当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、米国など先進国を中心に回復基調で推移したものの、新型コロナウイルス感染症再拡大やロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、部材需給逼迫やエネルギー価格高騰などさらなるサプライチェーンの混乱が生じたことに加え、中国の経済活動停滞が見られるなど、先行き不透明感が一層増しています。わが国経済も輸出や生産に持ち直しの動きが続いていましたが、中国の回復停滞や自動車の減産などにより、後半では足踏みが見られました。
当社グループを取り巻く経済環境は、地域や業種により景況感に差異はあるものの、国内、北米、中国などを中心に設備投資需要の回復が進みました。また、世界的に脱炭素化などの社会課題解決に向けた動きが加速していることを背景として、EV、再生可能エネルギー、労働生産性向上などに関連した需要の拡大が見られます。
このような経済環境のもとで、当社グループは中期経営計画である「経営改革プラン」に基づき、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組むとともに、社会課題を解決する高付加価値商品の創出と高効率な生産の実現に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。また、脱炭素化や環境関連ニーズの高まりに対し、EVや再生可能エネルギー向けの製品や環境調和型製品などの開発・生産・販売への対応強化を進めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ326億9千3百万円増加し、1,669億8千9百万円となりました。
負債は、前連結会計年度末に比べ313億3千万円増加し、834億7千4百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末に比べ13億6千3百万円増加し、835億1千5百万円となりました。
当連結会計年度の受注高は1,642億7千7百万円(前連結会計年度比85.4%増)、売上高は1,077億7千7百万円(前連結会計年度比16.3%増)となりました。損益については、営業利益は42億3千6百万円(前連結会計年度比1,009.5%増)、経常利益は45億4千4百万円(前連結会計年度比420.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は37億2千5百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失28億9千8百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
射出成形機においては、販売はインド、東南アジア、北米、中国などで増加しました。受注は脱炭素化の動きを背景に北米の中大型電動機が増加したことに加え、インド、東南アジアなどで増加しました。
ダイカストマシンにおいては、販売は中国、東南アジアなどで自動車向けが増加しました。受注は東南アジア、中国などで自動車向けを中心とした設備投資需要が回復したことにより、増加しました。
押出成形機においては、EV関連の設備投資需要の拡大に伴い、中国のリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の販売および受注が大幅に増加しました。
この結果、成形機事業全体の受注高は1,238億1千9百万円(前連結会計年度比94.3%増)、売上高は755億5千4百万円(前連結会計年度比17.5%増)、営業利益は36億8千3百万円(前連結会計年度比218.2%増)となりました。
工作機械においては、販売は中国の産業機械向けおよび風力発電向けが増加しました。受注は国内の産業機械向け、建設機械向け、エネルギー関係向け、北米の産業機械向けおよびエネルギー向けが増加しました。
超精密加工機においては、車載レンズなどの需要拡大を背景に、販売は中国、台湾、受注は国内、中国の光学系金型向けが増加しました。
この結果、工作機械事業全体の受注高は287億1百万円(前連結会計年度比64.6%増)、売上高は235億7千2百万円(前連結会計年度比13.0%増)、営業利益7百万円(前連結会計年度は営業損失8億2千8百万円)となりました。
制御機械においては、販売および受注は国内の半導体製造装置向けなどで電子制御装置が増加しました。
この結果、制御機械事業全体の受注高は106億8千9百万円(前連結会計年度比73.8%増)、売上高は76億6千9百万円(前連結会計年度比31.3%増)、営業利益は4億2千5百万円(前連結会計年度は営業損失3千9百万円)となりました。
その他の事業全体の受注高は10億6千6百万円(前連結会計年度比19.2%減)、売上高は9億8千1百万円(前連結会計年度比39.5%減)、営業利益は7千8百万円(前連結会計年度比121.5%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ92億9千2百万円増加し、517億1千万円となりました。
なお、当連結会計年度における各活動によるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動による資金は、112億9千9百万円の増加になりました。これは主として、棚卸資産の増加による支出85億3千7百万円があったものの、仕入債務の増加額65億5千5百万円、契約負債の増加による収入102億7千5百万円等があったことによります。
投資活動による資金は、12億6千4百万円の減少になりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出12億5千2百万円等があったことによります。
財務活動による資金は、21億8百万円の減少になりました。これは主として、長期借入金の返済による支出5億円、配当金の支払額18億1千1百万円等があったことによります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動キャッシュ・フロー/利払い
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.生産高の実績については、製品の製造を行っている当社、㈱不二精機製造所、東栄電機㈱、SHIBAURA MACHINE (SHANGHAI) CO.,LTD.、SHIBAURA MACHINE MANUFACTURING (THAILAND) CO.,LTD.、SHIBAURA MACHINE INDIA PRIVATE LIMITEDの連結生産高の実績となっております。
当連結会計年度における受注実績及び連結会計年度末受注残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度は「経営改革プラン」の3年目にあたり、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行に取り組んでまいりました。
