(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
新型コロナウイルス禍により大きく事業環境が変化する中、日本のみならず世界全体としてDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の波が押し寄せ、本格的なデジタル・ソーシャル時代が到来しました。また当社グループが事業を展開するマーケティング領域におきましてもDXの流れは一気に加速しております。
このような背景のもと、当社グループでは、企業のマーケティングDXへの対応を支援するため、自社開発のマーケティングSaaSツールの提供やSNS活用を中心としたソリューション提供といった『顧客企業と人をつなぐ』BtoBビジネスを展開しております。当社グループは、中期テーマとして『マーケティングDX支援企業として圧倒的ポジションの確立』を掲げており、2021年12月期は中期テーマ達成のための第1ステージと位置づけ、『SaaSの強化とデジタル人材の拡充』を推進いたしました。
当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルスによる業績へのマイナスの影響はなく、むしろコロナ禍をきっかけとしたマーケティングDXの需要拡大は当社にとって追い風となり、売上高の増加に伴い、すべての段階の利益が前年比で大幅に増加いたしました。
当社の報告セグメントは、マーケティングDX支援事業の単一セグメントとしておりますが、事業区分ごとの概況は以下の通りであります。なお、当社グループでは、経営管理指標として「粗利売上※」を設定しており、売上高と共に収益性を図る指標として管理しております。
※粗利売上=売上高-直接原価
①国内SaaS事業
自社開発のマーケティングSaaSツールの提供及びSaaSで補いきれないマーケティングDX施策の提供、さらにはカスタマーサクセス人員がサポートすることによって、顧客企業のマーケティング人材の質的・量的な不足を補い、効率的かつ効果的に成果を上げるための支援を行っております。
当連結会計年度におきましては、コロナ禍をきっかけとしたマーケティングDXの需要拡大を背景に、既存ツールの新機能を複数追加し、アップセル強化を推進いたしました。月額課金型売上は、ダイレクトマーケティングの成果向上を実現するツール「Letro(レトロ)」の顧客企業の成果向上に伴い平均顧客単価が増加した他、動画作成ツール「LetroStudio(レトロスタジオ)」では順調に新規顧客数を伸ばすなど好調に推移しました。また、都度課金売上についても、キャンペーン案件の需要が高く、Twitterによるプロモーションを効率的に行うためのツール「echoes(エコーズ)」を中心に取引が拡大しました。
これらの結果、四半期ベースの粗利売上が第3四半期、第4四半期と連続で過去最高を達成し、当連結会計年度におきましては、売上高・粗利売上ともに前期比で増加いたしました。
②海外SaaS事業
シンガポールの連結子会社であるCreadits Pte. Ltd.は、欧米を中心としたグローバル市場において、高品質な広告クリエイティブ制作を低コストで効率的に行いたいゲーム会社を中心とした企業に対し、スキルの高い世界中のクリエイターネットワークを活用し、広告クリエイティブを制作・納品するサービス「Craft(クラフト)※」を提供しております。
当連結会計年度におきましては、メタバース時代の先駆けとなるゲーム業界における3D動画クリエイティブのニーズが世界的に一層高まり、既存顧客との取引が拡大するなかで、都度発注から月額課金型の売上への移行を推進いたしました。また、2021年5月にリリースしたクリエイティブ制作を支援するプロジェクト管理ツール「Huddle(ハドル)」や、同年7月にリリースした動画の自動編集ツールである「Tune(チューン)」といった新サービスと主力サービス「Craft」とのクロスセル強化等により、月額顧客平均単価が増加いたしました。
これらの結果、四半期ベースの粗利売上が全四半期で過去最高を更新するなど本格的な成長フェーズに突入し、当連結会計年度におきましては、売上高・粗利売上ともに前期比で大幅に増加いたしました。
※「CREADITS®」から名称変更
③ソリューション事業
ファンの存在をマーケティングに活用し、ビジネスの成長を目指す概念が浸透しつつある中で、「SNS活用」や「ファンとの関係構築・強化」をキーワードに、顧客企業のマーケティングDX課題において企画立案から施策の実行までを包括的に支援する事業を行っております。本事業においてもコロナ禍でのDX加速の流れや消費者の商品やサービスを選ぶ際の意識の変化などを受けて、当社が強みを持つファンとSNSを掛け合わせたマーケティングニーズの高まりが追い風となっております。
当連結会計年度におきましては、特にD2C企業や老舗企業の新規事業のプロジェクトにコンセプト設計から関与するなど、ファン関連施策の需要増加が新規顧客の獲得につながり、また既存顧客からの追加施策の依頼も増えるなど、月額顧客平均単価が増加いたしました。
また、新規事業として、2021年4月、SNS時代に必要なマーケティングリソース(人材・ノウハウ・クリエイティブ)を提供する新会社「株式会社ネクストバッターズサークル」を設立し、2022年12月期の本格稼働に向けて体制整備を行いました。
これらの結果、四半期ベースの粗利売上が第4四半期で過去最高を更新し、当連結会計年度において、売上高・粗利売上ともに前期比で大幅に増加いたしました。
④中国進出支援事業
近年急速に市場が拡大している越境ECへの出店による中国進出をしたい日本企業等に対し、日本の商品に愛着のある在日中国人や中華圏で人気のある日本人インフルエンサーの発信力を活用したプロモーション等の支援を行っております。また、インバウンド市場において訪日外国人をターゲットに商品やサービスを提供したい企業への支援につきましては、新型コロナウイルス感染拡大に伴い人の往来が制限されていることから縮小しております。
当連結会計年度におきましても中国越境EC進出支援の需要は堅調で、中国SNSアカウント運用とインフルエンサーによる拡散を合わせたビジネスモデルを強化した他、中国越境ECを実施したい企業や業種の開拓も推進いたしました。
