(業績等の概要)
(1)業績
当連結会計年度における世界経済は、各国でワクチン接種が進展し、多くの国でロックダウンが解除されたことによって、景気は回復傾向となりました。しかしながら、インフレ圧力の拡大・長期化により、多くの国で金融政策を引き締めに転じたこと、半導体を中心とした部品不足、物流遅延による世界的なサプライチェーンの混乱が長期化していること、ロシア・ウクライナ情勢等により、先行きは不透明な状況となっています。
わが国においては、新型コロナウイルス感染症拡大により首都圏を中心に断続的な緊急事態宣言等が発令されていたものの、足元では厳しい状況が緩和され、景気の持ち直しの動きがみられます。しかしながら、海外経済の下振れリスク、エネルギー・原材料価格の上昇や為替相場変動などに注視する必要があります。
このような状況の下、当社グループは、2023年3月期を最終年度とした中期経営計画「WILL-being 2023」の達成に向け、ポートフォリオシフト、デジタルシフトにより営業利益率を高める「WORK SHIFT戦略」に取り組みました。
国内においては、首都圏を中心に断続的な緊急事態宣言等が発令される中で、セールスアウトソーシング領域の通信以外の分野及びファクトリーアウトソーシング領域では感染症拡大による影響があったものの、それ以外の領域は堅調に推移しました。また、Perm(人材紹介、専門性の高い領域への人材派遣)SHIFTに向け、注力する介護領域の人材紹介、建設技術者領域、スタートアップ人材支援領域において、営業人員、コンサルタント人員増員等の先行投資を実施しました。
海外においては、当社が主に事業を展開しているシンガポール、オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症拡大により都市封鎖等の措置があったものの、景気は回復に向かっており、人材需要が増加し、人材派遣、人材紹介とも順調に推移しました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益131,080百万円(前連結会計年度比10.9%増)、営業利益5,472百万円(同35.8%増)、税引前利益5,293百万円(同39.7%増)、当期利益3,854百万円(同43.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益3,286百万円(同39.0%増)、及びEBITDA(営業利益+減価償却費及び償却費+減損損失)は7,556百万円(同20.7%増)となりました。
セグメント別の業績は、次の通りです。
報告されている事業セグメントの会計処理方法について、従前は日本基準に一定の調整を反映した方法を採用していましたが、当社グループが定期的に検討を行うセグメント情報の見直しを行った結果、当連結会計年度より、当社グループの会計方針と同一の方法に変更しています。この変更に伴い、前連結会計年度の報告セグメント情報を修正再表示しています。
①国内WORK事業
国内におけるセールスアウトソーシング領域、コールセンターアウトソーシング領域、ファクトリーアウトソーシング領域、介護領域等カテゴリーに特化した派遣・紹介、業務請負を行う国内WORK事業については、セールスアウトソーシング領域のアパレル分野、セールスプロモーション等の分野及びファクトリーアウトソーシング領域において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を引き続き受けていることから、需要が低下しました。一方で、セールスアウトソーシング領域の通信分野、コールセンターアウトソーシング領域、介護領域、スタートアップ人材支援領域においては、需要は底堅く堅調に推移しました。また、各領域ともウィズコロナ、アフターコロナを見据え、営業代行サービス、在宅型のコンタクトセンターサービスなど新たなサービスの顧客開拓にも注力しました。
利益面においては、介護領域の人材紹介、建設技術者領域において、営業人員、コンサルタント人 員増員等の先行投資を実施したことにより減益となりました。
以上の結果、国内WORK事業は、外部収益80,726百万円(前年同期比0.8%増)、セグメント利益4,448百万円(同6.6%減)となりました。
②海外WORK事業
ASEAN及びオセアニア地域で展開している人材サービスについては、新型コロナウイルス感染症拡大により都市封鎖等の措置があったものの、人材需要は堅調であり、人材派遣、人材紹介とも順調に推移しました。また、為替相場が前年同期比でシンガポールドル、オーストラリアドルとも円安で進行しました。
利益面においては、抑制していた人件費等の増加に加え、前年度に計上したシンガポールにおける新型コロナウイルス対策としての雇用支援政府補助金収入が減少した一方、人材紹介売上が増加し売上総利益が伸長したことにより増益となりました。
以上の結果、海外WORK事業は、外部収益48,746百万円(前年同期比32.0%増)、セグメント利益3,348百万円(同72.4%増)となりました。
③その他
その他については、労働集約型ビジネス以外の拡大に向け、外国人労働者の就労時間管理システムである「アワマネ」、外国人ライフサポートサービス「エンポート」等、新たなプラットフォームの開発強化に取り組みました。利益面においては、新型コロナウイルス感染症拡大により、国内への入国制限により来日が困難な状況が続いたことで利用者数が伸び悩んだこと、新たなプラットフォーム開発への投資を継続したことにより損失となりました。
以上の結果、その他は、外部収益1,607百万円(前連結会計年度比25.7%増)、セグメント損失342百万円(前連結会計年度は413百万円の損失)となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当社グループの主たる事業は人材サービスの提供であり、その性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しています。
(2)受注状況
生産実績と同様の理由により、記載していません。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。
|
|
(単位:百万円) |
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
国内WORK事業 |
80,726 |
100.8 |
海外WORK事業 |
48,746 |
132.0 |
報告セグメント計 |
129,473 |
110.7 |
その他 |
