業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような見積り・予測を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。

なお、連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針及び見積り等については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1) [連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 2.作成上の基礎 (6) 見積り及び判断の利用、3.重要な会計方針の要約」に記載のとおりです。

 

(2) 財政状態及び経営成績の状況

 

①事業全体の概況

当社グループは、「次の成長に向けた事業基盤の強化」を目指して、2019年度から2021年度までの3ヵ年を第6次中期経営計画として位置づけ、様々な取り組みを推進してきました。安全・品質・コンプライアンス・環境を当社グループのコアバリューとしたうえで、「オペレーショナル・エクセレンス(競争力の不断の追求)」と「イノベーションへのチャレンジ(あたらしい価値の創造)」の2つの方針を掲げ、成長への新たな仕掛け、経営資源の強化、環境・社会への貢献の3つの経営課題に取り組んできました。

当連結会計年度の世界経済を概観すると、新型コロナウイルスの感染状況は国・地域でばらつきがみられましたが、経済社会活動の正常化が進んだことで、景気は持ち直しの動きが継続しました。一方で、半導体等部材の供給不足、原材料価格の上昇、円安の進行、加えてウクライナ情勢の緊迫化を契機としたエネルギー価格の高騰やサプライチェーンの更なる混乱によりインフレ圧力が一層高まるなど、経済の先行きは未だ不透明な状況にあります。

地域別にみると、日本は自動車生産が下振れしましたが、設備投資が底堅く推移するなど持ち直しの動きが続いています。米国ではインフレ加速が景気回復の下押し要因となるものの、個人消費や設備投資は堅調に推移しました。欧州は活動制限緩和の進展により回復基調にありましたが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて足元では景況感が悪化しました。中国では新型コロナウイルス感染再拡大を受けた行動制限が経済活動の足かせとなり、景気の回復テンポは鈍化しました。

このような経済環境下、当連結会計年度の売上高は8,651億66百万円と前期に比べて15.7%の増収となりました。第3四半期連結会計期間に非経常的な要因により発生した固定資産売却益及び自動車部品事業における減損損失も含めた、通期の営業利益は294億30百万円(前期は63億64百万円の利益)、税引前利益は295億16百万円(前期は58億89百万円の利益)、親会社の所有者に帰属する当期利益は165億87百万円(前期は3億55百万円の利益)となりました。

 

②セグメントごとの業績
(産業機械事業)

半導体市場の拡大に加えて、製造業を中心に設備投資が積極的に行われるなど需要は堅調に推移し、当連結累計期間は対前期比で増収となりました。

地域別では、日本は工作機械、半導体製造装置及び電機・電装向けを中心に需要が増加しました。米州ではアフターマーケットや半導体製造装置向けの需要が好調を維持し増収となりました。欧州はアフターマーケットや工作機械向けの販売が増加し増収となりました。中国では風力発電や鉄道向けの需要は一服感がみられるものの、工作機械や電機・電装向けの販売が増加し増収となりました。

この結果、産業機械事業の売上高は3,457億85百万円(前期比+25.6%)、営業利益は各地域で販売が増加したことにより、309億43百万円(前期は76億97百万円の利益)となりました。

 

当事業では、成長が期待できる電動化、自動化、デジタル化、環境市場での需要増加を取り込むため、供給力の強化と技術サービス体制の強化を進めています。さらに、状態監視システムやアクチュエータなど新たな付加価値のある商品の開発と市場投入も推進することで、産業機械事業のビジネス拡大を目指していきます。

 

(自動車事業)

グローバル自動車生産台数は半導体等部材の供給不足による減産が長期化した影響を受けて前年割れになりましたが、当連結累計期間は対前期比で増収となりました。

地域別では、中国を除く各地域は需要が低迷した前期からの回復により増収となりました。一方、中国は一昨年春以降に自動車市場がいち早く回復していましたが、当期は半導体不足等の影響により自動車生産台数が落ち込み減収となりました。

なお、第3四半期連結会計期間に自動車部品事業において90億44百万円の固定資産減損損失を計上しました。

この結果、自動車事業の売上高は4,825億47百万円(前期比+7.3%)、非経常的な要因により発生した固定資産減損損失を除いたセグメント損失は47億18百万円、営業損失は原材料価格や輸送費用などのコスト上昇に加え自動車部品事業にて固定資産減損損失を計上した影響により、137億62百万円(前期は40億18百万円の損失)となりました。

