(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計は、4,094,472千円となり、前事業年度末に比べ、475,591千円増加いたしました。これは主に、売掛金が354,742千円、ソフトウエア仮勘定が79,412千円、原材料及び貯蔵品が75,765千円増加した一方、保険積立金が185,321千円、現金及び預金が47,923千円、製品が20,637千円減少した影響によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、2,453,812千円となり、前事業年度末に比べ、61,800千円増加いたしました。これは主に、支払手形が119,847千円、未払金が69,586千円、賞与引当金が56,665千円増加した一方、短期借入金が200,000千円、未払法人税等が32,706千円、買掛金が17,606千円減少した影響によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は、1,640,659千円となり、前事業年度末に比べ、413,791千円増加いたしました。これは主に、新株発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ43,633千円増加したことに加え、当期純利益の計上により繰越利益剰余金が329,324千円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は40.1%(前事業年度は33.9%)となりました。
② 経営成績の概況
当事業年度における世界経済は、第2四半期までは各国において新型コロナウイルス感染症の影響が見られましたが、経済対策やワクチン接種の普及効果等により景気回復傾向に向かっていました。第3四半期に入ると変異株であるオミクロン株の蔓延が始まり、第4四半期に至っては、ロシアによるウクライナ侵攻と急激な円安への為替相場の変動により、一層の不安が広がる形となりました。国内経済も世界経済と同様に、上期と下期の様相は一変し、資源や原材料価格の高騰といった要因に加え、地政学的な問題、為替の円安進行により、先行きの懸念感は収まるどころか大きくなっております。
当社に関わる半導体業界においては、車載向け半導体や5G向け、産業機器や情報通信技術の用途への広がりなどで需要が増加し、受注は順調に増加しました。一方、世界的な半導体部材の調達難、調達期間の長期化が需要の増加に対して供給が追いつかない要因となっており、調達価格の高騰による採算悪化も懸念されます。
このような環境の中、電子システム事業においては、落ち込んでいた半導体の後工程商材(バーンインボード等)が回復基調になったとともに、車載用専用計測器の受注が伸びました。また、IoT-PLC高速通信モジュールの開発に着手し、新しい商材として新市場参入に向けスタートいたしました。
マイクロエレクトロニクス事業においては、アナログLSI設計受託売上の安定化に向けて、電源、メモリ、5G通信、センサー分野をターゲットに新規顧客開拓に取り組みました。また、デジタルLSI設計受託についても画像処理分野の顧客開拓に取り組みました。その結果、アナログLSI設計受託、デジタルLSI設計受託ともに、一定の新規顧客を獲得でき売り上げに貢献しました。一方、業界における旺盛な半導体需要のために設計人材の確保が難しい状況が続いています。IP関連事業については、IPコアの種類を増やし売り上げを拡大する取り組みとして、画像処理IPの開発に取り組み、新しいIPの販売準備を完了する事ができました。
製品開発事業においては、産業機器分野、医療分野への取組強化策として、産学連携や商社との連携を強化し、販売の効率化の取り組みを進めてきました。開発面においては、増大するセンシング市場向けカメラ開発で製品ラインナップの強化を行い、医療・介護向けカメラシステム開発の着手など新しい収益モデルの確立に向けた技術開発を着実に行ってまいりました。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高5,359,056千円(前期比21.1%増)となり、営業利益は396,601千円(同95.1%増)となり、経常利益は416,757千円(同99.2%増)となり、当期純利益は327,482千円(同189.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
a.電子システム事業
電子システム事業は、期初から新型コロナウイルス感染症の影響を受け、部品入手難や営業活動に制限が出る等がありましたが、市場在庫不足による半導体主要顧客の生産増加に伴う設備投資、車載用を中心とした産業用専用計測器商材ともに前事業年度を大きく上回りました。半導体顧客、産業顧客ともに海外拠点への出張ができない状態が続いており、マイナス影響は残る一方で、国内向けには新規顧客開拓やIoT-PLC高速通信モジュールでの新市場参入も図り、受注量増加と範囲拡大に取り組みました。
これらの結果、売上高は2,041,886千円(前期比28.2%増)、セグメント営業利益は154,499千円(前事業年度はセグメント営業損失10,586千円)となりました。
b.マイクロエレクトロニクス事業
マイクロエレクトロニクス事業は、旺盛な半導体需要に支えられ半導体の設計需要が堅調に推移しました。アナログLSIにおいては、パワー半導体、センシング半導体、高速インターフェース内蔵半導体を主体としたアナログ設計受託が順調でした。デジタルLSIにおいては、画像処理関連のデジタル設計受託が堅調に推移しました。また、IP分野においてもJPEG-IPの販売が順調に推移し、新たに開発した画像処理IPの半導体組み込みも進展しました。
これらの結果、売上高は1,988,739千円(前期比12.0%増)、セグメント営業利益は267,445千円(同13.5%増)となりました。
c.製品開発事業
製品開発事業は、車載・産業機器市況の回復基調継続に伴うカメラの需要増加、前事業年度に開発完了した動画伝送機能搭載カスタムカメラ販売開始及びマイナンバーカード応用機器等のインフラ機器市場への出荷増加等により大幅に売り上げが増加しました。
これらの結果、売上高は1,328,430千円(前期比25.7%増)、セグメント営業損失は25,344千円(前事業年度はセグメント営業損失21,694千円)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、528,642千円となりました。前事業年度末に比べて47,923千円減少いたしました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は24,489千円(前期比88.6%減)となりました。これは主に、税引前当期純利益413,930千円、減価償却費111,170千円、売上債権及び契約資産の増加額479,420千円、棚卸資産の増加額117,182千円、仕入債務の増加額102,240千円及び法人税等の支払額148,385千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、獲得した資金は45,929千円(前事業年度は38,865千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出122,468千円及び保険積立金の払戻による収入204,578千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は118,436千円(前事業年度は214,989千円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の減少額200,000千円、長期借入れによる収入100,000千円、長期借入金の返済による支出98,386千円及び株式の発行による収入87,267千円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子システム事業(千円) |
