(1)主要な経営課題
当社グループのサービス提供先となる医療・健康産業において、eマーケティングの分野は他業界に比してその浸透は遅れており、インターネット技術の進化とともに、今後の成長が期待されている領域であります。このような市場環境に身をおく当社グループが安定成長を持続するためには、運営サイト「MedPeer」会員の満足度を高め、医師の臨床上の課題を解決するために必須のインターネットサービスとしての地位を確固たるものとし、顧客からの信頼を向上させ、リピート顧客の増加を図ることにより収益基盤を強化する必要があると認識しております。
これらを具現化するため、当社グループは以下の7点を主な経営の課題と認識しております。
① 運営サイト「MedPeer」の継続的成長
② 知名度の向上
③ サービスの安全性強化
④ 収益基盤の強化
⑤ 競合他社への対応
⑥ 優秀な人材の採用
⑦ 経営管理体制の強化
① 運営サイト「MedPeer」の継続的成長
当社グループの事業は、運営サイトである「MedPeer」会員の満足度によって支えられていると考えております。会員の満足度を維持・向上させるためにも、「MedPeer」会員に対し、日常臨床を行っていくうえでの疑問に答えを提示できるようなサービスを提供し続けることが課題と認識しております。また、「MedPeer」が提供するサービスは医療にかかるものであることから社会的信頼を確保するためにも、個人情報の保護に関する法律、薬機法、製薬協コード・オブ・プラクティス(※)等の順守も重要課題であると認識しております。この課題に対処するためにも、サービスの利便性向上とともに、コンプライアンスの徹底を継続的に図ることにより、会員向けサービスを強化し続け、「MedPeer」会員の満足度の維持・向上、さらには会員基盤の拡大を進め、「MedPeer」プラットフォームとしての価値向上を図ってまいります。
※ 製薬協コード・オブ・プラクティスについて
製薬企業が薬機法・独占禁止法等の関係法規と公正競争規約等の自主規制を順守し、医薬情報を適正な手段で提供・収集・伝達するために定めている製薬業界の自主ルール
② 知名度の向上
当社グループの運営するサービスの飛躍的な成長にとって、当社グループが運営する「MedPeer」をはじめとした各サービスの知名度の向上を図ることが必要であります。また、知名度の向上は、大手企業との提携等も含めた事業展開をより有利に進めることや、サービスを支える優秀な人材を採用・確保することに寄与すると考えております。
当社グループでは、今後も当社グループ及び各運営サイトの知名度向上を目指し、それぞれに適した広報活動を推進してまいります。
③ サービスの安全性強化
インターネット技術の進化に伴い、インターネット上の情報共有の重要性は認識されてきておりますが、一方で、サービスの安全性維持に対する社会的要請も一層高まりを見せてきております。当社グループは、医師の情報や、患者、病気の情報など、取扱う情報が通常のインターネットサービスに比して、より社会的に大きな影響を与え得る重要情報であることを深く自覚しております。
このため、サービスの信頼性・安全性強化を経営上の最重要課題として、今後も個人情報の保護に関する法律、薬機法、製薬協コード・オブ・プラクティス等各種関連法規の順守を徹底してまいります。
④ 収益基盤の強化
当社グループは、製薬企業を顧客としたマーケティング支援サービスを主な収益源としております。一方で、当社グループが安定した成長を続けていくためには、医療のみならず、健康・予防を含めた医療・健康産業全般を対象とした事業展開を模索していく必要があります。
この課題を解決するために当社グループでは、グループ各社がそれぞれ事業を成長させることはもとより、最新技術の活用やグループシナジーの創出を通じて新サービスを開発し、その成長を図ることなどにより収益基盤の強化を進めてまいります。
また、当社グループではM&Aを新規事業への進出や事業拡大のための重要な手段の一つとして位置付けており、既存事業とのシナジーが見込まれる場合には積極的に実施する方針です。
⑤ 競合他社への対応
医療・健康産業においては、同業他社も取り組みを強化しているとともに、新しい技術が生まれることによる新規参入企業が出現すること等により、競争が一層激しくなっていくことが予想されます。一方で、健康に対する認知理解が深まれば、当社グループにとってもメリットは大きいものと思われます。当社グループでは、ユーザーにとって使い勝手の良いサービス構築を進めるとともに、進化する各種技術を活用することで、更なる成長に取り組んでまいります。
