課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

①経営理念・経営信条

当社の創業者 早川徳次の言葉の一つに「他社がまねするような商品をつくれ」があります。この言葉には、次の時代のニーズをいち早くかたちにした“モノづくり”により、社会に貢献し、信頼される企業を目指すという当社グループの経営の考え方が凝縮されています。

当社グループは、1973年に、この創業の精神を「経営理念」「経営信条」として明文化しました。さらに、2016年には、早川創業者の「誠意と創意」の精神を、これからも変わらない当社グループの“原点”として受け継ぎ、オリジナリティ溢れる新たな価値を提供し続けることを世界中のお客様と約束する言葉として、新コーポレート宣言“Be Original.”を制定しました。

当社グループは、今後も引き続き、「経営理念」「経営信条」を体現し続けることで、社会の発展に貢献していきたいと考えています。

 

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②目指す方向性

当社グループは現在、「8K+5GとAIoTで世界を変える」を事業ビジョンに掲げ、8Kや5G、AI、IoT等の先端技術を核に、様々な企業とも連携し、「Smart Home」「Smart Office」「Healthcare」「Entertainment」「Education」「Industry」「Security」「Mobility」の8つの重点事業分野を中心に、革新的なサービスやソリューションの創出を進めています。

こうした取り組みを通じて、with/afterコロナ時代のニューノーマルの確立、多様なライフスタイルの実現、医療や介護問題の解決、労働力不足の解消、脱炭素社会の実現等、現代社会が直面する様々な社会課題の解決に貢献することで、人や社会に寄り添い、常に新たな価値を提供し続ける「強いブランド企業“SHARP”」の確立を目指しています。

 

(2) 経営環境、経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2021年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の進展により徐々に回復が進んだものの、前年度に引き続き、断続的に各地でロックダウンが行われ、また、半導体不足や原材料価格の高騰、物流コストの増加等、サプライチェーンの混乱が続く厳しい環境となりました。このような状況は今後も当面継続することが想定され、加えて、ウクライナ問題の長期化や急激な為替変動、インフレの加速等、当社を取り巻く事業環境は益々不透明になっています。

こうした中、当社グループはこれまで、「ブランド事業を主軸とした事業構造の構築」、「事業ビジョンの具現化」、「財務基盤の強化、社債市場への復帰」の3つに重点的に取り組み、安定的に利益を創出できる基盤を構築してきました。今後は、こうした取り組みをベースとしつつ、“ESGに重点を置いた経営”、具体的には、「健康関連事業のさらなる強化」、「カーボンニュートラルへの貢献」、「人(HITO)を活かす経営」、「真のグローバル企業へ」の4つに重点的に取り組むことで、当社グループの社会的価値の向上、ブランド力の向上を図り、持続的成長を実現していきたいと考えています。

 

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また、当社グループは、2022年6月27日に、大型液晶パネルを生産する堺ディスプレイプロダクト㈱の完全子会社化を予定しています。これは、テレビ事業及び業務用ディスプレイ事業における高品位パネルの安定調達や、ディスプレイデバイス事業のアプリケーションの拡大、生産能力の向上、将来の競争力強化に繋がること、さらには、現在、大型液晶パネル市場において大きなシェアを占める中国が米中貿易摩擦の最中にあることから、中国以外にある唯一の第10世代(マザーガラス2,880mm×3,130mm)以上の大型液晶パネル工場である堺ディスプレイプロダクト㈱は、米州市場向けのパネル供給において優位性が期待できること等を狙いとするものです。

今後、堺ディスプレイプロダクト㈱においては、高い技術力やコスト力、大型パネル生産における優位性等を活かし、需要変動の激しいテレビ向けパネルから、ゲーミングやボリュームゾーンのPC向けパネル、スーパーロングディスプレイ等の車載向けパネルへのシフトを進め、収益改善、業績の安定化を図っていきます。

 

①健康関連事業のさらなる強化

新型コロナウイルス感染症の影響や高齢化の進展等により、「健康」や「清潔」に対する世の中の関心が益々高まっています。こうした中、当社グループはこれまでも、プラズマクラスターやヘルシオ等、単に利便性を追求するだけでなく、人々の健康的な生活に貢献する白物家電を数多く創出してきました。この分野では、今後も「空気、食、水」を中心に、独自の商品やサービスの開発を強化し、健康価値の向上に取り組んでいきます。

また、当社グループは、白物家電に加え、テレビやモバイル端末、オフィス機器など、人々の暮らしを取り巻く様々な製品を提供しており、お客様との接点を数多く持っています。今後も新たな機器の創出や他社との連携等を通じてこうしたお客様との接点を一層拡大するとともに、様々なシーンで、ユーザーが意識することなく健康データを計測できる仕組みを構築し、一人ひとりに最適化されたソリューションを提供していきます。これにより、人々が自然と健康になっていく暮らしを実現していきます。

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②カーボンニュートラルへの貢献

脱炭素社会の実現は、今や国際社会の最重要課題の一つとなっています。当社グループとしては、2019年2月に策定した長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」において、2050年迄に自社活動のGHG(温室効果ガス)排出量ネットゼロの実現を掲げていますが、この目標の確実な達成に向け、新たな中間目標「2035年迄にGHG排出量60%削減(2021年度比、完全子会社化予定の堺ディスプレイプロダクト㈱を含む)」を策定しました。今後は、自社工場/事業所への太陽光発電システム(PVシステム)の導入及び省エネ化の加速、新規太陽光発電所の建設、社用車のEV(電気自動車)への切り替え等に取り組み、毎年着実にGHG排出量の削減を進めていきます。

