(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社グループの主力市場である米国及び欧州の当連結会計年度(2021年3月1日から2022年2月28日まで)の経済は、概ね以下のとおり推移しました。米国では、新型コロナウイルス対策として政府により実施された現金給付やワクチン接種の進展を背景として、個人消費が引き続き増加しました。住宅市場においては、ウッドショックや人手不足が住宅工事に影響を与えているものの、住宅需要そのものは力強さを維持しました。設備投資においても、規制措置の緩和や経済対策が追い風となり、堅調に推移しました。欧州では、ワクチン接種の進展と好調な企業業績を背景として、個人消費、設備投資ともに正常化に向かっておりましたが、オミクロン株の出現により経済活動の制限を余儀なくされた国では、個人消費を中心に景気回復に影を落としました。世界各国においては、感染者数のピークアウトや重症化率の低さを理由に行動制限の緩和に動き出すなど、不確実ながらも新型コロナウイルスとの共生に向けて多くの主要国が舵を切ろうとした矢先に、ロシアがウクライナに侵攻したことで世界情勢は一転し、先行き不透明感は再び深まりました。
このような環境下にあっても、欧米では水道管やガス管等の生活インフラの公共事業が引き続き活況で、特に米国では新築・増改築や庭整備等の住宅関連工事が各地で盛んに行われており、製品需要は好調に推移しました。また、当社グループは、2021年2月にはミニショベル「TB325R」を、2021年7月にはリチウムイオン電池式ミニショベル「TB20e」を市場投入するなど、より地球環境に優しい製品を加えた豊富なラインナップで積極的な販売活動を展開しました。この結果、ミニショベル、油圧ショベル及びクローラーローダーの当連結会計年度の販売台数は、新型コロナウイルスの影響で販売が後退した前連結会計年度に比べて、大きく増加しました。
以上により、当連結会計年度の売上高は過去最高の1,408億9千2百万円(前連結会計年度比25.5%増)となり、利益面におきましても、各段階利益はそれぞれ過去最高となりました。製造コストの上昇及び運搬費の増加等の減益要因はあったものの、売上高の増加及び製品価格の値上げ等により、営業利益は177億6千4百万円(同34.5%増)となり、経常利益は180億8千万円(同36.0%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用を47億3千2百万円計上したため、133億4千8百万円(同36.7%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(日本)
売上高は489億8千1百万円(前連結会計年度比10.0%増)となり、セグメント利益は124億4千9百万円(同57.0%増)となりました。
(米国)
売上高は687億1千2百万円(前連結会計年度比31.5%増)となり、セグメント利益は63億4千5百万円(同40.2%増)となりました。
(英国)
売上高は139億2千3百万円(前連結会計年度比63.7%増)となり、セグメント利益は12億5千6百万円(同91.3%増)となりました。
(フランス)
売上高は92億7百万円(前連結会計年度比33.2%増)となり、セグメント利益は6億2千3百万円(同41.3%増)となりました。
(中国)
売上高は6千6百万円(前連結会計年度比31.2%増)となり、セグメント利益は8千5百万円
(前連結会計年度は2億1千万円のセグメント損失)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ216億7千6百万円増加し、1,372億1百万円となりました。負債合計は前連結会計年度末に比べ75億円増加し、331億1千7百万円となりました。純資産合計は前連結会計年度末に比べ141億7千5百万円増加し、1,040億8千3百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ70億2千9百万円増加し、466億4千8百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により得られた資金は137億8千万円(前連結会計年度比34億2百万円の増加)となりました。これは主に、たな卸資産の増加額100億円の支出がありましたが、税金等調整前当期純利益180億8千万円、仕入債務の増加額35億6千7百万円、売上債権の減少額28億9千1百万円等の収入があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動により使用した資金は43億3百万円(前連結会計年度比23億3千5百万円の増加)となりました。これは主に、有価証券の償還による収入3億円等がありましたが、有形固定資産の取得による支出44億5千4百万円、及び無形固定資産の取得による支出1億4千8百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動により使用した資金は25億3千2百万円(前連結会計年度比1億4千3百万円の増加)となりました。これは主に、配当金の支払額25億3千万円等に使用されたことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年3月1日 至 2022年2月28日) |
前年同期比(%) |
日本(百万円) |
136,890 |
26.9 |
中国(百万円) |
3,276 |
90.5 |
合計(百万円) |
140,167 |
27.9 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
日本 |
51,638 |
△2.8 |
21,251 |
14.3 |
米国 |
148,426 |
168.6 |
100,685 |
380.1 |
英国 |
16,009 |
