課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「国際交流の発展及び世界平和に貢献することと同時に、全従業員及び関係者の物心両面の充足と幸福を追求する」ことを経営理念として掲げております。旅行業を通じて国際間における人的交流の促進に寄与することが、我が国と諸外国間における国際交流の発展につながり、ひいては世界平和の実現に貢献できるとの理念のもと、当社グループの事業を推進してまいります。

また、持続的な事業の発展と公正な利益分配を通じて、株主の皆様、従業員、旅行者、取引先といった全てのステークホルダーの物心両面の充足と幸福実現を追求してまいる所存です。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、事業規模拡大の観点から、売上高及び売上総利益の額とそれらの成長率を重要な経営指標と位置付けております。また、事業の収益性と企業価値の向上を目指すべく、営業利益、経常利益及び1株当たり当期純利益の額とそれらの成長率についても重要な経営指標と認識しております。

 

(3) 中長期的な経営戦略

当社グループの主力事業である個人旅行事業においては、オンライン販売の利点と「トラベル・コンシェルジュ」による柔軟な対応を組み合わせた「ハイブリッド戦略」により事業を拡大させてまいりました。

今後も「ハイブリッド戦略」を拡大・深化させることが国内及び海外の個人旅行市場におけるシェア拡大につながるという考え方から、システム投資によりオンライン販売システムの利便性を高めつつ、商品企画の強化や人材の採用・教育の強化を通じて、旅行商品の充実と「トラベル・コンシェルジュ」による付加価値の高い商品提案を実現させてまいります。あわせて、認知度向上によるさらなる顧客基盤の拡大を目指して、様々なマーケティング施策を積極的に実施してまいります。

また、事業ポートフォリオの多様化を図るべく、法人旅行事業とインバウンド旅行事業についても、引続き強化してまいります。

 

(4) 経営環境

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、世界各国において海外渡航制限や行動制限等の措置が取られるなど、旅行業界を取り巻く環境は大変厳しいものとなっております。海外旅行市場におきましては、2020年3月以降、外務省より全世界を対象に感染症危険情報レベル2もしくはレベル3が発出されていることから海外ツアーの催行中止が続いておりましたが、2022年4月1日に、感染症危険情報レベル3が発出されていた106か国について、そのレベルが感染症危険情報レベル2へ引き下げられ、日本旅行業協会の定める募集型企画旅行催行ガイドラインも見直された結果、海外ツアー催行再開の機運が高まっております。一方で、国内旅行市場におきましては、海外旅行・インバウンド旅行に先んじて需要回復することが期待されます。

中長期的には、日本国内の少子高齢化と人口減少が進む一方、新興のオンライン旅行会社の参入や成長により、国内の旅行業界の競争は激化することが予想されます。また、スマートフォン等の通信端末の進化や新たなオンラインメディアの誕生により、これまでとは異なるマーケティング機会や新たな技術が日々登場しております。
 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは以下のような課題に対処すべきと認識しています。

なお、以下に記載する課題に関しては、当社グループとして対処すべき優先順位が高いと考えるものから順番に記載しております。

 

 

(財務上の課題)

当連結会計年度末における当社グループの有利子負債残高は3,800,000千円であり、純資産は△1,021,901千円と多額の債務超過に陥っております。このような状況の中、当社グループとしては、事業運営の安定化及び今後の事業展開に向けた財務基盤の健全化のため、徹底的なコストの削減、資金の確保を軸とした対策を進めております。


(国内旅行事業)

当社グループは従来、海外旅行商品を強みとしてきましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、世界各国において海外渡航制限や行動制限等の措置が取られるなど、海外旅行商品の販売に関して厳しい状況が続いております。このような中で当社グループといたしましては、新たな収益源を育てるべく、2020年6月より個人旅行事業におきまして、新たに国内ツアーの企画・販売を開始しております。
 

(コンプライアンス体制の強化)

当社は、2022年3月16日付で公表いたしましたとおり、当社グローバル・アライアンス部門におけるGo To トラベル事業給付金の受給申請に関する調査報告書を受け、以下のとおり再発防止策の取り組みを進めてまいりました。

 

1.社内規程・様式の見直し

職務権限規程の権限項目、与信管理規程の決裁基準、リスク管理規程のリスク・コンプライアンス委員会への付議事項等、複数の規程の項目や基準を見直し、改善いたしました。また、必要な社内規程・社内プロセスを時間的に履践できないような場合には取引の断念を判断する意識を醸成することを目指し、稟議承認時に、最終決裁者もしくは案件担当部門の取締役が案件開始日を入力する項目を追加し日付の入力なく承認をすることができない仕組みへ変更いたしました。

2.教育活動

2020年7月15日に公表しました再発防止策(コンプライアンス意識の向上)にも含まれておりますが、引続き、コンプライアンス教育を実施し、そのコンテンツの見直しも継続的に行い、当社全体のコンプライアンス意識の向上に努めます。また、給付金や補助金申請に関するマニュアル作成や教育の実施、新規取引に関連する社内手続きの教育の実施等により、コンプライアンス遵守のために必要な事項について従業員の理解が進むものと考えております。

3.意識改革

コンプライアンスについて全社員を対象に社内研修を実施したほかアンケートによる意識調査を実施いたしました。また、「旅工房コンプライアンス行動規範」を当社ウェブサイトへ公開いたしました。本行動規範に基づきどのような行動を心がけるかを「コンプライアンス宣誓書」として毎年度、従業員より取得いたします。これにより従業員一人一人のコンプライアンス意識の向上に努めます。

