文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは「伸びやかで豊かな企業人を育む環境づくりを目指し、オリジナリティ溢れる技術をベースに製品を開発し、顧客の信頼を得るとともに、社会の発展に貢献する。」という企業理念のもと、「常にユーザーの最新のニーズをキャッチし、最適設計のファスナーとツールを提供することにより、日本で最大の総合ファスニングメーカーを目指す。」ことを企業目標に掲げ、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
売上高、営業利益、経常利益及び当期純利益を、目標の達成状況を判断するための指標としております。
(3)経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長引き度重なる緊急事態宣言の発令等経済活動に制限が加えられたものの、ワクチン接種の普及や追加の経済政策により総じて持ち直しの動きが続きました。当社グループの業績に関係の深い建設・住宅業界におきましても、新設住宅着工戸数が増加に転じるなど回復の動きが続きましたが、原材料の価格高騰や部材の供給不足などサプライチェーンの混乱が続き、また、ロシアのウクライナ侵攻による金融市場の混乱や原油価格の高騰など、業界を取り巻く環境は依然として厳しい状況が継続しております。
このような経営環境のもと、当社グループは早期に赤字から脱却することを事業上・財務上の最優先事項とし、事業提携契約を締結しているアドバンテッジアドバイザーズ株式会社の支援のもと2020年2月に経営改革プランを策定し、これまでの住宅市場向け偏重から一般建築市場向けも含めた建築・土木市場全体に成長機会を求めるべく事業の再構築に取り組んでまいりました。赤字が続いた中国事業からの撤退や低採算品の商権返上ならびに徹底したコスト削減を進めてきた結果、この2年間で売上高は減少したものの損益分岐点は大きく下がり2021年12月期は4期ぶりに営業・経常・当期純利益の各段階で黒字を計上することができました。経営改革プランにおいて、2020年度を止血期、2021年度を地盤固め期、2022年度を飛躍期と位置づけ諸課題に取り組んでまいりましたが、2020年度ならびに2021年度は概ね経営改革プランに沿った成果を達成できたものと認識しております。
このような状況から、前連結会計年度まで存在しておりました継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は解消したと判断しております。
今後の事業環境につきましては、ワクチンの追加接種に伴う経済活動の正常化が期待されるものの、新たな変異株の出現による感染の長期化や、ウクライナにおける戦闘の拡大・長期化、世界的な物価上昇、金融引き締め局面への転換など世界経済を揺るがす要因は枚挙にいとまがありません。当社グループの業績に関係の深い住宅市場においては少子高齢化や人口減少の進行により中長期的には着工戸数の漸減傾向が続くことが見込まれておりますが、他方、老朽化したインフラ等の更新に係る建築・土木需要は底堅く推移することが予想されます。
当社グループといたしましては、このような状況を十分認識し、この2年間に達成してきた成果を土台に、2022年度を飛躍期と位置づけた経営改革プランに沿って各施策を実施してまいります。具体的には営業人員の増強や新規顧客の開拓、マーケティングチャネルの整備等営業体制の強化を進めてまいります。また、2021年度より取り組んでまいりました生産体制の再編成等による生産合理化をさらに進め原価低減に努めるとともに、新型ガスツールや新型アンカーの拡販を新たな用途開発の提案とともに進めるなど、課題解決型の高付加価値企業を目指してまいります。
なお、東京証券取引所の新市場移行に伴い、当社は2022年4月4日にスタンダード市場に上場いたします。スタンダード市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額について基準を充たしておりませんが、2021年9月10日に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を提出し当面問題なく上場を維持できます。早期に基準を達成できるよう業績向上に取り組んでまいります。
(4)経営戦略
上記の経営環境と課題に対する認識のもと、当社グループを取り巻く環境は、依然として厳しい状況が続くものと予想されますが、経営上の目標達成及び課題解決に向けて2020年2月に策定した経営改革プランに則った施策を推進しております。
経営改革プラン(2020年~2022年)の進捗状況は下記のとおりです。
1.止血期(2020年度)
① 中国事業からの撤退
中国生産子会社である蘇州強力五金有限公司は、1994年10月から日本のプレハブ住宅向けを中心にねじ・金物等のファスナーを生産してまいりましたが、中国現地における人件費の高騰や環境規制の強化等から2012年度より営業赤字が続いていたため、2019年12月に事業撤退する方針を決定し撤退に向けた作業を進めました。
