(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
当連結会計年度(以下、当期)における世界経済は、期間の後半において新型コロナウイルスの新たな変異株により感染者数が急速に増加したものの、北米や欧州等の先進国を中心にワクチン接種が進んだことや重症化率の低さを背景に、経済や社会活動の正常化に向けた動きが顕著となり、景気回復の動きが見られた一方で、足下ではロシアによるウクライナ侵攻が発生したことで、一転して先行き不透明感が深まりました。加えて、世界的な物流の混乱や部品・原材料の調達難による影響が継続するなど、厳しい状況が続いております。わが国においても、世界経済の緩やかな回復傾向を受けて景気持ち直しの動きが見られましたが、その足取りは重く、引き続き予断を許さない状況が続いております。
このような環境のなか、当社グループでは2020年12月に制定した中長期成長戦略「Mimaki V10」で定めた重点施策に基づき、新製品の市場投入と販売拡大、市場環境や顧客ニーズの急激な変化を見据えた事業展開、収益性向上に向けた基盤構築を継続してまいりました。当第4四半期会計期間には、SG(サイングラフィックス)及びTA(テキスタイル・アパレル)市場向けフラグシップモデルのJV/CJV/TS330シリーズや、カッティングプロッタCG-ARシリーズを新たに市場投入するとともに、新規チャネルの開拓や、従来から進めてきたミニ展戦略の実施回数に加えて質の向上に取り組むレベルアップ施策等、引き続き積極的な営業活動を展開しました。
当期の売上高は、部品・原材料不足による製品供給面での影響や、物流の混乱によるリードタイム長期化等の影響を受けましたが、世界各地とりわけ北米や欧州での景気回復に伴う顧客のプリント需要の回復や設備投資の再開等の機を捉え、SG市場、IP市場、TA市場のいずれも、前連結会計年度(以下、前期)を大幅に上回りました。既存の主力製品が、SG市場やIP市場向けを中心に販売数量を大幅に伸ばすとともに、SG市場向けのJV/UJV100-160や、TA市場向けのTS100-1600等のエントリーモデルに加え、当第4四半期会計期間から本格的に供給を開始したIP(インダストリアルプロダクツ)市場向け新製品のUJF-3042/6042MkIIe、UJF-7151plusII、JFX600-2513が、北米・欧州・日本で大幅に販売を伸ばしました。また、顧客における印刷需要の拡大に伴い、インク及び保守部品の売上も大幅に伸長しました。地域別では、為替の円安効果もあり、全ての地域で前期を上回る結果となりました。一方で、当第4四半期連結期間においては先述のロシア・ウクライナ問題や、中国での新型コロナ感染拡大の影響を受けました。なお、一昨年同期との比較では、日本や中南米では減収となった一方で、北米・欧州・アジア・オセアニアで大幅な増収となったことから、全社ではコロナ禍前の水準を上回りました。
利益面では、売上原価が、期間を通じて輸送費の高騰による影響を受けるとともに、第1四半期後半から部品・原材料の高騰影響が顕在化しましたが、売上原価率は、構造改革に伴う費用を計上した前期との比較で、改善しました。販管費は、前期に実施した計画休業の解除に伴う人件費や、顧客における製品の稼働率上昇や新製品の立ち上げ及び品質問題に伴う製品補修費、「Mimaki V10」戦略に沿った新製品開発のための研究開発費等が増加しました。これらの費用増加はあったものの、それを上回る増収効果に加え為替の円安効果もあり、営業利益以下の各利益は大幅な増益となりました。
当期における当社グループの売上高は595億11百万円(前期比22.1%増)、営業利益は25億69百万円(前期は営業損失5億9百万円)、経常利益は26億88百万円(前期比633.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は23億47百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失3億1百万円)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当期の期首から適用しており、当期の売上高は1億82百万円増加し、営業利益は98百万円減少し、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ5百万円増加しております。また、利益剰余金の当期首残高は5百万円減少しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
また、当期における主要な為替レートは、1米ドル=112.38円(前期 106.06円)、1ユーロ=130.56円(前期 123.70円)で推移いたしました。
セグメントの業績は次のとおりであります。なお、セグメントの利益につきましては、セグメント間取引消去の影響により連結損益計算書の営業利益から乖離してしまうため、記載を省略しております。
(日本・アジア・オセアニア)
売上高は272億66百万円(前連結会計年度比12.9%増)となり、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1億93百万円増加しております。前期と比較して中国、台湾を除き、日本、オーストラリア、タイ、インドネシアなどを中心にほぼ全ての国と地域で販売が増加し、大幅な増収となりました。
(北・中南米)
