当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)及び(収益認識関係)」をご参照ください。
また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)の売上高は、前年同期に比べ1.4%増加し、過去最高の8,402百万円となりました。営業利益は同14.5%減少の3,489百万円、経常利益は同14.6%減少の3,477百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同13.1%減少の2,434百万円となりました。
売上高においては、企業再編への序幕は上がったものの、アクティビスト活動が弱含みで推移したこともあり、エクイティ・コンサルティング業務の通常プロジェクト(50百万円未満)は、前連結会計年度同様、高い水準でのエクイティ・コンサルティングの受託を継続しましたが、売上伸長は停滞しました。加えて、投資銀行専門連結子会社JOIBの順調なスタートにより、企業支配権争奪等の投資銀行業務におけるPA業務*1とFA業務*2の大型プロジェクト(50百万円以上)については、パイプラインも含めて受託を大幅に増加いたしましたが、当連結会計年度中においてプロジェクトの実施の見送り、プロジェクト売上の当初予想からの減額、次年度へのプロジェクトの繰り越しにより、過去最高の売上高を達成したもの、予想を大幅に下回る結果に止まりました。利益面についてはJOIBの人材体制強化ならびに証券代行業務等のシステム投資により販管費が増加したため、前年同期を下回る結果となりました。
連結会計年度2期に渡り売上予想未達であった結果を重く受け止め、社外取締役を除く取締役の報酬に関して、次年度1年間、代表取締役社長については20%、取締役については15%減額することを決定しています。
当社グループはIR・SR業務の強固なプレゼンスを基盤として、アクティビスト・ESG対応、企業再編等の投資銀行業務を成長のドライバーとして推し進めており、我が国の資本市場の今後の劇的な変化に最も対応できる唯一無二のビジネスモデルを構築していることを強く認識しております。企業支配権すなわち議決権の確保における圧倒的な実績をアドバンテージとし、オフェンス・ディフェンス両サイドから多種多様な企業再編をリードする役割を担ってまいります。これに伴い、大型プロジェクトが売上の過半数を占め通期予想の変動が今後も続くことが余儀なくされますが、中・長期的な売上・利益の成長の道筋は確固たるものであると確信しております。
なお、来たる6月の株主総会に関しては、議決権行使助言会社がコロナ禍を理由に引き続きROE基準の適用免除を決定するなど依然としてSR需要は緩慢な状況を呈しておりますが、2022年に入りアクティビストによる株主提案が増加するなど活動が再活発化しつつあり、さらに環境アクティビストによるESGに関連する株主提案が増加するなど、ここにきてエクイティ・コンサルティング需要に動きが出てまいりました。加えて、アクティビストの活動活発化を契機とした上場会社に対する再編提案・非公開化提案の増加や、東京証券取引所が行った新市場区分への変更に伴う流通性の乏しい株式の市場放出と上場各社における株主支配権構造の見直し機運、ストラテジックバイヤー(事業会社)による敵対的な支配権争奪及びM&Aの積極化など、再編やM&Aが企業の成長戦略の重要な手段として認識されつつあり、当社グループの圧倒的な実績を誇るPA・FA業務への引き合いが増しています。
*1 PA業務;プロキシー・アドバイザリー業務:委任状争奪戦業務、圧倒的な勝利の実績を誇る。
*2 FA業務;フィナンシャル・アドバイザリー業務:アクティビスト対応、敵対的TOB対応、高度なMBO、M&Aにおいて日本最大級かつ先 鋭の専門集団を配備する。
当社グループの事業領域は「IR・SR活動に専門特化したコンサルティング業」であり、単一セグメントであります。サービス別に売上高の概要を示すと次のとおりであります。
① IR・SRコンサルティング
SRアドバイザリー(実質株主判明調査、議決権賛否シミュレーション、コーポレート・ガバナンス改善、取締役会実効性評価、株主還元を含む資本政策等)、プロキシー・アドバイザリー(PA:委任状争奪における全ての戦略立案と実行、臨時株主総会の招集と対応、委任状回収・集計等)、フィナンシャル・アドバイザリー(FA:敵対的TOB対応、自社株TOB、TOB応諾シミュレーション、プレースメント・エージェント(第三者割当増資)、M&A及びMBOの全ての戦略立案・エクゼキューション等)、証券代行事業等を中心とする当社グループの中核的サービスです。
当連結会計年度のIR・SRコンサルティングの売上高は、前年同期に比べ3.4%増加の7,870百万円となりました。
(a) 大型プロジェクト(50百万円以上)の契約件数および売上金額(実績)の推移
(b) 大型プロジェクト(50百万円以上)の種類、および売上金額
大型プロジェクト(50百万円以上)の受託合計は、前年同期に比べ3.0%増加の3,547百万円を計上しました。
当連結会計年度の大型プロジェクト完了においては、敵対的TOB関連の支配権争奪PA・FAや企業・事業再編に関わる包括的PA・FAを中心に受託を継続しているものの、アクティビスト対応PA・FAにおいて前年同期から受託金額が減少したこともあり、増収率は低い伸びにとどまりました。一方、ストラテジックバイヤー(事業会社)による企業再編に関連したPA・FA業務の受託は次年度への繰越案件も含めて大幅に拡大いたしました。TOB(株式公開買い付け)や委任状争奪を戦略のコアとする企業再編へのニーズは一段と高まっており、この分野で当社グループの揺るぎない成功実績は、新たな引き合いを喚起しながら大きな需要を創出していくことが見込まれます。また、アクティビスト活動においても、大型の案件が発生するとともに、環境アクティビスト団体からの気候変動対応に関連した新たな株主提案提出が過去最高になるなど、今後は複雑なアクティビスト対応への需要が増加することが期待されます。当社グループは、最先端のマーケットインテリジェンス・ESG情報を全世界から収集・分析することで、アクティビストの窓口である通常のIR・SR業務の支援から有事のTOBならびに委任状争奪に関して、独自のデータベース、ノウハウそしてエグゼキューション能力を武器に、他に例の無い、高度なエクイティ・コンサルティングを、多種多様なお客様の株主共同の利益を向上させることを目的として、加速度的に浸透させて参ります。現在、次年度へ繰越した大型プロジェクトの早期完了に注力するとともに、上記の大型プロジェクト需要に即応した提案が奏功し、新たなパイプラインが着実に積み上がっております。
