業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態、経営成績の状況

a.当連結会計年度の概況

当期の世界経済は、国、地域により新型コロナウイルス感染拡大の波はあるものの、ワクチン接種や治療薬の進展を背景に先進国を中心に経済活動の正常化が段階的に進められ、総じて回復基調となりました。他方、ウクライナ情勢や中国のゼロコロナ政策に伴う主要都市ロックダウンなどの地政学的リスクの高まりや資源価格の上昇、米国の金融引き締め等により、先行き不透明感は強まっております。

わが国経済も、ワクチン接種の普及と社会経済のウイズコロナ対策が定着するなか、経済活動は緩やかに回復に向かいました。また、設備投資の動向を知るうえで先行指標の一つである機械受注統計の推移を見ても、2021年4~6月は11,736億円(前年同期比26.5%増)、7~9月は12,700億円(同33.7%増)、10月~12月は13,014億円(同23.4%増)、1月は4,321億円、2月は4,245億円と回復基調にあります。

このような環境下、当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大防止への対応として、引き続き各セグメントが属する国の状況に応じて時差出勤や在宅勤務等を継続しながら、プラスチック成形関連のコアビジネスにおきましては、品質の向上、納期の確守、新製品の開発等、競争力強化によるマーケットシェアの拡大を図るとともに、電池、食品、化粧品等の新規販売分野の開拓・拡大に注力してまいりました。

この結果、当連結会計年度における受注高は前第2四半期を底として増加に転じ、前年同期比では58億9千7百万円増(同38.7%増)の211億4千4百万円、受注残高は前年同期比39億2千5百万円増(同83.4%増)の86億3千1百万円となりました。また、売上高につきましては、前年同期比15億9千5百万円増(同9.5%増)の183億8千3百万円となりました。

損益面では、材料費を中心とした原価低減や諸経費の削減等に努めたことなどにより、売上総利益率が改善(27.3%→28.1%)し、営業利益は前年同期比2億5千4百万円増(同50.3%増)の7億6千万円、経常利益は前年同期比3億6百万円増(同51.4%増)の9億3百万円となりました。

特別損益では、固定資産売却益5百万円、投資有価証券売却益1百万円を特別利益に、子会社清算損8百万円を特別損失に計上し、更に法人税、住民税及び事業税2億9千万円、法人税等調整額6千5百万円を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比2億4千4百万円増(同82.4%増)の5億4千万円となりました。

 

b.報告セグメント別の概況

日本におきましては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発出等があったものの、ワクチン接種の進展に伴い経済活動は徐々に正常化に向かっており、日用雑貨や容器・物流関連に加え、新素材・食品シート関連を中心に受注は堅調に推移しました。一方、売上高については自動車関連の前年度末の受注残高が少なかったことから、前年同期比5億4千2百万円減(同4.7%減)の110億9千万円となりました。損益面では、売上高減少に伴う売上総利益の減少により、営業利益は前年同期比2億8千7百万円減(同30.1%減)の6億6千8百万円、セグメント利益(経常利益)は前年同期比1億8千1百万円減(同16.2%減)の9億3千4百万円となりました。

東アジアにおきましては、米中貿易摩擦の長期化や中国における厳格なゼロコロナ政策による景気の下押し等により景気は減速傾向にあるものの、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連並びに電子業界を中心とした受注増により、売上高は前年同期比19億6百万円増(同41.5%増)の64億9千8百万円となりました。損益面では、売上総利益率の改善(20.9%→24.9%)と売上高の増加に伴う売上総利益の増加等により、営業利益は1億2千9百万円(前年同期は3億6百万円の営業損失)、セグメント利益(経常利益)は3千2百万円(前年同期は3億5千9百万円の経常損失)となりました。

東南アジアにおきましては、各国はウイズコロナ政策を志向し、行動制限の緩和が徐々に進んでいることから設備投資も回復基調にあり、売上高は前年同期比3億5千6百万円増(同25.0%増)の17億8千1百万円となりました。損益面では、売上総利益率の改善(29.5%→32.5%)と売上高の増加に伴う売上総利益の増加等により、営業利益が2千1百万円(前年同期は1億1千3百万円の営業損失)、セグメント利益(経常利益)が3千2百万円(前年同期は1億9百万円の経常損失)となりました。