売上高は142億62百万円(同35.9%増)となり、収益認識会計基準等の適用により、売上高は27百万円減少しております。北米では、顧客の設備投資及び稼働回復により本体、インク、保守部品の全てにおいて販売が増加しました。また、中南米もブラジルやメキシコを中心に販売が増加しました。これに加え、米ドルやブラジルレアル等の為替が前期より円安で推移した効果もありました。以上の結果、当セグメントは大幅な増収となりました。
(欧州・中東・アフリカ)
売上高は179億82百万円(同27.7%増)となり、収益認識会計基準等の適用により、売上高は16百万円増加しております。設備投資の回復や印刷需要の増加により、本体、インク、保守部品の販売がいずれも増加し、大幅な増収となりました。また、為替が前期より円安で推移したことも、増収要因となりました。
[市場別売上高]
|
売上高(百万円) |
構成比率(%) |
対前年増減率(%) |
S G 市 場 向 け |
24,704 |
41.5 |
22.8 |
I P 市 場 向 け |
16,235 |
27.3 |
28.2 |
T A 市 場 向 け |
5,509 |
9.3 |
24.4 |
F A 事 業 |
4,465 |
7.5 |
21.9 |
そ の 他 |
8,596 |
14.4 |
9.6 |
合 計 |
59,511 |
100.0 |
22.1 |
(SG市場向け)
売上高は247億4百万円(前期比22.8%増)となりました。当期は経済活動の活発化に伴うサイネージプリント需要の回復が顕著となり、加えてウイルス感染予防関連サイネージ等の新たな需要も伸長し、設備投資の増加に伴いエントリーモデルに加え主力製品のCJV/UCJV300、CJV150、UJV55等の本体販売が好調に推移、インクも堅調な伸びとなり、大幅な増収となりました。
(IP市場向け)
売上高は162億35百万円(同28.2%増)となりました。世界的な景気回復に伴う工業製品やノベルティグッズ等のプリント需要の大幅な増加により、豊富なラインアップ展開による既存の主力製品JFX200EXや、当期に投入した新製品が本体・インクともに好調に推移し、大幅な増収となりました。
(TA市場向け)
売上高は55億9百万円(同24.4%増)となりました。当期は景気回復に伴いテキスタイル・アパレル市場の需要が伸長し、顧客の設備投資回復を捉えてエントリーモデルを中心とした本体、稼働率上昇によるインクとも販売が増加し、大幅な増収となりました。
(FA事業)
売上高は44億65百万円(同21.9%増)となりました。景気回復に伴う需要の増加により、FA装置事業、基盤検査装置事業、金属加工事業が好調に推移し、大幅な増収となりました。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、608億57百万円(前連結会計年度末508億38百万円)となり100億18百万円増加いたしました。流動資産の残高は、474億95百万円(同391億63百万円)となり83億31百万円増加いたしました。これは、世界的な部品・原材料不足や輸送リードタイム長期化の影響を受けることなく製品を市場に供給し、景気回復に伴う需要増加に的確に対応して販売機会を最大化することを目的に部品等を調達・確保する方針の下、原材料及び貯蔵品、商品及び製品が増加したこと等によるものであります。また、固定資産は133億62百万円(同116億75百万円)となり16億86百万円増加いたしました。これは、繰延税金資産5億23百万円の増加等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、421億40百万円(同346億25百万円)となり75億14百万円増加いたしました。流動負債の残高は、323億29百万円(同249億69百万円)となり73億60百万円増加いたしました。これは、短期借入金64億97百万円の増加等があったことによるものであります。固定負債の残高は、98億10百万円(同96億56百万円)となり1億54百万円増加いたしました。これは長期借入金4億81百万円の減少等があったものの、リース債務5億69百万円の増加等があったことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、187億16百万円(同162億13百万円)となり25億3百万円増加いたしました。これは、利益剰余金18億99百万円の増加に加え、為替換算調整勘定12億14百万円の増加等があったことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物残高(以下「資金」という)は、短期借入金の増加や長期借入金の借入等があったものの、棚卸資産の増加や売上債権の増加等により前連結会計年度末に比べ31億82百万円減少し、当連結会計年度末には、75億1百万円となりました。なお、営業活動、投資活動、財務活動別の詳細につきましては、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は51億29百万円(前連結会計年度は66億34百万円の獲得)となりました。これは税金等調整前当期純利益27億78百万円等があったものの、棚卸資産の増加72億98百万円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は27億11百万円(前連結会計年度は15百万円の獲得)となりました。これは定期預金の預入による支出13億30百万円、有形固定資産の取得による支出12億16百万円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は42億75百万円(前連結会計年度は73億15百万円の使用)となりました。これは長期借入金の返済による支出43億66百万円等があったものの、短期借入金の増加63億7百万円、長期借入金の借入れによる収入36億12百万円等があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年増減率(%) |
