課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは1933年に「加藤発條製作所」として創業し、自動車産業及び電機通信産業向けの精密金属ばねの生産からスタートしました。1969年には合成樹脂を素材としたファスナー類の開発及び製造にも事業拡大、1990年代には医療機器分野に進出し、産業・社会の発展に貢献してまいりました。

 当社グループは、「弾性を創造するパイオニア(Pioneer)」をコーポレート・アイデンティティとして、金属や樹脂をはじめあらゆる素材の「弾性(Elasticity)」を科学することにより、自動車産業や医療関連など広く産業・社会に貢献することを経営の基本方針としております。

 今後も当社のコア事業である自動車産業で培った高度な弾性技術を用いて、適切で戦略的な多角化を図りつつ、広く産業・社会に貢献してまいります。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループは、自動車産業向け部品供給を事業の中核とし、グローバルな展開を急速に進める同業界のニーズを先取りしつつ、多様かつ高度なご要請に積極的にお応えしていくことを中長期的な経営戦略として位置付けております。

 当社グループは、上記の中長期的な経営戦略を明確化するために3年先までの中期経営計画を毎年ローリング方式で策定しております。

〈中期経営計画 2022年度~2024年度〉

 当社グループの中期経営計画では、「弾性を創造するパイオニアとして、広く産業や社会に貢献する」をビジョンに掲げ、5つの基本方針に基づき、5つの経営戦略を立てております。

 経営指標としては2025年3月期までに連結売上高720億円、連結営業利益100億円、ROE8%以上、連結配当性向100%(2022~2024年度の3年間)の達成を目標としております。

 

<基本方針>

1.既存事業の変革

2.新規/次世代事業への挑戦

3.経営基盤強化

4.将来に向けた積極投資

5.ESG経営の推進

 

<経営戦略>

1.商品・顧客戦略

2.事業戦略

3.地域別戦略

4.成長投資戦略

5.経営資本戦略

 

(3) 経営環境

 当社の主要な取引先である自動車業界においては、CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)対応の加速、部品メーカー同士のコラボレーション、異業種の自動車業界への参入など、100年に一度の大変革期と言われております。世界経済は2022年度も引き続き新型コロナウイルスの影響及びロシアのウクライナ侵攻による世界情勢への影響が懸念され、当社を取り巻く環境でも、これらに加えて半導体供給課題等による自動車メーカー各社の減産、原材料の高騰と供給量不足、物流の混乱及び労務費上昇などから不透明感が継続しております。

 このような経営環境において、当社グループでは、既存事業の変革、新規及び次世代事業への挑戦、経営基盤強化、将来に向けた積極投資、ESG経営の推進を方針に掲げて取り組んでおります。今後も、DXやIoTなど新しい技術を積極的に導入し、高い生産性を追求するほか、総コスト削減の徹底による収益基盤の強化にも取り組んでまいります。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

 ①競争力の強化

 自動車メーカーのグローバル展開が進み、部品会社間の競争が国内外を問わず激化している中で、当社グループがサプライヤーとして成長、発展していくためには、お客様に満足いただけるトップクラスの品質、価格、納期及び新製品開発を含めた競争力の強化が不可欠と認識しております。

 品質面では、各事業部の品質保証機能を品質保証部に集約し、品質マネジメントシステムに沿った一元的な保証体制を構築しています。

 価格面では、開発から製造、販売までの一貫した合理化を積極的に推進することで、競争力確保を図ってまいります。また、今後の競争力強化の基盤となるインフラ整備にも積極的に取り組んでおり、日本国内では新真岡工場(栃木県)建設、横浜地区リニューアル計画を進めてまいります。

 

 ②事業戦略の強化

 当社は市場の変化に迅速に対応し、事業分野ごとに開発・製造・販売に至るまで一体運営を進めるために、SBU(戦略的ビジネスユニット)制を導入しております。精密ばね、工業用ファスナーから樹脂・金属を組み合わせたユニット部品へのシフトを進めながら、より付加価値の高い製品の比重をグローバルに高めてまいります。

 また、急速に変化する事業環境に対応するため、2022年2月にはCASE対応が進む欧州市場でのビジネスの拡大を狙い、ドイツに駐在員事務所を開設しました。さらに、2022年4月には2つの部署を新設いたしました。1つはCASE対応の中でも、特に電動化に対応する製品の受注拡大を加速させるための「e商品開発部」、もう1つは、既存の事業領域にとらわれず、医療機器事業に続く第3の柱となる新たな事業の発掘を目指した「MIRAI事業部」になります。いずれも当社グループの持続的な成長をけん引してまいります。

 

