業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及び

キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響が続き、世界経済の先行きに強い不透明感が残る中でも、いち早く経済活動を再開した中国の回復に加え、米国をはじめとする先進国においても持ち直しの動きが見られました。そのような中、各国におけるワクチン接種の進展などに伴い、全体の景況感は改善の方向に向かう兆しが見られました。

当社グループでは、「LMガイド(直線運動案内:Linear Motion Guide)」をはじめとする当社製品の市場を拡大すべく「グローバル展開」と「新規分野への展開」、「ビジネススタイルの変革」を成長戦略の柱として掲げています。グローバル展開では、中国やその他の新興国においてFA(Factory Automation)の進展などを背景としてマーケットは成長し、先進国でもユーザーの裾野が広がる中、これらの需要を取り込むべくグローバルで生産・販売体制の拡充に努めています。新規分野への展開では、自動車、医療機器、航空機、ロボットなど消費財に近い分野に加え、免震・制震装置、再生可能エネルギー関連など自然災害や気候変動のリスクを低減する分野においても当社グループ製品の採用が広がる中、従来品のみならず新規開発品の売上収益の拡大を図っています。さらに、これらの戦略を推し進めるべく、様々な面でAI、IoT、ロボットをはじめとするテクノロジーを徹底的に活用することで、ビジネススタイルの変革を図り、ビジネス領域のさらなる拡大を図っています。

そのような中、産業機器事業においては、世界に先んじて経済活動を再開した中国に続き、先進国を含む他の地域においても需要が急速に回復する中、これらの需要を着実に取り込み売上収益へと繋げました。一方、輸送機器事業においては、半導体などの部材不足による自動車の減産の影響を受けました。これらの結果、連結売上収益は前期に比べて991億8千9百万円(45.3%)増加し、3,181億8千8百万円となりました。

コスト面では、輸送機器事業において自動車の減産や鋼材価格の上昇などの影響を受けましたが、産業機器事業における売上収益の増加に加え、生産性向上に向けた各種改善活動を引き続き推進したことなどにより、売上原価率は前期に比べて3.9ポイント低下し、74.9%となりました。

販売費及び一般管理費は、売上収益の増加などにより前期に比べて61億5千4百万円(13.7%)増加し509億8千8百万円となりました。売上収益に対する比率は、売上収益の増加に加え、各種費用の抑制や業務の効率化に努めたことなどにより、前期に比べて4.5ポイント低下し16.0%となりました。

これらの結果、営業利益は前期に比べて387億6千8百万円増加し302億6千8百万円(前年同期は84億9千9百万円の営業損失)となりました。

金融収益は21億4千5百万円、金融費用は24億3千万円となりました。

これらの結果、税引前利益は397億9百万円増加し299億8千4百万円(前年同期は97億2千5百万円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は329億9千9百万円増加し230億7百万円(前年同期は99億9千2百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

(日本)

日本では、産業機器事業において、引き続き回復基調で推移しているエレクトロニクス関連をはじめ、全般的に需要に回復の動きが見られました。そのような中、これらの需要をこれまでの工場拡張や自動化、ロボット化による生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げた結果、売上収益は前期に比べて329億9千4百万円(36.5%)増加し1,233億7千3百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は売上収益の増加などにより、前期に比べて396億6千3百万円増加し、222億6千2百万円(前期は174億円の損失)となりました。

 

(米州)

米州では、産業機器事業において、エレクトロニクス関連を中心に全般的に需要に回復の動きが見られる中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより着実に売上収益へと繋げました。これらの結果、売上収益は前期に比べて112億1百万円(24.3%)増加し、572億2千万円となりました。セグメント損益(営業損益)は、売上収益の増加などにより、前期に比べて21億5百万円改善しましたが、輸送機器事業における損失の影響により、11億3千4百万円の損失(前期は32億3千9百万円の損失)となりました。

 

(欧州)

