文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループでは、2020年度におけるマネジメント体制の刷新を機に、2030年度までの中長期ビジョン「DNE WAY」を策定し、「すべてのステークホルダーから信頼され、期待され、愛される企業集団を目指し、技術とアイデアで社会に貢献する」という企業理念の実現に向け、新たな一歩をスタートしました。この「DNE WAY」では、2021年からの3年間をPhase1と位置付け、「収益力向上による経営基盤の強化」及び「従業員一人一人が『挑戦』できる環境の整備」を事業方針として取り組んでおります。また、2022年度の経営方針は『仲間やパートナー企業、お客様と「感動」や「達成感」を分かち合える経営・ものづくりを目指す』を掲げ、全社一丸となり日々業績向上に向け取り組んでおります。
(2)経営環境
当社グループの主たる事業は、車載機器用ユニット、医療機器用ユニット、産業機器用(半導体製造装置)ユニット、オフィス・ビジネス機器用ユニット、社会生活機器用ユニット、その他機器用ユニットに使用するプリント配線基板への電子部品実装部門と、実装したプリント配線基板も含めた機構組立部門(最終製品に組み込まれるユニット)を有するEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)であり、EMS業界は次々に新しい電子機器が誕生し続けていること、また、大手セットメーカーにおける開発設計部門への特化傾向等により需要は年々増加しており、市場規模は今後も拡大が見込まれております。
一方、競争激化による利幅の縮小及び製造拠点が多い中国を始めとするアジア諸国の賃金水準上昇等が続いていること、また最近では、新型コロナウイルス感染拡大、世界的な電子部品の供給逼迫、国内外における労働力不足、各種原材料価格高騰の影響等、EMS業界を取り巻く経営環境は年々厳しさを増しております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(前期の振り返り)
上記のような経営環境において、昨年度当社グループは①経営基盤の強化、②経営基板の拡充、③人材育成に対する取組強化を優先的に対処すべき課題として取り組んでまいりました。各課題に対する昨年度の主な取組内容は次の通りであります。
①経営基盤の強化
・従来別々であった営業部門と購買部門を購買力強化及び顧客対応力向上のため同一部門に集約。
・業務効率アップにつながるITツール・システムの複数導入(新たな見積システム他)。
・外部コンサルタントを交えた生産改善活動継続実施。
②経営基盤の拡充
・ベトナム現地法人設立(2021年8月)
・中国恵州市における持分法適用関連会社を子(孫)会社化(2021年12月)
・地元大学の人工衛星開発、打上プロジェクトに参画。電源基板製造協力によりプロジェクト成功に貢献。
・九州工場において車載機器用基板量産開始。
・カーボンニュートラルに向けた取組スタート(自家消費型太陽光発電450KW導入及びカーボンニュートラル関連勉
強会実施。
・SDGs推進(関連企業における食品ロス削減取組継続、外部機関によるSDGs取組に対するレビュー実施)
③人材育成に対する取組強化
・新人事制度の試験的導入。
・新たな階層別研修の導入。
・健康経営推進(メンタルヘルス相談窓口設置、工場毎に目安箱設置他)
(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
当期につきましても前述の経営環境は続くものと考えており、この様な経営環境において当社グループは加工賃収入を中心とした従来型の電子機器製造受託サービスから脱却し、新たな高付加価値を提供できる企業集団を目指し、①経営基盤の強化、②事業領域の拡充、③人材育成に対する取組強化、④SDGs/ESG経営の推進を対処すべき課題として取り組んでまいります。なお具体的な内容につきましては次の通りです。
①経営基盤の強化
ア.生産効率の向上
生産効率向上を目的とするQMS(Quality Management System)すなわち生産革新活動が最重要課題であるとの認識の下、生産効率の向上に向け当社グループを挙げて取り組んでおります。しかしながら各製造拠点によって手法にバラツキが見られたため、国内で習得したノウハウを海外にも移植のうえ、統一された活動の実践によりQMS生産革新活動がグループ全体の企業文化として定着するよう引き続き注力してまいります。
イ.購買部門強化と在庫管理の徹底
EMS事業を拡大していくうえで電子部品の購買・在庫管理は、生産効率と並ぶ最重要課題であります。EMS
に対する最も基本的な顧客要求はQCD(品質、コスト、納期)であり、昨年度営業と購買を一体化した組織によ
るフレキシブルで強靭な購買体制の確立、外部コンサルタントとの共同による新たな在庫管理手法再構築、情報共
有化をベースとするシステム再構築等を通し、グループ全体として電子部品・補助材料を適時・適量・適切価格で
購入・在庫管理することにより顧客満足度の向上を図ってまいります。
ウ.海外子会社の効率化
当社グループの海外製造拠点は中国/深圳・無錫・恵州、タイ/チョンブリ、ベトナム/ハノイの5拠点、香港には
