課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「技術革新のリーダーとして、高い信頼性が要求されるメディアサービスをIPにより配信する技術を提供し、世界中のお客様の生活基盤を支える」ことを経営の基本方針としています。これを実現するため当社グループは、IPによる映像伝送領域を基本市場と定め、お客様に高度な技術に支えられた付加価値の高い商品・サービスを提供します。そのため、グローバルで一本化されたマーケティング、営業、開発、生産、管理などの機能別組織を整備し、迅速な意思決定により、継続的に社会に貢献してまいります。

 

(2)経営環境

 すでに世の中の様々な分野で通信ネットワークはIP化されており、ユーザーに大きな利便性をもたらしていますが、放送用ネットワークのIP化は一部の先進的なユーザー以外にはほとんどなされていない分野として、まだ残されていました。それは、従来のIP技術では、放送が要求する高い安定性、信頼性に応えられなかったからです。

 現在、映像伝送市場では、リモートプロダクション及び4K UHD信号配信の需要が増加しており、これらの需要に伴って、放送局の設備更新においてはIPベースのインフラの導入が検討され、通信会社においては伝送帯域の拡大を見込んで設備投資計画の検討が行われています。

 当社グループは、放送分野でもIP化の時代が来ると確信し、放送が要求する厳しい基準をクリアできる独自のIP技術に基づく製品開発を進めてきました。その結果、放送ネットワークにおけるIP伝送について、技術面でリードしてきただけでなく、世界的なスポーツイベントやトップ企業ユーザーのネットワークインフラなどで採用されてきたことで、市場の初期段階においては、実績面でも主導的な地位を確保してきたと自負しています。

 

(3)経営戦略等

 放送用ネットワークのIP化は着実に進展してきましたが、その普及は先進国の中でも一部に限られていました。しかし、今後、市場は拡大ステージに向かうものと見込まれています。当社は、市場の初期段階において確かな実績を築くことができ、今後拡大する市場に向けて有利なポジションにいますが、決して盤石ではありません。すでに多くの企業がこの分野に新規参入してきており、競争はますます激しくなると思われます。

 また前述した通り、各国の映像伝送市場では、リモートプロダクション及び4K UHD信号配信の需要が増加しております。これらの需要増加に伴い、放送局の設備更新においてはIPベースのインフラの導入が検討され、通信会社においては伝送帯域の拡大を見込んで設備投資計画の検討が行われています。
 当社グループは、こうした変化の中でお客様と緊密に連携しながら、お客様が直面する様々なビジネス課題に対する製品及びソリューションを開発・提供することに力を入れてまいります。また、新たな市場の開拓を進めることで、新規顧客を獲得し、ビジネスの成長を図ってまいります。

当社グループは、この分野におけるIP化のさらなる発展をめざし、「お客様のニーズに合わせて独創的な技術で開発したより高度なソリューションを顧客に提供する」というビジョンを掲げ、事業を展開してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループが目標とする経営指標は、売上高の長期的なトレンドと売上総利益率です。事業の特性として、顧客の需要変動が大きいため、月次や四半期の数値は大きく変動することがありますが、長期的な視点で着実に成長することが重要だと考えています。また、当社グループの競争力の一つとして世界トップクラスの技術力があります。その競争力を維持し続けるためには、継続的に研究開発費を投入する必要があります。研究開発費を確保するためには比較的高い売上総利益率が必要になります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 前述の「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営戦略等」を実現するための当社の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題と施策は以下のように考えております。

 

① 特定顧客への依存度の低減

 近年、当社グループの売上高において、海外の大口顧客向けの販売が大きく貢献しています。当社業績は、大口顧客の案件進捗状況に強く影響される状況が継続しています。

 特定の大口顧客との取引が将来にわたって継続拡大が見込まれる場合は、その大口顧客からの要望に応えるために当社グループの人材や資金を優先的に投入することは合理的ですが、過度に依存することはリスクもあります。そのため、特定の大口顧客との良好な関係は維持しつつ、営業力の強化に加え、販売代理店及びシステムインテグレーターとの協業により新規顧客を獲得することで、特定顧客への依存を相対的に低くすることが、当社グループが取り組むべき課題だと考えています。

 

② 既存顧客への拡販と新規顧客の獲得

 既存顧客に対しては、定期的な設備更新需要及びリモートプロダクションや4K放送の拡大需要に応えるため、新製品の開発・販売を行い、拡販を目指します。

 また、北米においては営業力を強化し、新規顧客開拓を進めてまいります。その他の地域においては、販売代理店及びシステムインテグレーターとの協業により、積極的に当社製品及びソリューションを提案し、販売地域を拡大し、新規顧客の獲得を目指します。

 