③ESG経営の推進

 当社は、気候変動への対応や人権尊重など、ESGに関する課題への対応が重要な経営課題の1つであると考えております。今後、さらにこれらの課題への対応を加速させるため、2021年12月にサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ方針を制定いたしました。ESGに関する取り組みについては、毎年CSRレポートにて報告しております。利益を追求するだけでなく、当社のステークホルダーの方々と協力し、持続可能な社会の実現に貢献できる企業を目指してまいります。

 

〈環境 Environment〉

 環境対応については、ISO14001:2015の認証を取得し、全てのお客様及び環境法規制の要請に応える体制を築いております。また、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)」による提言への賛同を表明し、TCFDに基づく情報を開示いたしました。今後も気候変動に関連する事業リスクやビジネス機会についての情報開示を拡充してまいります。TCFDの開示と併せて2050年カーボンニュートラルを目指したロードマップも公表しており、CO排出量削減や資源の有効活用など、脱炭素社会と循環型社会を目指した積極的な活動を今後も展開してまいります。

 

〈社会 Social〉

 当社グループは、従業員の個性や多様性を尊重し、安全で働き易く一人ひとりが能力を発揮できる職場環境づくりを目指しています。「ダイバーシティの推進」に向けた取り組みの一つとして、2021年1月に女性活躍推進法に基づく優良企業認定「えるぼし」最高位(3段階)を取得いたしました。また、2022年3月には、社員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む法人として、「健康経営優良法人2022」(大規模法人部門)に認定されました。当社は、引き続き誰もが働き易く活躍できる職場環境の整備を進めてまいります。

 また、事業活動において、安全かつ高品質な製品を提供することで社会への貢献を目指してまいります。

 

〈ガバナンス Governance〉

 当社グループは、中長期的な企業価値の向上を目指すため、コーポレート・ガバナンス体制の構築に努めております。2016年の監査等委員会設置会社への移行後、取締役への株式報酬制度の導入(2017年)、取締役の3分の1を独立社外取締役体制化(2018年)、指名・報酬諮問委員会の設置(2019年)、女性取締役就任(2020年)とガバナンス体制の強化を進めてまいりました。2021年にはプライム市場移行の要件に適合した、より高度なコーポレート・ガバナンスコードへの対応に取り組むなど、ガバナンス強化を順次推進してまいりました。今後も当社グループは株主、顧客、従業員、取引先など様々なステークホルダーとの関係において、透明性を確保した企業経営の基本的枠組みのあり方を発展させてまいります。

 

(ご参考)パイオラックスグループ サステナビリティ方針

 私たちパイオラックスグループは、「弾性を創造するパイオニアとして、広く産業や社会に貢献する」との基本理念を通じて、しなやかな発想のものづくりで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 1)開発型企業として、事業を通じて気候変動問題をはじめとする社会的な課題の解決に取り組みます。

 2)グローバル企業として、国際ルール、法令を遵守すると共に、公正且つ透明性の高い経営を実現します。

 3)従業員の個性や多様性を尊重し、安全に安心して働ける職場環境づくりを目指します。

 4)ステークホルダーとの関係を大切にし、責任ある対話を行い、信頼関係を構築します。

 5)経営トップは本方針の精神の実現に向け、実効性のあるガバナンス体制を構築し、グループ各社への周知徹底に努めます。

 

(1)サステナビリティ委員会の役割

 当社グループのサステナビリティ及び ESG経営に関する方針やマテリアリティの策定、目標設定と進捗状況のモニタリング、TCFDに基づくリスクと機会の特定などを実施いたします。

 本委員会における審議については、経営会議及び取締役会に報告いたします。

(2)委員会の構成

 本委員会は、代表取締役を委員長とし、委員は取締役を中心に構成いたします。

 

④医療機器事業の展開

 子会社の㈱パイオラックス メディカル デバイス(PMD)では、IVR(血管内治療)からスタートしましたが、消化器に使用する内視鏡治療、脳外科用の整形分野へと業容を拡大し、血管や管腔を利用し身体になるべく傷をつけずに治療する「低侵襲治療」に取り組んでおります。大学病院等との共同研究により、商品企画力・営業力の強化を図りつつ、高齢化社会のニーズを捉え、「人に優しい弾性材料」で作られた医療用具の開発・製造・販売を推進してまいります。

 

⑤資本政策の見直し

 当社グループでは、近年の当社株価の低迷の対策を検討してまいりました。株価低迷の要因が、ROICとWACCの差額である「EVAスプレッド」のマイナス状態が続いていることにあると認識し、それと共に資本効率性を上げていくことが当社にとって重要であるとの結論に達しました。EVAスプレッドのプラス化に向け、①株主還元策を強化し、資本効率を追求、②バランスシート経営の導入、③グループキャッシュマネジメントの徹底の3つに取り組んでまいります。具体的な資本政策としては、2023年3月期から2025年3月期までの3年間において、自己資本の積み増しの抑制、配当性向100%、機動的な自社株の購入と消却を掲げております。

 

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