当事業では、自動車の電動化に対し、低トルク・高速回転・軽量化といった当社グループの技術力を活かすことで競争力を強化し、さらには電動油圧ブレーキシステム用ボールねじやトラクションドライブ減速機など将来に向けた新商品の拡大を図ることで事業の成長を目指していきます。また、ステアリング事業は、構造改革による収益力の回復、及び協業によるシナジーを目指していきます。

 

③財政状態の分析

当連結会計年度は、サプライチェーンリスクに備えて棚卸資産を増加させました。一方で、業況の回復に伴い、前連結会計年度に新型コロナウイルス感染拡大をはじめとする不測の事態による流動性リスクに備えて調達した借入金の返済を進めました。

これらの結果、当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末に比べ628億52百万円増加した1兆2,345億51百万円となり、負債合計は10億38百万円減少した5,970億91百万円となりました。

当連結会計年度末の資本合計は、剰余金の配当による減少があったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益、その他の資本の構成要素の増加等により、前連結会計年度末に比べて638億90百万円増加した6,374億60百万円となりました。

 

④キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、業況の回復に伴い借入金の返済を行ったこと等により、前連結会計年度末に比べて391億33百万円減少した1,375億4百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られたキャッシュ・フローは、税引前利益295億16百万円、減価償却費及び償却費565億58百万円があった一方で、棚卸資産の増加額348億21百万円等もあり、前連結会計年度に比べて311億8百万円減少した227億33百万円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用されたキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出360億63百万円があった一方で、資産効率の向上を図るため実施した有形固定資産の売却による収入108億29百万円、政策保有株式の縮減を進めたことに伴うその他の金融資産の売却による収入112億90百万円があり、前連結会計年度に比べて311億23百万円減少した199億73百万円の支出となりました。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用されたキャッシュ・フローは、配当金の支払額102億59百万円、短期借入金の純減額220億35百万円、社債の償還による支出100億円があり、482億24百万円の支出となりました(前連結会計年度は299億92百万円の収入)。

 

⑤目標とする経営指標の達成状況等

当連結会計年度は、第6次中期経営計画(2020年3月期から2022年3月期)の最終年度であり、当計画に基づき「次の成長に向けた事業基盤の強化」に向けて経営課題に取り組んできました。当社グループを取り巻く環境は、経済社会活動の正常化が進んだことで製造業を中心に設備投資が積極的に行われるなど需要は堅調に推移し、グローバル自動車生産台数は半導体等部材の供給不足による減産が長期化した影響を受けて前年割れになりましたが、産業機械事業及び自動車事業の販売は前期に比べて増加しました。

この結果、当連結会計年度における当社が経営上の目標として掲げる指標は、以下のとおりとなりました。

 

 

経営指標

第6次中期経営計画

目標

2021年3月期

実績

2022年3月期

実績

①売上高/成長率

売上成長2%/年

7,476億円

8,652億円/

対前期比+15.7%

②営業利益率

8%以上

0.9%

3.4%

③ROE

10%以上

0.1%

2.8%

④ネットD/Eレシオ

0.3倍程度

0.28倍

0.27倍

 

 

足元では、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクの高まりや中国でのゼロコロナ政策に伴う厳格な行動制限など、世界経済の先行きは不透明な状況です。このような環境下においても、当社グループは企業理念のもと、トライボロジーとデジタルの融合による価値創出で、持続可能な社会の発展に貢献し、社会から必要とされ信頼される企業を目指していきます。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性

①財務状況

第6次中期経営計画(2020年3月期から2022年3月期)の最終年度となった、当連結会計年度の財政状態は次のとおりです。

 

財務戦略の基本方針

経営指標

第6次中期

経営計画目標

第6次中期

経営計画

開始時

2019年3月期

実績

第6次中期

経営計画

終了時

2022年3月期

実績

評価・

コメント

 

財務基盤の安定維持

ネットD/Eレシオ

0.3倍程度

0.27倍

0.27倍

コロナ禍でも当初計画通り健全・安定的な財務体質を維持

自己資本比率

50%程度

49.4%

50.0%

収益を伴う成長

ROE

10%以上

10.4%

2.8%

利益減少に伴い低下

安定的な利益還元

配当性向

30%~50%

37.2%

77.3%

利益は減少したが、安定的な利益還元を継続

総還元性向

50%目安

73.1%

77.3%

 

 

 

②財務活動の振り返り

当連結会計年度では、経済社会活動の正常化が進み業況が回復したことに伴い、前連結会計年度に新型コロナウイルス感染拡大をはじめとする不測の事態による流動性リスクに備えて調達した借入金の返済を進めました。また、緊急時の手元流動性確保を目的として800億円に増額したコミットメントライン契約も縮減しました。これらの結果、有利子負債の当連結会計年度末の残高は前連結会計年度末から289億82百万円減少した3,034億57百万円となり、コミットメントライン契約金額は本報告書の提出時点で700億円となっています。なお、コミットメントライン契約による借入残高はありません。

