業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当社グループを取り巻く医療・ヘルスケア業界においては、高齢化社会の進行とともに医療の担い手不足や地域偏在、診療科偏在が課題に挙げられてきました。日本の医療費は40兆円を超え2025年度には約66兆円を見込み、医療費の削減、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられている危機的な状況の改善など、持続可能な医療サービスを実現するための対策が求められてきました。

 2020年年明けから感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2021年12月時点で、世界の感染者数は2.8億人、日本においても感染者数は 170万人を超えました。7月から9月にかけて感染者数の爆発的な増加のあった第5波では、自宅療養者や宿泊療養者も過去最多となり医療提供体制に深刻な影響をもたらしました。10月以降、ワクチンの接種率は7割を超え、新規感染者数も減少し収束に向かう兆しが見え始めた矢先、新型コロナウイルスの新たな変異株の出現も相まって感染者数は再度急速に増加しました。こうした事態により、感染拡大防止を目的としたオンライン診療や、自宅療養者への往診、医薬品の配送、問い合わせの殺到する保健所をサポートする健康相談センター、自治体や職域におけるワクチン接種など、様々な状況で発生する需要に対応すべく、医療サービスの多様化が求められてきました。

 このような状況の中、当社グループは、ワクチン接種の促進を図る各自治体や企業からの要請に応え、大規模接種会場や職域におけるワクチン接種のための医療従事者確保を始めとするサービスを拡大させてまいりました。急増する求人案件の整理および調整、医療従事者の給与計算などのBPO業務、医療人材のさらなる募集など、業務の増加に伴い、人員体制の強化や、業務システムの構築などを推し進め、対応しております。

 また、アプリ「Door.」を用いて、(1)自宅療養者の健康相談、往診やオンライン診療、(2)企業からの依頼に応じて抗原検査や抗体検査の付帯サービスとしての健康相談や副反応相談、(3)ワクチン接種後の副反応に対する健康調査などの需要にも対応してまいりました。

 さらに、医療へのアクセスは今後より利便性や柔軟性が求められることを想定し、当社グループがこれまで蓄積してきた知見やネットワークを以て新たな取り組みも行っております。

 日本郵便株式会社と、オンライン診療からオンライン服薬指導及び最短当日配送のスキームによる処方薬配送まで、一貫してサービスを提供するプラットフォームの構築に向けた実証実験、加えて、経済産業省「無人自動運転等の先進 MaaS 実装加速化推進事業(地域新 MaaS創出推進事業)」の実証事業に関わる受託事業者として人口減少と高齢化、公共交通機関が乏しい中山間地域で医療へのアクセスが困難なことによる慢性疾患の重症化や医療費増大、住民サポートによる自治体財政の圧迫などの課題解決に向け、マルチタスク車両を活用したオンライン診療や保健指導、健康相談などの実施を進めております。

 当社グループは、市場区分においては「グロース市場」を選択し、高い持続的な成長を実現させるとともに、これまで作り上げてきた医療ネットワーク及びプラットフォーム、サービスを最大限に活用し医療現場の一助となれるよう引き続き尽力してまいります。

 以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

 当連結会計年度末における資産合計につきましては、4,983,633千円となり前連結会計年度末に対して1,676,649千円増加しました

 当連結会計年度末における負債合計につきましては、2,690,356千円となり前連結会計年度末に対して940,081千円増加しました

 当連結会計年度末における資本合計につきましては、2,293,276千円となり前連結会計年度末に対して736,567千円増加しました

 

b.経営成績

当連結会計年度の売上収益は4,469,202千円(前年同期比74.4%増)、営業利益は1,267,171千円(同379.3%増)、税引前当期利益は1,255,084千円(同423.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は774,492千円(同487.6%増)となりました。また、売上収益の内訳は、医療人材コンサルティングサービス(医師、その他の医療従事者)3,721,709千円(同63.9%増)、その他747,493千円(同156.8%増)であります。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ572,890千円減少し1,013,281千円となりました

