(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、緩やかな回復基調が続いておりました。しかし、米中貿易摩擦をはじめとした世界経済が減速するリスクに加えて、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延により国内外における経済活動の停滞が懸念され、先行きの不透明な状況が続いております。
当社グループを取り巻く事業環境においては、民間企業において雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新するものの、2019年の法定雇用率達成企業の割合は48.0%となっており、2018年4月の法定雇用率の引き上げを受けて、また2020年度末までの2.3%への引き上げに向けて、障害者雇用に対する旺盛な需要が見込まれております。 また、全国の小・中・高等学校において、通常学級に在籍しながら必要に応じて別室等で授業を受ける「通級指導」の2019年度の対象者は前年度より11,090名増加し、134,185名で過去最高を更新しており、発達障害への社会的認知が進んでいることが読み取れます。
このような外部環境の変化を踏まえ、長期的利益の安定成長を実現するため、一般就労等を希望される障害者等を対象としたLITALICOワークス事業の一層の強化や業務効率の改善、発達障害がある児童を対象としたLITALICOジュニア事業への投資を継続しております。具体的には、当連結会計年度の新規開設数は、就労移行支援事業8拠点、児童発達支援事業7拠点、学習教室事業4拠点、その他(LITALICOワンダー事業)5拠点となりました。また、新型コロナウイルス感染症対策として既存拠点及び新規拠点において衛生管理を徹底した上でサービス提供を継続しており、当連結会計年度において財政状態及び経営成績に与える重要な事象は生じておりません。
なお、2019年4月1日に株式会社NTTドコモに対して当社が運営する子育て情報メディアConobie事業の譲渡が完了し、事業譲渡益240,600千円を計上しております。
このような状況の下、当連結会計年度の業績については、売上高は13,867,926千円(前連結会計年度比14.3%増)、営業利益は982,946千円(前連結会計年度比11.6%増)、経常利益は978,057千円(前連結会計年度比8.7%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は847,793千円(前連結会計年度比41.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。
a. LITALICOワークス事業
既存拠点及び新規開設拠点が順調に推移したことにより、当連結会計年度の売上高は6,686,897千円(前連結会計年度比16.4%増)となりました。
b. LITALICOジュニア事業
既存拠点及び新規開設拠点が順調に推移したことにより、当連結会計年度の売上高は5,826,442千円(前連結会計年度比10.4%増)となりました。
c. その他
LITALICOワンダー事業の既存拠点及び新規開設拠点が順調に推移したこと及び、その他の事業の収益拡大により、当連結会計年度の売上高は1,354,586千円(前連結会計年度比22.1%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末と比較して1,293,094千円増加し、2,682,265千円であります。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、561,074千円(前連結会計年度は1,106,485千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益で1,259,775千円、減価償却費で419,938千円を計上した一方で、売上債権の増加により432,101千円、法人税等の支払により421,470千円を支出したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、1,452,244千円(前連結会計年度は740,494千円の支出)となりました。これは主に、貸付金の回収による収入409,816千円、事業譲渡による収入260,000千円を計上した一方で、投資有価証券の取得により1,087,599千円、有形固定資産の取得により411,429千円、貸付金の貸付により306,445千円、無形固定資産の取得により304,152千円を支出したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、2,184,264千円(前連結会計年度は219,962千円の収入)となりました。これは主に、長期借入金による収入2,500,000千円となった一方で、長期借入金の返済により712,889千円を支出したことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループは、LITALICOワークス事業とLITALICOジュニア事業を通じて、障害者や発達障害児へのサービスを提供しております。生産実績に該当する事項がありませんので、記載をしておりません。
b. 受注実績
当社グループは、受注生産等を行っておりませんので、受注実績に関する記載をしておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
||
LITALICOワークス事業 |
6,686,897 |
116.4 |
|
LITALICOジュニア事業 |
5,826,442 |
110.4 |
|
報告セグメント計 |
