文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
THKグループは、機械の直線運動部分を“軽く”“正確に”動かすため、“すべり”を“ころがり”化する重要な機械要素部品を世界へ供給しています。「世にない新しいものを提案し、世に新しい風を吹き込み、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念のもと、1971年の創業以来、創造開発型企業として「LMガイド(Linear Motion Guide:直線運動案内)」をはじめとする機械要素部品を供給し、工作機械、半導体製造装置など様々な機械装置の高精度化、高剛性化、高速化、省エネルギー化を実現し、必要不可欠な部品として産業の発展に貢献してまいりました。
当社グループは、LMガイドを開発して以降、世界のトップメーカーとして、お客様の多様なニーズにお応えする中で蓄積してきたノウハウによる高品質な製品や幅広い提案力により、お客様から高い信頼を獲得しています。近年では産業分野のみならず、自動車、医療機器、航空機、サービスロボットなど消費財に近い分野に加え、免震・制震装置、再生可能エネルギー関連など自然災害や気候変動のリスクを低減する分野へと当社グループの製品の採用が広がっています。このように、世界中で多くのお客様より供給が求められる中、エッセンシャルビジネスとして本業を通じた社会貢献を実現しながらも、気候変動など地球環境が変化する中で持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進め、企業価値の増大を図ってまいります。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、地理的な領域拡大を目指した「グローバル展開」と用途的な領域拡大を目指した「新規分野への展開」に加え、AI、IoT、ロボットをはじめとするテクノロジーを徹底活用する「ビジネススタイルの変革」を成長戦略の柱として掲げ、事業領域の拡大を図っております。
グローバル展開では、日本・米州・欧州・アジアの4極において、現地で生産して販売するという「需要地における製販一体体制」を構築しています。日本国内における当社グループのLMガイドをはじめとする直動製品の認知度は高く、市場シェアも高水準で推移する一方、海外では普及率が日本国内に比べて低いことから、まだ多くの潜在需要が存在すると考えております。近年は、とりわけ中長期的に需要の拡大が見込まれる中国やその他の新興国において、販売網の拡充ならびに生産体制の強化を図っています。加えて、先進国においてもユーザーの裾野が広がる中で着実に需要を取り込むべく販売網を拡充し、さらなる成長へと繋げています。
新規分野への展開では、LMガイドを中心とする製品群の現在の主な顧客は資本財メーカーですが、自動車、医療機器、航空機、サービスロボットなど消費財に近い分野に加え、免震・制震装置、再生可能エネルギー関連など自然災害や気候変動のリスクを低減する分野へと当社グループの製品の採用が広がっています。このように産業分野のみならず我々の身の回りにも膨大な需要が存在すると考えており、これらの需要を取り込むべく、これまで培ってきた直動システムのコア技術を応用した新製品を投入し、新規分野への展開を加速しています。
ビジネススタイルの変革では、デジタルテクノロジーが急速な進展を見せる中、AI、IoT、ロボットをはじめとする新たなテクノロジーを販売、生産、開発などのあらゆる面で徹底的に活用することにより、ビジネスの進め方や仕組みの変革を図っています。お客様向けコミュニケーションプラットフォーム「Omni THK」、製造業向けIoTサービス「OMNIedge」、そして「THK DX プロジェクト」の推進など、あらゆる取り組みにより新たな顧客体験価値を創造し、ビジネスのさらなる拡大を図っています。
今後もこれらの取り組みとともに、収益性の向上や財務体質の強化を強力に推進し、企業価値の増大を図ってまいります。
(3) 経営環境
当社グループの需要環境においては、デジタルテクノロジーの急速な進展や、地球環境保護機運の高まり、そして先進国における人手不足や長寿命化などのマクロ動態の変化がメガトレンドを形成する中、「5G」「AI・IoT」「CASE」「インダストリー4.0」「自動化・省人化・省エネ化」といった変化のキーワードが表れています。そして、これらのキーワードから、半導体製造装置・FA関連向け製品、サービスロボット関連製品、医療機器向け製品、電動アクチュエータ、次世代自動車部品、Omni THK、OMNIedgeなどの当社グループが提供する製品やサービスが求められており、その成長ポテンシャルは中長期かつ飛躍的なものになると考えられます。したがって、これらの需要を顕在化させるとともに着実に取り込むべく、成長戦略を推し進めてまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
産業機器事業においては、既存顧客の深耕を図るともに、デジタルテクノロジーが急速に進展する中、ビジネススタイルの変革を推し進め、さらなる事業領域の拡大を図っています。お客様向けコミュニケーションプラット
フォーム「Omni THK」においては、THKの在庫品検索、短納期品の入手、選定・CADデータ・見積書取得とあらゆる工程をサポートすることに加え、標準品・セミオーダー品の短納期対応機能「Delivery」、お客様の製品管理情報とTHKの製品情報の紐付管理機能「Your Catalog」、お客様の需要予測とTHKの製造予定の照合による予実管理機能「Forecast」など、新たな顧客体験価値を提供しています。一方社内においては、「THK DXプロジェクト」を推進し、これらを成し遂げるべく、社内のシステムもお客様の発注から当社の出荷まで人を介さずに、一気通貫で自動で流れる仕組みの構築を目指し、飛躍的な生産性向上を図っています。このように顧客向けの「Omni THK」と社内改革の「THK DX プロジェクト」の両面からなる改革を連携しながら推し進め、新たな顧客体験価値の創出・提供により顧客満足度の向上を図っています。製造業向けIoTサービス「OMNIedge」は、「THK SENSING SYSTEM」で取得したデータを、エッジコンピューティングルータ、セキュアなデータ通信回線を通じて、機械要素部品の状態を数値化し解析することで、予兆の検知ができるシステムです。部品状態の見える化により、保全業務の効率化、在庫管理コストの削減、設備稼働率の向上を実現し、生産計画のスムーズな遂行をサポートします。今後も本サービスを通じて、製造現場の持続的な生産性向上に貢献してまいります。
輸送機器事業においては、半導体をはじめとする部材不足による自動車の減産や鋼材価格の値上がりなどにより営業損失が続いています。そのような中、グローバルにおける生産品目・生産ラインの見直しや、人員・組織再編、アウトソーシングに加え、生産性・工程改善を強化することによるコスト削減による収益性改善を図っています。一方、自動車業界における自動運転化や電動化をはじめとするCASEの潮流を追い風に、直動製品で培ったコア技術を活かした次世代自動車向けの新製品の開発・販売活動を加速しています。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2026年度を最終年度とする経営目標として連結売上収益5,000億円、営業利益1,000億円、ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)17%、EPS(基本的1株当たり当期利益)590円を掲げ、成長戦略を展開し持続的な企業価値の増大を図っております。
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