課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等

当社グループは、社会における存在意義、パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めております。すべての事業活動をこのパーパス実現のための活動として取り組んでおり、そのためには、健全な利益と成長を実現し、企業価値を持続的に向上させることが重要と考えております。

 

<市場環境>

当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのリプレイスメントやモダナイゼーションへの投資は堅調に増えると予測されています。さらに、AI(人工知能)やデータ活用などデジタル化に向けた投資は、市場のニーズに加え新型コロナウイルスの感染拡大に起因する社会システムや生活様式の変化に対応するため、今後さらに拡大すると想定されています。

このような状況のもと、当社グループは、ますます需要が高まる企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引し、社会課題の解決に貢献する企業への変革を目指します。そのため、取締役会及び独立役員会議などの場で議論を重ね、2022年度を最終年度とする経営方針を策定し、2020年7月に発表いたしました。

 

<経営方針概要>

当社グループは、経営方針の達成に向け「価値創造」と「自らの変革」に取り組んでおります。

「価値創造」では、お客様の事業の変革や成長に貢献する事業領域を「For Growth」と定め、これを成長分野と位置付けて、規模と収益性の両方を伸ばしてまいります。また、お客様のIT基盤の安定稼働への貢献と品質向上に取り組む領域を「For Stability」と定め、一層の効率化を推し進めて利益率を高めてまいります。

「価値創造」において、次の施策を進めてまいります。

グローバルビジネス戦略の再構築策として、グローバル共通のポートフォリオに沿って、重点アカウントの選定やオファリングの拡充を行うとともに、リージョン間、各ビジネスグループとリージョン間の連携を一層進めてまいります。世界8か国に展開しているグローバルデリバリーセンターについては、グローバル全体でサービスデリバリーの標準化及び最適化を促進するなどサービスモデルの見直しを行うとともに、効率化によるコスト競争力の強化を図ってまいります。

日本国内での課題解決力の強化策として、日本の社会課題解決やデジタル化に貢献するための体制強化を進めております。2020年10月に発足した富士通Japan株式会社は、2021年4月1日より11,000人体制で本格的に始動しました。長年日本市場において様々な業種、地域のお客様のIT化を担ってきたノウハウやリソースといった強みを活かしながら、エリアの特性に応じた活動を行っております。

人々のウェルビーイングを実現するため、未来の社会をデザインしその実装に必要なエコシステムの形成や最先端テクノロジーの開発までを行う未来社会&テクノロジー本部は、2021年4月1日から約350人体制で始動しており、すでにいくつかの自治体と、デジタルテクノロジーを活用した新たな取り組みを進めております。日本における取り組みで得た知見を、グローバルに展開してまいります。

お客様事業の一層の安定化にも、継続して取り組んでまいります。

当社グループ全体でソリューション・サービスのデリバリー機能を強化していくことで、生産性の改善や利益率の向上を図ってまいります。日本固有の商習慣やニーズをオフショアに適したかたちに整備するジャパン・グローバルゲートウェイと、グローバルデリバリーセンターとの連携を拡大しております。内製化を徹底しスキルの向上を図るとともに、標準化を行い、品質と生産性を向上させてまいります。

グループ各社に分散していた強みを集約し、当社グループの総合力を強化したスピード感のある再編を実行することで、重複投資の抑制や費用削減などを進めてまいります。2021年4月に、国内SIグループ会社11社を当社に、4社を富士通Japan株式会社に統合しました。各社の保有するデリバリー機能を、ジャパン・グローバルゲートウェイに集約するなどの機能再編を行っております。

品質管理とリスクマネジメントの強化については、重大なシステム障害の抑止に向けて全社的な点検を実施するためのプロジェクトにおいて、全社点検を完了しました。お客様事業の一層の安定化に向けて、引き続きお客様IT基盤の安定稼働と品質向上に取り組んでまいります。

