業績

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループの連結財務諸表は国際会計基準(以下、「IFRS」という。)に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについて、当該見積り及び当該仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5)見積り及び判断の利用」に記載のとおりです。

当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいております。

この報告書には、当社独自の予測や評価に基づいた将来に関する記述を含んでおります。当社グループが営業活動を行っている電動工具市場は、経済情勢の急激な変化、住宅需要、為替レート、競合他社との競業状況の変化及びその他の要因に影響を受けます。このようなリスクや状況の変化により、記載内容と実際の結果が著しく異なることがあります。従って、文中の将来に関する記述は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その実現の可能性を述べているものではありません。

 

(1)経営成績の状況

①  業績

 当社グループは世界のプロユーザー向けの電動工具の製造・販売を主な事業としております。当連結会計年度の連結売上収益の84.0%が海外売上収益です。電動工具の需要は、住宅建築や修繕、商業施設・プラント建設、その他の公共投資・個人投資の影響を受けます。

当連結会計年度の連結売上収益は、前連結会計年度比21.5%(130,929百万円)増加して739,260百万円となりました。当連結会計年度の円ドル為替相場の平均レートは、前連結会計年度に比べ5.9%の円安、1ドル=112.39円でした。円ユーロ為替相場の平均レートは、5.5%の円安、1ユーロ=130.55円でした。全通貨の加重平均では6.3%の円安、為替による売上収益の増加額は36,600百万円となります。このドル高及びユーロ高といった為替の影響を除いた場合、当社グループの連結売上収益は15.5%(94,329百万円)増加となります。また当連結会計年度の販売台数は前連結会計年度比12.6%増加となりました。

DIY市場が確立されている北米及び欧州などの先進国では、電動工具需要は経済成長に加え、消費動向の影響を受けます。一方、発展途上国では、電動工具需要は経済成長が増加すれば拡大すると予測されます。

技術的な革新は電動工具市場を活性化させ、特に近年では小型軽量化され高性能化されたリチウムイオンバッテリ充電式電動工具は新たな需要を喚起しております。

当社グループは、電動工具メーカーとして世界で確固たる地位を築いておりますが、世界レベルでの競争は更に激しくなっております。

当期の国際的な経済情勢を見ますと、新型コロナウイルスワクチンの普及に伴い、先進国を中心に経済・社会活動の正常化が進む一方、サプライチェーンにおけるモノ不足と物流の混乱、物価の上昇、変異株による感染の再拡大、さらにはウクライナ問題をめぐる国際情勢の緊迫化など先行きの不透明な状況が依然として続いています。

このような情勢の中で当社グループは、開発面では、ハイパワー・長寿命・高耐久の「40Vmaxリチウムイオンバッテリ」シリーズの電動工具・園芸用機器をはじめとした充電製品のラインアップ拡充に注力しました。

生産面では、製品群の多様化と需要の拡大に対し、グローバル生産の多極化と生産能力の増強に取り組みました。

営業面では、地域密着・顧客密着のサービス体制のレベルアップに注力し、世界各地域のお客様との信頼関係の更なる強化に努めるとともに、充電製品を軸とした市場の深耕・開拓に取り組みました。

利益面においては、輸送費は増加しましたが、売上収益の増加により、営業利益は前期比3.7%増の91,728百万円(営業利益率 12.4%)となりました。税引前利益は前期比6.1%増の92,483百万円(税引前利益率12.5%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は同4.4%増の64,770百万円(親会社の所有者に帰属する当期利益率8.7%)となりました。
 当社グループの目標は、グループ全体の持続的成長により、高い利益体質を確立し、連結ベースで売上収益に対する営業利益率10%を維持することです。さらに、中長期的な戦略として、当社グループは、高いブランド力を構築し、世界各地域におけるプロ用電動工具をはじめ、園芸用機器など工具のグローバルサプライヤーとしてトップシェアの維持・獲得を目指しております。
 当社グループは、プロユーザー満足度の高い新製品開発、高品質とコスト競争力を両立させたグローバルな生産体制、国内及び海外各地域における販売・サービス体制を常に強化していくことにより、これらの目標を達成できると確信しております。この経営戦略を実行するために、当社グループは、為替相場変動リスク、地理的リスク、経営上の主要な機能や生産拠点の集中から生じるリスクなど、予期せぬ経済環境の変動に耐えうる確固たる財務体質を維持することに努めております。

