業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①経営成績

 当連結会計年度の世界経済及び我が国経済は、COVID-19の影響から完全に抜け出すには至らないものの、ワクチン接種等の防疫対策や各国の政策対応により回復基調となりましたが、原材料価格の高騰、COVID-19の変異株の拡大、ウクライナ情勢の悪化など懸念要素が多数発生しました。このような状況下、当社グループの主要分野である自動車生産は、第2四半期連結会計期間以降から半導体や一部原材料の供給問題により主要顧客の稼働調整や減産による影響を受けました。一方で、家電分野においては国内のほか、ASEAN地区や欧州において需要回復が顕著となった結果、好調に推移しました。

 当連結会計年度の業績は、電動化領域など注力分野の伸長もあり全事業分野で前期比増収となりました。また、第2四半期連結会計期間以降の材料高騰のマイナス影響はあったものの、受注拡大により操業度が上昇したことから収益性も前期比で向上しました。

 この結果、当社グループの売上高は11,882百万円(前年同期比10.5%増)と増収になりました。営業利益は、前連結会計年度からの工場合理化や操業度向上の効果もあり598百万円(同90.2%増)、経常利益は536百万円(前年同期比85.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は427百万円(前期比90.4%増)となりました。

 

 主な用途別売上高は、次のとおりであります。

 

a.自動車部品事業 6,246百万円(前期比2.6%減)

 カーエアコン、エンジン領域等の既存品は、第2四半期以降は半導体不足や一部原材料の供給問題等による自動車メーカー各社の生産調整の影響を受けましたが、COVID-19の影響からの回復による需要は底堅く、通期では増収(前期比9.6%増)となりました。一方、電動化領域は半導体不足の影響はあったものの、市場自体の成長は継続しており、通期で大幅な増収となりました(前期比59.1%増)。

 しかし、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等(以下、「収益認識基準等」)を当連結会計年度の期首から適用しております。その結果、当該事業の一部の売上高において売上原価と純額処理を行っており、その影響により前期比で減収となっております。

 なお、各領域別における収益認識基準等の適用後の前期比は、既存品は9.2%減、電動化領域では45.7%増となっております。

 

b.空調・カスタム部品事業 4,624百万円(前期比31.7%増)

 空調関係においては、COVID-19の影響は残るものの、前連結会計年度と比較して需要の回復が鮮明となりました。市場拡大と主要顧客内での当社シェアアップの効果もあり、特に欧州地区を中心に増収となりました(前期比31.4%)

 カスタム関係では、前連結会計年度に生産調整をしていた主要顧客からの受注が回復したことにより増収となりました(前期比32.8%増)

 なお、「収益認識基準等」を当連結会計年度の期首から適用しておりますが、影響は軽微です。

 

c.エレメント部品事業 1,010百万円(前期比21.9%増)

 既存品については産業機械用及び医療用の受注が増加しました(前期比26.6%)。また、成長分野である光通信分野向けについては、中国市場におけるFTTx用(注1)などの販路拡大により増収となりました(前期比16.1%増)。

 なお、「収益認識基準等」を当連結会計年度の期首から適用しておりますが、影響は軽微です。

(注1) FTTx(Fiber To The x):光ファイバーを利用した高速データ通信サービスの総称。

 

 

②財政状態

(資産)

当連結会計年度における資産は、11,349百万円となり前連結会計年度比1,231百万円の増加となりました。

主な増加要因は、業績回復に伴う売上債権の増加222百万円、旺盛な受注に対応するための棚卸資産の増加679百万円、及び、投資その他の資産の増加101百万円があります。

 

(負債)

当連結会計年度における負債は、7,871百万円となり前連結会計年度比470百万円の増加となりました。

主な増加要因は、増産による支払債務や未払金の増加111百万円、業績回復を受けての未払法人税等の増加75百万円、及び、海外子会社のリース債務の増加407百万円があります。一方、主な減少要因は、借入金返済による減少53百万円があります。

 

(純資産)

当連結会計年度における純資産は、3,477百万円となり前連結会計年度比760百万円の増加となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益427百万円の計上、新株予約権行使による資本金及び資本剰余金68百万円の増加、及び、為替換算調整勘定等その他の包括利益累計額332百万円の増加がありました。一方、配当金の支払いによる減少67百万円がありました。