12,513,340 |
113.6 |
|
その他 |
1,354,586 |
122.1 |
|
合計 |
13,867,926 |
114.3 |
当連結会計年度の販売実績を地域別に示すと、次のとおりであります。
地域別 |
都道府県 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
期末拠点数 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
||
北海道地方 |
北海道 |
4 |
302,163 |
111.9 |
東北地方 |
宮城県 |
2 |
185,840 |
103.9 |
関東地方 |
東京都 |
57 |
9,044,183 |
113.3 |
神奈川県 |
51 |
|||
埼玉県 |
20 |
|||
千葉県 |
11 |
|||
栃木県 |
1 |
|||
中部地方 |
愛知県 |
12 |
1,182,074 |
121.7 |
静岡県 |
3 |
|||
近畿地方 |
大阪府 |
27 |
2,327,189 |
116.0 |
兵庫県 |
8 |
|||
京都府 |
6 |
|||
中国地方 |
岡山県 |
1 |
329,769 |
115.4 |
広島県 |
3 |
|||
九州地方 |
福岡県 |
4 |
496,706 |
115.3 |
沖縄県 |
2 |
|||
宮崎県 |
1 |
|||
合計 |
213 |
13,867,926 |
114.3 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2018年4月1日 至 2019年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
神奈川県国民健康保険団体連合会 |
2,164,280 |
17.9 |
2,518,519 |
18.2 |
東京都国民健康保険団体連合会 |
2,034,921 |
16.8 |
2,299,737 |
16.6 |
大阪府国民健康保険団体連合会 |
1,311,392 |
10.8 |
1,522,398 |
11.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。
当社グループの連結財務諸表作成にあたり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
また、当社グループは新型コロナウイルス感染症対策として衛生管理等を徹底した上でサービス提供を継続しており、当連結会計年度において財政状態及び経営成績に与える重要な事象は生じておりません。新型コロナウイルス感染症の今後の広がりや収束時期等の予測に関わらず、会計上の見積りには織り込んでおりません。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
1) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、13,867,926千円(前連結会計年度比14.3%増)となりました。これは主に、LITALICOワークス事業、LITALICOジュニア事業に係る新規拠点開設を積極的に行ったことによるものであります。内訳といたしましては、LITALICOワークス事業6,686,897千円(前連結会計年度比16.4%増)、LITALICOジュニア事業5,826,442千円(前連結会計年度比10.4%増)、その他の事業1,354,586千円(前連結会計年度比22.1%増)となりました。
(売上原価)
売上原価は8,626,192千円(前連結会計年度比14.6%増)となりました。これは主にLITALICOワークス事業、LITALICOジュニア事業に係る新規拠点開設に伴う人件費等の増加によるものであります。この結果、売上総利益は5,241,734千円(前連結会計年度比13.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は4,258,787千円(前連結会計年度比14.4%増)となりました。これは主に人件費の増加によるものであります。この結果、営業利益は982,946千円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。
(営業外損益)
営業外収益は34,847千円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。これは主に助成金収入の発生によるものであります。また、営業外費用は39,736千円(前連結会計年度比184.3%増)となりました。これは主に支払手数料の増加、為替差損の増加によるものであります。この結果、経常利益は978,057千円(前連結会計年度比8.7%増)となりました。
(特別損益及び法人税等)
特別利益は290,891千円(前連結会計年度比5,845.0%増)となりました。これは主にConobie事業の譲渡に係る事業譲渡益の発生によるものであります。特別損失は9,173千円(前連結会計年度比72.1%減)となりました。これは主に不要資産の廃棄に伴う固定資産の除却損の減少によるものであります。また、法人税等は411,982千円(前連結会計年度比51.9%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は847,793千円(前連結会計年度比41.2%増)となりました。
