文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、レオロジー(流動学)の応用工学に基づく独自の開発技術により、常に進歩的な新技術の開発を行い、食文化の継承と発展を通じて、「存在理由のある企業たらん」を目指し、人類繁栄に貢献することを経営の基本理念としています。また、当社グループを取り巻く社会とすべてのステークホルダーの信頼と期待に応え、食品機械工業界におけるパイオニア的役割を果たすと共に、研究開発メーカーとしての使命を遂行してまいります。
世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響に加え、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの高まりなどから、依然として先行き不透明な状況が続いております。当社グループを取り巻く経済環境も不透明感が増しており、原材料や資源価格の急騰により消費物価が上昇し消費マインドが長期に渡り悪化し続けると、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。決して予断を許さない状況ではありますが、収益力を支える業務基盤、財務基盤を強化し、安定収益の確保と持続的な企業価値の向上を目指してまいります。中期経営計画の最終年度となる2022年度は、経済環境を勘案し、最終目標を売上330億円⇒314億円、営業利益率11%以上⇒8%以上、ROE10%⇒7.5%に修正いたしますが、引き続き4つの重点施策(①生産(開発)体制の強化、②販売体制の強化、③人材育成、④業務環境整備)に取り組んでまいります。
<4つの重点施策>
① 生産(開発)体制の強化
食の多様化、グローバル化の進展に伴い、食品加工機械に求めるニーズも多種多様化しております。「品質・納期・コスト」管理を徹底しながら、こうしたニーズにいかに対応していけるかが重要なポイントとなります。2021年度、開発設計では受注機の短納期対応、類似機種の標準化、刷新した基幹システムへの移行に伴う部品構成、機種構成の見直しなどを進めてきました。生産部門では、一部市販部品で調達困難な状況に陥りましたが、機械納期を遵守すると共に、原材料費高騰によるコストアップを最小限にとどめるため、標準機の原価削減に取り組みました。2022年度は、原材料の価格転嫁を余儀なくされる状況も見込まれておりますが、開発設計においては標準化推進をより加速させコスト競争力の向上に努めてまいります。また省エネルギー対応や食品ロスの削減など、社会課題の解決に向けた研究開発にも注力しイノベーションのある商品開発に取り組んでいきます。生産部門においても3D-CADデータの活用と遠隔地や海外からの調達を含めた新たなサプライチェーンを構築し、納期短縮とコストダウンを図ってまいります。
食品製造販売事業では、2021年度、急回復した米国経済を背景にオレンジベーカリーの工場稼働率が好転し、新規投入した「ターンオーバーロボット」の本稼働も開始しましたが、小麦粉やマーガリンなどの原材料費や包装資材、輸送費の急騰により厳しい経営環境でありました。2022年度は、収支改善を行うべく、販売価格の見直しと省人化を含めた生産効率の向上や生産製品の見直しを実施いたします。
② 販売体制の強化
日本国内の市場飽和及び人口減少等から、当社グループの成長には海外市場の拡大が欠かせません。そのため、海外販路開拓・拡大に向けたグローバル活動体制整備が必要となります。2021年度も新型コロナウイルスの影響に伴う海外渡航の制限により、海外での営業活動を自粛せざるを得ない状況が続きましたが、Webとリアル方式を融合させた商談や講習会を実施することにより、営業効率を高めてきました。また中期経営計画に掲げた海外代理店の強化が成果を上げたことも一因となり、海外の業績は回復基調にあります。2022年度は、国内外ともにコロナ禍に伴うマーケットの変化(国内ではスーパーマーケットでの内製化やコンビニの独自性追求、海外では調理加工食品の機械化など)を的確に捉えた戦略を実行し、代理店販売及び関連企業を含めた販売網の拡大を図っていきます。特に中国における新たな販売ルートの開拓(食肉・冷凍食品など)は重要と考えております。新型コロナウイルス収束後は、より一層、社会課題の解決や環境変化の対応(食品ロス・HACCP・賞味期限等)を踏まえた提案力が必要となります。周辺装置やオプションを含めた効率的な生産ラインをお客様のご要望に合わせてご提案する「ターンキー提案」を充実させるべく、エンジニアリング力の向上を図ってまいります。
③ 人材育成
人材は企業の重要な資産であると捉えています。企業の持続的成長には、企業と人材が共に成長していける人材育成基盤の確立と推進が求められます。2021年度も、次世代経営者の育成や各部署内の方針管理(活動計画)の進捗状況を見える化し社員の自覚醸成を図ってきました。また、女性の活躍の場を広げるうえで、2030年度の目標値として「全管理職に占める女性管理職の割合10%」「新卒者に占める女性の割合20%」「全正社員に占める女性の割合19%」を掲げました。2022年度は、新たに人事改革担当役員を設け、「評価と報酬」「採用」「活用(育成・教育)」「組織管理」における改革に取り組み、長期的視野に立った人材育成を推進すると共に、再度グループ全体でコンプライアンスの重要性に対する教育を徹底し、ガバナンスの強化に努めてまいります。
④ 業務環境整備
2021年度は、DX推進を加速させるため、2020年10月から稼働が始まった基幹システムと連携する新たなCRMシステム(顧客管理)を導入し、デジタル業務変革を推進することで営業力・販売力の強化とスピードアップに対応した体制を整えてきました。また、設計と生産の効率的・効果的な連携体制構築のため、PLM(製品ライフサイクル管理)システム及びSCM(生産管理)システムの導入プロジェクトを発足しました。2022年度は、PLM(製品ライフサイクル管理)システムの構築と導入を予定しております。このシステムは、3D-CADと連携を取りモジュール設計の基盤を構築すると共に、設計から製造、メンテナンスまで統合的に管理し業務効率を高めることを目的としております。
また、将来を見据えたサステナビリティ経営は企業成長に欠かせないものと考えており、2021年10月に代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を発足しました。当社は、サステナビリティの3つの重要課題(「環境」「人材・組織」「技術開発」)を掲げ、サステナビリティをめぐる課題への取組みを進めてまいります。
なお、当事業年度において、当社の海外連結子会社であるオレンジベーカリーで不適切な会計処理の事実が判明しました。
当社はこの調査のため、弁護士・公認会計士などの社外の専門家のみで構成される第三者委員会を設置し、2022年2月28日に当該不適切な会計処理の内容と影響額、発生原因、再発防止策の提言についての調査報告書を受領し、第1・第2四半期の決算短信の訂正と関東財務局へ第1・第2四半期報告書の訂正報告書の提出を行いました。 当社は第三者委員会の調査報告書において指摘された原因の分析や再発防止策の提言を真摯に受け止め、取締役会において経営責任の明確化、業務フローの見直し等、具体的な再発防止策を決議し一部その運用を開始しております。引き続き、再発防止策の実行と、内部統制の強化についてグループ全体で取り組んでまいります。
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