世界経済が新型コロナウイルスの影響から次第に回復し、当社グループの関連する市場においても引き続き底堅い需要が見込まれる一方、当期に発生した巣ごもり需要効果の持続性など当社グループを取り巻く環境は先行きの不透明な状況が続くものと思われます。

 

製品グループ別業績

電動工具等

電動工具等には、ドリル、ハンマドリル、震動ドリル、グラインダ、充電式インパクトドライバ、丸ノコ等があります。このグループは当社グループの連結売上収益のうち最も大きな割合を占めております。当連結会計年度におけるこの分野の売上収益は前連結会計年度比18.5%増の422,076百万円で、連結売上収益の57.1%となりました。このうち国内は前連結会計年度比0.1%増の54,724百万円で、国内売上収益の46.4%となりました。海外は前連結会計年度比21.8%増の367,352百万円で、海外売上収益の59.1%となりました。
  当連結会計年度に発売した製品としては、18V リチウムイオンバッテリを使用し、高圧吐出&高吐出量の充電式グリスガン、40Vmaxリチウムイオンバッテリシリーズでは定回転制御で安定作業の充電式プランジマルノコやAC100V機を超える穴あけスピードを実現したD 型ハンドル28mm 充電式ハンマドリル、世界最速・圧倒的低振動の充電式レシプロソーなどがあります。

 

園芸用機器・家庭用機器・その他製品

園芸用機器・家庭用機器・その他製品には、チェンソーや草刈機、掃除機、充電式クリーナ等があります。当連結会計年度におけるこの分野の売上収益は前連結会計年度比28.1%増の189,579百万円で、連結売上収益の25.6%となりました。このうち国内は前連結会計年度比7.3%増の38,538百万円で、国内売上収益の32.6%となりました。海外は前連結会計年度比34.8%増の151,041百万円で、海外売上収益の24.3%となりました。
 当連結会計年度に発売した製品としては、40Vmaxリチウムイオンバッテリシリーズとして、エンジン式を超える使用感を実現した充電式ヘッジトリマシリーズ、40Vmaxリチウムイオンバッテリ2 本を使用し、低騒音でありながら最大出力を40mLエンジン式同等のハイパワーを実現した充電式草刈機、強力な吸引力と静音性を実現した充電式集じん機などがあります。

当社グループはリチウムイオンバッテリを主体とする充電式園芸用機器に注力しており、騒音や排気ガスといった点で環境にやさしい製品の拡販に努めております。

 

 

部品・修理・アクセサリー

当社グループはアフターサービスとして部品・アクセサリーの販売や修理を行っております。当連結会計年度におけるこの分野の売上収益は前連結会計年度比22.5%増の127,605百万円で、連結売上収益の17.3%となりました。このうち国内は前連結会計年度比10.3%増の24,788百万円で、国内売上収益の21.0%となりました。海外は前連結会計年度比25.9%増の102,817百万円で、海外売上収益の16.6%となりました。

 

 

②地域別売上収益

国内では、電動工具、園芸用機器共にリチウムイオンバッテリ製品を中心に販売が好調に推移し、前期比4.4%増の118,050百万円となりました。

 

欧州では、巣ごもり需要が落ち着く一方、活発な建築・建設現場での工具需要及び充電式園芸用機器の販売が引き続き好調に推移し、前期比24.7%増の352,470百万円となりました。西欧と東欧に分けると、西欧の売上は前年比20.3%の増加、東欧・ロシアの売上は前年比32.4%増加となりました。為替変動の影響を除くと、西欧が12.8%増、東欧・ロシアが26.4%増となり、欧州全体での売上は17.7%増加となります。

 

北米では、旺盛な住宅需要に伴う電動工具の販売及び、充電式園芸用機器の販売も好調に推移したことから、前期比23.4%増の112,248百万円となりました。為替変動の影響を除くと、北米の売上は15.8%増加となります。

 