北中米におきましては、中米での半導体不足による自動車関連を中心とした製造業の減産はあったものの、売上高は前年同期比1億1千9百万円増(同123.4%増)の2億1千6百万円となりました。一方、損益面では、売上総利益率の悪化(33.1%→29.1%)と諸経費の増加等により黒字化には至らず、営業損失が7千8百万円(前年同期は8千5百万円の営業損失)、セグメント損失(経常損失)が7千6百万円(前年同期は9千3百万円の経常損失)となりました。

 

なお、報告セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。

 

 

c.資産、負債及び純資産の状況

流動資産は、前連結会計年度末に比べて、商品及び製品が減少しましたが、現金及び預金、受取手形及び売掛金、契約資産、仕掛品が増加したこと等により8億3千3百万円増加し、166億4百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末に比べて、投資有価証券、繰延税金資産が減少しましたが、建物及び構築物、機械装置及び運搬具、土地が増加したこと等により2億9千1百万円増加し、54億3千1百万円となりました。この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて11億2千4百万円増加し、220億3千6百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて、短期借入金、1年内償還予定の社債が減少しましたが、支払手形及び買掛金、製品保証引当金、未払法人税等が増加したこと等により、2億3千1百万円増加し、69億4千8百万円となりました。固定負債は、前連結会計年度末に比べて、社債、長期借入金が減少しましたが、リース債務、繰延税金負債、退職給付に係る負債が増加したこと等により1億9千2百万円増加し、37億6千5百万円となりました。この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて4億2千3百万円増加し、107億1千4百万円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて、その他有価証券評価差額金が減少しましたが、利益剰余金、為替換算調整勘定が増加したこと等により7億円増加し、113億2千2百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が9億1百万円となり、減価償却費3億2千1百万円、製品保証引当金の増加3千3百万円、退職給付に係る負債の増加9千万円、売上債権の減少2億7千3百万円、仕入債務の増加7億9千万円等の収入要因が、貸倒引当金の減少5千5百万円、保険解約益3千9百万円、棚卸資産の増加2億8千1百万円、法人税等の支払額2億8千8百万円等の支出要因を上回り、16億4百万円の収入超過(前年同期は18億7千4百万円の収入超過)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出3億3千8百万円、ソフトウエアの取得による支出3千4百万円、子会社清算による支出2千1百万円、保険積立金の解約による収入5千6百万円等により、4億1千6百万円の支出超過(前年同期は1億5千9百万円の支出超過)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少による支出6億3千2百万円、長期借入金の減少による支出3億7千8百万円、社債の償還による支出3千7百万円、配当金の支払額2億1千1百万円等により、12億2千7百万円の支出超過(前年同期は5億8千9百万円の支出超過)となりました。

上記結果の他に、換算差額が1億2千1百万円となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末に比べて8千1百万円増加して、67億1千1百万円となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、北中米には生産拠点が存在しないため、記載しておりません。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

日本

10,088,511

△2.3

東アジア

6,252,064

78.5

東南アジア

481,361

18.1

合計

16,821,937

18.1

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  金額は販売価格によっております。

3  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

日本

13,261,403

33.4

5,469,219

98.8

東アジア

5,973,422

51.7

2,715,377

67.0

東南アジア

1,715,225

37.4

400,262

49.3

北中米

194,153

57.5

46,675

△22.5

合計

21,144,204

38.7

8,631,534

83.4

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

日本

10,456,368

△5.1

東アジア

5,951,796

39.4

東南アジア

1,764,168

25.8

北中米

211,419

121.0

合計

18,383,752

9.5

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

受注高は前第2四半期を底として増加に転じており、年度全体では前年同期比38.7%増、売上高は前年同期比9.5%増となりました。日本セグメントにおきましては、断続的な新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言の再発出等がありましたが景気は回復基調にあり、日用雑貨や容器・物流関連分野、新素材・食品シート関連は堅調に推移しました。東アジアセグメントにおきましては、中国における厳格なゼロコロナ政策による景気下押し要因はあったものの、VRレンズ等の光学関連分野は引き続き堅調に推移し、電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池関連等についても比較的堅調に推移しました。東南アジアセグメントにおいては、新型コロナウイルスの感染拡大は続いているものの、東南アジア各国はウイズコロナ政策を志向しており、行動制限の緩和が徐々に進められたことから、民間設備投資は回復基調で推移しました。一方、北中米セグメントにおいては、中米における半導体不足による自動車関連を中心とした製造業の減産などにより、設備投資は低調に推移しました。