2,166,559 |
136.9 |
マイクロエレクトロニクス事業(千円) |
1,973,120 |
110.6 |
製品開発事業(千円) |
1,266,210 |
112.5 |
合計(千円) |
5,405,890 |
120.4 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去項目はありません。
2.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
電子システム事業 |
2,562,785 |
181.2 |
788,004 |
307.6 |
マイクロエレクトロニクス事業 |
2,009,627 |
111.0 |
473,655 |
105.0 |
製品開発事業 |
1,496,212 |
107.7 |
810,849 |
126.8 |
合計 |
6,068,625 |
131.5 |
2,072,509 |
153.9 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去項目はありません。
2.金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子システム事業(千円) |
2,041,886 |
128.2 |
マイクロエレクトロニクス事業(千円) |
1,988,739 |
112.0 |
製品開発事業(千円) |
1,328,430 |
125.7 |
合計(千円) |
5,359,056 |
121.1 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去項目はありません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
株式会社デンソー |
699,351 |
15.8 |
780,728 |
14.6 |
ソニーLSIデザイン株式会社 |
676,982 |
15.3 |
513,747 |
9.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度の業績は、売上高は5,359,056千円(前期比21.1%増)、営業利益は396,601千円(同95.1%増)、経常利益は416,757千円(同99.2%増)、当期純利益は327,482千円(同189.1%増)となりました。
当事業年度における総資産は4,094,472千円となり、前事業年度末に比べ475,591千円増加いたしました。当事業年度における負債合計は2,453,812千円となり、前事業年度末に比べ61,800千円増加いたしました。当事業年度における純資産合計は1,640,659千円となり、前事業年度末に比べ413,791千円増加いたしました。
なお、財政状況の詳細においては「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載しております。
当社の経営成績に重要な影響を与える主要因として、主要顧客の受注状況、販売状況が挙げられます。その対応の詳細については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営環境と経営戦略」に記載しております。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、前述の「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の概況」に記載のとおりです。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b.資金需要
当社の運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための材料仕入、外注費の支払及び製造費用並びに販売費及び一般管理費等によるものであります。また設備資金需要のうち主なものは、生産並びに生産技術効率の向上のための設備投資であります。
c.財務政策
当社の主たる市場である半導体に関連する事業分野は特有の急激な需要変動が生じやすいため、このような経営環境に対応すべく自己資本比率の向上により強固な財務体質の強化・維持に努めております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.棚卸資産
当社は、棚卸資産の評価において原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産については、規則的に帳簿価額を切下げる方法を採用しております。将来、市況の変動や需要動向により、追加の評価減が必要になる場合があります。
b.受注損失引当金
第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
c.繰延税金資産
当社は、繰延税金資産については、将来の課税所得の見積りにより回収可能性の評価を行っております。繰延税金資産の回収可能性に影響を与える要因の発生が予測される場合には、繰延税金資産の計上金額に影響を及ぼします。なお、新型コロナウイルス感染症の影響を加味した見積りについては、 第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)に記載のとおりであります。
d.固定資産の減損会計
当社は、資産を用途により事業用資産、賃貸用資産に分類しております。また、管理会計上の区分を基準に、事業用資産は事業本部別、賃貸用資産は個別資産ごとにグルーピングしております。
減損の対象となった固定資産は、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った差額を減損損失としております。将来、この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生する可能性があります。なお、新型コロナウイルス感染症の影響を加味した見積りについては、 第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)に記載のとおりであります。
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