また、情報管理や情報セキュリティに関する機能を再構築するべく、2021年10月1日付で専任のCISOを任命するとともに、情報セキュリティ本部を設置しました。情報管理に関する規程が厳格に運用されるように、監査のあり方も含めて強化してまいります。

お客様のDXのベストパートナーとなることを目指し、フロント強化としてデザイン思考でお客様の潜在ニーズを掘り起こし、お客様との共感を通じてDXをリードするビジネスプロデューサーの育成を進めております。すでに、日本国内で約8,000人が育成プログラムの受講を完了しました。

DXをテーマに、お客様や異なる強みを持つ企業との共創も進めております。新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を目的とした新会社や、製造業のDXを実現するクラウドサービスを提供する新会社などを設立しました。2020年4月に始動したRidgelinez株式会社は、当社と異なる独自のDXビジネスや、人事制度などを推進しております。すでに、約300社の多様なお客様に対し、DX実現に向けたコンサルティングサービスを展開しております。

当社グループは、パーパスの実現に向け、社会課題を起点にお客様と共にその解決に取り組みながら成長していくために、今後注力していく7つの重点分野を定め、新たな事業ブランド「Fujitsu Uvance」として2021年10月に発表しました。2030年に誰も取り残されないサステナブルな世界を実現するために取り組むべき課題や求められていることについて、社会全体を業種横断のクロスインダストリーな領域「Vertical Areas」として捉え、まずは「Sustainable Manufacturing」「Consumer Experience」「Healthy Living」「Trusted Society」の4つの分野に注力してまいります。お客様のDXを支えるためのテクノロジーやソリューションを「Horizontal Areas」として整備し、「Digital Shift」「Business Application」「Hybrid IT」の3分野に注力してまいります。これら7つの分野に、中長期的に経営リソースを集中させ、取り組んでまいります。

一方、「自らの変革」として、お客様のDXのパートナーとなるべく、当社グループ自身のDXのため、人員、体制の強化も含めた社内変革を進めております。

データに基づいたスピーディな経営判断を行うデータドリブン経営の実現のため、プロセスやシステムの刷新を進めており、これを全社横断型で進めるOne Fujitsuの取り組みを推進しております。また、全社DXプロジェクト「フジトラ」を中心に、企業カルチャーや社員のマインドまでを含めた変革を進めております。DX企業にふさわしい働き方やマインドを醸成するため、新たな人事制度やオフィス環境を整備する「Work Life Shift」を推進しており、自身の取り組みで得た知見をベースに、お客様の働き方改革の支援にも着手しております。

これらの施策の実行にあたり、必要となる投資を積極的に行ってまいります。サービス・オファリングの開発、M&Aをはじめとした外部への投資、将来を見据えたDXビジネス拡大のための戦略的な投資に加え、高度人材の獲得や、社内人材・システムの強化のための投資を実行してまいります。

非財務面での取り組みも強化してまいります。当社グループの掲げるパーパスの実現には、当社グループ自身のサステナブルな成長が必須であり、そのためには当社グループを取り巻くすべてのステークホルダーとの信頼関係を築くことが必要と考えております。その観点から、お客様からの信頼を示す「ネット・プロモーター・スコア」と、社員との結びつきを示す「従業員エンゲージメント」を非財務指標と定めます。また、組織、カルチャーの変革の進捗を、経済産業省が推進する「DX推進指標」を用いて客観的に測定し、継続的な改善に取り組んでまいります。

財務面での経営目標として、2022年度には、テクノロジーソリューションの連結業績で売上収益3兆2千億円、営業利益率10%の達成を目指してまいります。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大においては、いち早くテレワークを中心とする新たな働き方へとシフトし、これをグローバルに展開しております。一部市場において回復の遅れが見られますが、DXへの需要が高い成長市場に注力してまいります。また、昨今のウクライナ情勢については、お客様へのサービス提供を安定的に継続するため、ロシアの当社拠点で提供していたサービスを順次他の拠点に移管するとともに、国連難民高等弁務官事務所への寄付や、社員によるボランティア活動を行っております。当社グループは、引き続き状況に応じて迅速な意思決定を行いながら、デジタルテクノロジーと、これまでに培った多様な業種における実績、多様な業務に関する知見を活かし、安心で利便性の高い社会づくりに貢献していきます。