欧州では、産業機器事業において、全般的に需要に回復の兆しが見られる中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。これらの結果、売上収益は前期に比べて109億7千3百万円(27.9%)増加し、502億4千7百万円となりました。セグメント損益(営業損益)は、売上収益の増加などにより、前期に比べて46億4千5百万円改善しましたが、輸送機器事業における損失の影響により、13億3千7百万円の損失(前期は59億8千3百万円の損失)となりました。

 

(中国)

中国では、世界に先んじて経済活動が再開され、全般的に需要の回復が続く中、これらの需要をこれまで推し進めてきた生産性向上に向けた取り組みなどにより、着実に売上収益へと繋げました。これらの結果、売上収益は前期に比べて339億8千7百万円(102.7%)増加し、670億7千2百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は売上収益の増加などにより、前期に比べて57億2千9百万円(153.6%)増加し、94億5千9百万円となりました。

 

(その他)

その他では、インド・ASEANをはじめとして当社グループ製品への需要の裾野が着実に広がる中、当社グループにおいては販売網の拡充に加え、新規顧客を開拓すべく積極的な営業活動を展開しました。加えて、一部地域で中国における需要の回復の影響を受けたことなどにより、売上収益は前期に比べて100億3千3百万円(98.0%)増加し、202億7千4百万円となりました。セグメント利益(営業利益)は売上収益の増加などにより、前期に比べて16億3千1百万円(252.2%)増加し、22億7千8百万円となりました。

 

② 財政状態の状況

資産は、現金及び現金同等物が74億8百万円減少しましたが、営業債権及びその他の債権が267億8千8百万円、棚卸資産が171億4千1百万円、有形固定資産が122億1千3百万円、繰延税金資産が25億9千2百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ559億1千2百万円増加の5,160億8千6百万円となりました。

負債は、社債及び借入金が8億1千1百万円減少しましたが、営業債務及びその他の債務が96億9千1百万円、未払法人所得税が69億6千2百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ167億7千1百万円増加の2,017億9千6百万円となりました。

資本は、利益剰余金が138億9千4百万円、自己株式が27億6千8百万円、その他の資本の構成要素が214億円、非支配持分が10億7千6百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ391億4千万円増加の3,142億8千9百万円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益299億8千4百万円、減価償却費及び償却費187億4千8百万円、営業債務及びその他の債務の増減額106億1百万円などのキャッシュ・インに対し、営業債権及びその他の債権の増減額248億9千8百万円、棚卸資産の増減額141億9千6百万円、法人所得税の支払額32億1千6百万円などの

キャッシュ・アウトが発生したことにより、156億4千3百万円のキャッシュ・イン(前連結会計年度は253億9千9百万円のキャッシュ・イン)となりました。

 

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出192億4千8百万円などのキャッシュ・アウトにより、191億2千5百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度は184億6百万円のキャッシュ・アウト)となりました。

 

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出21億8千5百万円、自己株式の取得による支出50億8千8百万円、配当金の支払額35億6千8百万円などのキャッシュ・アウトが発生したことにより、127億2千5百万円のキャッシュ・アウト(前連結会計年度は39億7千7百万円のキャッシュ・イン)となりました。

 

これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べて、74億8百万円減少し、1,514億3千万円となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、連結ベースにおいてはセグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため、生産、受注及び販売の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に関連付けて記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

連結売上収益は3,181億8千8百万円、営業利益は302億6千8百万円、税引前利益は299億8千4百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は230億7百万円となり、売上収益、各利益項目ともに前期に比べて増加しました。これに伴いROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)は8.1%、EPS(基本的1株当たり当期利益)は181.97円となりました。

事業別の状況を見ると、産業機器事業においては国内外の各地域において需要が回復基調で推移する中で、これらの需要をこれまでの工場拡張や自動化、ロボット化による生産性向上に向けた取り組みなどにより着実に売上収益へと繋げました。輸送機器事業においては半導体などの部材不足による自動車の減産の影響を受けました。これらの結果、売上収益は前期に比べて増加しました。