アジアでは、新型コロナウイルス感染の再拡大が各国において発生し、営業活動に影響を及ぼしたものの、台湾や東南アジアでの販売が堅調だったことから前期比25.1%増の49,196百万円となりました。為替変動の影響を除くとアジアの売上は17.7%増加となりました。

 

中南米では、各国でインフレが加速する一方、底堅い工具需要を確実に捉える営業活動により、前期比42.0%増の41,765百万円となりました。為替変動の影響を除くと34.7%の増加となりました。

オセアニアでは、主要都市で感染再拡大によるロックダウンが行われた影響を受けたものの、建築・建設現場での旺盛な工具需要から、前期比24.9%増の51,579百万円となりました。為替変動の影響を除くと14.4%の増加となりました。中近東・アフリカでは、不安定な政治・経済情勢が続くものの、各国の建築・建設現場の工具需要を捉え、前期比20.5%増の13,952百万円となりました。為替変動の影響を除くと14.3%の増加となりました。

 

③地域別セグメント

セグメント情報は当社及び連結子会社の所在地に基づき決定されます。セグメント売上は出荷元基準であり、それぞれの市場における売上収益を示す地域別売上とは異なります。

当社は全ての報告セグメントの業績をIFRSで一般に公正妥当と認められた会計基準により評価しております。各セグメントの営業利益の算出方法は、連結損益計算書における営業利益の算出方法と一致しており、受取利息及び配当金、支払利息、為替差損益、及び金融資産の売却損益、金融資産及び金融負債の評価損益などを含みません。

 

日本セグメント

当連結会計年度の日本セグメントの売上収益は前期比41.7%増加し536,794百万円となりました。外部顧客に対する売上収益は7.5%増加して141,244百万円(連結売上収益の19.1%)となりました。これは、販売が好調に推移したことに伴うグループ間取引の増加及び国内市場での販売が好調だったことが要因となります。また、輸送費の増大の影響などにより、営業利益率は8.2%から5.8%と2.4ポイント悪化しました。この結果、当連結会計年度のこのセグメントの営業利益は0.1%増加し31,127百万円となりました。

 

欧州セグメント

当連結会計年度の欧州セグメントの売上収益は前期比26.3%増加し375,254百万円となりました。外部顧客に対する売上収益は24.7%増加して354,561百万円(連結売上収益の48.0%)となりました。これは、活発な建築・建設現場での工具需要及び充電式園芸用機器の販売が引き続き好調に推移したことが要因となります。売上収益の増加が営業費用の増加を上回ったことにより、営業利益率は10.0%から10.5%と0.5ポイント改善しました。この結果、当連結会計年度のこのセグメントの営業利益は32.0%増加し39,399百万円となりました。

 

北米セグメント

当連結会計年度の北米セグメントの売上収益は、前期比24.0%増加し120,367百万円となりました。外部顧客に対する売上収益は、23.5%増加して114,635百万円(連結売上収益の15.4%)となりました。これは、激しい競争下でも旺盛な住宅需要を背景に、販売が好調に推移したことが要因となります。また、物流の混乱による輸送費の増大の影響などにより、営業利益率は3.8%から0.7%と3.1ポイント悪化しました。この結果、当連結会計年度のこのセグメントの営業利益は78.2%減少し803百万円となりました。

 

アジアセグメント

当連結会計年度のアジアセグメントの売上収益は前期比52.6%増加し443,833百万円となりました。外部顧客に対する売上は22.1%増加して30,823百万円(連結売上収益の4.2%)となりました。これは、全地域で販売が好調に推移したことに伴うグループ間取引の増加及び台湾や東南アジアで販売が堅調に推移したことが要因となります。為替が元高に推移したことに加え、世界的な輸送費増大の影響などにより、営業利益率は7.1%から4.4%と2.7ポイント悪化しました。この結果、当連結会計年度のこのセグメントの営業利益は6.3%減少し19,408百万円となりました。

 