しかしながら、繁忙期の第4四半期において、中国の年間最大のEC商戦となる「独身の日」関連の売上が前年には届かず、当連結会計年度におきましては、売上高・粗利売上ともに前期比で減少いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は6,210,200千円(前期比48.1%増)、売上総利益は2,771,686千円(前期比34.8%増)となりました。また、営業利益は、売上高及び売上総利益の増加に伴い774,610千円(前期比159.4%増)となりました。さらに、経常利益は営業利益の増加に加え、為替差益や持分法による投資利益を計上したこと等により849,559千円(前期比267.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は経常利益の増加に加え投資有価証券売却益を計上したこと等により726,930千円(前期比319.5%増)となりました。
②資産、負債及び純資産の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度と比べて629,098千円増加し3,828,442千円となりました。これは主に、現金及び預金が531,440千円、受取手形及び売掛金が67,669千円それぞれ増加したこと等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて74,417千円減少し1,348,953千円となりました。これは主に、買掛金が61,785千円、未払法人税等が92,282千円、未払消費税等が115,475千円それぞれ増加した一方で、借入の返済に伴い、短期借入金が100,000千円、長期借入金(1年内返済予定長期借入金含む)が308,629千円それぞれ減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて703,515千円増加し2,479,489千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより利益剰余金が726,930千円増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて531,440千円増加し、1,702,337千円となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動により増加した資金は、849,363千円となりました(前年同期は195,767千円の増加)。これは主に、税金等調整前当期純利益を969,394千円計上したこと及び減価償却費を120,183千円計上した一方で、売掛債権が38,028千円増加したこと及び投資有価証券売却益を173,579千円計上したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動により増加した資金は、87,759千円となりました(前年同期は174,869千円の増加)。これは主に、投資有価証券の売却による収入が173,579千円等があった一方で、有形固定資産の取得による支出が22,950千円、無形固定資産の取得による支出が57,960千円があったこと等によるものあります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動により減少した資金は、423,937千円となりました(前年同期は146,817千円の支出)。これは主に、借入金の返済に伴い、短期借入金の返済による支出が100,000千円、長期借入金の返済による支出が308,629千円あったこと等によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業はマーケティングDX支援事業を主な事業とする単一セグメントであるため、以下の事項はサービス別に記載しております。
生産実績
当社グループの主たる事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
受注実績
当連結会計年度の受注実績は、次のとおりであります。
サービス |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
マーケティングサービス |
5,358,636 |
148.8 |
394,754 |
107.5 |
CREADITSサービス |
927,376 |
159.6 |
104,204 |
186.0 |
合計 |
6,286,012 |
150.3 |
498,958 |
117.9 |
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
サービス |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
マーケティングサービス |
5,330,998 |
147.1 |
CREADITSサービス |
879,202 |
154.6 |
合計 |
6,210,200 |
148.1 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
サービス |
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
オイシックス・ラ・大地株式会社 |
- |
- |
1,143,044 |
18.4 |
株式会社ブルックス |
- |
- |
653,885 |
10.5 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.オイシックス・ラ・大地株式会社及びブルックス株式会社は、前連結会計年度においては、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①経営成績等の分析
当社グループでは、経営管理指標として「粗利売上」(※)を設定しており、売上高と共に収益性を図る指標として管理しております。
(※)粗利売上=(当社単体:売上高-直接原価)+(連結子会社:売上総利益)
当連結会計年度の売上高は前期比2.6%増の6,210,200千円、粗利売上は前期比9.2%増の2,371,721千円となりました。
