研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、既存技術・各種装置の高度化並びに技術の差別化・競争力の向上を目指し、開発を行っております。また、新分野への積極的展開及び新技術・新製品開発を行っており、当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発費は、エンジニアリング事業 115 百万円、単体機械事業 115 百万円の総額 230 百万円であります。主な研究開発は次のとおりであります。

 

(研究開発事業)

「都市型藻類バイオマス生産用フォトバイオリアクター(PBR)の開発・実証」

当社は、1980年代からクロレラをはじめとした微細藻類に関わる培養生産技術に携わっております。また、近年の藻類オイルを用いたバイオジェット燃料等などの研究向けに、微細藻類の収穫向けに当社主力製品である分離板型遠心分離機「三菱ディスクセパレータ」の提案・販売を行っております。また、2013年度~2018年度の藻類産業創成コンソーシアムとの共同研究(福島プロジェクト)をはじめ、微細藻類研究や実証事業の研究開発に参画し、目的に応じた藻類バイオマスの収穫設備や、オイル・色素等の成分抽出等、新たな装置の開発も行っております。

2020年度からは、都市部のビルや工場でも微細藻類を培養できる都市型バイオマス生産装置として閉鎖系微細藻類培養技術としてフォトバイオリアクター(PBR)の開発にも取り組んでおります。

一方、昨今のSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の世界的な需要拡大に伴い、藻類オイルを用いたバイオジェット燃料の実用化に向けた研究開発も加速しております。このため、株式会社ユーグレナ殿や株式会社デンソー殿、伊藤忠商事株式会社殿等と共に、2020年度~2022年度のNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構)の公募事業「バイオジェット燃料生産技術開発事業/微細藻類基盤技術開発」(再委託)に取り組んでおり、当社は食用油脂製造分野での実績や藻類バイオマスの分離技術の知見を活かし、効率的な藻類オイルの抽出装置の開発を担当してまいりました。

2022年度は、ヌッチェフィルター型抽出装置のベンチスケール機を、株式会社ユーグレナ殿が整備する微細藻類の屋外大量培養研究拠点に納品し、将来の事業化に向けた、油分抽出の行程や条件等の検討を進めてまいります。

 

(エンジニアリング事業)

「吸蔵合金水素圧縮機の開発」

近年、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減を目的に、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速しており、クリーンエネルギーである水素が注目されております。当社では高品質で低コストな水素供給設備の開発に取り組んでおり、2021年度においては、水素貯蔵用途として実用化されている水素吸蔵合金が、温度により水素を吸蔵、放出する特性に着目し、吸蔵合金水素圧縮機の開発を行いました。

 本圧縮機は、複数の水素吸蔵合金を充填した反応器により構成されており、

 ・250℃程度の温度域にて吸蔵された水素を放出させることによる水素昇圧工程

 ・常温にした熱媒により反応器を冷却し、水素を吸蔵させる水素吸蔵工程

を繰り返すことで連続的な昇圧操作が可能となっております。

実証試験機を製作し、公益財団法人水素エネルギー製品研究試験センター(HyTReC)において水素昇圧サイクル試験を実施し、吐出圧力19.6MPaG、水素流量1Nm3/hの開発目標を達成しました。また、連続運転中に圧縮性能が損なわれず、安定的に1Nm3/h以上の水素が送ガス可能であることを確認しております。

商用化が実現すると、流通する水素の圧力域(19.6MPaG)への昇圧用途に加え、水素ステーションにおいては、既存機械式圧縮機との組み合わせにより機械式圧縮機昇圧負荷を軽減し、より低コストで安全な運営をはかれる可能性があります。今後は、水素吸蔵合金充填量の増加等によるスケールアップを検討し、早期の吸蔵合金水素圧縮機の商用化を目指し、当社の水素事業における新たな技術ラインナップの一つとして、更なる事業展開をはかりたいと考えております。

 

 

「高効率消化システムによる地産地消エネルギー活用化技術」

本研究は、2017年度国土交通省の下水道革新的技術実証事業(B-DASH事業)に「高効率消化システムによる地産地消エネルギー活用技術の実用化に関する実証研究」が採択され、実証施設(消化槽容量:500m3)を建設、実証運転データによる評価委員会の性能評価を受け、2020年3月に国土交通省/国総研よりガイドラインが公表されております。

昨年度の自主研究テーマとして、本システムを導入する場合に各自治体が懸念される可溶化汚泥による返流水負荷上昇に伴う放流水質の悪化に対して調査研究を実施致しました。

約1年間に及び調査を実施した結果として、高効率消化に伴う返流水負荷上昇による放流水質への影響は見られないことを確認いたしました。この結果は、他社熱可溶化技術が消化槽投入側の有機物全量に対して熱可溶化を実施するのに比較して、当社の可溶化技術は消化後の消化脱水汚泥を可溶化するため、余分な熱量を使わず、かつ可溶化する汚泥量を調整(投入固形物量の約50%)出来ることに起因していると考えております。

国内各自治体でも脱CO2への取組みとして、改めて消化設備への取り組みが注目されており、今後はこの調査結果をもとに、各自治体向けに本システムの更なる導入促進・拡販に取り組んでまいります。

 

(単体機械事業)

「iFactory®の開発」

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構)が取り組む「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/テーマ設定型事業者連携スキーム」の一環で、当社は現在のバッチ式製造法にかわり、連続生産方式を採用した再構成可能なモジュール型の医薬品製造設備「iFactory®」(アイファクトリー)の開発に参画しております。

2021年度、当社は連続ろ過機と連続乾燥機を製作、iFactory®のモジュールに組み込み、動作確認を実施いたしました。

脱炭素、超高齢化社会において医薬品を含む機能性化学品を持続的に供給可能な産業構造に変革すべく、異業種機関が連携して、省エネ・省人型革新的連続生産システム「iFactory®」の開発は、第4回日本オープンイノベーション大賞「経済産業大臣賞」を受賞しました。

 今後はプロトタイプの製作と実証を進め、日本の医薬品製造における省エネルギー化・生産と資源の効率化に貢献する生産設備の構築と実用化に取り組んでまいります。

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