与えうる領域。ステークホルダーのニーズに基づき、取り組みを強化すべき領域。

② 「高」

ステークホルダーのニーズへの対応、及び事業継続上の適正なリスク管理の観点から、取り組むべき領域。

③ 「中」

事業活動の基本として、ステークホルダーからも要請され、適切に取り組むべき領域。

 

「優先」に位置付けられた重要課題は、CR戦略の3つの優先取り組み分野に特に深く関連しており、これらの重要課題を基軸に、CR活動をさらに加速しながら取り組みを進めてまいります。

 

 

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[ 気候変動への取り組みとTCFD提言への対応について ]

「気候変動の緩和と適応」への対応については、当社グループは、2019年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明いたしました。TCFD提言を踏まえ、気候変動問題が当社グループに及ぼすリスクと機会を特定・評価し、執行役会及び取締役会へ報告・承認を経て、環境戦略に反映させる取り組みを進めております。

 

<ガバナンス>

当社グループでは、執行役会から任命を受けた担当役員が委員長を務める環境戦略委員会を設置しております。環境戦略委員会は、四半期に1回以上開催し、環境ガバナンスに関わる規程や方針の制定、気候変動から生じるリスクや機会を含む環境課題に対する施策の審議と決定、当社グループ全体の環境目標管理とモニタリングなど、環境戦略の構築と実行を実施しております。環境戦略委員会で協議・決議された内容は、CR委員会を通じて四半期ごとに執行役会に報告されております。執行役会は、環境課題を含めた重要課題に関する目標や実行計画について協議・承認し、取締役会は、それらに対する進捗状況を半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っております。

 

<戦略>

当社グループでは、気候変動が短期・中期・長期の視点で自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定するためにシナリオ分析を実施しております。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理的リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)の2つの世界観を想定しております。この2つのシナリオにおいて気候変動がもたらすリスク及び機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、当社グループの環境戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来リスクの低減につなげ、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めております。

 

主要な気候関連のリスクと機会

リスク

移行

① カーボンプライシング導入による操業コストの増加

② 市場の変化による原材料・部材調達コストの増加

物理

③ 台風や洪水等による自社工場の被災による売上機会の喪失

機会

④ 日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加

⑤ 低炭素材料の利用や資源の環境性に配慮した商材などの需要増加

⑥ 災害対策・災害復興商材などの需要増加

 

■主要な気候関連のリスクと機会への対応状況

①  カーボンプライシング導入による操業コストの増加

事業所(特に製造拠点)のCO2排出量を削減するために、生産効率性の向上、不良率の良化、燃焼効率の改善、トップランナー機器への更新等を進めております。また、太陽光発電システムの設置や経済合理性のある再生可能エネルギーの調達を進めております。今後は、カーボンプライシング価格やグリーン電力証書価格等の動向を踏まえた再生可能エネルギー調達手段の最適化、中長期での戦略的な省エネルギー投資を後押しするためのより実効性のあるインターナルカーボンプライシング制度の導入検証、長期的な脱炭素技術の開発・導入を促進していくための製造技術や製品材料の開発を進めてまいります。

 

②  市場の変化による原材料・部材調達コストの増加

原材料・部材の調達によるCO2排出量を削減するために、市中アルミ資材をはじめとした低炭素原材料・部材への切り替え、製品の薄肉化、部品点数削減などを進めております。今後は、サプライヤーとの協働を通じた製品の安定供給と責任ある調達に加えて、CO2削減に向けた連携を強化してまいります。

 

 

③  台風や洪水等による自社工場の被災による売上機会の喪失

大規模自然災害を想定した際のリスクとして、当社の本社、事業所、工場含む全域における被害想定をもとに、各工場における事業継続計画(BCP)活動を実施し、災害リスクの最小化を進めております。また、製品供給における対策として調達先の適正化、適切な在庫確保、バックアップ生産体制の構築などを進めております。他にも当社及び国内の連結子会社が所有・使用・管理する固定資産が、火災や風水災等の不測かつ突発的な事故に遭った際に補償する保険プログラムに加入しております。

 

④  日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加

世界の最終エネルギー消費のうち、約3割が建築に起因し、日本での一般的な住宅における消費エネルギーのうち約6割を冷暖房と給湯が占めています。また、日本の住宅の高性能化は欧州などに比べて遅れており、日本の既存住宅の約9割は現行の省エネ基準を満たしておらず、断熱効果の高い「窓」の果たす役割は非常に大きく、地球温暖化対策に向けたドライバーになり得ます。