⑥ 優秀な人材の採用
当社グループは、「MedPeer」をはじめとしたオンラインプラットフォームによるサービスを事業基盤としており、それらの利便性及び機能の維持向上のためにも、サービス構築を担当する技術者の安定的な採用が当社グループの事業成長にとっての課題であると認識しております。専門性が高い人材は適時に採用することが困難な場合があり、近年採用コストは増加傾向にあります。
これらの課題に対処するため、従業員が高いモチベーションを持って働ける環境や人事制度の整備を行い、必要な人材を適時に採用できるような組織体制の整備を進めてまいります。
⑦ 経営管理体制の強化
当社グループが継続的に医師や顧客に対して安定的なサービスを提供し、企業価値を継続的に向上させるためには、経営管理体制の更なる強化が必要と認識しております。当社グループは、組織が健全かつ有効、効率的に運営されるように内部統制の整備、強化、見直しを行うとともに、法令順守の徹底に努めてまいります。
(2)サステナビリティに関する取り組み
① サステナビリティ推進体制
当社グループは、社会の持続可能性が当社グループの存続のために重要であることを認識しており、サステナビリティの観点を踏まえた経営を推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。本委員会では、気候変動対応などサステナビリティに関するテーマを重要課題として議論し、決定した内容は必要に応じて取締役会に付議・報告され、グループ全体の経営に反映されます。
② マテリアリティの特定
当社グループは、ステークホルダーの期待や要請に応えていくため、優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定しております。これらの重要課題に取り組むことで、社会に対する継続的な貢献と自社の企業価値向上の両立を目指していきます。マテリアリティやそれに関連した取り組みについては、外部環境の変化やステークホルダーとの対話等を踏まえ、定期的に見直しを行っております。
③環境
当社グループは、2022年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。ガバナンスを強化するとともに、グループ事業における気候変動が及ぼすリスクと機会を分析することで、情報開示の質と量の充実化を図ります。
(ガバナンス)
サステナビリティ委員会において、重要議題の一つとして気候変動対応について議論し、決定した内容は必要に応じて取締役会に付議・報告され、グループ全体の経営に反映されます
(気候変動シナリオ分析)
当社グループでは、気候変動によって生じるリスクと機会の影響を把握するために、シナリオ分析を実施しました。
・シナリオ分析方法
2030年において気候変動が及ぼす事業環境への影響を把握するため、1.5℃シナリオと4℃シナリオの2つのシナリオで分析しました。シナリオは気候変動による物理的なリスクの分析にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)から報告されているRCPシナリオと、脱炭素への移行に伴うリスクの分析にIEA(国際エネルギー機関)から報告されているシナリオを参考にしました。
・シナリオ分析結果
「1.5℃シナリオ」
1.5℃シナリオでは、炭素税の導入や再エネと省エネに関する政策の推進など、脱炭素社会への移行に伴う影響が起きることが予想されます。当社事業へのリスクとしては、炭素価格(炭素税・排出量取引制度)の導入や再エネ導入により操業コストが増加することが挙げられました。しかし、当社の業態を踏まえると、それらリスクの影響は限定的であると認識しています。一方で、機会としては、環境への取り組みを推進していくことで、環境面での対外的な評価が向上し、投資先として選定されやすくなることが想定されます。そのため、今後は再エネ導入やGHG削減目標の設定やCDPの回答など積極的な環境への取り組みを検討していきます。
「4℃シナリオ」
