事業を取り巻く経済環境は、これまで以上に変化が早く、厳しさを増しており、当面の機敏な対応を求められております。新型コロナウイルス感染症再拡大の勢いがいまだ衰えない中、欧米を中心にwithコロナへの政策転換による経済活動再開の兆しが見られるものの、繰延需要の先取り対応や米中覇権争い、カーボンニュートラルへの動きによるエネルギー価格の上昇や物流の停滞、一部資材の生産供給の遅延、急激な円安及びこれらによるインフレーションの顕在化に加え、ロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁の影響など、不透明感を強めております。
住友重機械グループは、1888年(明治21年)、住友グループの祖業である別子銅山の工作方として創業以来、社会と産業の発展とともに歩んできました。住友グループ各社に共通の理念と位置付けられる「住友の事業精神」は、社会性が重要視される現在の環境との親和性も高く、当社グループにとっても経営の基本であり、この精神に則り企業使命を果たしていきます。
当社グループは「一流の商品とサービスの提供を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、時代の要求に応える多様な製品やサービスを提供してきました。今後も製品及びサービスのさらなる深化を図り、顧客の声に応え続けるとともに、持続可能な社会実現に向けて、イノベーションにより社会課題解決へのソリューションとなる製品及びサービスを提供していくことが、当社グループの持続的な発展と企業価値向上につながり、株主の皆様及び従業員・地域社会の期待に応えることになると考えています。
新型コロナウイルス感染症の度重なる流行下で、当社グループは、従業員の安全確保、社会的要請への最大限の協力、事業基盤の維持の三点に取り組み、グローバルサプライチェーンを維持しつつ、グループ内連携の強化による競争力強化を図ることで、当初想定以上の業績を確保することができました。また、ポストコロナでの経済活動再開をみすえた生産財への需要増加により、前期に比して受注の拡大を図ることができ、特に、半導体製造装置や電機制御関連では、大きく受注を拡大することができました。今後は、これら生産拡大に対応する投資を積極的に実施してまいります。
2021年度に公表いたしました「中期経営計画2023」においては、企業価値と社会価値の両立を長期の目標として、社会や市場の構造が変化しても持続的に成長し利益を出し続け、社会価値創造に貢献できる企業を当社グループのあるべき姿としました。
社会価値創造のために解決すべき課題は、2030年を念頭に置いたメガトレンドや将来目指す姿からバックキャスティングして設定しております。
「中期経営計画2023」では、2030年までの長期目標に向けた最初の中期経営計画期間として基礎固めを行うという位置づけの下、以下の方針で取り組んでまいります。
新型コロナウイルスをはじめとする、あらゆるリスクに対応するBCP(事業継続計画)を構築しつつ、成長に必要なコンピテンスへの投資を続け、環境変化に耐えうる強靭な事業体を目指し引き続き取り組んでまいります。エネルギー価格や資源価格が上昇する中においても、2021年度は当初の業績目標を達成することができ、今後も積極的な設備投資及び研究開発投資を実施することで、より強靭な事業体の構築に努めてまいります。
DX*活用推進によるビジネスプロセスの変革や全社的な組織開発活動である「PRIDE プロジェクト」への取組みなどを進め組織能力の一段の強化を図るとともに、財務パフォーマンスを向上させ、加えて事業ポートフォリオの見直しによる経営資源の有効活用を図るなど、企業価値を向上させるための変革を加速してまいります。また、事業ポートフォリオの見直しに伴い、2021年度より報告セグメントを変更するとともに、セグメント毎の協議体及び取締役会メンバーを含めた長期戦略を議論する会議体を設置し、「選択と集中」を含めた当社グループ事業の在り方に関する議論を進めております。このような取組みを加速し、新たなセグメント内でのシナジー発揮を進め、企業価値の向上を図ってまいります。
健康で安全な職場づくりを進め、多様な人材が組織の中で活躍できるようその育成(人材開発)に努めてまいります。加えて、ダイバーシティを推進し、グローバルにリソースを活用して、働きやすい会社への変革を一層推進してまいります。2021年度においては、女性管理職数の2023年度目標を前倒しで達成するとともに、女性監査役を選任するなどダイバーシティの推進に積極的に取り組み、またリモート勤務体制の推進により安定的に事業活動を実施する体制の構築に努めており、今後も取組みを強化してまいります。
経済的、技術的発展に寄与する製品とサービスの提供を通じて、社会課題の解決と企業価値の向上に継続して取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。特に「環境・エネルギー」及び「自動化・デジタライゼーション」を重点領域と位置づけ、開発の推進と新製品の上市を行っており、引き続き製品・サービスの提供によるCSV**推進に取り組んでまいります。
当社グループの事業活動及び提供する商品ライフサイクル全体を通じて、温室効果ガスの削減やサーキュラー・エコノミーの推進、エネルギー効率の向上など、環境負荷の低減に一層注力してまいります。また、当社グループでは2021年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)へ賛同し、2030年におけるCO2削減目標の達成や2050年のカーボンニュートラル実現への取組みを進め、脱炭素社会実現に向けた気候変動対策に貢献してまいります。
脱炭素社会実現に向けた気候変動に関する当社目標は以下のとおりであります。
・2030年における当社製品製造時のCO2排出量(Scope1、2)50%削減(2019年度比)
・2030年における当社製品使用時のCO2排出量(Scope3 Cat.11)30%削減(2019年度比)
・2050年のカーボンニュートラル達成を目指す
当社は、2022年6月29日開催の第126期定時株主総会において承認されました事業年度の変更(「第6 提出会社の株式事務の概要」参照)に伴い、また、withコロナにおける事業環境の変化、半導体分野での旺盛な設備投資状況、円安の進行及びデフレからのインフレ転換を考慮し、2021年度に公表いたしました「中期経営計画2023」の数値目標を修正することとし、最終年度である2023年度に受注高1兆700億円、売上高1兆500億円、営業利益760億円を達成することを新たな財務目標といたします。なお、ROIC***を引き続き当社グループの経営指標とし、ROIC>WACC****の達成を継続するとともに、ROIC7.5%以上の確保を目指してまいります。
*DX(デジタルトランスフォーメーション Digital Transformation)とは、ITの活用により、あらゆる活動をより良い方向に変化させることを指します。
**CSV(共有価値の創造 Creating Shared Value)とは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで自社の持続的成長につなげるという考え方です。
***ROICとは、投下資本税引後利益率であり、投下資本(株主資本と有利子負債の合計金額)に対してどれだけ利益を出しているか、資本のコストに見合う収益性があるかを示す指標です。
****WACC(加重平均資本コスト Weighted Average Cost of Capital)とは、負債コストと株主資本コストを加重平均したものであり、資本コストの代表的な計算方法です。
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