当社グループは、高い断熱性能や節湯・節水性能、創エネ機能などCO2排出量の削減に貢献する製品・サービスを提供する企業として、住宅・建築物のCO2排出削減に果たす責任は大きいものと認識しております。特に、国内の新築市場は縮小傾向のため、既築住宅の高性能化リフォーム推進が重要な課題となります。住宅1棟をまるごと断熱改修する高性能住宅工法、開口部を簡単に断熱改修できるリフォーム窓・ドア、節湯・節水に貢献する節湯水栓・シャワーや節水型トイレなどの水まわり製品を通じてリフォーム活性化に貢献してまいります。また、新築住宅向けの製品についても、窓のリーディングカンパニーとして当連結会計年度にすべての窓シリーズ製品の刷新を行い、2026年3月期までに高性能窓比率100%を目指しております。

 

⑤  低炭素材料の利用や資源の環境性に配慮した商材などの需要増加

調達・製造時にCO2を多く排出する原材料・部品の価格高騰、石油由来のプラスチックに関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者嗜好の変化等の市場変化に対応していくために、製品の原材料として可能な限りリサイクル素材を使用し、長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を進めております。

樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来品よりも約3倍に拡大した樹脂窓、再生樹脂及び再生木粉を利用した人工木デッキ、Cradle to Cradle認証を受けたGROHEブランドの水栓、スパウト(吐水口部分)だけを後から浄水機能付きスパウトに取り替えられるアップグレード可能なキッチン用水栓など、消費者の選択肢を広げサステナブルな暮らしを提案する製品・サービスの開発と提供を進めてまいります。

 

⑥  災害対策・災害復興商材などの需要増加

台風や豪雨といった自然災害被害の増加や猛暑による熱中症の増加に伴い、今の窓に簡単に取り付け可能で台風時の強い風による飛来物から窓を守るシャッター・雨戸、強い日差しを窓の外側でカットする「スタイルシェード」、断水時には洗浄水量を5リットルから1リットルに切り替えられるパブリック向け衛生陶器「レジリエンストイレ」等の気候変動への適応に資する製品の開発と提供を進めてまいります。

また、熱中症やヒートショックを引き起こす一因である室内温度と冷暖房の効率の重要性についてステークホルダーとともに考える多様な活動「THINK HEAT」や、災害から家族を守る家をつくるための活動「減災プロジェクト」を推進しております。

 

<リスク管理>

当社グループは、気候関連のリスク及び機会については環境戦略委員会の責任のもとでTCFDの提言に基づいたシナリオ分析を行い、重要なリスク及び機会を特定し、影響の度合いを評価しております。気候関連の移行リスク及び機会を事業等のリスクにおける戦略リスク、物理リスクをオペレーショナルリスクと紐づけることで、組織全体の総合的リスク管理との整合を図っております。

リスク管理においては、それぞれのリスクの重要性を判断した上で、あらゆる階層の組織で対応策を立案、実行し、進捗状況をモニターすることで、継続的に改善する活動を展開しております。特に、気候関連の移行リスク及び機会への対応については、環境戦略に反映させ、環境目標・実行計画に落とし込み、環境パフォーマンス向上やリスク管理に関わる施策を推進・展開し、その進捗の監視と振り返りを行うプロセス構築を進めております。

 

 

<指標と目標>

当社グループは、環境ビジョン「Zero Carbon and Circular Living(CO2ゼロと循環型の暮らし)」を掲げ、2050年までに事業プロセスと製品・サービスによるCO2排出量を実質ゼロにすることを目指しております。環境ビジョンに向けた中間目標である2030年までのCO2削減目標を従来のScience Based Targets (SBT)が示す2℃水準から1.5℃水準へ上方修正し、2031年3月期までにScope1,2によるCO2排出量を2019年3月期比で50%削減、Scope3によるCO2排出量を同期比で30%削減を目標としており、SBT認定を更新する計画であります。

一方、脱炭素社会の実現には住宅の高性能化・省エネ化が喫緊の課題であり事業機会となります。住宅・建築物で使用されるエネルギーや水の削減に貢献する環境配慮製品を拡充し、持続的な成長を達成していくため、気候関連の機会を評価する指標として、住宅・建築物で使用されるエネルギーや水の削減に貢献する環境配慮製品の販売構成比(高性能窓、節湯水栓、節水型トイレなど)を日本事業から優先的に設定いたしました。