4℃シナリオでは、異常気象の激甚化などの気候変動による物理的な影響が発生することが予想されます。リスクとしては、当社事業所の被災による事業活動の停止が想定されます。当社としては、リモートワーク制度の導入をはじめとして事業継続性の向上に努めており、異常気象による事業へのリスク低減を進めております。一方で、機会としては、気温上昇や災害増加に伴う外出機会の減少から医療DX化のニーズが増加することや、気温上昇による疾患増加に伴い、当社の事業活動を通じて、医療従事者のみならず生活者にも当該情報の提供が可能となります。今後、気候変動に対する医療の動向を踏まえながら、サービスの展開を検討していきます
気候関連問題による影響(リスク・機会) |
想定される事象 |
重要度評価 |
当社の取組 |
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1.5℃ シナリオ |
4℃ シナリオ |
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脱炭素経済への移行に伴う影響 |
リスク |
炭素税・排出権取引の導入 |
・炭素税が導入され、電力使用など事業活動から発生するCO2に応じコストが発生する。 ・排出権取引制度が整備され、排出量削減が不十分な場合、クレジット(排出枠)購入など対応コストが発生する。 |
中 |
小 |
・リモートワークの導入によるサプライチェーン排出量の削減
・社内外手続きのペーパーレス化推進による廃棄物削減
・再生可能エネルギーを電源とするクラウドサービスの活用
・夜間の空調制限の実施 |
再エネ・省エネ政策 |
・再生可能エネルギーの導入を進めるにあたり、電力コストが増加する。 ・オフィスビルのZEB化をはじめとした省エネ導入に伴い、賃料が増加する。(ZEB:Net Zero Energy Building) |
中 |
小 |
|||
機会 |
顧客・投資家から評判 |
・環境への取組が同業他社と比較して先進的である場合、ブランドイメージが向上し、収益機会が増加する。 ・気候変動など環境への対応が優良であると判断された場合、投資先に選定されやすくなる。 |
大 |
小 |
・TCFD提言に基づいた情報開示 |
|
気候変動による物理的な影響 |
リスク |
平均気温上昇 異常気象の 激甚化 |
・気温上昇により、事業所における空調コストが増加する。 ・台風や洪水などの異常気象の激甚化で事業所などが被災した場合、事業活動の停止や対応コストの増加が起きる。 |
中 |
中 |
・リモートワークをはじめとした事業継続性の向上 |
機会 |
平均気温上昇 異常気象の 激甚化 |
・気温上昇や異常気象の激甚化に伴う外出機会の減少により、医療DX化のニーズが増加する。 |
中 |
大 |
・医療機関のDX支援サービスの展開 ・オンラインを活用した医療相談サービスの展開 |
|
平均気温上昇 感染症の増加 |
・当社情報プラットフォームで、熱中症増加や新たな感染症の発生などの気候変動に関連した疾病に関する情報を提供することができる。 |
中 |
中 |
・疾患に関する情報共有が可能となるサービスの展開 |
(リスク管理)
当社では、当社代表取締役社長を委員長とするリスク・マネジメント委員会にて、リスク管理を行っています。
リスク・マネジメント委員会は各部署との定期的な会合を通じて、リスクに関する情報収集を行い、全社のリスクを集約します。集約されたリスクは、当社のリスク評価方法にて、発生頻度と影響額から評価され、重要度の大きなリスクに対しては、リスク・マネジメント委員会が中心となって対策を立案し、取締役会に報告された後に、対応を実行します。気候変動関連リスクについては、リスク・マネジメント委員会とサステナビリティ委員会が連携し、全社のリスク管理プロセスに統合して管理しています
(指標と目標)
当社は、気候変動によるリスクを評価・管理する指標として、温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を算定しております。今後、持続可能な社会の実現のため、パリ協定の目標を参考に、中長期的な目標を検討していきます。
表:温室効果ガス排出量(t-CO2)
項目 |
カテゴリ名 |
排出量 (t-CO2) |
割合 (%) |
Scope1 |
自社での燃料の使用等における直接的な排出 |
0 |
0 |
Scope2 |
購入した電気等のエネルギーに伴う間接的な排出 |
122.2 |
2.5 |
Scope3 |
Scope1,2以外の間接的な排出 |
4,834.2 |
97.5 |
Scope1+2+3 |
|
4,956.4 |
100.0 |
算定期間:2020年10月~2021年9月
