業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

なお、当連結会計年度より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しておりますが、その影響額は軽微なものとなっております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載の通りであります。

①経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が着実に普及し、厳しい行動制限は徐々に緩和されるなど、社会経済活動に回復の兆しが見られました。しかしながら、新たな変異株による感染拡大に加え、世界的なサプライチェーンの混乱や半導体の供給不足、さらには世界的な資源価格の高騰の影響が懸念されるなど、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。

当社グループの主力市場であるパチンコ・パチスロ機市場は、遊技ホールの厳しい経営環境を背景に新台の購入意欲が低迷するなど厳しい市場環境が続いておりますが、当連結会計年度におきましては、2020年5月に施行された改正規則附則に伴い、旧規則機の設置期限に向けた新規則機への入れ替え需要が発生いたしました。当社の市場規模の目安となるパチンコ・パチスロ機の年間販売台数は、前期120万台に対して174万台程度まで回復したものと推計しております。

かかる環境の中で当社グループは、従業員及び取引先を含めた関係者の皆さまの安全を最優先とした新型コロナウイルス感染症対策を継続したうえで、パチンコ・パチスロ機市場での安定収益確保に向けた取り組み、組み込み機器市場に向けたグラフィックスLSIの販売拡大、さらには新規事業と位置づけるミドルウェア、機械学習/AI、ブロックチェーン、セキュリティの4領域における早期事業化に向けた活動に注力いたしました。また、新規事業の展開を加速させる観点から、組織再編やアライアンス、出資の検討等を積極的に実施いたしました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は前期比1,667百万円増(同18.5%増)となる10,666百万円、売上総利益は同425百万円増(同13.7%増)となる3,516百万円となりました。売上総利益率は製品ミックスの変動による影響に加え、一部製品の仕入単価の上昇により前期に比して1.4ポイント低下となる33.0%となっております。

販売費及び一般管理費は前期比122百万円増(同4.8%増)となる2,677百万円、販売費及び一般管理費のうち研究開発費は同48百万円増(同3.3%増)となる1,520百万円となっております。

以上により、営業利益は前期比302百万円増(同56.4%増)となる839百万円となりました。また、営業外収益にNEDO助成金収入138百万円を計上した結果、経常利益は前期比296百万円増(同42.0%増)となる1,001百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同195百万円増(同29.1%増)となる865百万円となりました。

 

セグメント別の経営成績は次の通りであります。また、下記セグメントのほか、各セグメントに配分していない全社費用が623百万円となっております。なお、前連結会計年度まで「LSI開発販売関連」セグメントに含めておりました組み込み機器向け製品は、新規事業との関係性が深まってきていることから、当連結会計年度より「新規事業関連」セグメントに変更しております。前期比較の説明は、変更後の報告セグメント区分に基づき行っております。

 

⑴ LSI開発販売関連

LSI開発販売関連は既存事業であるパチンコ・パチスロ機向け製品で構成されており、売上高は前期比1,561百万円増(同18.2%増)となる10,144百万円、セグメント利益は同352百万円増(同21.3%増)となる2,007百万円となりました。製品別では主力製品であるパチンコ・パチスロ機向けグラフィックスLSIが前期に対し約4万個増加となる約44万個の販売になりました。メモリモジュール製品は新規販売ベースで前期を上回る販売数となったほか、高単価製品の販売比率が上昇したことにより、売上高は大幅に増加いたしました。

また、当期末の同セグメントの受注残高は12,957百万円となっております。世界的な半導体の供給不足の影響から多くのメーカーにおいて部材を積極的に確保する動きを見せており、本受注残には来期以降の販売予定分が含まれております。

 

⑵ 新規事業関連

新規事業関連は組み込み機器向けグラフィックスLSIに加え、ミドルウェア、機械学習/AI、ブロックチェーン、セキュリティ領域に向けたスタートアップ事業であり、ミドルウェア、機械学習/AI領域での売上高を中心に、売上高は前期比105百万円増(同25.3%増)となる522百万円、セグメント損失は同50百万円増(前期は495百万円の損失)となる545百万円となりました。なお、当連結会計年度におきましては、機械学習/AI領域における開発支援ビジネスが大きく伸長いたしました。

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末との比較で1,142百万円増加となる12,274百万円(同10.3%増)となりました。主な要因は、現金及び預金の増加(1,184百万円)、売掛金及び契約資産の増加(114百万円)、投資有価証券の増加(51百万円)に対し、商品及び製品の減少(304百万円)等であります。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末との比較で583百万円増加となる1,645百万円(同55.0%増)となりました。主な要因は、買掛金の増加(337百万円)、未払法人税等の増加(87百万円)、未払消費税等の増加(72百万円)等であります。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末との比較で558百万円増加の10,629百万円(同5.5%増)となりました。主な要因は、利益剰余金の増加(532百万円)等であります。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は9,097百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下の通りとなっております。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は1,622百万円(前期は379百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益(1,000百万円)、棚卸資産の減少(311百万円)、仕入債務の増加(337百万円)に対し、売上債権の増加(114百万円)、法人税等の支払額(72百万円)等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動により支出した資金は157百万円(前期は22百万円の獲得)となりました。これは主に投資事業組合からの分配による収入(34百万円)に対し、有形固定資産の取得による支出(14百万円)、無形固定資産の取得による支出(17百万円)、投資有価証券の取得による支出(137百万円)、敷金保証金の差入による支出(19百万円)等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動により支出した資金は308百万円(前期は560百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払(334百万円)等によるものであります。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