70.9 |
3,510 |
146.3 |
フランス |
13,722 |
75.9 |
8,401 |
116.2 |
中国 |
66 |
31.2 |
- |
- |
合計 |
229,862 |
83.0 |
133,849 |
198.2 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年3月1日 至 2022年2月28日) |
前年同期比(%) |
日本(百万円) |
48,981 |
10.0 |
米国(百万円) |
68,712 |
31.5 |
英国(百万円) |
13,923 |
63.7 |
フランス(百万円) |
9,207 |
33.2 |
中国(百万円) |
66 |
31.2 |
合計(百万円) |
140,892 |
25.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年3月1日 至 2021年2月28日) |
当連結会計年度 (自 2021年3月1日 至 2022年2月28日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
United Rentals, Inc. |
6,956 |
6.2 |
20,371 |
14.5 |
HUPPENKOTHEN GmbH & Co KG |
18,792 |
16.7 |
17,690 |
12.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析
当社グループの主力市場である欧米において、住宅関連工事、生活インフラ工事が引き続き活況で、当連結会計年度の売上高は過去最高の1,408億9千2百万円(前連結会計年度比25.5%増)となりました。利益面につきましては、原材料価格の高騰や運搬費の増加等の減益要因はありましたが、増収効果と値上げ等により、営業利益は177億6千4百万円(同34.5%増)、経常利益は180億8千万円(同36.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は133億4千8百万円(同36.7%増)と各段階利益も過去最高となりました。
前連結会計年度と比較した当社グループの販売台数は、上期は37.0%、下期は6.1%、通期は20.8%の増加となり、特に上期において新型コロナウイルスの影響で販売が低迷した前連結会計年度に比べて、ミニショベル、油圧ショベル及びクローラーローダーの主力製品すべての販売台数が増加いたしました。
また、当社グループの当連結会計年度の受注高は2,298億6千2百万円(同83.0%増)となりました。大幅な受注増加を受けて増産したものの、現有の生産能力を上回る受注状況により、当連結会計年度末の受注残高は1,338億4千9百万円(同198.2%増)となりました。足もとの製品需要はこれまでにない力強さとなっており、欧米ともに今後も継続すると考えておりますが、原材料価格や海上運賃の高騰をこれまで以上に見込まざるを得ない状況にあり、次期の連結業績は増収・減益を予想しております。
新型コロナウイルスの出口戦略やウクライナ情勢など、世界情勢は依然として予断を許さない状況が継続しております。このような先行き不透明な状況にあっても、社会インフラを支える企業として、当社グループがなすべきことを着実に推し進め、持続的な成長発展を果たしてまいります。
b. 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ216億7千6百万円増加し、1,372億1百万円となりました。これは主に、売上債権の回収により受取手形及び売掛金が14億3千5百万円減少したものの、たな卸資産が120億2千6百万円、現金及び預金が70億3千1百万円、青木工場建設等により建設仮勘定が27億1百万円増加したこと等によるものです。なお、たな卸資産の増加のうち、仕掛品が48億7千万円増加しました。これは電子部品の供給不足が主因ですが、当該仕掛品の大部分は欧米地域で保管されており、電子部品の供給の回復に伴い、速やかに完成品として販売される状態の現地在庫です。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ75億円増加し、331億1千7百万円となりました。これは主に、生産台数の増加等により買掛金が50億2千万円、未払法人税等が18億7千5百万円増加したこと等によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ141億7千5百万円増加し、1,040億8千3百万円となりました。これは主に、利益剰余金が配当金の支払により25億3千万円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益により133億4千8百万円増加したこと、及び為替換算調整勘定が33億2千1百万円増加したこと等によるものです。
c. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための材料の購入、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、設備投資や新製品や要素技術の研究開発投資です。なお、設備投資の大型案件としまして、2022年1月より長野県小県郡青木村で新工場建設(約100億円)に着手するとともに、2022年4月には米国サウスカロライナ州で建設機械工場を取得(約40億円)いたしました。
運転資金需要及び投資資金需要の財源につきましては、現在保有する現預金に加え、営業キャッシュ・フローを源泉として資金を充当することを基本としております。なお、当連結会計年度末時点において有利子負債はありません。
資金の流動性に関しましては、当連結会計年度末時点の流動比率は358.7%であります。