(2)気候変動・エネルギー問題への対応

気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルでビジネスを展開する当社にとって当社自身のCO2排出実質ゼロの実現に加え、お客様や社会の脱炭素化への貢献を通じた気候変動への対応は重要な課題であると認識しています。

気候変動に伴う影響は、事業活動に様々なリスク(注1)をもたらします。例えば、近年、発生頻度・影響度が増大した自然災害は、調達・物流・エネルギー供給網を寸断し、部品やエネルギー等調達を困難とします(物理リスク:急性)。また、気温の長期的な変化は空調エネルギー使用量の増加を招くなど(物理リスク:慢性)、当社グループの事業へ影響を与える可能性があります。さらに、温室効果ガス(以下、GHG)の排出規制等の様々な規制の強化が考えられ、これらに適合ができない場合には、企業レピュテーションが低下したり(移行リスク:評判)、省エネ製品・サービスの開発が不十分な場合に規制への適合を条件とする入札に参加できなくなったりする可能性があります(移行リスク:市場/技術)。また、これらの規制等に適合するために必要なコストが増加する可能性があります(移行リスク:政策・法規制)。従って、さらなる省エネの強化や、低/ゼロGHG排出エネルギーの利用の推進と、サプライチェーン管理の強化が必要です。

一方、気候変動への対応は、当社グループのお客様においても課題であることから、気候変動の緩和と適応に貢献する製品やサービスの開発と提供は、お客様とともに課題克服のイノベーションを創出する機会につながります。ICTにより多様なモノやサービスをデジタルにつなげることで、物流や交通、ものづくりなど様々な分野でエコシステムを形成し、社会システム全体としてのエネルギーの最適利用を実現するとともに、先進テクノロジーをレジリエントな社会インフラの構築などに活用することが可能です。

こうした背景を踏まえ、当社グループは、グローバルICT企業として、気候変動対策において果たすべき役割や実現すべき未来の姿を明確にした2050年までの中長期環境ビジョン「FUJITSU Climate and Energy Vision」を策定しました。本ビジョンは、ICTを活用し自らのカーボンニュートラル化にいち早く取り組むこと、及び、そこで得たノウハウと当社のデジタルテクノロジーをソリューションとしてお客様・社会に提供し、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを狙いとしています。

また、当社は、2021年10月にパーパス実現を目指す新事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定し、7つの重点注力重点分野を定めました。その一つであるSustainable Manufacturingでは、カーボンニュートラルやレジリエントなサプライチェーンをテーマに設定し、持続可能な地球環境に貢献していくことを目指しています。

これらの実現に向けて、まずは気候変動の緩和策として2021年12月にはサプライチェーンのCO2排出量の算定・可視化サービスの提供を開始、2022年4月には、カーボンフリーでの燃焼が可能なアンモニアをクリーンに合成するための触媒探索をハイパフォーマンス・コンピューティングとAI技術により加速させる共同研究を開始しました。また、適応策として、雨量や水位データ蓄積が少ない区間でも予測を可能とするAI技術による水管理予測システムの提供を2021年3月に開始しています。

本ビジョンの実現に向け、2018年に、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)とすることを目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しました。国内外の富士通グループ拠点で消費する電力を2050年までに100%再エネ由来とすることを目指すと共に、エネルギーのマネジメントや貯蔵などの研究開発や技術実証に取り組み、社会全体の再エネの普及拡大にも貢献していきます。