前連結会計年度まで「LSI開発販売関連」セグメントに含めておりました組み込み機器向け製品は、新規事業との関係性が深まってきていることから、当連結会計年度より「新規事業関連」セグメントに変更しております。

 

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績は次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年増減率(%)

 

(百万円)

 

 LSI開発販売関連

9,681

14.6

 新規事業関連

196

60.0

合計

9,878

15.2

(注)1.金額は販売価額によっております。

2.上記の金額は、LSI製品及びLSI関連製品に対する金額を記載しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績は次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

受注高

(百万円)

前年増減率

(%)

受注残高

(百万円)

前年増減率

(%)

 LSI開発販売関連

17,902

87.0

12,957

149.2

 新規事業関連

457

16.9

105

3.5

合計

18,359

84.3

13,063

146.4

(注)1.金額は販売価額によっております。

2.LSI開発販売関連セグメントでは、一部製品において需要予測に基づく見込み生産を行っております。上記数値は見込み生産も含めたLSI製品及びLSI関連製品に対する受注実績を記載しております。また、新規事業関連セグメントは、組み込み機器向けLSI製品及びLSI関連製品に対する受注実績及び個別受託開発に対する数値を記載しており、IP製品等のロイヤリティは含めておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績は次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年増減率(%)

 

(百万円)

 

 LSI開発販売関連

10,144

18.2

 新規事業関連

522

25.3

合計

10,666

18.5

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

緑屋電気株式会社

5,560

61.8

6,511

61.0

加賀FEI株式会社

1,707

19.0

2,306

21.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを行なっております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループが連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

a.棚卸資産

当社グループは、棚卸資産の評価基準を収益性の低下による簿価切下げの方法によっております。当連結会計年度におきましては、評価損の損益に与える影響は軽微なものとなっておりますが、将来、正味売却価額が低下した場合または滞留品が増加した場合、一定期間にわたり追加の評価減が必要となる可能性があります。

過年度までに製造した製品在庫の除却につきましても損益に与える影響は軽微なものとなっております。従いまして、現状においては将来の棚卸資産に係る除却見積額等の算定は実施しておりません。

b.固定資産の減損

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、市場規模やシェア等の一定の仮定に基づき策定された事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

c.繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、市場規模やシェア等の一定の仮定に基づき策定された事業計画を基礎に将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

d.のれんの減損

のれんの償却方法については、その効果が発現すると見積られる期間で均等償却を行っております。今後、のれん対象事業の収益力が低下し、減損損失の認識をした場合、のれんの減損処理が必要となる可能性があります。なお、のれんの資産性については、対象事業が創出する営業利益相当額や過去の実績等を基礎に将来予測を合理的に織り込んだ事業計画等を基に検討しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①経営成績の状況」に記載の通りであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「2 事業等のリスク」に記載の通りであります。

上記の通り、現在の主力市場は「LSI開発販売関連」セグメントに含まれるパチンコ・パチスロ機市場であり、売上高の95%程度を同市場向けの製品で占めております。現在、同市場は遊技人口の減少傾向に加え、法改正の影響もあり先行き不透明な状況が続いております。今後安定的な収益を確保し持続的な成長を実現していくためには、同市場の規模が縮小した中でも安定的な収益を確保するためのビジネスモデルの再構築に加え、同市場以外の新規事業を早急に開拓していくことが重要であると考えております。

 

③財政状態、キャッシュ・フローの分析

「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

(資金需要)

当社グループは主にファブレスメーカーとして事業を展開しており、工場等の多額の設備投資を必要としないビジネスモデルを採用しております。現在の事業活動における資金需要の主なものは、販売費及び一般管理費に計上されるものであり、次世代製品の開発等にかかる研究開発費に加え、事業活動を支えるその他一般管理費等があります。当連結会計年度における販売費及び一般管理費の実績は2,677百万円となっております。また、新規事業の展開を加速させる観点からM&A等も積極的に検討しており、今後はそれに伴う資金需要の発生も見込まれます。

(財務政策)

現在の当社グループの収益構造はLSI開発販売関連セグメントに含まれるパチンコ・パチスロ機向け製品による収益が大半を占めており、当社グループの業績は当該市場環境の影響を強く受けるものと考えております。当社グループでは、事業ポートフォリオの多様化に取り組むなど、特定環境の影響を過度に受けないための施策に注力しておりますが、各期の業績のボラティリティが高くなる可能性も考慮し、全般として財務の健全性を保つことに比重を置いております。

当連結会計年度末における資金は、9,097百万円となっており、この資金は当連結会計年度末における連結貸借対照表上の現金及び預金残高であります。当連結会計年度末における現金及び預金に係る総資産構成比率は74%となっており、当連結会計年度末における資金残高は、財政状態の健全性を確保したうえで、機動的な経営活動及び積極的な研究開発活動を行うために当面必要と考えられる資金額として問題のない水準にあると分析しております。

 

⑤経営上の目標の達成状況について

当社グループは、「ROE10%の達成」を事業活動の指標として採用しております。当連結会計年度における連結ROEは8.4%となっております。引き続き資本効率を意識した経営を推進することで、ROE10%を達成することを目標にさまざまな経営戦略を実行してまいります。

なお、中長期的な会社の経営戦略は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載の通りであります。

 

 

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