当社グループの財政状態及び経営成績は次の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。
なお、当社グループの業績管理は、事業セグメント損益及び営業損益により行われております。事業セグメント損益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、各国の経済対策や先進国を中心としたワクチン接種率の向上により、経済活動正常化への動きがあったものの、年度後半における新型コロナウイルス感染症の再拡大に加え、世界的な半導体等の部材不足や海上輸送の混乱をはじめとしたグローバルサプライチェーンに関連するリスクが顕在化しました。また、ウクライナ情勢による地政学リスクの高まりなど、景気の先行きは依然として予断を許さない状況が続いています。
当社グループに関連する事業環境は、プリンティング市場では、在宅勤務・在宅学習用途として、小型複合機・プリンターの需要は各地域で引き続き順調な伸びを示しました。家庭用ミシンは、巣ごもり特需があった前連結会計年度からは、需要は落ち着きを見せています。マシナリー事業の関連分野では、産業機器は中国を中心とした需要が継続し、工業用ミシンに関しても投資意欲の回復傾向が見られました。国内におけるカラオケ市場は、新型コロナウイルス感染症再拡大の影響により、厳しい状況となりました。ドミノ事業の関連分野では、食品・医薬品などの生活必需品の需要の底堅さに支えられ、堅調に推移しました。
このような状況の中、当連結会計年度における当社グループの連結業績は、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業では、為替のプラス影響に加え、消耗品が堅調に推移し増収となりました。パーソナル・アンド・ホーム事業では、副業用途でのミシンの販売は引き続き堅調に推移したものの、巣ごもり特需があった前連結会計年度の水準には届かず、減収となりました。マシナリー事業では、主に中国向けの産業機器が引き続き堅調だったことに加え、工業用ミシンのアパレル向け設備投資需要の回復などにより、事業全体で大幅な増収となりました。ネットワーク・アンド・コンテンツ事業では、店舗の休業や時間短縮営業の影響により、減収となりました。ドミノ事業は、生活必需品の需要の底堅さに支えられ、製品本体、消耗品ともに堅調に推移し、増収となりました。
これらの結果、売上収益は、前期比12.5%の増収となる710,938百万円、事業セグメント利益は、前期比8.3%の増益となる84,552百万円となりました。営業利益は、前連結会計年度に計上した、ドミノ事業におけるのれんの一部の減損損失、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業の一部の連結子会社における拠点再編費用などがなくなったことにより、前期比100.1%の大幅な増益となる85,501百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比148.9%の大幅な増益となる61,030百万円となりました。
*平均為替レート(連結)は次の通りであります。
当期 米ドル :112.86円 ユーロ :131.01円
前期 米ドル :106.17円 ユーロ :123.73円
セグメント別の業績は、次の通りであります。
1)プリンティング・アンド・ソリューションズ事業
売上収益 424,247百万円(前期比+10.3%)
〇通信・プリンティング機器 366,902百万円(前期比+8.6%)
インクジェット複合機においては、供給制約の改善により製品本体の販売数量は大幅に増加しました。レーザー複合機・プリンターにおいては、新型コロナウイルス感染症再拡大や部材の調達難による工場の稼働率低下を受け、製品本体の販売数量が大きく落ち込んだものの、為替のプラス影響に加え、消耗品の堅調な推移もあり、事業全体で増収となりました。
〇電子文具 57,345百万円(前期比+22.5%)
ラベルライター・ラベルプリンター、モバイルプリンターを中心とするソリューション分野とも、需要回復により、大幅な増収となりました。
事業セグメント利益 59,754百万円(前期比△8.3%)
営業利益 59,422百万円(前期比△2.6%)
為替のプラス影響、消耗品全般の堅調な推移があったものの、消耗品の航空輸送対応に加え、海上運賃の高騰、部材コストの増加もあり減益となりました。
2)パーソナル・アンド・ホーム事業
売上収益 49,995百万円(前期比△6.8%)
家庭用ミシンは、欧米を中心とした副業用途での中高級刺しゅう機の販売は引き続き堅調に推移したものの、巣ごもり特需があった前連結会計年度の水準には届かず、減収となりました。
事業セグメント利益 8,072百万円(前期比△17.7%)
営業利益 8,207百万円(前期比△14.9%)
減収に加え、部材コストなどの増加もあり、減益となりました。
3)マシナリー事業
売上収益 111,292百万円(前期比+41.0%)
〇工業用ミシン 33,990百万円(前期比+40.7%)
アジア・中国向けでのアパレル設備投資需要の回復により、工業用ミシンが好調に推移し、大幅な増収となりました。
〇産業機器 56,553百万円(前期比+46.1%)
中国を中心に、自動車関連市場向けが好調に推移したことに加え、IT関連顧客向けのスポット受注の効果もあり、大幅な増収となりました。
〇工業用部品 20,749百万円(前期比+29.3%)
設備投資需要の回復に加え、自動化ニーズの高まりにより、減速機、歯車ともに大幅な増収となりました。
事業セグメント利益 13,955百万円(前期比+238.7%)
営業利益 13,930百万円(前期比+321.6%)
増収効果に為替のプラス影響も加わり、大幅な増益となりました。
4)ネットワーク・アンド・コンテンツ事業
売上収益 29,552百万円(前期比△4.8%)
新型コロナウイルス感染症の再拡大により、カラオケ店舗の営業自粛・時間短縮営業など、厳しい環境が継続し、減収となりました。
事業セグメント損失 2,700百万円 (前期 事業セグメント損失 5,159百万円)
