当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。なお、当社グループは、これらのリスクについて、顕在化の可能性及び顕在化した場合の影響とその時期について分析し、各リスクの重要性を把握、評価した上で、発生の回避及び万が一発生した場合でも業績及び財務状況に与える影響を最小限にすべく、具体的施策を検討、実施しています。
本項においては、将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は有価証券報告書提出日2022年6月28日現在において判断したものです。
(1)業界環境に関するリスクについて
①業界の動向及び競合他社
(医療関連受託事業)
当社グループの主たる顧客である医療機関は、2年に1度実施される診療報酬の改定や、現在推進されている医療制度改革等により、その経営に影響を受けることがあります。さらに、医療事務関連に対するアウトソーシング及び業務のIT化の流れも、業務受託機会、受託内容に影響を及ぼす可能性があります。
また、同事業においては、高度な専門的知識が要求され、他事業に比べて参入障壁が高いと認識していますが、これらに対応できる事業者が現れた場合、競合環境が変化する可能性があります。
これらの事業環境の変化が顕在化した場合、受託内容や当社のシェアに変化が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(介護事業)
介護保険制度は、2000年4月の施行以来、在宅サービスを中心にサービス利用者が急速に拡大する中で、老後の安心した生活を支える仕組みとして定着してきました。また、今後を展望すると「団塊の世代」が高齢期を迎え、介護サービスの利用者は増加基調が続くと予想されます。このため、介護関連ビジネスの市場規模は今後も拡大することが予測されており、毎年多くの法人が介護市場に新規参入しています。今後競争が激化し、当社グループの多数の事業所において利用者の確保が困難となるような場合には当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(こども事業)
保育サービスにおいては、女性の社会進出や共働き世帯の増加等を背景に今後も安定した需要が見込まれます。しかしながら、将来的に少子化の加速や事業者の増加等により、当社グループの多数の保育施設において児童数の確保が困難となるような場合には当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
②介護事業・こども事業における施設の新規開設
当社グループでは開設にあたり綿密なマーケットリサーチを行い、介護施設や保育施設の新規開設を進めていますが、好立地に物件を確保できない場合や、事業環境の変化及び経済的要因により開設事業計画に大幅な乖離が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
③社会保険制度の改正
当社グループでは、約3万人の社員を雇用しており、常勤社員及び一部非常勤社員については健康保険や厚生年金、雇用保険等の社会保険を適用しています。少子高齢化等の人口動態を背景に社会保険料率が今後も上昇し、事業主負担が増加する可能性があります。
当社グループでは、特に医療関連受託事業におけるコスト増への対応として、業務の一層の効率化に努めるとともに、適正な価格での受注を推進しています。しかしながら、上記の施策が想定通りに進行せず、コスト増の影響を充分に吸収できない場合には、収益の圧迫要因となり、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(2)事業内容に関するリスクについて
①人材の確保・育成
当社グループの主たる事業は、人材によるサービスの提供によるものであり、事業規模を維持・拡大していくためには、それに見合う人材の確保と育成が必須となります。
医療関連受託事業では、取引先医療機関からの様々なニーズに対応可能な専門性の高い医療事務スタッフを当社グループが受託する業務量の増減に応じて確保・育成していく必要があります。
介護事業及びこども事業では、介護職員及び保育士が慢性的に不足している中、着実に人材を確保し、併せて質の高い人材を育成していく必要があります。また、介護事業及びこども事業は、指定サービス事業者となるために、人員基準及び設備基準が厚生労働省令及び各自治体条例で規定されています。当社の施設はすべて基準を満たすように細心の注意を払っていますが、今後、欠員が生じた場合や基準の変更により追加的な人員補充が必要となった場合において、新たな人材の確保ができない等、人員基準を満たせなくなった場合には、現在提供しているサービスを継続することができなくなる可能性があります。
当社グループでは、人材採用と育成に積極的に取り組んでいるほか、コミュニケーションや処遇改善等の施策に総合的に取り組むことで、定着率の向上や事業の展開に資する人材の安定確保に努めています。しかしながら、上記の施策にもかかわらず、人材確保が計画通りに遂行できなかった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
②M&A
当社は、同業他社等に対するM&A(子会社化や事業譲受等)を実施することにより当社グループの事業を補完・強化することが可能であると考えており、M&Aを積極的に推進しています。その際、対象企業や事業の状況及び財務、税務、法務等について詳細なデューデリジェンスを行う等、意思決定のために必要かつ十分と考えられる情報収集、投資管理委員会における投資効率の精査、検討を実施することで可能な限りのリスク回避に努めています。
しかしながら、M&A後において、当社が認識していない問題が明らかになった場合や、何らかの事由により事業展開が計画通りに進まない場合、対象企業の株式価値や譲受資産の減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
さらに、市場環境や業界全体の事業環境によって、M&Aの対象となり得る案件の業績や買収価格が変化してM&Aの実施件数が計画通りに進まなかった場合にも当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
