課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下に記載した文章のうち将来に関する事項のものは、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針及び経営環境について

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大の長期化による社会・経済の変化や、資源価格高騰による企業収益や家計消費への下振れ懸念が起こる中で、安全保障上の脅威の台頭による世界的な情勢不安が国内景気にも影を落としかねない不安定な状況で推移して参りました。

 当社グループの主力である上下水道水処理分野においては、政府による耐震、災害対策を基本とする国土強靱化の推進の下、水道インフラ整備においても耐震化等に基づく老朽施設更新等の投資が継続し、各発注自治体において更新予算の縮小など財政的制約がある中で水道施設の更新が進められており、一部自治体では水道施設更新・整備において、DB(設計、施工一括発注)、DBO(設計、施工、運転管理一括発注)による発注方式が採用され、事業環境に変化が見え始めております。また、民間の水処理分野においては、国内における生産活動の持ち直しの兆しはあるものの、工場設備投資において力強さに欠ける状況で推移して参りました。

 当社グループでは、このような事業環境の下で、2020年度から3年間の新たな中期経営課題を策定し、直面する事業環境変化への対応として以下の主要課題を3年間にわたり実行しております。

◎水道分野において、当社の強みの豊富な納入実績をベースに、グループ一体での顧客対応体制の整備と製品開発力強化を通じた高付加価値サービスの提供の実現

◎今後上水道分野での一層の増加が見込まれるDB、DBO案件への対応強化

◎下廃水分野における販売強化による水道分野に次ぐ事業の柱の構築及び収益拡大の実現

 また、2021年6月に新たに企業理念を次の通り制定し、社員1人1人への浸透活動をスタートしました。

 <水道機工グループ 企業理念>

 「100年先も人と地球をつなぐ情熱で、笑顔あふれる環境を技術と製品で創造し、社会に貢献します。」

 ※次の100年先もこれまで培ってきた責任と情熱で全てのステークホルダーと向き合うことにより持続的発展を目指し、新たな技術と製品を創造し、社会に広げることで笑顔があふれる環境を実現して、社会貢献を行う決意を込めております。

 

(2) 今後の事業見通し及び事業方針並びに対処すべき課題

今後の見通しとしましては、国内景気は、感染症の周期的な増大や物価上昇等による下振れリスクを抱え、先行きを見通すことが困難な状況で推移しております。

上下水道分野におきましては、今後も水道インフラへの更新投資需要は変わらず推移すると予測される中で、顧客の設備更新においては多様な発注形態の検討が進み、その変化により厳しい市場環境となる見通しです。また、民間の水処理分野におきましては、コロナ禍における企業収益の先行き不透明感が設備投資意欲の回復を妨げており、回復までに依然時間を要する見通しです。

当社グループでは、グループ全体の取組として、企業理念とビジョンの浸透を通じて、従業員一人ひとりの意識向上およびガバナンス体制の充実化を図って参ります。更にグループ経営の総合力強化のため、営業、技術、生産、管理等の機能において組織の全体最適化を図る施策を実行いたします。また、資格不正事案の再発防止に関する取り組みの継続及び安全・品質保証に関する独立組織の設置を行い、社会から信頼される会社を目指します。

事業別の課題に関しては以下の通りとなります。

事業区分

課題

上下水道事業

中期経営課題(前項「(1)経営方針及び経営環境について」参照)として掲げている実行中の諸課題に取り組むとともに、浄水場老朽化更新投資需要の取り込みに向けた積極的な営業活動を行う他、新製品開発や営業基盤強化を行って参ります。

環境事業

増加する引き合い案件を確実に新規顧客へ繋げ、顧客層の拡大を実現するとともに、メンテナンス案件対応強化のための事業基盤拡大を実行して参ります。

機器事業

災害時の応急対策用途としての小型造水機及び新規改良製品について代理店等を活用し推進し拡販に努めて参ります。

海外事業

持分法適用関連会社であるSuido Kiko Middle East Co.,Ltd.(以下、SKME社)の銀行与信枠に基づく銀行保証等に対する債務保証を含むリスク低減に向けて、SKME社の経営管理を強化し、損失極小化に取り組んで参ります。

 

 当社グループといたしましては、中期経営課題における実行施策を着実に推進し、競争力強化に努めるとともに、コンプライアンス及びガバナンス体制強化を図ることで企業価値の回復、向上を図って参ります。新たな企業理念制定とその浸透活動を通じて、社会との関係の重要性を認識し、この企業理念を当社グループの役員及び従業員全員が共有することにより、全てのステークホルダーの信頼回復に努めて参る所存でございます。

(3) その他対処すべき課題

(施工管理技士資格等に係る不正取得への再発防止対応状況について)

① 施工管理技士資格等に係る不正取得に関する再発防止の取り組みについて

a) 再発防止のための実行計画策定の背景

 2020年9月における第三者委員会からの提言に基づき、実行計画書を策定し、2020年10月に取締役会において承認を受け、実行に着手しました。

 当事業年度においては、策定された実行計画の継続実施ならびに実施状況のフォローが行われております。

b) 実行計画の妥当性の確認

 取締役会において、社外取締役並びに取締役(監査等委員)が客観的視点から実行計画の妥当性を評価し、出席取締役の全員一致により決定しております。加えて実行計画の実施状況のフォローに関するモニタリングが行われております。

c) 実行計画の推進スケジュール

 2020年10月から開始し、緊急的な対応並びに社内組織体制の構築を2020年度に完了させ、恒久対策等実行に時間を要するものについては、2021年度に完了いたしました。