2 ) 財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は5,266,763千円(前連結会計年度末残高3,628,049千円)となり、前連結会計年度末に比べ1,638,713千円増加いたしました。これは主に現金及び預金の増加、売上高の増加に伴う売掛金の増加によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は4,564,450千円(前連結会計年度末残高3,122,990千円)となり、前連結会計年度末に比べ1,441,459千円増加いたました。これは主に投資有価証券の増加、無形固定資産の増加、新規拠点開設にともなう有形固定資産の増加によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は3,041,009千円(前連結会計年度末残高2,238,940千円)となり、前連結会計年度末に比べ802,069千円増加いたました。これは主に短期借入金の増加、1年内返済予定の長期借入金の増加によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は3,032,979千円(前連結会計年度末残高1,621,616千円)となり、前連結会計年度末に比べ1,411,362千円増加いたました。これは主に長期借入金の増加によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は3,757,224千円(前連結会計年度末残高2,890,483千円)となり、前連結会計年度末に比べ866,741千円増加いたました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上にともなう利益剰余金の増加によるものであります。
3 ) キャッシュ・フローの状況の分析
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、「障害のない社会」を創造することを目指し、障害分野のトータルソリューションサービスを展開しております。LITALICOワークス事業及びLITALICOジュニア事業を中心とした店舗サービスでは、新規拠点の開設等を通して安定拡大を行い、新型コロナウイルス感染症対策として衛生管理を徹底しながら既存拠点及び新規拠点ともにサービス提供を継続しております。LITALICO発達ナビ事業及びLITALICO仕事ナビ事業といったプラットフォームサービスにつきましても提供機能の拡大等を展開できたことで、継続して成長を図ることができております。また、LITALICOワンダー事業等を通して積極的なオンライン活用を進め、店舗に限定されない多角的なサービスをお客様に届けてまいります。
なお、当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、法改正動向、事故や個人情報の漏えい、人材の確保及び育成、市場動向等があります。
法改正動向については、当社グループの「LITALICOワークス事業」と「LITALICOジュニア事業」においては国から報酬を得ており、これらの報酬制度は原則として3年に1回改定が行われるため、これらの法令の制定・改廃等が行われた場合や、厚生労働省からの通達の内容が変更された場合は、当社グループの事業活動が制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。そのため、法令や通達の解釈に誤りが発生しないよう、地方自治体と適宜確認を取りながら事業を進めております。
事故や個人情報の漏えいについては、顧客及びスタッフの安全確保を重大な経営課題として認識し、万全の体制で臨んでおります。また、個人情報の適正な取得及び厳重な管理のために、各種規程や全社員対象の社内教育を通じて、個人情報漏洩の防止に取り組んでおります。
人材の確保及び育成については、当社グループが展開する各事業は、発達障害や精神障害がある方を主たる対象としたサービスであり、新規拠点の開設に伴い、専門的な知識や指導技術を持った人材の確保が急務となっております。このため当社グループでは、経験者を対象とした通年での採用活動と並行して、適性を有する新卒学生や未経験者を採用して育成する研修部門により、継続して人材を育成するなど、人材の拡充に取り組んでおります。
市場動向については、当社グループが属する障害福祉サービス業界は、毎年障害福祉サービスの提供事業所数は増えているものの、提供サービスが人材の質に左右される傾向の強い業種であるため、当社グループの持つ採用力や人材育成のノウハウは短期間で構築することは難しいと考えられます。しかしながら、本書提出日現在において、首都圏における競争環境は激化する兆しもあり、更なる競合他社の事業拡大や新規参入等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。こうした中、当社グループは既存の店舗サービスの安定的な出店拡大に加え、サービス提供範囲の拡大と収益源の多角化を実施し、経営基盤の強化を図ってまいります。
c. 資本の財源及び資金の流動性
1) 資金需要
当社グループは、毎年10拠点以上のペースで新規拠点の開設を行っているため、拠点数及び従業員数増加に伴う運転資金需要の他、設備資金の需要が恒常的にある状態であります。そのため、新規拠点の開設計画を踏まえて定期的に金融機関との打ち合わせを行い、短期借入金及び長期借入金を資金需要のタイミングに合わせて調達しております。
2) 財務政策
当社グループは、健全な経営活動を維持するため、安定した事業運営を行える水準の手許資金を確保した上で、新規拠点の開設等に必要な設備資金を銀行借入れ等により調達し、効率的な資金調達・運用を行うことにより、財務体質の強化を図ることを基本方針としております。
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