有利子負債を返済した一方で、当社グループは、経営資源を有効活用するため資産効率の向上にも取り組んでいます。当連結会計年度においては、有形固定資産の売却により108億29百万円、政策保有株式の縮減を進めたことに伴うその他の金融資産の売却により112億90百万円の収入がそれぞれありました。

利益還元については、売上高、利益が前連結会計年度に比べて回復したことと、今後の事業環境等を総合的に勘案した結果、当連結会計年度の1株当たり配当金は、前連結会計年度の年20円から5円増配した年25円としました。配当性向と総還元性向は共に77.3%となり、第6次中期経営計画の目標(50%)を上回っています。

なお、新型コロナウイルス感染の収束が見られず、ウクライナ情勢をはじめ地政学リスクが高まっている等、先行きは依然不透明な状況にあります。このため、一定の手元流動性を確保した上で配当を優先したことから、自己株式の取得は実施しませんでした。
 

③財務戦略の基本方針

当社グループが2023年3月期からスタートさせたMTP2026では、持続可能な社会への貢献と不断の企業価値の向上を目指すために、安定した財務体質のもと、収益を伴う成長を遂げてキャッシュを創出することにより、当社の持続的成長のために必要な投資と株主の皆様への安定的な利益還元に資金配分を継続することを、財務戦略の基本方針としています。

 


 

 

 (a) 財務安定性の維持

当社グループの持続的な成長を支え、景気変動の影響にも耐え得るには、「財務安定性の維持」が前提となります。自己資本比率、ネットD/Eレシオ、手元流動性など、当社グループの財務健全性を示す指標は健全性を保って推移しています。MTP2026では、ネットD/Eレシオの目標を0.4倍以下とすることで、安定的な財務基盤を確保しつつ機動的かつ効果的な有利子負債の活用も図っていきます。

 

 (b) 収益を伴う成長

キャッシュを創出して、持続的な成長を達成するための設備投資や研究開発投資、さらにはESG経営に必要な人的資本、知的資本、IoT・ソフトウェアへの投資を実施し、株主の皆様に安定的な利益還元を継続するためには「収益を伴う成長」を持続的に達成することが必要です。

株主・投資家の皆様が期待する資本コストを上回る収益率をあげることは、株式上場会社の使命と言えます。当社グループは、過去の株価動向と事業特性、および株式市場の現況から推計した当社の株主資本コスト(概ね8%~9%)を上回る「ROE 10%」をMTP2026においても経営目標とします。また、経営目標の1つに「ROIC 8%」を掲げ、低収益資産の縮減を進め、資産効率の向上を図っていきます。これらの目標を中期的に達成し続けることが、株主価値の向上につながると考えています。

 

(c)安定的な利益還元

当社グループは株主の皆様に対する「安定的な利益還元」を重要な経営方針の一つとしています。MTP2026においては、配当性向30%~50%を目標に掲げて、株主の皆様へ安定的・継続的な配当を実施する方針です。また、機動的な資本政策の手法として、自己株式の取得も選択肢の一つと認識しています。自己株式の取得は、キャッシュ・ポジションや株式市場の動向等を勘案して適切かつ機動的に実施したいと考えており、配当と自己株式取得を合わせた総還元性向は、MTP2026期間累計で50%とすることを目安としています。なお、これらの実行にあたっては、財務状況等を勘案して適切に決定していきます。

 


 
④資金調達の方針

当社グループは現在、自己資金及び金融機関の借入れ等により資金調達することとしています。運転資金について借入れによる資金調達を行う場合、期限が一年以内の短期借入金で各連結会社がその現地通貨で調達することが一般的で、生産設備などの長期資金は、主として長期借入金及び社債で調達しています。
 本報告書提出時点において、格付投資情報センターから「A」、日本格付研究所から「A+」の格付を取得しており、外部からの資金調達に関しては問題なく実施可能と認識しています。当社グループは、その健全な財務状況、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力、金融機関のコミットメントライン契約700億円や、コマーシャルペーパー発行枠500億円などにより必要資金の確保と緊急時の流動性を確保しています。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

当社グループの販売・生産品目は極めて広範囲かつ多種多様であり、また見込み生産を行う製品もあるため、生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。このため、販売及び生産の状況については、「(2)財政状態及び経営成績の状況」に関連づけて記載しています。

 

(5) 経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に重要な影響を与えるリスク要因については、「2[事業等のリスク]」に記載のとおりです。

 

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