 

上記のとおり、「調査報告書」の提案を受けて、再発防止策に取り組んでおりますが、今回の事案発生の原因として指摘された、①給付要件に対する理解が不十分であったこと、②顧客の与信管理が不十分であったこと、③リスクの識別の不備、④社内規程・社内プロセスが徹底されていなかったこと、の4点の問題は、主に内部統制システムの運用面の徹底の必要性を指摘されたものであり、引続き上記の再発防止策を含めた内部統制システムの運用の徹底に努め、コンプライアンス体制の強化を進めてまいります。

 

(システム強化)

旅行の申込み方法ではインターネットが最も多く、スマートフォン等の情報端末の進化や電子商取引市場の拡大を勘案すると、今後もインターネット経由での売上が増えることが予想されます。当社グループでの旅行商品の取扱いはインターネットを通じたオンライン販売が中心であり、インターネットを利用して旅行商品を購入する消費者の割合が増えれば当社グループの対象マーケットは拡大し、当社グループの今後の成長に寄与することが見込まれます。当社グループでは、すでにシステム上で予約が完結する「オンライン・パッケージ」システムを稼働させており24時間の自動予約に対応しておりますが、旅行商品データベースの充実やサーバの機能増強等、引続きオンライン予約システムの機能強化を推進してまいります。また、情報端末の多様化への備えや画面上でユーザーが見やすく使い勝手の良いウェブサイト作りに取組む等、利便性の高いウェブサイトの構築を進めてまいります。

 

 

(マーケティングの進化)

スマートフォン等の情報端末や技術の進化、日々の生活へのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の浸透、新たなオンラインメディアの登場等により、消費者のインターネット上での購買行動が変化していくことが予想されます。その結果、中長期的には、これまでのインターネット上での広告手法や旅行系のポータルサイトを通じた集客が通用しなくなり、これまでとは異なるマーケティング手法への対処が必要となるものと考えております。当社グループでは今後のマーケティングの進化を課題と位置づけ、従来の手法にとらわれない新たなマーケティングの方法を模索していきます。

 

(トラベル・コンシェルジュ教育)

オンラインでの旅行商品販売が拡大するにつれ、システムによるオンライン予約だけでは対応できない潜在ニーズに応えるために、当社グループの特徴である「トラベル・コンシェルジュ」による接客の重要性は高まっていくと考えており、高いスキルを持った優秀な「トラベル・コンシェルジュ」を確保し、その能力を高めることが当社グループの課題であると認識しております。

 

当社グループでは、「トラベル・コンシェルジュ」の教育を専門に行う「教育セクション」を設け、継続的な研修実施や外部講師の招聘等により「トラベル・コンシェルジュ」の接客力・対応力向上に努めております。また、随時、海外研修に派遣して現地を実際に体験することにより、「トラベル・コンシェルジュ」として必要な知識のみならず、より実践的かつ具体的な旅のアドバイスにつながる知見の獲得に努めております。これらの活動を通じて、オンライン完結型では困難な「人の温かみ」と「柔軟性」、すなわち人間によるヒアリングや旅行提案という価値をさらに高めていくために、「トラベル・コンシェルジュ」の教育の強化を進めていきます。

 

(商品企画力の向上)

今後、オンライン化が進み事業者の旅行手配業務への参入が容易になることにより、他社との差別化において旅行の企画力がこれまで以上に重要になるものと考えております。

当社グループは、これまで企画担当者の現地研修や社内での勉強会をはじめとする商品企画力強化のための取り組みを行ってきましたが、他社とのさらなる差別化のために現地情報のデータベース化による知識の集約や社内研修等を活用した共有のための取り組みを強化して、企画力の向上を図っていきます。

また、エールフランスKLMと「SAFプログラム」において、旅行会社としてアジア初のパートナーとして協力提携に合意し、当社グループの主力であるヨーロッパツアーにおける環境に配慮したパッケージ旅行企画を開始するなど、新型コロナウイルス感染症収束後の需要回復を見据えた商品企画を推進しております。

 

(ブランド認知度の向上)

旅行業界において、大手の同業他社と比較したとき当社グループの認知度はまだまだ低いものと思われます。また、旅行商品は個人の消費支出の中では比較的単価の大きな商品であることから、旅行会社の選択にあたっては旅行会社の信頼性及び信用力も重要な要素となっております。多くのお客様から問い合わせを受け、お客様からの信頼を得るには当社グループの認知度向上と信頼性及び信用力の向上が不可欠と考えております。当社グループのブランド価値、認知度及び信頼性向上のため、積極的にPR施策を行ってまいります。

 

(海外市場の開拓)

当社グループは従来、今後の海外市場の開拓に関して、海外から国内へのインバウンド需要の拡大や新興国での旅行需要の増加を見据えて、訪日外国人のインバウンド旅行対応の強化と日本国外における海外から海外への三国間旅行事業の強化を重要な戦略の一つとして位置付けておりましたが、2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、世界各国において海外渡航制限や行動制限等の措置が取られるなど、インバウンド市場の拡大が不透明な状況にあります。当社グループとしては中長期的にはインバウンド市場は再び拡大していくと考えておりますが、従来進めていた海外市場の開拓に関しては、市場の動向を鑑みながら慎重に進めてまいります。

 

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