文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、理念体系として以下を掲げております。
企業理念: 『子ども達の未来のために』
ビジョン: 『2030 トリプルトラスト』
-2030年 職員と保護者と地域に最も信頼される存在になり、
子ども達の育ちと学びの社会インフラになる
わが国では、女性の社会進出に対する意識の変化や政府による女性の活躍推進などにより、共働き世帯数の割合が年々上昇しているほか、25~44歳の女性の就業率は7割近い高い水準を保っています。このような社会的背景により待機児童数解消の要請に応えるべく、政府は2021年度から2024年度末までの4年間に新たな保育の受け皿約14万人分の確保を目標とした「新子育て安心プラン」を2020年12月に打ち出し、引き続き保育所の増設を進めております。その結果、待機児童数は下表のとおり減少傾向を示しており、保育サービスは量的な踊り場を迎えている可能性があります。
保育サービスへの量的な需要が減少しても、『選ばれる園』の需要は継続すると想定しております。当社グループでは『選ばれる園』とすべく『グローバルキッズ保育』を基礎に保育の質を高めるほか、利用者の利便性の向上、教育コンテンツの提供等に努めてまいります。
このような保育需要の転換点を踏まえ、当社グループでは、持続的な成長に向けた『中期経営計画(2024)』において、以下のとおり方針を掲げたうえで3つの重点テーマに取り組んでまいります。
(中期経営計画(2024)の基本方針)
創業以来の「事業拡大」フェーズから「事業拡大と事業複線化」フェーズへ移行し、以下3つを基本方針としたうえで新たな事業戦略を支えるICT機能、財務・資本戦略を一段と強化いたします。
・規模拡大 オーガニック成長に加え、M&Aも活用した保育事業の拡大
-新規開設とM&Aによる規模拡大
-新規事業拡大による保育事業との売上シナジー発現
・機能拡充 新事業における基盤固め
収益源の多様化に加え、保育事業の競争力向上に貢献
-既存事業への付加価値として教育、子育て支援サービス、物販の3つの領域への取り組み
・基盤強化 ICTの戦略的活用による生産性の向上、付加価値の創造
-デジタル活用による業務改革の推進
-働きやすい職場環境、選ばれる施設に向けた革新的なサービスの提供
財務健全性、成長投資、株主還元のバランス
-財務健全性を堅持し、成長投資と株主還元を両立
(3) 目標とする経営指標
当社グループは、2022年9月期から2024年9月期を最終年度とする『中期経営計画(2024)』のなかで、最終年度にあたる2024年9月期における目標計画として①売上高310億円、②EBITDA21億円を掲げております。
『中期経営計画(2024)』の初年度である2022年9月期の進捗は次のとおりです。売上高は、新規開設見込みが想定を下回り、一部不採算事業の譲渡、閉鎖により伸び悩んでいます。一方、当社が最も重視しているEBITDAは、収支改善の取り組みにより営業利益が前期比22.9%増と拡大したことで同8.6%増の1,548百万円と着実に増加しております。
※EBITDA=営業利益+減価償却費
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
我が国は、成長戦略の一つとして女性が輝く日本を念頭に「待機児童の解消」、「職場復帰・再就職の支援」、「女性役員・管理職の増加」に向けた対策が進められています。このように保育事業に対する関心が集まるなかで、当社グループとしてさらなる事業拡大に向けた重要課題として以下の点に取り組んでまいります。
保育士の質の維持・向上のため、優秀な人材の採用や育成の強化、及び、諸施策を通じた長期雇用の促進を図ります。具体的な施策として、各職位における職務内容や人事評価制度の精緻化、処遇改善等を検討するほか、第三者評価を通じた利用者からの指摘事項の改善等を定期的に行います。また、当社グループの保育方針をより一層浸透させるため、施設長や本部スタッフに対する研修の実施を進めてまいります。
さらに、休暇制度の拡充や社員寮等の福利厚生などの人事制度の整備に加えて、処遇改善等を通じた魅力ある就労環境の提供を通じて人材の長期雇用に努め、安定した保育を提供できる体制を整えてまいります。
こうした施策の推進に加えて、当社グループとして目指す保育である『グローバルキッズ保育』を確固たるものとし、これを各施設に浸透させることで保育の質の底上げを図ります。