 当連結会計年度中における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動の結果使用した資金は298,893千円(前年同期は294,969千円の獲得)となりましたこれは主に非資金項目として減価償却費及び償却費179,824千円及び減損損失169,267千円税引前当期利益1,255,084千円を計上しましたが一時的に取引医療機関に対して新型コロナウイルスワクチン接種業務の従事者に支払う給与の資金を提供したこと等に伴い営業債権及びその他の債権が2,379,990千円増加法人所得税の支払額が110,105千円あったことによるものであります

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は206,510千円(前年同期比319.6%)となりました。これは、主にアプリ「Door.」の開発等に係る無形資産の取得による支出97,031千円、その他の金融資産の取得による支出100,000千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は67,486千円(前年同期比17.0%)となりましたこれは一時的に取引医療機関に対して新型コロナウイルスワクチン接種業務の従事者に支払う給与の資金の確保を目的とした金融機関からの短期借入金が300,000千円純増しましたが金融機関からの長期借入金返済による支出223,748千円社債の償還による支出60,000千円及びリース負債の返済による支出114,378千円によるものであります

 

③生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、医療情報プラットフォームの提供事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。

a.生産実績

 当社グループは、製品の生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績を売上収益区分別に示すと、次のとおりであります。

売上区分別の名称

当連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

医療人材サービス

3,721,709

163.9

その他のサービス

747,493

256.8

合計

4,469,202

174.4

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.当社グループの当連結会計年度末における財政状態及び経営成績の状況は、次のとおりであります。

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計につきましては 4,983,633千円となり前連結会計年度末に対して1,676,649千円増加しましたこれは主に医療人材派遣サービスの見直し等でのれんの減損損失を計上したことによりのれんが143,912千円減少しましたが一時的に取引医療機関に対して新型コロナウイルスワクチン接種業務の従事者に支払う給与の資金を提供したこと等に伴い営業債権及びその他の債権が2,379,990千円増加アプリDoor.の開 発等に係る無形資産の取得により無形資産が34,664千円増加したことによります

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計につきましては2,690,356千円となり前連結会計年度末に対して940,081千円増加しましたこれは主に金融機関からの短期の資金調達により流動負債の社債及び借入金が233,795千円増加未払法人所得税が443,580千円増加人件費等の未払や将来支給の見積額の増加によりその他の流動負債が391,191千円増加したことによります

 

(純資産)

 当連結会計年度末における資本合計につきましては2,293,276千円となり前連結会計年度末に対して736,567千円増加しましたこれは主にその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の減少によりその他の資本の構成要素が65,382千円減少しましたが親会社の所有者に帰属する当期利益774,492千円計上した結果利益剰余金が771,777 千円増加したことによります

 

b.当社グループの当連結会計年度における経営成績の状況は、次のとおりであります。

(売上収益)

当連結会計年度における売上収益は、自治体による新型コロナウイルスワクチンの大規模接種に係る医療従事者紹介、RPO・BPOを含む医療機関経営支援に係る売上収益が伸長しました。

この結果、当連結会計年度における売上収益は、医療人材コンサルティングサービス(医師、その他の医療従事者)3,721,709千円、その他747,493千円(同156.8%増)の4,469,202千円となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度における売上原価は、医師を中心とする医療人材紹介の収益拡大を目指し積極的な人員採用を実施したことにより増加しましたが、業務効率の向上によって売上原価率が連結会計年度に比して10.9ポイント低下し、20.5%となりました。

この結果、当連結会計年度における売上総利益は、3,553,006千円(同102.2%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルスワクチン接種に係る医療従事者紹介の売上収益の大幅な増加により、人件費の対売上収益比率が前連結会計年度に比して2.7ポイント低下し20.7%となりました。一方、コメディカルの紹介及び派遣サービスの見直しによりのれんの減損損失等169,267千円をその他の費用に計上しました。

この結果、当連結会計年度における営業利益は、1,267,171千円(同379.3%増)となりました。

 

(金融収益、金融費用、税引前当期利益)

当連結会計年度において、金融費用として借入金及び社債等に係る利息8,792千円、リース利息3,659千円等を計上しました。

この結果、当連結会計年度における税引前当期利益は、1,255,084千円(同423.8%増)となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期利益)