③個人情報
当社グループでは、医療関連受託事業及びスマートホスピタル事業においては患者情報、介護事業においては介護利用者、こども事業においては保育園児の情報、教育事業においては受講者の情報等、多くの個人情報を取り扱っています。従って、当社グループは、個人情報の保護を経営の重要な課題として認識しており、個人情報保護方針を策定し、計画的に社員教育を実施する等、社内体制の強化を図り、個人情報漏えいの防止に努めています。しかしながら、万が一、個人情報漏えい等の不測の事態が生じた場合は、社会的信用失墜や損害賠償責任の発生等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
④お客様の安全管理・健康管理・事件事故対策
当社グループの介護サービス利用者は高齢者が多いことから、転倒や誤嚥等によって利用者の生命に関わる重大な事故に発展する可能性があります。通所介護(デイサービス)、グループホーム及び有料老人ホーム等においては、食事や入浴等の介護サービスが行われており、食中毒、集団感染等の危険度は相対的に高いと考えられます。また、介護事業及びこども事業は当社の社員が高齢の利用者や園児に対して、長時間直接的に役務を提供しており、虐待や暴力行為が発生する可能性が相対的に高いと考えられます。
当社グループは、介護手順や事件事故防止対策等について、長年の実績に基づいた業務のマニュアル化や社員の訓練等を行っています。
しかしながら、万が一、事件事故や食中毒等が発生し、当社の管理責任が問われた場合には、各施設における事業の存続に重大な影響を受け、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
また、保育所の運営に関しては、上記と同様に万全の体制で臨んでいますが、万が一重大な事件事故が発生した場合やその他保育所の運営上における何らかのトラブルが発生した場合には、各施設における事業の存続に重大な影響を受け、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
⑤情報セキュリティ
当社グループは、情報セキュリティに関する遵守事項、管理規定、セキュリティ事故発生時の対応等を情報セキュリティ方針に定め、業務の効率化のための情報システム構築・運用、IT環境の整備、セキュリティ対策の強化に取り組んでいます。特に2021年度より開始したスマートホスピタル事業のリモート医事サービスの提供においては、ISMS/ISO27001認証を取得し、3省2ガイドラインに準拠した環境でのサービス提供を行う等、情報セキュリティ対策を徹底しています。しかしながら、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、外部からの不正アクセス、サイバー攻撃、コンピューターウイルス侵入等により機密情報・個人情報の漏洩を含む情報セキュリティ上の不備が生じた場合には、その被害の規模により当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
⑥サービスの継続性
当社グループの事業の性格上、サービス提供の継続性が強く求められています。従って、業績が改善されない事業所があった場合でも、収益性の観点だけで直ちに撤退することが困難な場合があります。
⑦長期賃貸借契約
介護事業及びこども事業における事業所・保育所の開設にあたっては、土地及び建物等の設備投資が必要であることから投資リスクが生じます。当該リスクを抑制するために、各施設の展開は賃借を基本とした設備投資戦略を採用しています。このため、投資リスクは抑制されるものの、一定期間は撤退の制約が課せられ、これに反した場合は中途解約による違約金等の支払が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、土地及び建物の所有者である法人、個人が破綻等の状況に陥り、継続的使用や債権の回収が困難となった場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(3)法的規制・訴訟に関するリスクについて
①労働者派遣法
医療関連受託事業においては業務請負が主な形態となっていますが、顧客(医療機関)の需要にきめ細かく対応するため、一部の業務において労働者派遣を行っています。
労働者派遣事業の許認可や派遣可能な業務・期間等は、「労働者派遣法」及び関連諸法令の規制を受けています。当社は、「労働者派遣法」に基づく労働者派遣事業許可を取得しており、「労働者派遣法」には、派遣事業を行う事業主が欠格事由及び当該許可の取消事由に該当した場合に、期間を定めて当該労働者派遣事業の全部または一部の停止を命じることができる旨が定められています。
今後の「労働者派遣法」及び関係諸法令の改正または解釈の明文化等が行われた場合は、派遣売上に影響を及ぼす可能性があります。
②介護保険制度
当社グループが行っている介護事業は、「介護保険法」に基づく介護サービスが中心となっており、「介護保険法」及び関連諸法令の規制を受けます。これらの介護サービスを行う事業者は、都道府県等各自治体の指定を受ける必要があります。「介護保険法」には、介護報酬の不正請求や人員、設備基準違反等当該指定の取消事由に該当した場合に指定を取り消すことができる旨が定められています。
介護保険制度は、3年毎に制度全般の見直し及び介護報酬の改正が行われています。従って、介護保険収入の割合が高い同事業は、法改正の影響を受けやすい特徴があります。
当社グループは、訪問介護(ホームヘルプサービス)や通所介護(デイサービス)を中心とした在宅介護サービスに加え、有料老人ホームや介護保険適用外サービスの強化等により、法改正の影響を分散する取り組みを 行っています。しかしながら、今後の制度の見直しや介護報酬の改定により、展開中の介護サービスへの規制強化や適用される介護報酬額が大幅に引き下げられた場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
③その他の法的規制