部材調達・製品販売機能を持った拠点を配しており、各拠点が立地する産業クラスターに合わせた事業展開をして
おります。
今後は、これらの拠点でこれまで蓄積してきたノウハウを相互に横展開することで、顧客の多層化を推進、顧客
満足度の高いEMSを提供することによって、より安定的な経営と業容拡大を目指してまいります。
エ.自己資本の充実
2021年12月期末での連結自己資本比率は16.2%となっており、この引き上げが喫緊の課題となっております。
そのため、国内・海外グループが安定的に利益を確保する体制を再構築するとともに、製品・仕掛品・原材料の適正在庫水準維持に注力すること、また、資産のオフバラ化による負債の圧縮を検討・実施すること等により、財務の安全性の判断基準となる自己資本比率の向上を図ってまいります。
オ.品質向上・環境対応への取組み
顧客の多層化推進の観点から、車載機器・医療機器等高い品質保証レベルを求める顧客獲得のために、先ず各製
造拠点のターゲット顧客の要求に即した特定業種向けISOマネジメント・システムの定着を進め、もう一段レベ
ルアップした品質保証体制の確立を目指してまいります。環境対応については、社会的にも環境問題が大きく取り
上げられ、顧客からの環境関連の要求が急増している中、当社グループとして迅速かつ効率的に環境対策に取組む
ことができる体制を構築することは、当社の強み=顧客からの信頼につながるばかりでなく、各種環境関連法規に
抵触しないための予防対策(=潜在的リスクの軽減)としても有効であると認識し、ISO14001に基づいた全社的
管理体制をさらに強化してまいります。
②事業領域の拡充
ア.顧客の多層化
当社グループとしては、これまでオフィス・ビジネス機器用ユニットをメインとした生産を行ってまいりました
が、各製造拠点が立地する地域の産業クラスター特性を念頭に置き、地域特性に応じた異なるカテゴリーを生産する顧客開拓に注力してまいります。海外における資本提携も視野に入れた車載ビジネス拡大を目指すとともに、国内で取得した医療ISOをベースに医療機器分野における高付加価値製品の受注拡大を目指してまいります。さらに、航空宇宙産業、リチウム電池等の比較的新しい産業分野での受注も目指してまいります。
イ.開発製造型EMS機能の拡充
当社グループは電子部品実装技術という製造力をベースに、顧客に対して新製品立上げの設計段階から関与し、
調達・製造・物流まで受託するEMSとして発展してまいりました。さらに一昨年5月に当社グループに加わった
株式会社NCネットワークファクトリーが保有する車載や産業設備向けを中心とした小ロット部品に対する開発力
を活かし、当社グループを最先端の顧客ニーズにフレキシブルに対応できる新しい形のEMSに進化させ、企業価
値の向上を図ってまいります。
ウ.アライアンスの推進
当社グループはこれまで自社単独では取り組めないような事業を、パートナー企業や団体の力を活用し行ってき
ました。今後もアライアンス推進による新規事業開始や事業拡大を図るとともにパートナー企業の優れたノウハウ
吸収に努め、当社グループのレベルアップに努めてまいります。
③人材育成に対する取組強化
ア.人事制度再構築
昨年試験的に導入した新人事制度を本格的にスタートさせ、社員一人ひとりのやる気を伸ばし、全ての社員が持
てる能力を最大限に発揮することにより当社グループの持続的な発展を目指してまいります。
イ.健康経営への取組
社員の心と身体の健康づくりに向けた保険指導やメンタルヘルス対策を推進することにより、社員のエンゲージ
メントとモチベーションの向上に繋げ、会社組織の活性化を図ってまいります。
ウ.教育・研修プログラムの拡充
昨年導入した新たな階層別研修及びWEB研修等を充実させることにより、個人の成長を促し組織の成長に繋げ
てまいります。
エ.福利厚生の拡充
既に導入している外部福利厚生サービスの拡充及び社員の資産形成に関する支援強化等により、従業員の更なる
モチベーション向上に努めてまいります。
④SDGs/ESG経営の推進
ア.SDGsへの取組
経営を取り巻く環境が激変する中で社会と共生しながら新しい世界で創出される事業機会を獲得し、企業価値の
向上を目指してまいります。また、社会や地域に貢献する活動を通し役職員に様々な気付きの機会を与え、企業活
動の本質は社会貢献であることへの理解を深めてまいります。
イ.ESG経営の推進
具体的な取組内容は次の通りです。
E : カーボンニュートラルの推進、リユースバッテリー事業による環境に良いモノづくり推進
S : 地域公園や直売所の運営による地域活性化や貢献、ワークライフバランスへの取組強化
G : 監査等委員会設置会社としてのガバナンス強化
ウ.コーポレートガバナンスの強化
当社は不祥事発生防止に向けた体制を強化すべく、2020年度に監査等委員会設置会社に移行いたしました。
また、同年内部監査室を設置し監査機能の強化をしておりますが、2021年に新たに策定したコーポレートガバナン
スコードに基づき、全てのステークホルダーの信頼を更に高めるためコーポレートガバナンスを強化した経営体制
の確立に注力してまいります。
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