当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益は、実際負担税率35.9%の法人所得税費用451,070千円を計上した結果、774,492千円(同487.6%増)となりました。

 

c.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、次のとおりであります。

当社グループの事業に関連する医療・ヘルスケア市場においては、医局人事統制力の緩和、恒常的な医師不足等といった状況が発生しており、医療分野の人材流動化の傾向が強まっております。このような環境下で、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 2.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、MRTブランドの浸透、医師会員数及び登録医療機関数の増加、医局への取り組みが当社の経営成績に重要な影響を与える要因と考えております。そのため、当社グループは、MRTの知名度の向上と医師会員及び登録医療機関の獲得のためにサービスの拡充を図ってまいります。

また、当社グループは、当社、株式会社NOSWEAT(2017年1月連結子会社化)、株式会社医師のとも(2017年12月連結子会社化)及び株式会社日本メディカルキャリア(2018年3月連結子会社化)において、医療人材サービスを提供しており、各社のサービスの強み、ブランド価値を経営資源として有効に活用し、医療従事者に向けた訴求力を高めていく必要があります。

 

d.経営方針・経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。

 当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3.経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上収益、営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益の対前年度比としております。

 

 

第20期

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

 

 

第21期

(自 2019年4月1日

至 2019年12月31日)

 

 

第22期

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

 

 

 

第23期

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

売上収益(千円)

2,232,245

 

1,973,223

 

2,562,419

 

4,469,202

 対前期増減率(%)

48.6

 

 

 

74.4

営業利益(千円)

52,569

 

198,234

 

264,363

 

1,267,171

 対前期増減率(%)

△19.0

 

 

 

379.3

親会社の所有者に帰属する当期利益(千円)

97,695

 

108,596

 

131,810

 

774,492

 対前期増減率(%)

213.6

 

 

 

487.6

(注)第21期は、決算の末日を3月31日から12月31日に変更しましたことで9ヶ月決算となっております。そのため、対前期増減率については記載しておりません。

 

 当社グループは、全国に向けて医療人材コンサルティングサービスの拡大を目指しており、新型コロナウイルスワクチン接種業務に必要な医師を中心とする医療人材の紹介が拡大し、当連結会計年度における売上収益は4,469,202千円となりました。医師を中心とする医療人材の常勤紹介の収益拡大を目指し積極的な人員採用を実施したことにより売上原価が増加しましたが、一方で、売上収益の増加率が人件費の増加率を上回った結果、人件費(売上原価、販売費及び一般管理費)の対売上収益比率が大幅に減少し、営業利益の対売上収益比率は、18.0ポイント上昇しました。また、のれんの減損損失等の税金の引下げ効果を得られない項目が生じたことにより法人所得税の実際負担税率が2.2ポイント上昇したものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の対売上収益比率は、12.2ポイント上昇しました。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度末におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。

 当社グループは、事業規模の拡大及び新規事業の育成を通じた収益基盤の多様化を通じて持続可能な長期的な成長を実現し、企業価値の最大化を目指しております。この企業価値の最大化を目指すために、親会社所有者帰属持分比率を資本管理において用いる指標としております。

 当社グループの資金需要は、医療機関に対して一時的な資金の立替等を行う経営支援サービスに係る資金、人件費及び販売促進費等の営業費用の他、非常勤医師紹介及びDoor.に係るシステム構築並びにM&Aとなります。必要な資金は、自己資本及び借入金のバランスを考慮して調達する方針であります。なお、運転資金等の流動性が必要な資金につきましては、取引金融機関から証書貸付による資金調達以外に、取引金融機関との当座貸越枠の設定を行い、弾力的な資金調達の対応を可能としております。

 

 前連結会計年度及び当連結会計年度における親会社所有者帰属持分比率は次のとおりであります。

 

前連結会計年度

(2020年12月31日)

 

 

当連結会計年度

(2021年12月31日)

親会社の所有者に帰属する持分(千円)

1,515,290

 

2,222,336

負債及び資本合計(千円)

3,306,983

 

4,983,633

親会社所有者帰属持分比率(%)

45.82

 

44.59

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。この連結財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況」に記載しております。

 

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