③ ソフトウエア開発力の強化

 当社グループは、放送用通信ネットワークで使われる装置を主要な販売製品としており、さまざまな機能はハードウエアに実装されています。今後は機能をハードウエアから切り離し、ソフトウエアとして提供する割合を増やすことを目指しています。ハードウエアは基本機能に絞り込んだ形にして共通化を進め、コストを抑えることで顧客の初期投資負担を減らします。当社の機器を含んだ管理するソフトウエア(Equipment Management System)を開発して統合ソリューションを提供していきます。

 

④ グローバルな販売チャネル網の構築

 日本、米国では、自社スタッフによる直販体制が主になっていますが、今後広くグローバルに顧客層を広げてゆくためには、有効な販売チャネル網を構築することは不可欠です。新規顧客の獲得を目指しているアジア各国や欧州各国には、信頼できる販売代理店の協力を必要とします。各国の業界事情に精通し、有力顧客との接点を持ちながら、当社グループの製品やサービスを有効活用できる技術力を持った代理店を市場ごとに獲得することが求められています。
 同時に当社から各代理店への技術指導や教育など、きめ細かなチャネルサポートを提供することも重要だと考えています。

 

⑤ 競争力のある新製品開発への投資継続

 当社グループの競争力は技術力であります。その技術力を保ち続けるためには、新たな技術を積極的に取り込みながら、製品開発のスピードを向上させ、新たなビジネス環境で効果を発揮できる高付加価値製品を絶えず市場に供給し続ける必要があります。そのために研究開発への投資は継続して行ってまいります。

 

⑥ 保守・サポート体制の充実

 当社グループは、単に製品を販売するだけではなく、システムインテグレーション、保守サポート、IP化への移行に関連した技術支援及び運用支援などのプロフェッショナルサービスを提供することで、収益機会の増大を図っています。特に、製品販売後の保守やサポート業務は、顧客との接点拡大や安定的な収益源につながることから、今後も業務の拡大に努めてまいります。

 

 特に、製品販売後の保守やサポート業務は、顧客との接点拡大や安定的な収益源につながることから、非常に重要なことであると考えております。海外においては、すでにインストールベースの増大に伴い、保守料収入が増加しています。日本においては、今後、海外と同様なレベルを目指し、保守・サービス体制を充実させてまいります。

 

⑦ 組織・人事について

 当社グループ内の組織ごとに責任と権限を明確化すると共に適切な権限委譲を推進し、業務のスピード化を図ります。特に、組織としての強化を目指し、各組織の管理職のレベルアップを促します。グローバルに広がる各組織、各従業員間の情報共有と連携の基盤を作り、スムーズな意思疎通を図り、自律的な改善活動を恒常的に展開させ、業務の効率化を継続推進できる組織作りが重要であると考えています。

 従業員各人については、それぞれのキャリア形成を考慮した目標設定、評価、フィードバックを適切に行うとともに、特にグローバル展開に際しては、グループ内の共通言語である英語の習得を本社内の日本人従業員全員に求め、グループ内全従業員のコミュニケーションが円滑に進められるよう取り組んでいます。

 

⑧ 生産体制の強化

 当社グループは、自社生産工場を有しない生産体制(ファブレス型)を採っているため、その柔軟性を生かし、多様なニーズに随時対応できる体制を確立します。そのうえで、地政学リスクや急激な為替変動、災害や不測の事態にも対応できるようグローバル規模で柔軟な生産体制を整備する必要があります。

 各生産委託先の生産技術力の標準化を進めながら、同時に部品調達力やコスト競争力の強化を図ります。また、顧客までの納期の短縮を目指したサプライチェーンの改善にも取り組んでいます。

 

⑨ 品質管理体制の強化

 当社グループの製品は、放送局や通信事業者が長期にわたり放送のインフラを形成するための機器であり、通信時及び放送時に中断等の不具合が起こらないための高度な品質が要求されるものです。

 多層的な設計レビュー、生産委託先の教育・指導の徹底、出荷前検査、出荷後の顧客サポートを通して、設計から出荷後に至るまで、トータルな品質管理体制の強化を図っています。

 

⑩ 財務基盤の安定化

 現在当社グループは継続的な営業損失及びキャシュフローのマイナスが発生しており、財務基盤が不安定な状態となっております。そのため、以下の対応策を講じて財務基盤の安定化に取り組んでまいります。

ア.収益力の向上

既存顧客の設備更新需要の喚起と同時に、新製品の提案活動を積極的に進め、顧客基盤の拡充を図ります。

イ.販売費及び一般管理費の削減

販売費及び一般管理費を見直し、徹底的なコスト削減を実施して固定費の負担を軽減させてまいります。

ウ.研究開発費効率化

研究開発の内製化による外注費の削減や外注先の再検討もあわせて行い、研究開発費の効率化を進めてまいります。

エ.資本政策

第15回新株予約権の発行による資金調達を行うことにより、運転資金を確保すると同時に新製品開発を加速させ、将来的な収益確保を実現してまいります。

 

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