営業損失 568百万円 (前期 営業損失 7,348百万円)
事業セグメント利益は、費用削減の効果などにより、赤字幅が縮小しました。営業利益は、不採算店舗の閉店費用や店舗設備の減損損失が前連結会計年度に比べ減少したことに加え、雇用調整助成金や時短協力金等の給付金の効果もあり、赤字幅が縮小しました。
5)ドミノ事業
売上収益 81,726百万円(前期比+17.0%)
食品・飲料・医薬品などの生活必需品の需要の底堅さに支えられ、コーディング・マーキング機器、デジタル印刷機ともに、本体及び消耗品が堅調に推移したことに加え、為替のプラス影響もあり、増収となりました。
事業セグメント利益 4,893百万円(前期比+3.0%)
営業利益 4,950百万円 (前期 営業損失 23,940百万円)
事業セグメント利益は、増収効果があったものの、販管費の増加などにより、前連結会計年度並みとなりました。営業利益は、前連結会計年度に計上した、のれんの一部についての減損損失がなくなったことにより、大幅な増益となりました。
②財政状態の状況
資産合計は、現金及び現金同等物が減少した一方、営業債権及びその他の債権、棚卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ67,253百万円増加し、811,149百万円となりました。
負債合計は、借入金の返済などにより社債及び借入金が減少した一方、営業債務及びその他の債務が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ5,748百万円増加し、249,937百万円となりました。
資本合計は、子会社である株式会社ニッセイの完全子会社化に伴う非支配持分の減少、2022年2月1日の取締役会において自己株式の取得について決議されたことによる自己株式の増加の一方、親会社の所有者に帰属する利益による利益剰余金の増加、在外営業活動体の換算差額の影響などにより前連結会計年度末に比べ61,504百万円増加し、561,211百万円となりました。
当期における期末為替レートは、次の通りです。
米ドル :122.39円 ユーロ :136.70円
③キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下「資金」)は、営業活動により72,254百万円増加、投資活動により40,781百万円減少、財務活動により65,191百万円減少等の結果、当連結会計年度末は前連結会計年度末と比べ23,087百万円減少し、167,915百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は、次の通りです。
1)営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前利益は86,429百万円で、減価償却費及び償却費38,700百万円など非資金損益の調整などによる資金の増加、営業債務及びその他の債務の増加による資金の増加12,450百万円、営業債権及びその他の債権の増加による資金の減少2,954百万円、棚卸資産の増加による資金の減少37,964百万円などがあり、法人所得税の支払額24,245百万円などを差し引いた結果、72,254百万円の資金の増加となりました。
2)投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産の取得による支出26,606百万円、無形資産の取得による支出9,236百万円などにより、40,781百万円の資金の減少となりました。
3)財務活動によるキャッシュ・フロー
長期借入金の返済による支出20,197百万円、リース負債の返済による支出8,825百万円、配当金の支払額16,397百万円、子会社である株式会社ニッセイの完全子会社化により非支配持分から子会社持分を取得したことによる支出16,715百万円、自己株式の取得による支出3,005百万円などにより、65,191百万円の資金の減少となりました。
④生産、受注及び販売の状況
1)生産実績
当社グループの生産実績は、販売実績と近似しておりますので、記載を省略しております。
2)受注実績
当社グループの生産活動は、その多くを見込生産で行っておりますので、受注実績は記載しておりません。
3)販売実績
当社グループの販売実績は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記6.セグメント情報」を参照下さい。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討事項
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、IFRSに準拠して作成されております。
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を行うことが要求されております。当社グループの判断、見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)当連結会計年度の経営成績
経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」を参照下さい。
2)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループは、製品・サービスの販売、製品の製造など、事業活動の大半を海外で展開しております。よって、グループの業績は、各国の市場動向、為替動向、海外工場におけるモノづくり力の維持・強化など、様々な要因により影響を受ける可能性があると認識しております。
為替リスクに対する対応としては、利益への影響が大きいユーロについては、一定の基準に基づき為替予約を行うことで、急激な為替レートの変動が業績に与える影響をコントロールしております。
製造面に関しては、コストダウンや様々なリスクヘッジを目的に、各事業とも中国を中心とした体制から、ベトナムやフィリピンといったアジア地域を中心とした体制へとシフトを進めております。製造拠点を分散化させることで、災害や事故などのリスクを低減し安定した製品供給を実現するとともに、今後は主力のアジアの工場は低コスト追求から再生・修理を含む複合的な機能を保有する工場へと転換します。欧米の工場は消耗品を中心に地産地消体制を強化するほか、産業用ビジネスの生産拠点を拡充し、強靭かつ持続可能なサプライチェーンの構築を目指します。