事業別の粗利売上は、SaaS事業が1,057,405千円(前期比4.0%増)、海外SaaS事業が433,814千円(前期比26.4%増)、ソリューション事業が686,219千円(前期比0.3%減)、中国進出進出事業が194,284千円(前期比58.0%増)となり、国内事業であるSaaS事業とソリューション事業がグループ全体の収益を支える柱として安定収益である一方、海外関連事業である海外SaaS事業及び中国進出支援事業がグループの成長を牽引しているものと考えております。
また、事業別の粗利売上の事業別の推移は以下の通りであります。
②資本の財源及び資金の流動性
i)財務戦略
当社グループの財務の方針は、健全な財務基盤を維持しつつ、マーケティングDX支援事業の中長期的な成長のための投資を行うことを基本方針としております。そのため、当社グループの事業活動における主な資金需要は、各事業の事業規模拡大や新規事業推進に伴う国内外の子会社における運転資本等であります。
当社グループは、主として内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達をおこなっており、これらの事業活動に必要となる資金の安定的な確保に努めております。内部資金については、国内事業で安定的に利益剰余金を積み重ねることで維持している現預金を活用しており、各種事業への機動的な投資の実行を可能にするとともに、自己資本比率をはじめとする各指標のもと、資金効率の向上に努めており、2021年12月末時点における自己資本比率は63.5%となっております。
ii)投資方針
投資については、営業キャッシュ・フローの範囲内で行うことを目標としており、手元に残る資金は企業価値を大きく向上させる投資が必要な場合に備え、社内に留保しております。また、合わせて過年度に投資した投資有価証券の売却等、資産の効率的な運用に向けた対応も進めてまいります。
iii)資金調達
資金調達においては、当社は、金融機関に十分な借入枠を有しており、市場環境を勘案しながら慎重な判断のもと借入を行っております。当連結会計年度におきましては、2021年3月に3億円のコミットメントライン契約を締結し、借入金を増やすことなく、機動的な資金調達ができる環境を整えております。今後も引き続き十分な手元資金を維持できるように努めてまいります。
なお、当連結会計年度末における現金及び預金残高は1,702,337千円、借入金残高は342,938千円となっております。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標達成を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2022年2月10日に公表した2022年12月期の業績予想である、売上高4,600百万円、営業利益850百万円、経常利益850百万円を目標としております。
④重要な会計上の見積り
i)繰延税金資産の回収可能性
⑴当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
繰延税金資産 19,817千円
⑵会計上の見積りの内容について連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
繰延税金資産は、将来の事業計画に基づく課税所得の発生時期及び金額により見積もっております。当社は、過去の実績や直近の事業環境等に基づき、将来の顧客平均売上単価、新規顧客獲得数、顧客との契約の継続率及び顧客解約率等に一定の仮定を置いて売上高や営業費用を見積もっております。
これらの見積りは、将来の不確実な経済状況の変動などによる影響を受けるため、実際に発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、重要な影響を与える可能性があります。
ii)時価を把握することが極めて困難と認められる投資有価証券の評価
⑴当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額
関係会社株式 167,387千円
投資有価証券 522,692千円
⑵会計上の見積りの内容について連結財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
投資有価証券のうち、時価を把握することが極めて困難と認められる投資有価証券(関係会社株式を除く。)については、投資先の実質価額が著しく低下したときには、実質価額の回復可能性が、投資先の事業計画等の十分な証拠によって裏付けられる場合を除き、評価減を行っております。
当社では、主要な投資先においては、定期的な面談等を通じて直近の事業環境や事業の進捗状況、今後の計画等を把握しており、これらの情報に基づき実質価額の回復可能性や事業計画の妥当性を慎重に判断しております。
これらの見積りは、将来の不確実な経済状況の変動などによる影響を受けるため、投資先の事業が計画通りに進捗しない場合には、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において、重要な影響を与える可能性があります。
iii)関係会社貸付金の評価
⑴当事業年度の財務諸表に計上した金額
関係会社貸付金 1,192,020千円
関係会社に対する貸倒引当金 501,504千円
⑵会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報
関係会社に対する貸付金の評価にあたっては、債務者である関係会社の財政状態が悪化し、債権の回収に重大な問題が発生する可能性が高い場合に、個別に貸倒引当金を計上することとしております。貸倒引当金の金額算定に当たっては、関係会社の財政状態及び中期計画に基づき将来の支払能力を検討し、回収可能と見込まれる額を合理的に見積もっております。また、中期計画の見積りにおける重要な仮定は、これに含まれる売上高、営業費用の見積りであり、これらは将来の顧客平均売上単価、顧客獲得数及び顧客解約数等を考慮して作成しております。
これらの見積りは、将来の不確実な経済状況の変動などによる影響を受けるため、関係会社の事業が計画通りに進捗しない場合には、翌事業年度以降の財務諸表において、重要な影響を与える可能性があります。
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