売上総利益率は、日本セグメントにおきましては、主に材料費を中心とした原価低減に努めましたが、売上高の減少により、前年度27.0%→当年度26.2%と0.8%悪化しました。東アジアにおきましては、売上高の増加と製造諸経費の削減に努めたこと等により、前年度20.9%→当年度24.9%と4.0%改善しました。東南アジアにおきましては、売上高の増加により、前年度29.5%→当年度32.5%と3.0%改善しました。北中米におきましては、売上高は増加しましたが、変動諸経費の増加により、前年度33.1%→当年度29.1%と4.0%悪化しました。

販売費及び一般管理費は、売上高増加に伴う運賃諸掛の増加、海外における賃金改定に伴う人件費の増加等により前年同期比で8.0%増加しました。

営業外損益全体では、為替差益1億5百万円、保険金解約返戻金3千9百万円、助成金収入1千5百万円等の計上により1億4千3百万円の利益(前年同期は9千万円の利益)となりました。

特別損益全体では、固定資産売却益5百万円、子会社清算損8百万円等の計上により2百万円の損失(前年同期は4千2百万円の損失)となりました。

また、法人税、住民税及び事業税2億9千万円、法人税等調整額6千5百万円を計上し、海外子会社の損益の内、非支配株主に帰属する利益として3百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比2億4千4百万円増(同82.4%増)の5億4千万円となりました.

 

b.財政状態

当社グループの経常運転資金(売上債権+棚卸資産-仕入債務)は、概ね月商の4~5か月程度であり、機械製造業として適正であると考えております。現預金残高は、大型案件の受注や売上時期が必ずしも毎月一定額とはならない当社の事業形態を考慮して、概ね月商の2~3か月程度を適正水準としております。また、海外子会社においては、資金の現地調達事情や緊急時の手元流動性をある程度考慮するようにしております。ただし、当年度においては、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大等を受けて手元流動性を重視し、前年度から引き続き通常期より現預金残高を増額しております。また、当年度においては、受注高の増加に伴う買掛金残高の増加により経常運転資金が減少したことから、有利子負債(長短期借入金及び社債)が減少しております。現在の各勘定科目の水準は、現状の受注状況や、効率性と安全性の両面から考えると適正であると判断しており、今後も自己資本比率45%程度、現預金は月商の2~3か月程度、有利子負債は月商の4か月程度を一つの目途値と考えております。

当社は、今後も棚卸資産の削減、売掛金の早期回収等により営業キャッシュ・フローの拡大を図るとともに、事業投資は営業活動によるキャッシュ・フローの収入超過額の枠内とすることを原則といたしますが、株主価値を持続的に向上させるため、新規事業開発や海外展開、戦略投資等には積極的な投資を実施していく予定です。

一時的に営業活動によるキャッシュ・フローの収入超過額が不足する資金需要については、事業投資資金は長期借入金や社債により、運転資金は短期借入金により安定的に調達することを基本方針としております。また、現時点では具体的な予定はありませんが、大型の設備投資やM&A等の戦略投資の際には、エクイティファイナンスも今後は選択肢の一つとして検討する可能性があります。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載のとおり、当社グループは、中長期的には、自己資本利益率(ROE)を安定して8%以上確保できる事業構造の構築と、自己資本配当率(DOE)を安定して2.5%以上確保することを目標しております。

当連結会計年度におきましては、利益剰余金の増加に加えて為替換算調整勘定が増加したこと等により自己資本比率(前年度49.9%→50.5%)が上昇いたしましたが、売上高の増加による売上総利益の増加等により収益性(売上高当期純利益率:前年度1.7%→3.0%)が改善し、自己資本利益率(ROE)は5.0%と目標の8.0%は未達となりましたが、前年度の2.8%と比較して2.2%改善いたしました。配当については、中長期的な需要予測や自己資本配当率を安定して確保する観点から1株当たり年間30.0円(中間配当15.0円、期末配当15.0円)の配当を実施させていただくことにより、自己資本配当率(DOE)は2.0%(前年度は2.0%)となりました。

中長期的な目標の達成に向け、適正な販売価格の維持と製造工程における業務効率化並びに中期経営計画、優先的な対処課題の着実な推進により、継続的な企業価値の向上と事業体質の更なる強化に努めてまいります。

 

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