子ども・子育て支援制度などの国や自治体の保育方針に関する勉強会や保育士試験の講座、アレルギー研修等、各職位に応じた研修カリキュラムの充実や研修参加の推奨により、施設長等、管理職水準の人材の早期育成体制の強化を目指します。また、近年は新型コロナウイルスの影響で実施しておりませんが、ヨーロッパの保育所における現地の多様な保育を学ぶ海外研修を通じて、当社グループにおける保育の幅を広げる取り組みを行う方針です。
運営施設数の増加により、保育士資格を有する優秀な人材の確保が急務であります。しかしながら、保育士資格を有する求職者が不足していることから、特に首都圏においては、採用が困難な状況です。これまでは、当社が強みを持つ経験者の採用を中心に人材を確保してまいりましたが、新卒者の採用にも一段と注力することで採用力の強化に努めます。また、当社グループの職員からの保育士等の紹介・推薦によるリファラル採用に力を入れるなど、採用の多様化や採用コストの抑制にも注力しております。なお、人事制度の整備等により長期雇用に努めることで採用コストを抑えてまいります。
当社グループは、これまで待機児童が集中する東京23区などの首都圏都心部を中心に認可保育所の拡大に努めてまいりました。今後、少子化や待機児童の解消により児童等の獲得が難しくなる懸念がありますが、首都圏都心部においては、他の地域に比べ園児の確保に優位性があると見込んでおります。また、国基準で運営している認可保育所は、認可外保育所に比べ児童が集まりやすい傾向があります。今後も、経営資源を首都圏都心市部の認可保育所に集中することで生産性の向上に努めていく方針です。
[全国及び東京都における待機児童数]
出典:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ」
東京都「都内の保育サービスの状況について」
運営施設数の増加に伴い、備品購入等における規模のメリットの享受や、運営業務の一元化、システム導入等を積極的に推進することで、運営コストを抑制しながら効果的・安定的な事業運営が行えるよう努めます。
当社グループは、現在、各施設の開発資金や運転資金の確保を、主に金融機関からの借入に依拠しております。今後も、規模拡大を進め、安定した事業運営を行うためにも、諸施策を通じた安定的な資金調達の確保を図るとともに、収益力の向上による財務基盤の強化に努めます。
当社グループの収益は、現在、子育て支援事業に依拠しており、国や自治体の政策等に大きく影響を受けている状況です。当該状況を踏まえ、当社グループでは子育て支援事業以外に保育に関連する周辺事業を中心に収益基盤の拡充に取り組んでおります。具体的には、従来から手掛けている保育所に係るコンサルティング事業、給食受託事業に加えて、習いごと教室等の教育事業、保育所の送迎サービス等の子育て支援サービス事業、おむつのサブスク等子育て世帯の負担軽減につながる物販事業への参入・拡大を検討してまいります。
また、新規の保育施設については、安定的な運営が見込みやすい認可保育所を中心とすること及び、認可以外の既存施設についても認可保育所へと転換を進めることで、収益基盤の一層の安定化に努めます。
現状の待機児童数の推移及び保育の受皿の拡大ペースに鑑みると、保育の量的な需要拡大が踊り場を迎える可能性がありますが、質の高い保育、保護者の利便性、教育機能を備えた「選ばれる園」の需要は継続すると想定されます。
このような想定において、2021年11月に『中期経営計画(2024)』を公表いたしました。具体的には、保育の質を高め、おむつのサブスク導入等により利用者の利便性向上を図り、習いごと教室の展開を進めてまいります。
さらに、マーケティング強化による入所率向上に加えて、新規開設、M&Aによる規模拡大を進めるほか、管理強化を進め収支改善を図る方針です。
当社グループの経営陣は、子育て支援事業に対する社会的要請に応えるために、「子ども達の未来のために」保育の質向上に積極的に取り組むことが重要との認識でおります。このため、保育士が成長できる職場作りや処遇改善、保育士の社会的な地位向上等に向け取り組んでまいります。
また、先に掲げた3つの重点テーマの推進により、これまで進めてきた事業基盤拡大を生かし、規模経済の最大化を実現する方針です。
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