この結果、自己資本比率は30.6%(前連結会計年度末は26.5%)となりました。

 

③当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動で349百万円獲得し、投資活動で248百万円使用し、財務活動で193百万円使用した結果、前連結会計年度末に比べ34百万円増加し、1,683百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、獲得した資金は349百万円となりました。税金等調整前当期純利益545百万円、減価償却費447百万円等により、1,285百万円の資金の増加となりました。一方、棚卸資産の増加552百万円、法人税等の支払額138百万円等により、936百万円の資金の減少となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は248百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出219百万円等の資金の減少によるものであります。主な設備投資は、自動車電動化領域用の工場増設(センサ工業㈱)です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は193百万円となりました。これは主に長期借入による収入311百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出371百万円、リース債務の支払による支出109百万円があったことによるものであります。

 

 

キャッシュ・フロー関連指標の推移は、次のとおりであります。

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

自己資本比率(%)

20.7

24.3

22.7

26.5

30.6

時価ベースの自己資本比率(%)

82.4

56.9

36.5

76.1

67.3

債務償還年数(年)

5.5

5.0

9.5

8.6

14.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

8.2

14.3

7.3

8.9

3.7

    自己資本比率:自己資本/総資産

    時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

    債務償還年数:有利子負債/キャッシュ・フロー

    インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

   (注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

   (注2)株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

   (注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。

   (注4)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象とし

           ています。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額及び手形売却

           に伴う支払額を使用しております。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

 当社グループは、温度センサ、電子部品等の製造販売及びこれらに付帯する業務の単一セグメントでありますが、社内の事業管理は事業部制をとっているため、生産、受注及び販売の実績の記載については、当社グループの事業の部門別に記載いたします。

 

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

事業の部門別の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

自動車部品

6,181,702

103.1

空調・カスタム

4,914,456

127.8

エレメント

1,177,018

122.2

合計

12,273,178

113.6

(注)1.金額は販売価格によっており、事業の部門間の取引は相殺消去しております。

 

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

事業の部門別の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日
   至 2022年3月31日 )

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

自動車部品

6,479,680

95.5

1,065,317

128.0

空調・カスタム

5,151,349

118.4

2,418,054

127.8

エレメント

1,233,755

113.2

963,933

130.1

合計

12,864,785

105.2

4,447,306

128.3

(注)1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等(以下、「収益認識基準等」)を当連結会計年度の期首から適用しております。自動車部品の収益認識基準等の適用前の前年同期比は110.3%となります。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

事業の部門別の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

自動車部品

6,246,828

97.4

空調・カスタム

4,624,811

131.7

エレメント

1,010,860

121.9

合計

11,882,499

110.5

(注)1.事業の部門間の取引は相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで

あります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

 株式会社デンソー

3,499,124

32.5

2,761,184

23.2

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

 ①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸

表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成にお

ける重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。

 

棚卸資産の評価

 一定の保有期間を超える棚卸資産在庫については、販売可能性や他用途での使用可能性による分類を行った上で、当該分類ごとに帳簿価額を切り下げる方法を採用しております。これは重要な会計方針に記載している収益性の低下による評価損以外に、棚卸資産の滞留可能性や過剰の有無に対する評価を行うものであります。COVID-19や半導体の供給不足などの外的環境に影響を受ける需要動向の変化により、計画通りの販売が実現できなくなった場合、滞留在庫や過剰在庫の評価を見直す可能性があります。

 

固定資産の減損損失

 当社グループは、主に営業活動による損益等から減損の兆候を判定し、兆候がある場合には将来の事業計画等を勘案して減損の認識の判定を行っております。現時点では減損処理の必要な固定資産はありません。

しかし、将来の事業環境の変化、業績動向によっては減損処理が必要となる可能性があります。

 

 

 ②経営成績の分析

    a.事業別の分析

当社グループの事業は、「自動車部品事業」「空調カスタム部品事業」「エレメント部品事業」に大別されます。これらの事業別の売上高は以下のような推移となりました。

 

0102010_003.png

 