事業別では、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業が占める割合は売上収益の59.7%、事業セグメント利益の70.7%を占めており、プリンティング・アンド・ソリューションズ事業の業績動向が経営成績に重要な影響を与える最大の要因となっております。当社グループは、SOHO向けのレーザー複合機・プリンターにおいて、米国や西欧などの先進国地域を筆頭にグローバルで高いシェアを保持しているだけでなく、高い収益性を実現しております。この分野においては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う在宅勤務・在宅学習や、新しい働き方へのパラダイムシフトによって、小型の複合機・プリンターの安定的な需要が見込まれ、競争環境も比較的穏やかな状況が継続していることから、今後もグループ全体の収益を支える事業として、持続的な成長を実現してまいります。一方でこの分野は、デジタルデバイスの普及や、インターネットを中心としたテクノロジーの進化、人々の働き方の変化、顧客の購買行動の変化、非純正消耗品の増加など、ビジネス環境が刻々と変化しています。今後は既存領域の収益性を強化しつつ、ビジネスモデルの変革を加速させ、継続的な事業成長を目指します。
3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
中期戦略「CS B2021」では、最終年度である2021年度の業績目標を売上収益7,500億円、営業利益750億円と設定しました。当連結会計年度の実績は、売上は目標に対して未達となったものの、営業利益は、新型コロナウイルス感染症の拡大による特殊要因などもあり、目標を大きく上回りました。
|
当連結会計年度実績 |
CS B2021業績目標 |
売上収益 |
7,109億円 |
7,500億円 |
営業利益 |
855億円 |
750億円 |
平均為替レート(連結)は次の通りであります。
当期 米ドル :112.86円 ユーロ :131.01円
CS B2021策定時 米ドル :105.00円 ユーロ :125.00円
中期戦略「CS B2024」における、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中長期的な経営戦略」を参照ください。
4)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
事業セグメントごとの経営成績の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」を参照下さい。
5)当社グループの資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性維持及び、柔軟で効率的な資金の確保を財務活動の重要な方針としております。この方針に従って、当社グループは、グループ会社が保有する資金をグループ内で効率よく活用するキャッシュマネジメントシステムを構築し運用しております。資金の偏在をならし、グループ全体で借入を極力削減する体制を整えております。
流動性管理
当社グループは、現金及び現金同等物を手元流動性と位置付けております。当連結会計年度末現在、当社グループは、売上収益の約3ヶ月分に相当する現金及び現金同等物167,915百万円を保有しております。
当社グループは、当社及び金融子会社などの資金調達拠点を通じたキャッシュマネジメントシステムの活用により、資金の効率化を図り、流動性を確保しております。
これにより、季節的な資金需要の変動、1年以内に期限の到来する借入、新型コロナウイルス感染症などによる事業環境リスク等を考慮の上、通年にわたり十分な手元流動性を確保していると考えております。
資金調達
運転資金等の短期資金は、原則として期限が1年以内の短期借入金を現地通貨で調達することとし、生産設備等の長期資金は、内部留保資金の他、固定金利の長期借入金及び社債等で調達することを基本方針としております。当連結会計年度末現在、1年内返済予定の長期借入金の残高は、20,121百万円で、通貨は米ドル、日本円であります。長期借入金の残高は20,705百万円であり、通貨は米ドル、日本円であります。
当社は、株式会社格付投資情報センターから格付けを取得しています。当連結会計年度末現在、発行体格付けがA、コマーシャルペーパーがa-1であります。金融・資本市場へのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持は重要と考えております。
当社グループでは、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力に加えて、手元流動性、健全な財務体質により、当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資・研究開発資金等を確保することが可能と考えております。
資金の需要動向
中期戦略「CS B2024」では、事業ポートフォリオの変革と、持続可能な未来に向けた経営基盤の変革実現に向けた先行投資枠として総額1,500億円を設定しました。この投資枠を活用して、「事業ポートフォリオの変革」に向けては、産業用領域やインクジェット技術に関わる各種の機能、拠点の強化、M&A等の戦略投資を行っていきます。
未来に向けた先行投資を行う一方で、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載の基本方針に基づき株主利益還元を実施してまいります。
これらの資金需要に対応するため、営業キャッシュ・フローの獲得、また、必要に応じて、成長投資のための資金調達を機動的に実施する方針であります。
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