 

気候関連のリスク及び機会を評価する指標

目標

リスクへの

対応

Scope1,2によるCO2排出量

2031年3月期までに50%削減(2019年3月期比)

Scope3によるCO2排出量(注)

2031年3月期までに30%削減(2019年3月期比)

Scope1~3によるCO2排出量

2051年3月期までに実質ゼロ

機会への

対応

戸建住宅向け高性能窓の販売構成比(日本)

2026年3月期までに100%

節湯水栓・節水型トイレの販売構成比(日本)

2031年3月期までに100%

(注)製品使用において間接的に消費される給湯エネルギーなどに由来した排出量は除いております。

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、起業家精神にあふれ、持続的な成長を通じて社会に貢献できる組織の構築を目指し、中期計画の4つの柱に基づいた主要施策を着実に推進しております。

 

[ 中期計画の4つの柱 ]

1.持続的成長に向けた組織を作る

当社グループは、変化に俊敏に対応できる環境を構築するため、組織文化の変革を進めております。従業員が起業家精神を発揮し、活発な意見交換や実験的な取り組みを行える組織風土を醸成していきます。また、従業員が互いを尊重し、刺激を受け合い、熱意を持って取り組むことができる環境を作るとともに、社会的に意義のある大きな目標の達成を通じて従業員が一つになることができる企業を目指してまいります。

 

2.魅力ある差別化された製品の開発

当社グループは、多様なライフスタイル、ニーズや嗜好に対応する強いブランドを有し、これらのブランドに対する投資とその真髄となるDNAの強化を進めることで、利益ある成長につなげていきます。また、変化する消費者ニーズや嗜好に対応できるよう、イノベーション、デザイン、品質の向上をさらに追求していきます。さらに、製品開発のための強い知的財産の基盤を持ち、短いサイクルで差別化された製品を市場投入できるよう「アセットライト」のビジネスモデルへ移行するとともに、国内の組織構造の見直しを行い、製品開発、生産、販売の機能を一組織に統合することで、製品開発サイクルのスピード向上を図ってまいります。

 

3.競争力あるコストの実現

当社グループは、バランスシートと利益率の改善に向け、新技術やインフラの活用により、効率的で柔軟なサプライチェーン管理体制を構築し、コスト管理を向上させます。さらに、間接部門の生産性を高め、必要とする部門に人員の再配置を行うなどの施策推進を通じて、コスト効率の向上につなげてまいります。

 

4.エンドユーザー・インフルエンサーへのマーケティング

当社グループは、エンドユーザー及び工事業者、デザイナー、工務店等のインフルエンサーとの接点の拡充を図ります。また、新しいサービスの提供及び推進を通じて、リフォームに対するエンドユーザーの不安を取り除き、日本における新たなリフォーム需要を創出してまいります。

 

 

また、当社グループでは、企業としての存在意義(パーパス)を果たすため、高い競争力を持ち、持続的な成長ができる、より機動的で起業家精神にあふれた企業となるための取り組みを続けております。この達成に向けて、ガバナンス体制の強化や成長を加速させ、財務体質を強化するための事業ポートフォリオの最適化、基幹事業における生産性と効率性を高め、シナジーを創出するための積極的な取り組みなど、事業の変革を推進しております。これらの取り組みを通じて、中期的な指標としては事業利益率を7.5%まで高めること、及びネット有利子負債EBITDA倍率を3.5倍以下まで改善することを目標としております。

 

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こうした経営の基本的方向性のもと、まずは財務体質の改善と組織の簡素化に取り組むことで成長基盤を整備し、利益率の向上に注力してまいりました。当社グループでは、中長期的に目指す経営の方向性を「LIXIL Playbook」としてまとめ、全社で共有しております。LIXIL Playbookは、当社グループの持続的成長に向けて、以下の4つの優先課題に加え、従業員がその能力を存分に発揮できる環境の整備を、戦略実行を支える基盤として明確化しております。

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[ 「LIXIL Playbook」における4つの優先課題と進捗状況 ]

① 組織の簡素化と基幹事業への集中

当社グループが将来にわたって成長を続けていくには、市場ニーズに迅速に対応できる、無駄のない効率的な組織の構築が不可欠であると考えております。そのためには、基幹事業以外の事業からの撤退や組織の簡素化を進めるとともに、成長機会を捉えるための基幹事業の最適化に取り組む必要があります。