d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、3年間(2023年2月期~2025年2月期)の第三次中期経営計画を策定しております。売上高、営業利益、1株当たり当期純利益、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、主に以下の施策に取り組んでまいります。
○人的資本への投資
○製品開発のスピードアップ
○生産能力の増強
○販売網の拡充とアフターパーツの拡販
○サステナビリティ経営の推進
なお、2022年4月に公表した第三次中期経営計画の最終年度(2025年2月期)の数値目標を以下のとおり定めています。
|
2022年2月期 実績 |
2025年2月期 数値目標 |
|||||
売上高 |
1,408 |
億円 |
1,233 |
億円 |
|||
営業利益 |
177 |
億円 |
121 |
億円 |
|||
1株当たり当期純利益 |
279.91 |
円 |
377 |
円 |
|||
自己資本利益率(ROE) |
13.8% |
14.0% |
|||||
為替レート |
米ドル |
111.72 |
円 |
115.00 |
円 |
||
英ポンド |
153.06 |
円 |
152.00 |
円 |
|||
ユーロ |
130.57 |
円 |
127.00 |
円 |
|||
人民元 |
17.12 |
円 |
18.00 |
円 |
※2022年2月期の為替レートは、12ヶ月間の期中平均レートを表示しております。
※以下のCAPM算定式を基準として、当社は株主資本コストを8%と認識しております。
リスクフリーレート(1%)+ベータ値(1.2)×マーケットリスクプレミアム(6%)
e. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(日本)
日本セグメントは、売上高のほとんどが欧州ディストリビューター向けの販売で占められております。新型コロナウイルスの影響で販売が後退した前連結会計年度に比べて、生活インフラ等の公共工事での需要を中心に、欧州ディストリビューター向けのミニショベル及び油圧ショベルの販売台数は大きく増加し、売上高は489億8千1百万円(前連結会計年度比10.0%増)となりました。セグメント利益は、製造コストの上昇及び運搬費の増加等の減益要因はあったものの、売上高の増加及び製品販売価格を引き上げたこと等により、124億4千9百万円(同57.0%増)となりました。セグメント資産は、売上債権の回収により受取手形及び売掛金が減少したものの、たな卸資産及び青木工場建設等にかかる建設仮勘定が増加したこと等により、前連結会計年度末から43億6千6百万円増加の673億9千1百万円となりました。なお、たな卸資産のうち、仕掛品が最も増加しました。これは電子部品の供給不足が主因ですが、当該仕掛品の大部分は欧米地域で保管されており、電子部品の供給の回復に伴い、速やかに完成品として販売される状態の現地在庫です。
(米国)
生活インフラ等の公共工事での製品需要の回復のほか、米国各地で新築、増改築、庭整備といった住宅関連工事が盛んに行われており、コロナ禍の長期化による郊外での住宅需要の高まりと合わせて、好調な販売状況が続いております。港湾での物流混雑と陸上でのトラック不足の影響を受け続けたものの、新型コロナウイルスの影響で販売が後退した前連結会計年度に比べて、米国でのミニショベル、油圧ショベル及びクローラーローダーの販売台数は大きく増加し、売上高は687億1千2百万円(前連結会計年度比31.5%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加及び製品販売価格の値上げ等により、63億4千5百万円(同40.2%増)となりました。セグメント資産は、たな卸資産、現金預金及び売上債権が増加したこと等により、前連結会計年度末から84億5百万円増加の413億3千8百万円となりました。
(英国)
新型コロナウイルスの影響で販売が後退した前連結会計年度に比べて、生活インフラ等の公共工事での需要を中心に、英国でのミニショベル及び油圧ショベルの販売台数は大きく増加しました。円安による追い風もあり、売上高は139億2千3百万円(前連結会計年度比63.7%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加及び製品販売価格の値上げ等により、12億5千6百万円(同91.3%増)となりました。セグメント資産は、現金預金が増加したものの、たな卸資産が減少したこと等により、前連結会計年度末から1億3千3百万円減少の71億6千4百万円となりました。
(フランス)
新型コロナウイルスの影響で販売が後退した前連結会計年度に比べて、生活インフラ等の公共工事での需要を中心に、フランスでのミニショベル及び油圧ショベルの販売台数は大きく増加しました。円安による追い風もあり、売上高は92億7百万円(前連結会計年度比33.2%増)となりました。セグメント利益は、売上高の増加及び製品販売価格の値上げ等により、6億2千3百万円(同41.3%増)となりました。セグメント資産は、たな卸資産及び現金預金の減少等により、前連結会計年度末から15億3千3百万円減少の45億4千8百万円となりました。
(中国)
日本セグメントでの建設機械の増産により、日本セグメント向けの部品販売が増加しました。この結果、売上高は6千6百万円(前連結会計年度比31.2%増)となりセグメント利益は8千5百万円(前連結会計年度は2億1千万円のセグメント損失)となりました。セグメント資産は、たな卸資産の増加等により、前連結会計年度末から4億4千7百万円増加の33億2千8百万円となりました。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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