当社は、他社の追随を許すことのない究極のプレス技術を求めつづける企業として、「プレスを究めて、プレスを越える」を経営理念としております。
これは、常にその時代をリードするプレスの最先端技術を低コストかつ安定して生産できる量産技術の域まで高めながら(究めて)、さらに高い次元での機能・価値の創造にチャレンジし続けて新たなプレス製品を生み出す(越える)ということを意味しております。
このような経営理念のもと、当社は、市場ニーズを先取りした「技術開発型企業」、競争力No.1を維持する「コスト開発型企業」、自動車産業構造変化に対応した「グローバル戦略企業」を目指してまいります。
世界経済は、ワクチン接種による防疫効果などもあり、新型コロナウイルス感染症による影響は縮小傾向にあります。しかし、半導体供給不足や資源の高騰、更にはウクライナ情勢等の不安定要素により、引き続き不透明な状況が続くものと予想されます。当社グループの事業活動は、足元の半導体供給不足による得意先の減産影響リスク等あるものの、得意先からの受注は今後緩やかに回復するものと見込まれます。
一方、自動車業界は、電動化、自動運転、コネクテッドカー、シェアリング等による技術革新が進行しており、異業種との融合や系列部品メーカーの解体・再編が進展しております。その結果、当社を取り巻く環境はますます厳しさを増しております。
足元では、地域特性や嗜好に合わせた製品の多様化と新興国市場モデルの拡大による低価格化が進む一方で、グローバルレベルでの自動車メーカーの提携等の進展により、グローバルモデルや多極同時立上げモデルが増加してきております。
他方、環境規制の強まりを背景にEVシフトが鮮明になり、燃費向上や安全性・快適性へのニーズの高まりに対応するため、車体の軽量化と高強度化の両立や、電気自動車等に伴うパワートレイン革新への技術面での対応もこれまで以上に求められております。
また、IoTを核とした大幅な生産性の向上、デジタル解析・設計等の高度化、3Dプリンターやロボット進化等による新たな開発・生産アプローチ等の情報・デジタル技術革新が生産現場の変革へも波及してきており、それによる生産効率の向上が求められています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
このような環境下において、当社は、①車両開発の上流から参画し、設計・金型・設備・生産・納入・品質までを一貫対応する『総合力』、②顧客ニーズの的確な再現能力とプラスアルファの『付加価値提案力』、③全世界主要市場で、大型トランスファープレスとホットスタンプを中心とした生産・供給拠点体制を有する『タイムリーな製品供給能力』、④車体プレスで培ったプレス成形技術に加え、精密プレス・組立技術の融合に樹脂事業を加えた『総合提案力』といった強みを活かし、「グローバルNo.1企業を目指し、UPS活動の推進により収益力と競争力を強化する」ことを中期経営方針として掲げております。以下の3つを通じて取り組んでまいります。
1)プレス技術を軸とするコアドメイン戦略を維持(コア領域の深化)しつつ、新工法・新材料等プレス技術の応用領域を拡大していくことによる、新たな市場・製品開拓の強化(新たな領域への取組み)。
2)最良の顧客評価と収益力実現に向けた品質管理プロセスの強化とコスト競争力向上への取り組みを図ることで、品質向上・原価低減を軸とした競争力の実現。
3)事業のグローバル拡大に伴い、グローバルベース(10か国、24生産拠点体制)での一体運営・連携の強化。
上記の中期経営方針実現のために対処すべき経営の重要課題は以下の通りです。
①電動化への対応加速
a.新製品・新技術の開発
電動化等の進展により、更なる車体の軽量化と高強度化を実現するための技術開発が重要となってまいります。当社は「安全性」と「環境性能」の両立に貢献できるよう、超ハイテン材やホットスタンプ、アルミ化対応技術等の技術開発を推進しております。本業を通じた社会課題の解決を目指すことがユニプレスグループのCSR活動の軸であると考えており、ユニプレスの強みである高度なプレス技術を駆使して、これからも安全性と環境性能を兼ね備えた次世代のクルマづくりを支えていきます。
b.ビジネスの拡大
得意先のグローバルモデル、多極的同時立上げモデル開発による、プラットフォームの共通化対応や、電動化、自動運転等の技術革新への対応等から、グローバルベースでの事業領域の拡大が課題となっています。現在、当社グループの海外生産拠点は9ヶ国17拠点に展開しており、そのネットワークを最大限活用して、既存技術・既存製品の拡販にとどまらず、得意先の電動化戦略に対応した新たな市場・製品の開拓に向けて努力を継続してまいります。
②業界トップレベルの収益力実現
a.コスト競争力強化
グローバルでの安定供給能力の更なる向上、新興国市場モデルへの対応を図りつつ、高い収益力を実現するために、コスト競争力を強化することが大きな課題です。高いコスト競争力を身に着けるために、当社では、UPS活動の強化、15KPIの達成による効率的な工場の運営を推進しています。一方で、グローバルでの安定供給のためには、コスト競争力だけではなく、得意先から信頼される、品質の向上が鍵となることから、UPS活動を軸に、グローバルベースでの品質向上・強化に取り組んでいます。
b.工場のスマート化推進
新たな情報・デジタル技術革新による開発・生産現場の変革に対応するため、生産変動に柔軟に対応でき、安定した収益確保ができる工場を目指し、情報を活用したロスのミニマム化、生産性向上に向けた省人化・無人化を図る、工場のスマート化構想の実現を推進してまいります。
③サステナビリティ経営の推進
本業を通じた社会課題への取り組み