当連結会計年度においては、組織の簡素化及び基幹事業への集中に向けての施策も概ね完了し、業績の大きな変動要因となるリスクを大幅に低減することができております。加えて、過年度から継続してバランスシートの強化、キャッシュ・フローの改善や有利子負債の削減、運転資本効率の改善等により財務基盤の強化を図ることができ、基幹事業において収益性の高い成長分野にさらなる投資を行うことが可能となったと考えております。

 

② 日本事業の収益性改善

日本は当社グループにとって最大の市場であり、グローバルに展開するイノベーションを生み出すという重要な役割を担っております。一方で、国内では人口減少に伴い、新築住宅市場も縮小傾向にあります。そのような中、国内事業は高コスト体質と従来型の人事システムという課題を抱え、市場の変化に左右されやすい事業構造となっておりました。厳しい事業環境においても持続的な発展をしていくためには、国内事業の生産性と収益性を高め、キャッシュジェネレーターへと転換させていく必要があります。

当連結会計年度においては、国内のハウジングテクノロジー事業において生産ラインのプラットフォーム化が完了し、一つの生産ラインで複数の異なる製品を生産することが可能となり、生産性の向上を実現いたしました。また、国内のウォーターテクノロジー事業においては新たな価値創造及びエンドユーザーへのアプローチを強化することで、リフォーム需要をより一層喚起し獲得するための事業プロセスの整備を進めております。一方で、人事施策面においては、引き続き国内事業の活性化に向けた包括的な人事プログラム「変わらないと、LIXIL」を推進し、実力主義に基づく組織文化への転換を進めるとともに、顧客志向の徹底、あらゆる世代のキャリア開発支援、及び従業員のエンゲージメント強化を目的とした施策を実施しております。また、早期退職優遇制度(キャリアオプション制度)を通じて、多くの日本企業が直面する従業員の年齢構成の課題にも対応しております。

 

③ ウォーターテクノロジー事業における海外事業の成長促進

当社グループは、グローバルシェアの拡大を目指し、水回り事業を中心に各国、各地域で収益性の高いカテゴリへの参入に注力するとともに、グローバルな資産とブランドポートフォリオを活かして地域ごとの戦略を強化しております。また、当社グループは各地域の市場を牽引するパワーブランドで独自のポジションを築いており、ブランドの定義を明確化・差別化することによりグローバル市場を舞台にその強みや信頼性を最大限に活用し、さらなる成長を目指しております。

当連結会計年度においては、製品の安定供給のためのサプライチェーンの強化、当社グループ内の卓越した技術を活用した新製品開発、多様化・差別化された販売チャネルを活用した拡販等の諸施策を通じて、海外事業の成長を実現すべく、強固な基盤を確立し、新規市場の開拓、シナジーの向上や製品ラインナップの拡充に注力しております。

 

④ イノベーションによる長期的な成長基盤の確立

当社グループは、新規事業に時間とリソースを投入することで長期的に持続可能な成長を達成できるものと考えており、この取り組みを通じて将来に向けた成長につながる機会を生み出しております。よって、保有するリソースを効率的かつ機動的に投入していくことにより、常に変化するグローバル市場への対応に取り組んでいくとともに、将来性のあるイノベーションと現在有効なイノベーションの両方を創出することに注力しております。

当連結会計年度においては、国内の「LIXILオンラインショールーム」、及び欧州の「GROHE X」の展開に続き、国内で最新情報や家づくりに役立つ情報を届ける場として、動画配信サービス「LIXIL-X」をスタートさせました。これらにより、国内外でデジタル技術を活用した顧客・ブランド体験の向上とユーザー接点の強化を加速させ、業界全体のデジタルシフトを牽引することができるとともに、顧客志向の徹底によりエンドユーザーの抱える課題やニーズに沿った製品開発と市場投入が可能となったと考えております。

 

従業員をはじめとするステークホルダーからの支援と協力のもとで、当社グループは「ブランドの集合体」から「将来の課題を乗り越えることができる目標志向型の組織」へと変革してまいりました。この数年間、私たちが策定し、ともに実行してきた戦略は、感染症や戦争が引き起こす世界経済への深刻な影響に対して、既にその価値を証明しております。また、気候変動、経済の不確実性、そして私たちの生活の根本的な変化といった長期的な課題に対しても同様に、当社グループは力強く立ち向かっていくことができると確信しております。

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