課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

当社グループは、コアの技術である精密工作機械製造技術、制御技術、研削加工技術を基盤とし、お客様との直接対話によって開発した独創的な工作機械を、最良の品質と最善のコストでお客様に提供するとともに、コアの技術と製品を継続的に進化させ、お客様の更なる満足に応えることを経営の基本方針に掲げ、特殊研削盤分野でのトップメーカーを目指してまいります。

 

(2) 経営環境

当社グループは、高精度・高品質・高能率・全自動による硬脆材料(超硬合金、セラミックス、CBN、ダイヤモンド焼結体等)の研削という特殊技術に特化した、特殊研削盤を開発・製造しております。当社グループが所属する工作機械業界全体の市場規模が約1兆円であるのに対し、当社グループの売上高は約60億円程度と小規模でありますが、当社の製造する研削盤は世界でも限られたメーカーしか製造していない、特殊な技術を要する機械であり、ニッチな市場において高いシェアを獲得することで、強固な経営基盤と高い収益力を確保してまいりました。当社の主要な市場は切削工具関連市場と金型関連市場の2つとなっており、それぞれの市場の現状や経営環境は以下のとおりであります。

 

(切削工具関連市場)

当社の主要な市場の1つは切削工具メーカーをお客様とする切削工具関連市場であり、当社はその市場向けに切削工具関連研削盤を製造・販売しております。お客様である切削工具メーカーは当社の研削盤を用いてスローアウェイチップ(刃先交換工具)等の切削工具を加工・製造し、自動車、航空機、鉄道、建設機械等の各部品メーカーはその切削工具を用いて金属部品を加工・製造しております。

切削工具研削盤のうち、スローアウェイチップの外周加工に用いられる全自動インサート研削盤については、競合メーカーは世界で2社のみ、特殊な刃先形状の加工に用いられる全自動溝入れインサート研削盤については、競合メーカーは世界で1社のみとなっており、競合他社の少ないニッチな市場において、高いシェアを獲得しております。なお、2022年3月期における切削工具関連研削盤の売上高は当社グループの総売上高の44.6%を占めております。

 

(金型関連研削盤)

当社の主要な市場の1つは精密金型メーカー等をお客様とする金型関連市場であり、当社はその市場向けに金型関連研削盤を製造・販売しております。お客様である精密金型メーカーは当社の研削盤を用いて精密金型を加工・製造し、精密コネクタ等の各部品メーカーはその精密金型を用いて精密部品を加工・製造しております。なお、最終需要先はスマートフォン、タブレット、パソコン、LED等であります。

金型関連研削盤のうち、高精度金型部品や特殊工具等の加工に用いられるプロファイル研削盤については、競合メーカーは世界で1社のみ、精密金型プレート、治具等の穴加工、輪郭形状加工に用いられるジグ研削盤については、競合メーカーは世界で3社のみとなっており、切削工具関連研削盤同様に、競合他社の少ないニッチな市場において、高いシェアを獲得しております。なお、2022年3月期における金型関連研削盤の売上高は当社グループの総売上高の38.9%を占めております。

 

 

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題及び経営戦略

 

上記のとおり、当社はニッチ市場において高いシェアを獲得するという経営戦略をとっておりますが、ニッチ市場に特有のものとして、以下の2点を、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として認識しております。

 

・市場規模が限定的であるため業容の拡大が制限されること

・販売先が特定の業種に集中しているため景気変動の影響を受けやすいこと

 

また、当社グループを取り巻く経営環境として、新型コロナウイルス感染拡大の継続、上海市のロックダウンの影響、ロシアのウクライナ侵攻、部品の供給不足、急激な円安の進行などのリスク要因が挙げられます。こうした課題に対処し、持続的な成長と安定した収益を確保するため、次のような施策を進めております。

 

①グローバルニッチトップをめざした海外市場展開

 国内市場では既に一定のシェアを確保しておりますが、海外市場においてはシェア拡大の余地が残されています。ニッチトップ戦略をグローバルに展開することにより、さらなる成長をめざします。欧米地域においては特にシェア拡大の余地が大きいことから、現地代理店を活用した販売拡大、展示会への出展、支店の開設等の施策を進めております。アジア地域においては、5G化、自動運転技術の開発、スマートフォン等のカメラ性能強化等により、中国・台湾・韓国を中心に精密金型に対するさらなる需要が見込まれていることから、上海の拠点による情報収集や、台湾の連結子会社を用いた製造・販売の強化などを図っております。

 また、当社グループの生産する製品は大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがある貨物として、貨物及び技術の提供等につき外為法に基づく輸出管理の対象となっております。安全保障輸出管理につきましても、輸出管理専門の部署を設置し、輸出関連法規の遵守に関する内部規定及びマニュアルの厳格な運用に努めることにより、今後も重点課題として厳正に対応してまいります。

 

②戦略製品の開発と新製品の投入

 主要な取引分野である金型関連業界及び切削工具関連業界に対応する戦略製品の開発と新製品の投入により、より一層の需要の開拓と新たな用途・分野への需要拡大をめざします。なお、2021年に切削工具研削盤であるAPXシリーズのハイエンドモデルとして開発してまいりました「APX-F50」を市場投入いたしました。今後は、金型関連研削盤においてはレンズ金型、リチウムイオン電池の金型部品、5G化による精密金型部品等による需要増、切削工具関連研削盤においては主に欧米地域向けの販売拡大が見込まれており、より多くのお客様のニーズにお応えできるよう、高機能で信頼性の高い製品を提供してまいります。

 

③新分野への製品展開

 特定の業種への集中から脱却し、新たな事業分野へ進出することにより、企業成長の柱を創出することをめざすべく、長年にわたり培ってきたコア技術である高精度、高品質、高生産性をもとに、新分野の製品を開発し積極的に市場参入を試みていきます。

 

 

④経営基盤の強化

 急激な景気変動や外部環境の変化に対応するため、以下のような施策により経営基盤の強化を図っております。

 

 a.利益体質の強化

機械1台ごとの原価管理、効率化や精度向上のための改善活動、厳格な予算管理による販管費の抑制等により、利益体質の強化を図っております。

 b.業務システムの改善

  業務のシステム化や、業務システムの改善により業務効率化を図っております。

  c.サプライチェーンの確保

仕入先との綿密な調整や、仕入状況の定期的なモニタリングにより、安定的なサプライチェーンの確保に努めております。

 d.スキル保有者の雇用継続と次世代への継承

熟練技術者の技術の活用と次世代への技術継承の促進を図っており、2020年4月より定年延長制度の導入を行っております。

 

 その他、製品品質の向上やアフターサービスの拡充によりお客様の信頼を獲得し、営業基盤を強化することで安定的な収益の確保に努めてまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、継続的な進化によりお客様の更なる満足に応えることを経営の基本方針として掲げており、そのために営業基盤の強化による持続的な成長と安定した収益の確保を経営の重要なものと位置付けております。このような理由から、当社グループは「経常利益率」を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としております。2023年3月期は中国のロックダウン等の影響により金型関連研削盤の受注販売が減少すると見込まれるものの、切削工具関連研削盤については国内外において需要が高まる見通しであることなどから、経常利益率は前年同期と比較してほぼ横ばいになると予想されております。なお、2023年3月期は第2四半期累計で売上高3,362百万円に対し経常利益455百万円(経常利益率13.5%)、通期で売上高7,274百万円に対し、経常利益1,049百万円(経常利益率14.4%)を見込んでおります。

 

 本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

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