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また、当社の創業者 早川徳次は、「無限にある太陽熱や太陽光で電気を起こすことを工夫すれば、人類にどれだけ寄与するかはかりしれないものがある」という考えの下、太陽電池の研究を進め、1959年に試作に成功、1963年には量産を開始しました。その後、約60年に亘り、当社グループは太陽光発電市場の拡大を牽引し、住宅用PVシステムや産業用PVシステム、EPC(太陽光発電所の設計・調達・建設)等、再生可能エネルギーの普及に貢献してきました。2021年時点での当社のPVシステムの総出荷量は約17GWですが、これを1年あたりのGHG削減効果に換算すると約6,000千t-CO2となり、自社活動におけるGHG排出量の約4倍のGHG削減に貢献している計算になります。

今後は、これまでの据置型中心から宇宙向けや車載向けへの事業展開、PPA事業(Power Purchase Agreement:電力販売契約)の拡大、新素材「ペロブスカイト」太陽電池の実用化加速等に取り組んでいきます。これにより、エネルギーソリューション事業をより一層拡大し、2030年には、自社活動におけるGHG排出量の約12倍の削減貢献を果たすなど、今後も社会の脱炭素化に貢献していきます。

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③人(H・I・T・O)を活かす経営

当社グループは、持続的成長の原動力は「人」であると考えており、人(H・I・T・O)を活かす経営、つまり、「複数の専門性を持つHybrid人材の育成」、「Innovationが生まれる環境や風土づくり」、「社員の才能(Talent)を十分に活かす適材適所の人材配置」、「優秀人材への成長機会(Opportunity)の提供」の4つの観点から、さらなる人事制度改革を推進していきます。

具体的には、若手活躍を後押しする信賞必罰人事制度の進化、人材獲得力のある勤務処遇制度の構築、人材の成長を支援する仕組みの充実、組織の若返り、意思決定スピードの向上等に取り組み、“若くて活気溢れる企業風土”の醸成、即ち、社員一人ひとりが失敗を恐れず、積極果敢に変革に挑戦していく会社を目指していきます。

 

④真のグローバル企業へ

当社グループは現在、海外事業の拡大に積極的に取り組んでおり、海外比率(2021年度67.2%)を早期に80%まで引き上げていきたいと考えています。これに向け、今後、海外各地域における販売戦略の強化を進めるとともに、グローバル視点での経営改革を推進していきます。

具体的には、グローバル人材の育成強化や人材管理の仕組みの整備を進めるとともに、本社部門の海外支援機能の強化、海外企業との協業/M&Aの加速、コーポレートブランディングの強化等に取り組みます。加えて、最先端技術を搭載した新製品のグローバル同時展開や、各地域の生活に根差した商品/サービス開発の強化も進め、海外各地域における当社のプレゼンス向上を図っていきます。

 

(3) セグメント別重点取り組み

2022年度は、ブランド事業においては、国内では高付加価値商材の販売拡大及びソリューション事業の強化を進め、円安影響の最小化を図り、海外では各地域に根差した企画や開発、販売体制の構築を進め、米州、欧州、ASEANを中心にさらなる事業拡大を実現していきます。さらに、デジタルヘルスやカーボンニュートラルの分野を中心に、更なる成長に向けた投資を拡大していきます。

一方、デバイス事業では、将来のディスプレイデバイス事業拡大に向けた基盤構築等に取り組みます。

<ブランド事業>

①スマートライフ

白物家電事業は、国内では、AIoT家電の販売拡大及び外部連携サービスの強化を図るとともに、AIoTを活用したBtoBソリューション事業の拡大を進めます。海外では、ASEANにおいては、事業の高付加価値化及び新規商材の拡大に、米州/欧州においては、好調な調理家電事業の更なる拡大を図るとともに、商品カテゴリー・ラインアップの強化に取り組みます。エネルギーソリューション事業は、国内住宅用や海外案件を中心に販売を拡大していきます。

②8Kエコシステム

ビジネスソリューション事業は、米州を中心にMFP事業の拡大を進めるとともに、シャープNECディスプレイソリューションズ㈱との連携によるBtoBディスプレイの販売拡大や、オフィス向けソリューション事業の強化に取り組みます。テレビ事業は、AQUOS XLEDのグローバル展開を加速するとともに、高付加価値モデル(高画質/大型/スマート等)の販売強化、米国テレビ事業の本格化に取り組みます。

③ICT

通信事業は、スマートフォンのブランド力強化及びシェア拡大に取り組むとともに、非スマートフォン商材(ルーター等)の拡大、デジタルヘルス事業の強化を図ります。PC事業は、商品ラインアップの拡充や海外における販路拡大を加速するとともに、オフィス/テレワーク向けソリューションの拡大に取り組みます。

 

<デバイス事業>

①ディスプレイデバイス

ディスプレイデバイス事業は、スマートフォン向けパネルの販売が減少する中、前年度から回復基調が続いている車載向けや、PC向け、ヘッドマウントディスプレイ向けの販売を拡大していきます。

②エレクトロニックデバイス

カメラモジュール事業、レーザー事業、半導体事業においては、顧客の新製品需要の着実な取り込み及び当社ブランド事業の優位性を支える特長デバイスの創出に取り組みます。

 

(4) 目標とする経営指標

2022年度は、足元で中国でのロックダウンの影響が出ていることに加え、サプライチェーンの混乱や円安が当面継続すると想定されること、さらには、完全子会社化予定の堺ディスプレイプロダクト㈱の業績見通しを織り込んだことなどから、増収減益の予想となっています。

今後も不透明な事業環境が継続しますが、当社グループは、「海外事業の強化」、「新規領域(新商品/サービス、新規市場、新規事業)の拡大」、サプライチェーンの混乱をはじめとした「様々なリスクへの対応力強化」を図り、業績目標の達成に取り組んでまいります。

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