その他の地域セグメント

当連結会計年度のその他の地域セグメントの売上収益は前期比31.1%増加し98,470百万円となりました。外部顧客に対する売上収益は31.5%増加して97,997百万円(連結売上収益の13.3%)となりました。これは、販売が好調に推移したことによるものです。営業費用の増加よりも売上収益の増加が上回ったため、営業利益率は5.8%から10.0%と4.2ポイント改善しました。この結果、当連結会計年度のこのセグメントの営業利益は126.7%増加し9,879百万円となりました。

 

 (2)財政状態の状況

  (単位:百万円)

 

前連結会計年度

2021年3月31日

当連結会計年度

2022年3月31日

増減

資産

812,878

1,007,497

194,619

負債

149,552

254,967

105,415

資本

663,326

752,530

89,204

1株当たり親会社所有者帰属持分(円)

2,422.80

2,748.64

325.84

親会社所有者帰属持分比率(%)

80.93%

74.08%

△6.85%

 

 

資産合計は、前連結会計年度末に比べ194,619百万円増加し、1,007,497百万円となりました。主な要因は、棚卸資産、有形固定資産の増加によるものです。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ105,415百万円増加し、254,967百万円となりました。主な要因は、借入金の増加によるものです。

 資本合計は、前連結会計年度末に比べ89,204百万円増加し、752,530百万円となりました。主な要因は、利益剰余金の増加によるものです。

 

  (3)キャッシュ・フローの状況

                                           (単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日

営業活動によるキャッシュ・フロー

64,537

△103,660

投資活動によるキャッシュ・フロー

△42,913

△27,891

財務活動によるキャッシュ・フロー

△23,036

52,626

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

5,201

△77,583

現金及び現金同等物の期末残高

148,640

71,057

 

 

現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ77,583百万円減少し、71,057百万円となりました。

・営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動に使用した資金は、前期に比べ168,197百万円増加し、103,660百万円(前期に営業活動の結果得られた資金は64,537百万円)となりました。主な要因は、棚卸資産の増加によるものです。

・投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動に使用した資金は、定期預金の預入による支出が減少したことなどから、前期に比べ15,022百万円減少し、27,891百万円(前期42,913百万円)となりました。

この結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、前期に比べ153,175百万円減少し、△131,551百万円(前期21,624百万円)となりました。

・財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果得られた資金は、短期借入金が増加したことなどから、前期に比べ75,662百万円増加し、52,626百万円(前期に財務活動に使用した資金は23,036百万円)となりました。

 

当社グループの流動性の主な源泉は、手元現預金、営業活動から得た現預金及び与信限度枠内の借入金で構成されます。

 現在、当社グループは資金調達について、グループ内でキャッシュマネジメントを整備し資金を有効に活用すると共に、連結ベースで十分な手元流動性を確保するために、資金調達手段については、金融機関借入も行っております。

当社グループは当連結会計年度末現在71,057百万円の現金及び現金同等物を保有しております。このほかに128,200百万円の与信限度枠を備えており、与信限度枠のうち79,674百万円を使用しておりますが、48,526百万円は未使用でありました。当連結会計年度末現在の連結貸借対照表において79,674百万円の短期借入金が計上されており、主に当社グループの日々の営業活動に使用されております。 
 当社グループの一部の借入金は変動金利で調達しておりますが、全て短期のため、市場金利の変動が当社グループの損益に与える影響は軽微と考えられます。平均レート等短期借入金に関する情報は連結財務諸表の注記13を参照下さい。

当社グループは、従前より高い流動比率を維持してきており、当連結会計年度末は71,057百万円の現金及び現金同等物があります。当社の経営者はこれらの現金及び今後当社グループの営業活動によって生み出される現金で、将来にわたる運転資本の需要、設備投資及び研究開発等を十分行えると見込んでおります。当社の経営者は、運転資本は、当社グループの現在の必要性に照らして十分であると考えております。

 

(4)生産、受注及び販売の状況

当社グループは見込生産方式を採用しており、受注状況は集計しておりません。

当連結会計年度の販売価格による生産金額は前連結会計年度と比較して186,926百万円(38.7%)増の669,425百万円となりました。

当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度を21.5%上回る739,260百万円となりました。

なお、当社グループは、主に電動工具を製造・販売する単一事業分野において営業活動を行っており、単一事業部門で組織されているため事業の種類別セグメントに関連付けた説明は記載しておりません。

 

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