課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当年度末現在において当社が判断したものです。

当社は、「グローバル・メジャー・ブランド(以下「GMB」)」すなわち「最も多くのお客様から信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業(ブランド)」となることを長期目標としております。

世界的に新型コロナウイルスの感染拡大がいまだ収束せず、不安定な経済状況が続いておりますが、当社の事業はエッセンシャルビジネスとして根強いニーズに支えられております。しかし、依然続くコロナ禍において、当年度は生活様式や仕事環境の変化に対応するための進化が求められました。今後も、企業はめまぐるしく変わる社会の価値基準やニーズに応え、さらに進化して社会問題を解決することが求められるものと考えております。

新型コロナウイルスの感染拡大に限らず、世界では多くの社会問題が複雑に絡み合って深刻化しておりますが、当社は次の4つのメガトレンドに着目しております。

・経済成長と資源循環の両立(サーキュラーエコノミー)

・温室効果ガス排出量ネットゼロ(カーボンニュートラル)

・循環・共有を通じて生産物の限界費用が限りなくゼロとなる社会

・グローバル資本主義だけに拘らない新たな中小コミュニティ形成

当社は、これらのメガトレンド及び当社が果たすべき役割を踏まえ、GMBの実現を加速するために2030年を見据えた長期ビジョン「GMB2030」を策定しております。GMB2030の中で、当社はあるべき姿として「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げております。当社はGMB2030を実現するために、既存事業の拡充に加え、新たな事業展開として食料の生産性・安全性を高めるソリューション、水資源・廃棄物の循環を促進するソリューション、都市環境・生活環境を向上させるソリューションの提供に取り組んでいきます。これらのソリューションを通じて持続可能な社会へ最大限の貢献をすることにより、長期にわたる持続的発展をめざします。

加えて、GMB2030の実現に向けた土台づくりとして、2021年から2025年までの5年間を対象とする中期経営計画2025を策定しております。中期経営計画2025において、当社を取り巻く環境変化と事業上の課題について、当社は次のとおり考えております。

・企業を取り巻く社会の変化により企業の社会的責任がより重くなっていること

・持続的成長を可能とする、社会課題・メガトレンドを見据えた新たなビジネスモデルの確立が求められていること

・既存事業の拡大機会を確実に捉え、さらなる成長に向けた基礎固めを進める必要があること

・競争環境の激化や先行投資により利益率が低下傾向にあること

・事業のグローバル化が進む中で、事業運営体制が実態に合わなくなってきていること

これらに対応すべく、当社は中期経営計画2025において次の5項目をメインテーマとして取り組んでいきます。

①ESG経営の推進

②次世代を支えるGMB2030実現への基礎づくり

③既存事業売上高の拡大

④利益率の向上

⑤持続的成長を支えるインフラ整備

「既存事業売上高の拡大」と「利益率の向上」を通じて投資と収益性向上の両立を実現するとともに、その他の3つのテーマに対して積極的、組織的、計画的に経営資源を投入していきます。

なお、中期経営計画2025においては、売上高や営業利益に加えて親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)や営業キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フロー等も重要指標とし、資本効率を重視した経営をめざしております。

以上を踏まえ、当社は次の重点施策を推進していきます。

 

 

(1) ESGを経営の中核に据えた事業運営の推進

企業の社会的責任がますます重くなる中で今後もサステナブルな企業であり続けるため、当社はこれまで以上にESGを意識した取り組みを進めていきます。「食料・水・環境」分野を事業領域とし、「環境負荷低減・社会問題解決」に事業として取り組む企業として、ESGの一般的な施策に加え、クボタグローバルアイデンティティ(企業理念)に根差した事業活動を推進することによって企業としての存在価値を高めていくことをめざします。

 

(2) K-ESG経営の重要事項(マテリアリティ)

ESGを中核に据えたクボタらしい事業運営であるK-ESG経営の骨格となる4つの領域でそれぞれをブレイクダウンした12の重要事項・マテリアリティを推進していきます。

1つ目の領域は「事業を通じた環境・社会課題の解決」です。GMB2030は、新たなソリューションへの取り組みと既存事業の拡充で実現していきます。その方向性として、「食料の生産性・安全性の向上」、「水資源・廃棄物の循環の促進」、「都市環境・生活環境の向上」を掲げております。メガトレンドを考慮したこれらの方向性に加え、昨今注目されるカーボンニュートラルはもはやトレンドではなく、人と企業が直面している課題であり、当社でも事業を行う上での前提条件・共通課題と捉え、「気候変動の緩和と適応」もK-ESG経営の新たな柱として取り組んでいきます。

2つ目の領域は「課題解決を実現するイノベーションの加速」です。地域や年齢・ジェンダーの枠を越えて多様な人財が本音で意見を交わし合い、互いに尊重しあえる良好な関係を社内外の部門、関連企業、サプライヤーとの間で構築していきます。また、スタートアップや異業種企業、大学等との産官学の連携も進めていきます。そのような姿をめざして「多様な価値観に基づく事業運営」並びに「研究開発とパートナーシップの強化」を進め、当社ならではのイノベーションを生み出していきます。

3つ目の領域は「ステークホルダーの共感・参画」です。ステークホルダーの共感と参画に向けて、「従業員の成長と働きがいの向上」、「お客様の満足と安全」、「透明性の向上と対話」に重点的に取り組みます。当社グループの事業活動や姿勢を透明性高く発信して対話を重ねることで、あらゆるステークホルダーに共感・参画の輪を拡げていきます。

4つ目の領域は、「持続可能性を高めるガバナンスの構築」です。当社を取り巻く環境は複雑で変化が大きく、将来の予測が困難な状況になっております。このような状況で、取締役会の監督機能強化等の「コーポレート・ガバナンスの強化」、業務執行上のリスクを低減する「リスクマネジメント強化」、タウンホールミーティング等による経営層と従業員の対話を通じた「K-ESG経営の浸透と実践」を実行することで、変化へ対応できる仕組み・ガバナンスを構築していきます。

 

(3) 中期経営計画2025の推進

「ESG経営の推進」に加え、その他の中期経営計画2025の骨子についても着実に推進していきます。

「次世代を支えるGMB2030実現への基礎づくり」では、センシング・分析システム、AI等を利用したスマート農業の高度化に取り組んでおり、KSASのオープン化による他システム・アプリとのデータ連携等を進めております。また、出資を通じて資源循環ビジネスの構築に向けた活動を開始しております。

「既存事業売上高の拡大」では、北米工場での建設機械(コンパクトトラックローダ)の生産立上げ準備を順調に進めているほか、アセアン地域では畑作向けインプルメントの開発も進めております。

「利益率の向上」では、材料コストダウン活動や生産性の改善を進めております。

「持続的成長を支えるインフラ整備」では、グローバル需給管理システムの導入、DX人財育成に向けた教育プログラムの展開、問題発生前に未然防止を行う「リスクベースアプローチ」を推進していきます。

「共通テーマとしてのDX推進」では、AIデータ分析や動画解析等による製品・サービス・生産現場での変革を進めるほか、ビジネスプロセスについても事務作業の自動化やペーパーレス化を引き続き推進していきます。なお、当年度においてこれらの取り組みが評価され、国が定める「DX認定企業」にも登録されました。

 

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