業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は、次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(経営成績)

当連結会計年度における世界経済は、総じて持ち直しの動きがみられたものの、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、サプライチェーンが混乱し、半導体価格や原材料価格、物流コストも上昇するなど厳しい状況は続きました。

こうした中、当社グループは、強いブランド企業“SHARP”の早期確立に向け、「ブランド事業を主軸とした事業構造の構築」、「事業ビジョンの具現化」、「社債市場への復帰」の3つの取り組みを推進しました。

当連結会計年度の業績は、スマートライフ、ICT、エレクトロニックデバイスの売上が減少したものの、8Kエコシステムとディスプレイデバイスの売上が増加し、売上高が2,495,588百万円(前年度比102.9%)となりました。営業利益は、スマートライフ、ICT、エレクトロニックデバイスが減少したものの、8Kエコシステムとディスプレイデバイスが増加し、84,716百万円(前年度比101.9%)となりました。経常利益は114,964百万円(前年度比182.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益は、73,991百万円(前年度比138.9%)となりました。厳しい事業環境となりましたが、売上高と各利益はいずれも前年度を上回りました。なかでも、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は前年度から大幅に伸長しました。

 

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前年度からの営業利益の増減を要因別にまとめております。

2021年度は、「売価ダウン」による約241億円の収益の減少、「コストダウン・モデルミックス」による約202億円の収益の改善、「販売影響」による約179億円の利益の増加、「経費」の増加による約50億円の利益の減少などがありました。

 

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(セグメント業績)

セグメントの業績は、概ね次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後の区分に組替えた数値で比較しております。報告セグメントの変更については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に詳細を記載しております。

 

<ブランド事業>

①スマートライフ

売上高は446,192百万円(前年度比 97.9%)となりました。エネルギーソリューション事業は国内のEPC事業が牽引し増収となりました。また、白物家電事業は、海外で調理家電や洗濯機などの販売が増加しましたが、国内のプラズマクラスター機器が、大幅に伸長した前年度に対し減少したことなどから、減収となりました。利益面では、半導体や原材料の価格が高騰した影響があったことなどから、セグメント利益は48,291百万円(前年度比 82.0%)となりました。

 

②8Kエコシステム

売上高は567,690百万円(前年度比 115.1%)となりました。欧州やアジア、日本などでテレビの販売が伸長したほか、米州や欧州、日本で複合機事業の売上が増加しました。また、シャープNECディスプレイソリューションズ㈱を連結子会社化した効果もありました。利益面では、増収となったことに加え、テレビの高付加価値化が進んだほか、複合機事業でプリントボリュームが回復したことなどもあり、セグメント利益は24,966百万円(前年度比 160.8%)となりました。

 

③ICT

海外の法人向けPC事業などが伸長したものの、国内のGIGAスクール構想に伴うPC需要が一服したほか、通信事業・PC事業で半導体隘路の影響が大きかったこと、第4四半期連結会計期間に中国でのロックダウン影響があったことなどから、売上高は324,017百万円(前年度比 94.3%)となりました。利益面では、減収となったことに加え、半導体などの価格が上昇した影響があったことなどから、セグメント利益は4,038百万円(前年度比 26.2%)となりました。

 

<デバイス事業>

④ディスプレイデバイス

スマートフォン向けの小型パネルの販売が減少した一方、車載向けやPC・タブレット向けなど中型パネルの販売が伸長したことなどから、売上高は859,674百万円(前年度比 105.8%)となりました。利益面では、販売に占める中型パネルの比率が上昇するなど、モデルミックスが改善したことなどにより、セグメント利益は20,316百万円(前年度比 10.9倍)となりました。

 

⑤エレクトロニックデバイス

新型コロナウイルス感染症による生産影響が、第2四半期連結会計期間から第3四半期連結会計期間の期初にかけてあったことなどから、売上高は396,834百万円(前年度比 92.6%)となりました。利益面では、販売が減少したことなどにより、セグメント利益は6,988百万円(前年度比 55.1%)となりました。

 

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生産、受注及び販売の実績は以下のとおりです。

 

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

スマートライフ

447,731

△1.0

8Kエコシステム

573,568

+22.2

ICT

314,432

△8.5

ディスプレイデバイス

823,642

+13.6

エレクトロニックデバイス

356,339

△4.7

合計

2,515,714

+6.4

(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 上記の金額には、外注製品仕入高等を含んでおります。

3 組織変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

 

b.受注実績

当社グループは原則として見込生産を行っております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

スマートライフ

446,039

△1.9

8Kエコシステム

557,945

+15.1

ICT

316,807

△7.3

ディスプレイデバイス

817,082

+6.6

エレクトロニックデバイス

357,713

△5.5

合計

2,495,588

+2.9

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 組織変更に伴い、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

APPLE INC.