「経営改革プラン」の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略、目標とする経営指標及び対処すべき課題」を参照ください。
高収益企業への変革に向けた組織再編につきましては、これまで以上に全体最適を進めるため「事業部制」を廃止し、「カンパニー制」を採用いたしました。全社における研究開発の推進と調達を含めた生産活動の円滑化のため、「R&Dセンター」および「生産センター」を創設いたしました。併せて、最適資源配分と固定費削減に向けた希望退職と配置転換を実施いたしました。また、多様な人材の処遇、キャリア形成、専門職人材の活躍が可能な新人事制度を導入いたしました。
生産性改善に向けて、国内外生産拠点の役割を見直し、現在再編を進めております。国内におきましては、成形機カンパニーおよび鋳物・加工を沼津工場、工作機械カンパニーを御殿場工場、制御機械カンパニーおよびR&Dセンターを相模工場に集約するよう生産拠点を再編しております。また、世界的なEV化の流れを背景にEVの動力源となるリチウムイオン電池の需要が急激に高まっており、その電池材料であるセパレータフィルムの製造装置の増産体制を構築しております。海外におきましては、電動式・中小型射出成形機の生産を中国およびタイ工場に集約し、産業用ロボットの生産の一部を中国工場に移管いたしました。今後持続的な経済成長が期待できるインドにおきましては、射出成形機等の増産に向けインド工場の増設を計画しております。また、国内外の生産拠点再編に伴い、相模工場の一部敷地の有効活用に向け、物流施設の事業化に向けた整備を開始いたしました。
1)財政状態
(資産)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ326億9千3百万円増加し、1,669億8千9百万円となりました。増加の主な内訳は、現金及び預金が92億9千2百万円、商品及び製品が162億6千4百万円、仕掛品が62億1千3百万円増加したこと等によります。
(負債)
負債は、前連結会計年度末に比べ313億3千万円増加し、834億7千4百万円となりました。増加の主な内訳は、支払手形及び買掛金が61億1千6百万円、契約負債が235億4千2百万円増加したこと等によります。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べ13億6千3百万円増加し、835億1千5百万円となりました。増加の主な内訳は、利益剰余金が11億4千7百万円減少したものの、その他有価証券評価差額金が6億1百万円、為替換算調整勘定が16億1千1百万円増加したこと等によります。
この結果、D/Eレシオ17.0%(前連結会計年度末は17.5%)、自己資本比率は50.0%(前連結会計年度末は61.2%)となりました。
2)経営成績
(売上高)
中国、インド、東南アジア、北米など海外を中心に増加し、1,077億7千7百万円(前連結会計年度比16.3%増)となりました。
(営業利益)
営業利益は、売上規模の増加や操業の改善等により、42億3千6百万円(前連結会計年度比1,009.5%増)となりました。
(経常利益)
営業外損益は、雇用調整助成金の減少等により、前連結会計年度に比べ1億8千3百万円の利益(純額)が減少し、3億7百万円の利益(純額)となりました。この結果、経常利益は45億4千4百万円(前連結会計年度比420.6%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益は、関係会社株式評価損が増加したものの、減損損失や特別退職金の減少等により、前連結会計年度に比べ1億4千万円の損失(純額)が減少し、4億6千4百万円の損失(純額)となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は40億7千9百万円(前連結会計年度比1,423.1%増)となりました。税金費用は法人税等合計3億5千3百万円を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は37億2千5百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失は28億9千8百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは運転資金需要、設備投資及びM&Aを含む投資資金需要であります。
運転資金需要については、生産活動に必要な材料費・人件費及び経費等、受注獲得に向けた引合費用等の販売費、商品力強化及び新商品の開発に資する研究開発費が主な内容であります。投資資金需要については、事業規模拡大及び生産性向上を目的とした有形・無形固定資産投資、既存設備の維持、改修に係る修繕費、適切なM&A・アライアンスの実行に要する資金などが主な内容であります。
財務政策
当社グループは、運転資金投入、投資資金投入ともに営業キャッシュ・フローを源泉としつつ、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保する施策として、有利子負債による資金調達を実施しております。当連結会計年度末における当社グループの有利子負債残高は142億1千7百万円となりました。
金融機関には十分な借入枠を有しており、当社グループの事業規模の維持拡大に向けた運転資金及び投資資金の調達は今後も可能であると考えております。また、国内金融機関において100億円のコミットメントラインを設定しており、手元流動性の補完にも機動的に対応が可能となっております。
今後も売上債権、棚卸資産の回転期間短縮や固定資産の稼働率向上を通じて資産効率の改善を図るとともに、大規模な設備投資、M&Aなどに向けた長期資金の調達については、中期経営計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断していくこととしております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、事業活動によって経常的に創出される付加価値の最大化及び株主資本の有効活用がすべてのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「売上高」、「売上高営業利益率(ROS)」、「自己資本利益率(ROE)」及び「配当性向」を重点指標として位置付けております。当連結会計年度における「売上高」は1,077億7千7百万円(前年同期比16.3%増)、「売上高営業利益率(ROS)」は3.9%(前年同期比3.5ポイント好転)、「自己資本利益率(ROE)」は4.6%(前年同期比8.0ポイント好転)、「配当性向」は48.6%(前年同期は当期純損失)となりました。引き続きこれらの指標の継続的な改善に向け、取り組んでまいります。
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