1,607 |
125.7 |
合計 |
131,080 |
110.9 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しています。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」という。)に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎」に記載の通りです。
(2)財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は27,289百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,718百万円増加しました。これは主に、その他の金融資産が560百万円減少した一方、営業債権及びその他の債権が2,763百万円、現金及び現金同等物が1,517百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
非流動資産は25,061百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,870百万円増加しました。これは主に、使用権資産が1,093百万円、のれんが359百万円、繰延税金資産が172百万円、有形固定資産が141百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
以上の結果、総資産は52,350百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,589百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は29,361百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,571百万円増加しました。これは主に、その他の金融負債が1,645百万円、営業債務及びその他の債務が1,536百万円、借入金が920百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
非流動負債は9,867百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,075百万円減少しました。これは主に、借入金が1,721百万円、その他の金融負債が277百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
以上の結果、負債合計は39,228百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,495百万円増加しました。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は13,121百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,093百万円増加しました。これは主に、資本剰余金が480百万円減少した一方、利益剰余金が2,750百万円、その他の資本の構成要素が808百万円、それぞれ増加したこと等によるものです。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は21.8%(前連結会計年度末17.6%)となりました。また、一時的な要因となる売建プットオプション3,509百万円(前連結会計年度末3,300百万円)の影響を除いた調整後親会社所有者帰属持分比率は28.5%(前連結会計年度末24.7%)となりました。
(3)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、4,350百万円の収入(前連結会計年度は4,316百万円の収入)となりました。これは主に、営業債権の増加額2,494百万円、法人所得税の支払額1,104百万円等があった一方、税引前利益の計上5,293百万円、減価償却費及び償却費2,084百万円等があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、306百万円の支出(前連結会計年度は433百万円の支出)となりました。これは主に、投資活動その他による収入475百万円等があった一方、有形固定資産及び無形資産の取得による支出741百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,959百万円の支出(前連結会計年度は2,646百万円の支出)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入1,360百万円、長期借入れによる収入1,165百万円等があった一方、長期借入金の返済による支出2,965百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出1,969百万円等があったことによるものです。
(4)重要な経営指標の分析
国内においては、2022年3月中旬まで首都圏を中心に断続的に緊急事態宣言等が発令されたことにより、セールスアウトソーシング領域のアパレル、セールスプロモーション分野、ファクトリーアウトソーシング領域で、新型コロナウイルス感染症拡大による影響がありました。また、上記以外の領域でも、新規求人数は感染症拡大前と比較して2割程度減少したことで、稼働人数が減少しました。しかしながら、2022年に入り新規求人数も徐々に回復したことにより、第4四半期はすべての領域において、第3四半期の稼働人数を上回ることができています。また、Perm(人材紹介、専門性の高い領域への人材派遣)SHIFTに向け、注力する介護領域の人材紹介、建設技術者領域、スタートアップ人材支援領域において、営業人員、コンサルタント人員増員等の先行投資を実施しました。
海外においては、当社が主に事業を展開しているシンガポール、オーストラリアでは、新型コロナウイルス感染症拡大により都市封鎖等の措置があったものの、景気は回復に向かっており、人材需要が増加し、人材派遣、人材紹介とも順調に推移しました。
当連結会計年度における実績及び主な要因は以下の通りです。
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は、131,080百万円となり、前連結会計年度に比べ10.9%増加しました。