算定範囲:メドピア株式会社、連結子会社5社
④ 社会
当社グループは、”医療ど真ん中”IT企業として、私たちに関わるあらゆる人々が、心身ともに健康で心豊かな生活を送ることを目指します。従業員の健康と「その人らしく働く」ことができる環境の提供を第一に考え、ひとりひとりが最大限のパフォーマンスを発揮することで「Supporting Doctors, Helping Patients.」を実現します。
(多様な働き方の推進)
・リモートワーク制度
当社では、COVID-19以前から週1日リモートワークによる生産性向上のトライアルを開始してまいりました。
現在はリモートワークを活用したハイブリッドワークを基本方針とし、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方の実現を推進しています。
・ロケーションセレクト制度
働く場所を”非日常の空間”に設定し“刺激”を得ることで、クリエイティブかつ生産性の高い働き方を実現すること、及び育児・介護、育児等を目的にオフィスや自宅以外の3rdプレイスでの勤務が可能となる、ロケーションセレクト制度を導入しております。
・スタイルセレクト制度
ライフステージの変化に伴い、通勤圏内から離れて生活することとなった場合においても、メドピアグループの一員として活躍できる環境を整備するため、オフィス出社を前提としない職務を担う、スタイルセレクト制度を導入しております。
・サブトラック制度
メドピアでの活動=メイントラック/メドピア外での活動=サブトラックをそれぞれ拡張することで、キャリア形成の促進やライフイベントへの時間投資を実現することを目的に、 自己研鑽・ライフイベント対応支援のための「時間」を付与する制度を導入しております。
(従業員エンゲージメント)
・従業員持株会制度
直接雇用の全従業員を対象とし、自社の株式を取得できる持株会を組織しております。従業員による株式取得の促進、持株会制度の効果的な運用を行うため、各従業員の拠出金に対して10%の奨励金を当社が支給しています。
・リモートワーク手当
全従業員を対象とし、リモートワークでの勤務を前提に所定労働時間に応じたリモートワーク手当を導入しています。
・テックサポート制度
エンジニアの開発力の底上げを行い、メドピアの事業開発を加速させることを目的に、開発効率・スキル向上に関わるサポートを行っています。
・評価制度
半年に1度、上司とフィードバック面談を行い、目標の設定と評価結果についてフィードバックを実施する機会を設けています。ジョブグレードごとに要件を定め、社員一人ひとりの成長ステップを明確に示し、Mission・Visionに基づく「会社が目指す姿」に近づくための評価「Credo」に即した行動とスキルに関する個人の成長を評価し、成果と成長をそれぞれ報酬へ反映しています。
(健康と安全)
・医療相談サービス「first call」の導入
全従業員とその家族を対象に、健康管理のツールとして、医師によるオンライン健康相談サービス「first call」を導入しています。
・ストレスチェック
心のセルフケアと働きやすい職場環境の形成を目的とし、年に1回ストレスチェックを実施しています。
(ヘルステック企業としての取り組み)
・Healthtech/SUM
日本のヘルステック領域におけるエコシステムの循環を目的に、国内最大級のヘルステック・カンファレンスを、日本経済新聞社と共同開催しています。
・一般社団法人遠隔健康医療相談適正推進機構(TELEQ)
当社をはじめ遠隔医療相談事業を展開する複数の事業者とともに、一般社団法人遠隔健康医療相談適正推進機構(TELEQ)を設立しました。遠隔健康医療相談の環境整備や発展などを目的とし、社会全体が安全に利用できる遠隔医療相談の環境整備を行ってまいります。
・データ・セキュリティへの対応
「情報セキュリティポリシー」及び「個人情報保護のための行動指針(プライバシーポリシー)」を遵守し、高度な情報セキュリティ管理体制を維持していくことに努めております。
⑤ ガバナンス
当社グループは、経営の健全性及び透明性の向上を目的とするガバナンスの強化は重要な経営課題であると認識し、積極的に取り組んでおります。取り込みの詳細については「第4. 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
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