534,508

22.0

427,824

17.1

General Interface Solution Limited

264,807

10.9

345,123

13.8

 

(財政状態)

当連結会計年度末の財政状態については、資産合計が、前連結会計年度末に比べ29,061百万円増加の1,956,288百万円となりました。これは、短期借入金の返済により現金及び預金が減少した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産並びに棚卸資産が増加したことなどによるものであります。負債合計は、支払手形及び買掛金が増加したものの短期借入金の返済などにより、前連結会計年度末に比べ76,068百万円減少の1,487,018百万円となりました。また、純資産合計は、配当金の支払いを行った一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどにより、前連結会計年度末に比べ105,129百万円増加し、469,269百万円となりました。

 

(棚卸資産)

当連結会計年度末の棚卸資産残高は310,283百万円、月商比で1.49ヶ月の水準となりました。当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用したことによる影響額12,151百万円を除くと、前連結会計年度末から35,065百万円増加しております。これは、サプライチェーンが混乱していることから、生産活動に必要となる半導体などを先行手配するとともに、販売に支障をきたさないよう物流の長期化を勘案した在庫の確保を行ったことなどによるものです。引き続き、事業環境の変化を注視し、状況に応じた適正な在庫の管理に努めてまいります。

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② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

204,642

75,157

△129,484

投資活動によるキャッシュ・フロー

△14,114

△31,448

△17,334

財務活動によるキャッシュ・フロー

△76,724

△124,291

△47,566

現金及び現金同等物の期末残高

292,792

239,359

△53,433

 

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ53,433百万円減少し、当連結会計年度末には239,359百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の収入は、75,157百万円であり、前連結会計年度に比べ129,484百万円減少しました。これは、前連結会計年度に比べて、税金等調整前当期純利益が23,359百万円増加したものの、法人税等の支払額が21,604百万円増加したことや、未収入金、棚卸資産、未払費用の増減により資金がそれぞれ9,722百万円、74,732百万円、9,289百万円減少したことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、31,448百万円であり、前連結会計年度に比べ17,334百万円増加しました。これは、前連結会計年度に比べて、有形固定資産の取得による支出が11,933百万円、投資有価証券の取得による支出が1,939百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の支出は、124,291百万円であり、前連結会計年度に比べ47,566百万円増加しました。これは、前連結会計年度に比べて、配当金の支払額が7,332百万円増加し、短期借入金の返済等により資金が純額で13,094百万円減少したことなどによるものであります。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析

(財務戦略の基本的な考え方)

当社グループが今後も持続的に成長していくためには、より強固な財務基盤を構築することが不可欠であり、現在、「“量から質へ”の徹底」、「運転資金の圧縮」により営業キャッシュ・フローの最大化を図るとともに、安定した収益が見込める「ブランド事業への投資拡大」、「デバイス事業における外部資金の獲得」など、投資効率の向上に向けた取り組みを加速しています。

このような取り組みを通じて、毎期、安定的にフリー・キャッシュ・フローを創出し、適切な株主還元を行うとともに、有利子負債の削減など、財務体質の改善を進めていきます。また、将来の社債市場への復帰に道筋をつけるなど、安定的な資金調達に向けた取り組みを進めてまいります。

 

(資金のキャッシュ・フロー及び流動性の状況)

2021年度においては、サプライチェーンの混乱を考慮した部材の先行手配や物流の長期化を勘案した在庫の確保を行ったことに伴い、運転資金は増加しているものの、着実に利益を計上していること、効率的な投資を実施していることなどから、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー)は43,709百万円となりました。手元流動性を確保しつつ、有利子負債の削減等財務体質の改善を図っております。

当面の目標としては、NET DER(純有利子負債/自己資本)は「1倍未満」の維持を、自己資本比率は「25%以上」の達成を、目指してまいります。(当連結会計年度末における純有利子負債は353,353百万円、自己資本は454,268百万円、NET DERは0.8倍、自己資本比率は23.2%)

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(資金調達)

当社グループは、資金の支出効果の見極めを十分行いながら、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉の安定的確保を図る趣旨の下、短期運転資金を自己資金及び短期借入で、設備投資や長期運転資金の調達については長期借入で賄うことを基本原則としております。総資産に対する借入金の割合は当連結会計年度末現在32.0%となっており、このうち当該借入金に対する短期借入金の占める割合は8.7%となりました。

主要な取引先金融機関とは良好な関係を維持しており、流動性確保のため、200,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。

安定的な外部資金の調達は、重要な経営課題と認識しており、社債市場早期復帰を目指し、財務内容の改善、投資適格への格付向上を図ってまいります。

 

格付の状況

(2022年3月31日現在)

格付機関

長期格付

短期格付

S&P Global

BB-

B

格付投資情報センター

BB+

a-3

日本格付研究所

BB+

 

(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成にあたり必要となる見積りについては、過去の実績や第三者による評価等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性のため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表の作成に当たって用いた特に重要な会計上の見積り及び仮定については、下記のとおりであります。

 

① 棚卸資産の評価

当社グループは、棚卸資産について正味売却価額が簿価を下回った場合に簿価の切下げを行っております。また、一定期間以上滞留が認められる棚卸資産については、販売の実現可能性が低下しつつあると仮定し、期間の経過に応じ規則的に簿価を切下げる方法で早期に償却を行っております。さらに、販売が困難と認められる場合などには、個別に簿価の切下げも実施しております。

しかしながら、将来の予測不能な環境変化等により、価格下落など当社グループに不利な状況が生じた場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において簿価の切下げが追加的に必要となる可能性があります。

 

② 固定資産の減損

当社グループは、営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなるなど減損の兆候が見られる場合に資産又は資産グループについて減損の判定を行い、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方が帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その差額を減損損失として認識します。使用価値算定の基礎となる将来の事業計画は、外部情報調査会社による市場価格、需要の見通しなど決算時点で入手可能な情報も考慮して作成しております。また、正味売却価額は、第三者による資産評価など合理的な方法をもって決定しております。

しかしながら、将来、事業計画の前提となった市場環境などに変化があった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失を追加的に計上する可能性があります。

 

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