当社グループは事業の遂行において、上記を含む様々な法律や規制の適用を受けており、これら法律・規制等を遵守すべく、社内体制の確立や社員教育等に重点的に取り組んでいます。しかしながら、当社グループに対して訴訟や法的手続きが行われ、当社グループに不利な判決が下された場合や法的措置が課された場合、またその影響により当社グループの社会的信頼が喪失した場合には当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
なお、当社は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、2019年5月14日に独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会の立入検査を受けています。本件に関し、法令違反行為があったと認められ行政処分等を受けた場合、その内容により当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
(4)その他のリスクについて
①気候変動
当社グループの事業においては、気候変動による影響は軽微と認識しています。しかしながら、将来において炭素税の導入による税負担の増加、電力価格等のエネルギー価格の高騰、豪雨や台風等の異常気象の激甚化による施設の建物・設備への被害等の影響が生じる場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
②自然災害・感染症
当社グループは、首都圏、中京圏、関西圏を中心に通所介護(デイサービス)や有料老人ホーム等の介護施設及び首都圏を中心に保育施設を運営しています。これらの施設は、地震、火災等不測の災害が発生した場合、介護利用者、保育園児や社員並びに施設の建物・設備等に被害が及ぶ可能性があります。また、感染症の流行や拡大により、施設の稼動ができなくなった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
新型コロナウイルス感染症に関して、当社は2020年2月に全社対策本部を設置し、サービス利用者及び従業員の安全と健康の確保、事業遂行の継続、事業継続リスクへの備え等を、感染拡大の状況や政府、地方自治体の要請等に応じて対応しています。しかしながら、連結売上高の約4割を占める介護事業を中心に、利用者の利用控えや事業所の一時休業、感染対策費用の発生等により業績に影響を与えています。今後も感染拡大の状況や期間により、業績への影響が継続、拡大する可能性があります。
③資金調達
当社グループは、事業運営及び成長に必要な資金を自己資本だけに依存することなく、他人資本である借入等の負債を有効活用することにより、長期的な企業価値の最大化を図っています。この資本の調達過程において、金融市場の不安定化や当社グループの業績又は財務体質等を要因として、計画通りの資金調達が実行できない場合や金利の上昇が発生した場合等には、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
④減損会計の適用
当社グループ各社の保有する固定資産について、今後、収益性が著しく低下した場合には、減損損失の計上が必要となり、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは介護事業を中心にM&Aを積極的に実施しており、その結果、有形固定資産及びのれん等の資産を取得しています。これらの資産についても多額の減損損失を認識した場合、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。なお、2022年3月31日現在、当連結会計年度の連結貸借対照表において、計上されている固定資産のうち、介護・保育事業(現:介護事業及びこども事業)に関する有形固定資産及び無形固定資産の合計金額は33,127百万円であり、連結総資産の46.8%を占めています。また、連結総資産の25.8%に該当する18,283百万円ののれんが計上されており、その主な内訳は、なごやかケアリンク株式会社(2,671百万円)、株式会社こころケアプラン(1,926百万円)、株式会社日本ケアリンク(1,745百万円)となります。なお、株式会社こころケアプランののれんの金額は取得原価の配分が完了していないため、暫定的に処理された金額としています。
当事業年度の貸借対照表に計上されている固定資産のうち、介護・保育事業(現:介護事業及びこども事業)に関する有形固定資産及び無形固定資産の合計金額は9,327百万円であり、総資産の15.1%を占めています。
⑤風評等の影響
当社グループの事業においては、お客様をはじめ関係者の信用、評判が大きな影響力を持つと認識しています。従って、当社では高い理念の下に細心の注意を払って事業を運営していますが、何らかの理由により当社の評判が損なわれた場合または当社に対する好ましくない風評が立った場合には当社グループの業績及び人材採用等に影響を与える可能性があります。
⑥親会社等との関係
当社は、2015年12月16日付で大東建託株式会社から出資を受け入れ、大東建託株式会社は当社発行済株式総数の33.6%(議決権比率ベース)を保有するその他の関係会社に該当しています。また、当社は大東建託株式会社の持分法適用関連会社となり、当社の社外取締役である内田寛逸氏は大東建託株式会社から招聘しています。
当社グループの経営方針、事業展開等の重要事項の意思決定において、大東建託株式会社に対して承認や事前報告を要する事項はなく、独立性・自律性は保たれていると認識しています。また、大東建託株式会社は当社株式を中長期にわたって保有する意向であると認識しています。しかしながら、将来において、大東建託株式会社における当社株式の保有比率に大きな変動があった場合、あるいは大東建託グループの事業戦略が変更された場合等には、当社株式の流動性及び株価形成、並びに当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
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