地域別の状況を見ると日本では、産業機器事業において、引き続き回復基調で推移しているエレクトロニクス関連をはじめ、全般的に需要に回復の動きが見られた一方、輸送機器事業においては自動車の減産の影響を受けました。米州では産業機器事業におけるエレクトロニクス関連を中心に需要に回復の動きが見られた一方、 輸送機器事業においては、自動車の減産の影響を受けました。欧州では産業機器事業においては、全般的に需要の回復が見られた一方、輸送機器事業においては、自動車の減産の影響を受けました。中国では世界に先んじて経済活動が再開され、産業機器事業において全般的に需要の回復が続きました。アジア他地域ではインド・ASEANをはじめとして当社グループ製品への需要の裾野が着実に広がる中、一部地域で中国における需要の回復の影響を受けました。

コスト面では、輸送機器事業において自動車の減産や鋼材価格の上昇などの影響を受けましたが、産業機器事業における売上収益の増加に加え、生産性向上に向けた各種改善活動を引き続き推進したことなどにより、前期に比べて増益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、企業価値向上に向けた資金を適切に調達、配分しております。加えて、パンデミック、自然災害、不測の事態の発生時においても事業を継続し、当社製品の供給責任を果たすべく、強固な財務基盤を堅持することを財務戦略の基本としております。財務基盤の堅持に関しては、安定的な資金調達を可能とするため、格付機関である格付投資情報センターおよび日本格付研究所からともに取得している「A+(シングルAプラス)」の維持向上を目指しております。主要な金融機関とは良好な取引関係を維持しており、加えて強固な財務基盤を有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、投資資金は調達可能であると認識しております。

 

b.資金の調達と流動性

当社グループの資金の源泉は、主として営業活動からのキャッシュ・フローとコマーシャルペーパー、社債の発行及び金融機関からの借入などの財務活動による資金調達になります。当期の営業活動によるキャッ

シュ・フローは、156億4千3百万円であります。財務活動においては、主要な金融機関において、コミットメントライン300億円を設定しており、緊急時の資金調達手段を確保しております。

また、当社グループでは、日本国内、米州、欧州及び中国の各地域において、グループ各社が保有する資金をグループ内で効率的に活用するキャッシュ・マネジメントシステムを構築し運用しております。日本国内においては当社、米州及び欧州においては当社の金融子会社、中国においては持株統括会社が資金集中管理を行うことにより資金の偏在をならし、資金の効率化、流動性の確保を図っております。

 

c.資金需要

当社グループの主な資金需要は、製品製造のための原材料及び部品の購入費、製造経費、販売費および一般管理費等の運転資金に加え、生産効率及び品質向上、生産能力増強を目的とした設備投資や技術革新に対応した研究開発のための資金ならびに配当金支払いなどを見込んでおります。

当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の163億5千6百万円に比べ53億7千2百万円(32.8%)増加し、217億2千9百万円となりました。需要が回復基調で推移する中、工場拡張や自動化、ロボット化による生産性向上に向けた取り組みなどにより、設備投資額は前連結会計年度に比べ大きく増加しました。研究開発費は、前連結会計年度の53億4千9百万円に比べ2億1千1百万円(4.0%)増加し、55億6千万円となりました。配当金支払額は、35億6千8百万円となりました。

これらの設備投資、研究開発のための資金や、配当金の支払などの原資については、主に自己資金で賄っております。

 

d.経営資源の配分に関する考え方

当社グループは、将来の収益の獲得を目的とする設備投資や研究開発投資を実施すること、安定的な配当の継続を基本とするとともに業績に応じた積極的な利益配分を実施すること、そして内部留保を充実させて強固な財務基盤を堅持することが重要であると考えております。

利益配分につきましては、期間損益に対して連結配当性向30%を基本としておりますが、1株当たり配当金の下限を年間15円(中間・期末各7.5円)と設定しております。内部留保金につきましては、事業機会を的確に捉えるために必要となる水準を保持することを基本とし、当社グループの成長戦略の柱である「グローバル展開」、「新規分野への展開」、「ビジネススタイルの変革」の取り組みなどに有効活用してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針、4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 37.追加情報」に記載しております。

 

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