自らの「脱炭素化」については、2050年までに自らのCO2ゼロエミッションを掲げていますが、そのCO2削減シナリオは、「2℃目標」(注2)達成のために科学的に根拠のある水準であると認められ、自社及びサプライチェーンにおける排出削減目標(2030年目標、2050年目標[自社のみ])として、2017年に国際的なイニシアチブ「Science Based Targets initiative(SBTi)」(注3)に承認されました。さらには、自らの排出削減目標について、2021年4月に2030年の削減率を33%から71.4%削減に引き上げ、同イニシアチブから「1.5℃目標」水準であることが承認されています。

2021年度より開始した「第10期富士通グループ環境行動計画(2022年度目標)」では、1.5℃目標の削減水準をバックキャストした目標値を設定し、中長期目標実現に向けた削減計画を策定しています。

これらの実現に向けては、当社では2021年2月に「FJcloud」(注4)の運用に必要な全電力を2022年度までに100%再生可能エネルギーとする目標を公表しました。これにより、当社の再生可能エネルギー使用量の拡大を加速させるとともに、お客様がクラウドサービスを利用することで生じるCO2排出量をゼロにすることができ、お客様・社会の気候変動の緩和に貢献することができます。

これまでの実績としては、GHG排出削減や再生可能エネルギー使用量等を含む短期目標「第9期富士通グループ環境行動計画(2020年度目標)」において、設備の省エネ対策や運転適性化、製造プロセスの見直しによる効率化により、2020年度のGHG排出量削減目標を達成しました。2020年度のGHG排出量は、直接排出(Scope1)が75千トン、間接排出(Scope2)が540[マーケット基準]千トンでした。

こうした気候変動に係るリスクと機会に関する具体的な方針や目標の管理は、代表取締役社長を主宰とし、グループ全体に関わる環境を含むサステナビリティ関連事項の提案・決定・指示を行う委員会である「サステナビリティ経営委員会」において実施され、経営会議での最終決定の後に取締役会に報告されます。また、気候変動対策を含むサステナビリティへの対応をより強力に推進すべくCSO(Chief Sustainability Officer) が設置され、CSOは、取締役、経営幹部への変革提案や同領域の業務執行を行うこととなります。

さらに、取締役会の監督の下、全社レベルのリスクマネジメント体制において各部門でのリスク分析結果を踏まえ統合的に気候変動関連のリスク分析と対応が行われます。リスク管理のプロセスにおいては、最初に識別・評価を行い、発生頻度やインパクトから優先順位付けした上で、関連する委員会等で回避・軽減・移転・保有などの対策を決定し、進捗管理を行います。重要リスクについては定期的に取締役会に報告しています。

当社は、2019年4月にTCFD(注5)による気候変動情報開示への提言に賛同を表明し、比較可能性や一貫性に配慮した開示に努めています。

最新の情報と詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。

 

(注)1.気候関連財務情報開示タスクフォース(注5参照)では、気候変動関連リスクを、(1)低炭素経済への移行に関連した「移行リスク」と、(2)気候変動の物理的影響に関連した「物理リスク」に分類。移行リスクには、「政策及び法規制のリスク」、「技術のリスク」、「市場のリスク」、「評判上のリスク」が含まれ、物理リスクには、異常気象の激化などによる「急性リスク」と長期的な気温上昇などによる「慢性リスク」が含まれます。

2.「産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑える」という目標。国連気候変動枠組条約第21回締約国会議において、2020年以降の温暖化対策の国際的枠組みとして採択され、2016年11月にパリ協定において発効されました。

3.2015年に国連グローバルコンパクト、WRI(世界資源研究所)などの団体が共同で設立したイニシアチブ。産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるために、科学的根拠に基づいたGHG排出削減目標の設定を企業に働きかけています。

4.国内における当社のデータセンターから提供するクラウドサービス(FUJITSU Hybrid IT Service FJcloud)

5.気候関連財務情報開示タスクフォース。気候変動に係る金融市場の不安定化リスクを低減するため、G20の要請で金融安定理事会が設立。2017年6月に、気候変動がもたらすリスク、及び機会についての情報を企業・団体等が自主的に把握、開示することを推奨する提言を発表しました。

 

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