当社が、持続可能な企業として成長・発展するためには、日々の事業活動を通じて、社会的責任を果たし、企業価値を高めていく必要があるものと考えております。それを実現するために、当社の強みである高度なプレス技術を駆使して、これからも安全性と環境性能を兼ね備えた次世代のクルマ作りを支えていくとともに、ESGの取り組み推進による「SDGs等グローバル課題への対応強化」、ライフサイクルアセスメントの実行による「カーボンニュートラル時代への対応」等、サステナビリティの実現に向けた取り組みを行ってまいります。
昨今、企業には収益の確保と同様にSDGs等社会課題解決に向けた取り組みがますます求められております。当社では、8つのマテリアリティの特定と2030年度をターゲットとした中長期目標を策定し、活動を推進しております。
①8つのマテリアリティと中長期目標
当社は、当社グループが持続的な成長を遂げるとともに、SDGs等のグローバルな社会課題の解決を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目的とし、2030年度をターゲットとした中長期目標を策定しました。
中長期目標の策定にあたり、中長期的なマテリアリティを特定し、目標達成に向けた取り組みの大枠(達成手段)を策定、各部門の課題への落とし込みを行いました。今後も社会の状況、ステークホルダーの意見等を反映し必要に応じて項目の見直しを行ってまいります。
中長期目標達成に向けた取り組み
②気候変動への取り組みと気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応
上記8つのマテリアリティの中でも、特に「気候変動対策」は、自動車業界に属する当社にとって非常に重要な課題であります。
当社は2021年6月に、TCFDによる提言に賛同を表明しており、気候変動対策に積極的に取り組む企業・団体の緩やかなネットワークである気候変動イニシアティブ(JCI)に参加しております。また、日本自動車部品工業会の環境自主行動計画を参考として、温室効果ガス削減の目標値の設定等を行っております。
TCFD提言では、気候変動に関する情報開示について、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目を開示推奨項目としており、TCFDフレームワークに基づいた当社グループの気候変動関連情報は以下のとおりです。
a.ガバナンス
当社では気候変動関連に関する課題について、サステナビリティ委員会を設置し取り組んでおります。また、気候変動関連に関するリスクと機会の評価と対応については、専門的特性から、環境委員会を設置しております。サステナビリティを巡る課題への対応は、サステナビリティ委員会の委員長である社長執行役員がその責任を負っております。サステナビリティ委員会は、1年に8回程度開催され、委員会での審議結果を四半期に1回以上取締役会に報告します。
当社取締役会は、気候変動関連事項に対処するためにあらゆる施策に関して、サステナビリティ中長期目標に基づき、業務執行に対する指示、監督、モニタリングしております。取締役会における気候変動を含むサステナビリティ課題に対する指示、監督、モニタリングの責任は、取締役会議長が負っております。
<サステナビリティ推進体制>
b.戦略
当社は、脱炭素社会への移行に伴い不確実性の高い将来を見据えて、どのようなビジネス上の課題が顕在しうるか、2℃未満シナリオと4℃シナリオのそれぞれにおいてTCFDが提言するシナリオ分析を行いました。
シナリオ分析は、海外拠点を含むすべての事業を対象に、当社のカーボンニュートラル目標に合わせて2030年、2050年を分析期間として行っております。これらの分析には、直接操業だけでなく、原材料調達、輸送を含めたサプライチェーン全体及び顧客を含めております。
※参照した既存シナリオについて
(2℃未満シナリオ)
・「Sustainable Development Scenario(SDS)」(IEA、2020年)
・「Shared Socio-economic Pathways (SSP1-1.9, 1-2.6)」(IPCC、2014年)
(4℃シナリオ)
・「Stated Policy Scenario(STEPS)」(IEA、2020年)
・「Shared Socio-economic Pathways (SSP5-8.5)」(IPCC、2014年)
<リスクと機会>
※発現時期:カーボンニュートラル実現に向けたCO₂排出量削減目標の2030年度、2050年度を基準とし、
短期を2022年~2025年、中期を2026年~2030年、長期を2031年~2050年と設定。
※財務影響:営業利益ベース 大(100億円以上)、中(10億円~100億円程度)、小(10億円以下)
c.リスク管理
当社ではリスクマネジメント委員会を中心に、リスク・機会の洗い出しと評価、対応策の決定、リスク対策の実行と有効性評価、取締役会への報告をしております。
このリスク・機会の洗い出しと評価の過程では、気候変動に関連するリスクのみならず、ビジネスリスクや情報セキュリティ、コンプライアンスに関連するリスクも評価しております。
d.指標と目標
当社グループは、2050年度に事業活動で排出するCO₂排出量を実質ゼロにすることを目指し、徹底した省エネ活動や再エネの積極的な利活用を推進しております。
また2050年チャレンジとしてサプライヤーとともにCO₂排出量実質ゼロに取り組みます。
<CO₂排出量実績>
※1 Scope1,2 バウンダリー :ユニプレス及び連結子会社
※2 Scope3 カテゴリ1,2 :ユニプレス及び連結子会社
カテゴリ4,6,7:ユニプレス、ユニプレス技術研究所
カテゴリ5 :ユニプレス、ユニプレス技術研究所、ユニプレス九州
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