日本・アジア・オセアニア(千円) |
27,083,840 |
29.4 |
欧州・中東・アフリカ(千円) |
3,452,814 |
78.8 |
合 計(千円) |
30,536,654 |
33.6 |
(注)金額は標準原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
また、当連結会計年度の生産実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
市 場 別 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年増減率(%) |
S G 市 場 向 け(千円) |
11,645,036 |
34.5 |
I P 市 場 向 け(千円) |
6,740,000 |
51.9 |
T A 市 場 向 け(千円) |
3,306,066 |
31.0 |
F A 事 業(千円) |
4,101,115 |
22.4 |
そ の 他 (千円) |
4,744,435 |
22.1 |
合 計 (千円) |
30,536,654 |
33.6 |
(注)欧州・中東・アフリカにおける生産実績が著しく増加しておりますのは、世界経済の回復に伴う印刷需要の増加、新製品投入効果等による需要の回復に対応したことによるものであります。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年増減率(%) |
日本・アジア・オセアニア(千円) |
27,266,783 |
12.9 |
北・中南米(千円) |
14,262,558 |
35.9 |
欧州・中東・アフリカ(千円) |
17,982,615 |
27.7 |
合 計(千円) |
59,511,957 |
22.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
また、当連結会計年度の販売実績を市場別に示すと、次のとおりであります。
市 場 別 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年増減率(%) |
S G 市 場 向 け(千円) |
24,704,198 |
22.8 |
I P 市 場 向 け(千円) |
16,235,786 |
28.2 |
T A 市 場 向 け(千円) |
5,509,173 |
24.4 |
F A 事 業(千円) |
4,465,938 |
21.9 |
そ の 他 (千円) |
8,596,860 |
9.6 |
合 計(千円) |
59,511,957 |
22.1 |
当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品 目 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
対前年増減率(%) |
製 品 本 体(千円) |
25,390,006 |
29.6 |
イ ン ク(千円) |
21,040,515 |
19.9 |
保 守 部 品(千円) |
5,009,254 |
30.6 |
そ の 他(千円) |
8,072,180 |
4.0 |
合 計(千円) |
59,511,957 |
22.1 |
(注)主要な販売先については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
なお、運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末に対して9億71百万円増加し、151億65百万円となりました。今後も厳しい経営環境が続くものと想定されますが、当社の財政状態は健全性を保っていることに加え、資金についても十分な手当てができております。
経営成績につきましては、売上高は595億11百万円(前連結会計年度比22.1%増)、営業利益は25億69百万円(前連結会計年度は営業損失5億9百万円)となりました。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは78億41百万円のマイナスとなりました。その要因は、世界的な部品・原材料不足や輸送リードタイム長期化の影響を受けることなく製品を市場に供給し、景気回復に伴う需要増加に的確に対応して販売機会を最大化することを目的に部品等を調達・確保する方針の下、原材料及び貯蔵品、商品及び製品が増加したこと、及び新型コロナウイルス感染症拡大の影響で控えていた設備投資を再開したこと等によるものです。当期以降も、世界的な原材料不足や輸送遅延、感染症の状況等を踏まえながら、内部資金・直接金融・間接金融のバランスを図りつつ、計画的に資本の財源を確保してまいります。
③経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、中長期成長戦略「Mimaki V10」において、2025年度までに営業利益率10%達成を目標に掲げ、この実現に向けて従来のように売上高成長を追求するだけでなく、高い収益を継続的に生み出すとともに、財務基盤を強化して、持続可能な成長に向けた強靭な企業基盤の構築に取り組んでまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
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