② 実行計画の取り組み状況について

a) 全般状況

 概ね実行計画通りに再発防止体制が機能しております。なお、実施施策のフォロー状況は、取締役会へ報告され、社外取締役並びに取締役(監査等委員)によるモニタリングが行われております。

b) 個別実施項目における対応概要

1) 適切な資格取得奨励と人材育成プランの検討:資格奨励制度を見直し、関連する給与規定等を2021年4月から改定し、運用を開始しました。また、人材育成プランの検討については、複線型のキャリアプランが選択可能となる新等級・賃金制度へ2022年4月から改定しております。

2) 受験資格又は資格要件の有無を確認する社内体制の構築:2020年11月に新設した「管理部」の「資格管理室」において、当社グループの受験資格や資格要件の充足を確認した上で、実務経験証明書を発行出来る体制としました。

3) 適切な印章管理:2020年11月に印章管理規定を改定し、社用印章の登録及び保管、押印の申請及び記録の保管等について管理を強化し、運用状況のモニタリングを定期的に実施しております。

4) 適切な受験指導の実施:新設した「資格管理室」を受験指導及び計画立案の担当部署とし、資格受験に当たっては、社外の講習会の利用を案内しております。

5) 受験資格チェック体制の構築:受験者の上長者及び所属部門長による確認を必須とした上、新設した「資格管理室」において実務経験証明書の確認を行うこととし、この確認を踏まえ証明書の発行を行う体制としました。また、「内部監査室」において定期的監査を行い、チェック体制が機能していることを確認することとしました。

6) 内部監査部門の充実:2020年11月に社長直轄の「内部監査室」を設置し、専任の室長を配置することにより内部統制のモニタリング機能を強化しました。なお、当事業年度においても計画的に内部監査が実施されております。

7) コンプライアンス部門の新設並びにリスク情報の速やかな共有と判断の実施:2020年11月に管理・コンプライアンス部門を新設するとともに、同部門内に新設した「管理部」に各事業部のリスク情報を一元的に集約可能な仕組みとし、経営陣に対して適時適切にリスク情報が報告される体制を構築し、情報集約及び報告が定期的に取締役会へ行われております。

8) 内部通報制度の見直し及び内部通報制度の周知の徹底:内部通報制度(ヘルプライン)を見直し、内部通報制度の実効性を高めるために、利用しやすい環境を整備し全役職員に周知し、2021年4月から運用を開始しました。なお、プライバシーに配慮の上、内部通報の有無についての報告が定期的に取締役会へ行われております。

9) 役職員の人事ローテーションと人材育成:部署を超えて、会社全体の問題点や課題等を共有し、コミュニケーションの活性化を図るとともに、事業部・部署間での人事異動も意識的かつ計画的に実施するために、人材ローテーション計画を定期的に更新することとし、当事業年度において役員に関する後継人事計画をもとに、新たに設置されたガバナンス委員会を活用し、新たな役員選任の準備が行われております。

10) コンプライアンス教育の徹底:新設の「内部監査室」が取締役(監査等委員)と協力して内部統制並びにコンプライアンス教育を継続して実施しております。

 

(持分法適用関連会社に対する債務保証等について)

   当社は、持分法適用関連会社である在サウジアラビア国のSuido Kiko Middle East Co.,Ltd.(以下、SKME社、当社出資比率49%)が締結する工事請負契約に関し、現地金融機関が発行する銀行保証等に対して債務保証を行っております。

   2021年度SKME社業績は、施工中の工事案件にかかる工事費の高騰・追加コストの発生に加え、顧客からの工事代金回収長期化に伴う貸倒引当金追加繰入の発生等により財務状況が悪化し、当連結会計年度において債務超過となりました。

   当社による上記債務保証は、SKME社が現地銀行と契約した銀行与信枠に基づき発行される銀行保証等に対して行っているものであり、2022年3月期末時点における未引当の債務保証額は、22億53百万円となります。

   合弁企業に関して出資者が行う債務保証は、出資比率に応じ負担することが一般的ではありますが、2019年以降、SKME社に51%を出資する現地パートナー(以下、現地パートナー)の財務状況が悪化する中、工事案件の完工上、上記与信枠の維持は、SKME社にとり必須であり、上記与信枠の維持には確実性のある債務保証が条件であることから、株主間で合意のもとで、当社は、現地パートナー分も含め全額について債務保証を行って参りました。

   上記の状況を踏まえ、当社は、債務超過額8億70百万円全額を当社負担として、2022年3月期連結及び個別決算にて、それぞれ持分法による投資損失、債務保証損失引当金繰入額として、営業外費用に計上いたしました。

   当社債務保証の継続により、SKME社が抱える工事案件の完工・引き渡しは順次進んでおります。また、現在存続中の工事案件につきましても、今後工事進捗に応じた債務保証の減額及び現地パートナーに対し出資比率に見合った負担要請を行うとともに、工事案件の工程遅延等に起因する不測のリスクを回避し、顧客からの債権回収を進めることで、リスクの極小化のための管理強化を図るとともに、サウジアラビア事業からの撤退を含む様々なリスク低減策を検討し、取り組んで参ります。

 

(新型コロナウイルス感染症の影響)

 新型コロナウイルス感染症予防対策として、日常的な感染予防の周知・徹底や在宅勤務の継続などを推進してまいりました。なお、同感染症拡大による当社グループの財政状態、経営成績等に及ぼす影響及び収束時期の予想は困難ではあるものの、現時点における当社グループの事業計画進捗状況、並びに社会経済情勢の最新情報等に鑑み、その影響は限定的であると認識しております。

 しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は不確定要素が多く、今後の情勢変化次第では、翌連結会計年度(2023年3月期)以降の当社グループの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

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