証券代行事業においては、受託決定済み企業は2022年3月31日時点で70社、管理株主数は410,426名となりました(前年同期の受託決定済み企業は72社、管理株主数は390,152名)。当社グループは2021年8月20日に株式会社SMBC信託銀行と証券代行業務に関する業務提携契約を締結し、株式会社SMBC信託銀行は、関係機関の承認のもと、2021年12月より証券代行業務へ新規参入し、当社グループは株式会社SMBC信託銀行が受託した証券代行業務の事務受託を行ってまいります。本業務提携により、新規株式公開企業を対象とし受託拡大を積極的に推進させてまいります。
② ディスクロージャーコンサルティング
ツールコンサルティング(アニュアルレポート・統合報告書・株主通信等、IR活動において必要とする各種情報開示資料の企画・作成支援)及びリーガルドキュメンテーションサービス(企業再編やM&A時における各種英文開示書類の作成や和文資料の英訳等)を提供するサービスです。
当連結会計年度のディスクロージャーコンサルティングの売上高は、資金提供者や機関投資家のESGへの関心の高まりを受け、ESG開示に関するコンサルティングサービスの受託が増加した一方、統合報告書等の支援において単独プロジェクトの受託からSRコンサルティング受託の一部としての案件を優先させたため、売上高は前年同期に比べ27.6%減少の344百万円となりました。
③ データベース・その他
大量保有報告書や国内・海外公募投信における株式の組み入れ状況等を提供する「Stock Watch」、IR活動総合サポートシステム「IR-Pro」、IR説明会への参加受付や参加者の管理等を上場企業が一括実施することが可能な「アナリストネットワーク」等をWEB上で提供するサービスです。また、個人株主向けアンケートサービス「株主ひろば」を展開しております。
当連結会計年度のデータベース・その他の売上高は、前年同期に比べ3.5%減少の187百万円となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業は「IR・SR活動に専門特化したコンサルティング業」の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。
当社グループは、生産活動は行っていないため該当事項はありません。
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(3) 財政状態の分析
① 資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ617百万円増加し、9,027百万円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加379百万円、ソフトウェアの増加267百万円等によるものであります。
② 負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ150百万円減少し、1,612百万円となりました。主な要因は、未払法人税等の減少185百万円等によるものであります。
③ 純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ768百万円増加し、7,415百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加2,434百万円、配当による利益剰余金の減少1,687百万円等によるものであります。
① キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ379百万円増加し、5,767百万円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,602百万円(前年同期は2,398百万円の獲得)となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益3,477百万円、減価償却費260百万円であり、支出の主な内訳は、法人税等の支払額1,251百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は537百万円(前年同期は366百万円の使用)となりました。
支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出141百万円、無形固定資産の取得による支出345百万円、敷金及び保証金の差入による支出52百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,686百万円(前年同期は1,419百万円の使用)となりました。
支出の内訳は、配当金の支払額1,686百万円によるものであります。
② 資金需要及び流動性の確保
当社グループの資金需要は、営業活動については、事業活動に必要な運転資金(主に人件費)が主な内容であります。投資活動については、事業拡大及び業務効率向上のためのシステム開発投資等の固定資産の取得及び投資有価証券の取得が主な内容であります。財務活動については、上記活動で獲得した資金を必要な内部留保を確保した上で、業績に応じた利益還元を行っております。なお、アイ・アール ジャパンの自己資本規制比率を維持するために、一定水準の現預金を確保しております。さらに、必要に応じて金融機関との当座貸越契約に基づき運転資金を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、当社グループは、現時点において新型コロナウイルス感染症は重要な影響を与えるものではないと判断しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響は不確定要素が多く、翌連結会計年度の当社グループの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
お知らせ