 全体を総括した場合、最も大きな影響があったのは、COVID-19に関係する諸要因にあります。当連結会計年度は顧客の生産回復による受注回復となりましたが、自動車部品事業においては半導体や一部原材料の供給不足が顧客の生産計画に影響を与え、年度後半の当社グループの受注高にもマイナスの影響が生じました。一方で、空調カスタム部品事業やエレメント部品事業は年度を通して好調に推移しました。

事業別には以下のように分析しております。

 

・自動車部品事業

COVID-19や半導体の供給不足問題の影響から自動車メーカー各社が減産調整を行ったことにより第2四半期以降の既存品受注は苦戦する局面がありましたが、電動化領域は通期で受注拡大が続きました。

なお、当連結会計年度においては有償支給品に関する取引について、従前の総額処理から純額処理に変更しております。この影響額は968百万円であります。

 

・空調カスタム部品事業

COVID-19からの回復が鮮明となり、市場の回復と主要顧客内でのシェアアップにより大幅な増収となりました。

 

・エレメント部品事業

光通信分野は基地局用の需要回復には至らなかったものの、新しい分野(FTTx)の需要増加が顕著となり、全体としては増収となりました。

 

    b.エリア別の分析

0102010_004.png

 (注)エリア別の売上高は、顧客単位で集計しております。

 

・日本向け

 自動車部品事業での電動化領域や空調部品事業においては前期比で大幅な増収となりましたが、特に自動車部品事業の既存品の年度後半における受注減少がマイナスとなり、全体としては前期とほぼ同水準となりました。

 

・中国向け

 市況が好調に推移したことで、空調カスタム部品事業を中心に全事業領域において前期比で増収となりました。

 

・ASEAN向け

COVID-19からの回復を受け、空調カスタム部品事業を中心に大幅な増収となりました。

 

    c.四半期単位の推移

0102010_005.png

年度当初からCOVID-19の影響からの回復が顕著となりましたが、その後に生じた半導体の供給不足により特に自動車部品事業への影響が顕在化しました。一方で、空調カスタム部品事業及びエレメント部品事業が年度を通して好調を維持しましたことによりマイナス影響を相殺しました。

 

 ③キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]に記載しております。

 ④資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための資材・部品購入、製造費用及び販管費用等であります。また、設備資金需要につきましては、当社グループ製品製造のための生産設備購入や工場建設費用等があります。

当社グループが現時点で保有する資金の約60%程度は海外子会社が保有しております。グループ各社の資金需給を踏まえつつ、グループ全体の戦略的な資金運用の観点から、配当等の手段により計画的に日本へ還流させております。

 

    a.財務戦略の基本的な考え方

 当社グループは、自己資本比率及びネット有利子負債を戦略上の重要な指標としながら、必要に応じて金融機関からの借入を行い、又は返済を進めながら、各種の投資(設備、人材、研究開発等)を行っております。

原則的には、営業活動により獲得されたキャッシュ・フローが投資活動の原資となりますが、企業価値向上に有益と考える投資に対しては、借入金によるキャッシュも原資として充当して投資を行います。

 

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    b.経営資源の配分に関する考え方

 当社グループは、既存事業の強化・成長、及び二次電池領域のような新規分野の拡充のために不可欠と考える設備投資や人材投資、並びに高付加価値製品の開発に必須の技術開発分野への投資を積極的かつ継続的に実施することで企業価値の向上を実現すべく、優先して経営資源を配分します。

 一方で、財務体質の強化、及び株主還元についても重要な経営課題と位置付けております。

 有利子負債について目標を設定し、過度の投資とならないよう「成長投資と財務体質」のバランスを常にモニタリングし、投資判断を行っております。その上で、市場環境や資金余力を総合的に勘案し、安定的な配当を実施してまいります。

 

    c.資金調達の方法

 当社グループの資金調達は、間接金融を原則的な調達手段と位置付けており、国内金融機関と長期間にわたり良好な関係を幅広く構築してまいりました。現在は取引銀行5行との間でシンジケート方式によるタームローン契約及び短期コミットメントライン契約を締結しております。

 

 

 ⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、2[事業等のリスク]に記載しております。

 

 

 ⑥経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しについては、1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]に記載しております。

 

 

 

 

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