売上収益増加の主な要因は、海外WORK事業が大きく増加しました。これは、オーストラリア、シンガポールにおいて、景気回復を背景にした人材需要の回復により、人材派遣、人材紹介が好調に推移したことに加えて、為替相場が前年同期比でシンガポールドル、オーストラリアドルとも円安で進行したこともプラスの影響となったことによるものです。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、28,765百万円となり、前連結会計年度に比べ19.6%増加しました。
売上総利益率は21.9%となり、前連結会計年度より1.6ポイント上昇しました。
売上総利益は、Perm SHIFTの推進により、国内・海外において人材紹介売上が増加し、売上総利益が伸長したことによるものです。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、23,585百万円となり、前連結会計年度に比べ15.3%増加しました。
販管費比率は18.0%となり、前連結会計年度より0.7ポイント上昇しました。
販売費及び一般管理費が増加した主な要因は、注力する介護領域の人材紹介、建設技術者領域、スタートアップ人材支援領域において、営業人員、コンサルタント人員増員等の先行投資を約1,000百万円実施したことによるものです。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は、5,472百万円となり、前連結会計年度に比べ35.8%増加しました。
営業利益が増加した主な要因は、前連結会計年度と比較して、助成金収入等の一過性利益が9.5億円(うち国内WORK事業:280百万円、うち海外WORK事業:670百万円)剥落したことに加え、注力する介護領域の人材紹介、建設技術者領域、スタートアップ人材支援領域で先行投資を1,000百万円実施したものの、国内、海外ともPerm領域の売上収益が増加し、売上総利益率が改善したことによるものです。
その結果、営業利益率は4.2%となり、前連結会計年度より0.8ポイント上昇しました。
(EBITDA)
当連結会計年度のEBITDAは、7,556百万円となり、前連結会計年度に比べ20.7%増加しました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増加により、前連結会計年度に比べ922百万円増加の3,286百万円となりました。
(ROIC)
当連結会計年度のROICは、営業利益率の改善により税引後営業利益が増加したため、17.9%(前連結会計年度は13.9%)となり、4.0ポイント上昇しました。
(総還元性向)
当連結会計年度の総還元性向は、23.6%となりました。ただし、株主還元方針は、期首業績予想に対し総還元性向 30%を目安としていますので、期首業績予想に対する総還元性向は、42.2%となります。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の事業には、景気の変動等による人材ビジネス市場規模への影響や競合他社の状況、法的規制等、経営成績に重要な影響を与えうる様々なリスク要因があります。詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(6)経営戦略と今後の見通し
2023年3月期においては、新型コロナウイルス感染症再拡大の懸念、ロシア・ウクライナ情勢等により、経済の先行きは注視が必要なものの、国内及び当社が海外で主に事業展開を行っているシンガポール、オーストラリアにおいては、人材需要は堅調に推移すると見込んでいます。
国内WORK事業においては、セールスアウトソーシング領域のアパレル分野、セールスプロモーション等の分野及びファクトリーアウトソーシング領域においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は依然として残るものの、それ以外の領域については需要は堅調に推移すると見込んでいます。加えて、国内への入国制限も緩和され、外国人労働者の人材需要も感染症拡大前の状況に徐々に戻っていくと見込んでいます。また、2022年3月期に引き続き、中長期シナリオ実現のために、注力する介護領域の人材紹介、建設技術者領域、スタートアップ人材支援領域において、営業人員、コンサルタント人員の増員、建設技術者の採用等の先行投資(1,300百万円)を実施する予定です。
海外WORK事業においては、人材紹介のリバウンド需要は落ち着くと見込むものの、シンガポール、オーストラリアとも景気は回復に向かっており、引き続き人材需要は堅調に推移すると見込んでいます。
2023年3月期の通期連結業績予想は、売上収益140,000百万円、営業利益5,600百万円、営業利益率:4.0%、税引前利益5,490百万円、当期利益3,870百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益3,330百万円、EBITDAは7,670百万円を見込んでおります。なお、業績予想で前提としている為替レートは、1シンガポールドル79円(前期は83円)、1オーストラリアドル78円(前期は83円)です。
*上記業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。引き続き当社グループの事業への影響を慎重に見極め、今後修正の必要が生じた場合には速やかに開示します。
(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して1,517百万円増加し、8,973百万円(前連結会計年度末比20.4%増加)となりました。
当社グループは、財務の健全性を図りながら戦略投資をおこなっていきますが、資金需要につきましては主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入等にて対応していくこととしています。
当社グループの資金の流動性は、連結子会社では、支払サイトが締め後20日となっており、入金が30日サイトとなっています。一方、当社では、支払が締め後30日、入金が30日サイトとなっています。連結子会社で資金需要が発生した場合には、当社の資金及び取引銀行と契約している当座貸越を使用し、連結子会社に貸し付けています。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)(3)キャッシュ・フローの分析」に記載の通りです。
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