② 経費削減
中国事業からの撤退や低採算品の商権返上に加えコロナ感染症の拡大による住宅・建築市場の低迷を受け、2020年度の売上高は2019年度比1,784百万円(△25.1%)減少の5,309百万円にとどまりました。想定以上の売上減少に対応すべく本社事務所の移転による賃借料の削減や人員のスリム化、外注・出荷費用の削減、雇用調整助成金の活用による一時帰休の実施等、徹底的な経費削減に努めました。その結果、2020年度の原価率は77.4%と2019年度に比べ1.7ポイント改善し、販管費も2019年度比412百万円(△23.5%)減少しました。こうした経費削減等により、2020年10~12月期の損益分岐点売上高は同年1~3月期に比べ20%強切り下がり、2021年度以降の反転攻勢に向けたスリム化を進めました。
③ 資産の圧縮
保有していた賃貸住宅を2020年3月に売却(売却額97百万円)するとともに、保有株式を売却(6銘柄/売却額149百万円)し、資産の圧縮・現金化を行いました。
2.地盤固め期(2021年度)
① 中国事業からの撤退
2021年12月に中国連結子会社であった蘇州強力五金有限公司の出資持分の全てを譲渡いたしました。これにより2012年度より営業赤字が続いていた中国事業からの撤退が完了し、また、本譲渡により当連結会計年度において関係会社出資金売却益2,046百万円を計上いたしました。
② 収益改善への施策
中国事業からの撤退及び低採算品の商権返上並びに生産の合理化等の事業再構築を進めるとともに2020年度から徹底した経費削減に努めてきた効果もあり、2021年度の原価率は74.7%と2020年度に比べ2.7ポイント改善し、販管費も2020年度比90百万円(△6.7%)減少いたしました。その結果、前連結会計年度までの3期連続赤字から脱却し、黒字化を達成いたしました。
③ 財務体質の強化
黒字化達成と蘇州強力五金有限公司の出資持分の全部譲渡等により、現預金及び利益剰余金が増加し、自己資本比率は前連結会計年度末の19.0%から40.3%に改善いたしました。また、有利子負債は前連結会計年度末に比べ878百万円(△22.9%)削減いたしました。
3.飛躍期(2022年度)に向けた対応
経営改革プランでは、これまで主力事業として取り組んできた鉄骨住宅向けファスニング製品の供給を基幹事業としつつ、今後インフラ更新等で需要が底堅く推移すると見込まれる一般建築市場向けを成長事業と位置づけ、特にこれまで手薄であった首都圏を重点市場としました。
経営改革プラン3年目の飛躍期と位置づけた2022年度においては、以下に掲げる施策に取り組み、課題解決型の高付加価値企業を目指してまいります。
① 新商品・新用途の開発
建築用締結工具(ツール)の分野におきましては、施工現場において省人化・省力化の工具として市場ニーズが高いガス式びょう打機を配管工事仕様に改良した商品の発売を予定しており、既存市場でのシェア拡大を図ってまいります。また、新用途としてデッキプレートの固定法を新型デッキプレートメーカーと共同開発し、販売拡大に向けて着実に進めてまいります。
ファスニング製品の分野におきましては、施工現場での溶接熟練工不足や火災予防策に応えるべく商品化した鋼材用新型アンカー「ブルームスタッド」を小型化した商品を新たにラインアップします。また、新用途に取り組んでおりましたねじ固定式アンカーのロングサイズ版は試験施工の結果、好評を得ることができましたので全国展開に向けた活動に取り組んでまいります。
② 首都圏強化
2020年に茨城県の下館工場敷地内に建設した筑西テクニカルセンターや、2021年1月に開設したさいたま営業所を有機的に活用するとともに、営業人員を増加し、首都圏の販路拡大及び新規顧客獲得を進めてまいります。
③ マーケティングチャネルの整備
相互成長の見込める顧客と更に協力関係を深め、流通チャネルの最適化等に取り組んでまいります。また、既存のビジネススタイルと合わせて、より効果的なブランディング活動、ECビジネスの有効活用等のマーケティングチャネルの整備を推進してまいります。
④ 生産体制の再編成
生産効率化の観点から、一部の製品の生産を下館工場から豊岡工場へ移管を進めてまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症は2022年12月期末に向けて収束し、経済活動が正常化すると見込んでおりますが、新たな変異株の出現による感染の長期化やウクライナにおける戦闘の拡大・長期化による原材料価格の更なる高騰により、当社グループの業績に関係の深い建築市場におきましても大きな影響を受けることが予想され、計画の見直しが必要になる可能性があると認識しております。
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