文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。なお、経営ビジョン及び経営方針は2021年4月1日付で改定しております。新たな経営ビジョンには、グループ従業員等の一人ひとりが自ら挑戦し、新しい価値を社会に提供し続け、未来に向けて成長していく、という思いを込めています。
経営理念
誠と和と意欲をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する
経営ビジョン
「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。
経営方針
1. 克己心を持ち、「誠実」な取り組みにより人も組織も“日々是進化”を遂げる
2. 内外に敵を作らず協力関係を育み、「和」の精神で難題を解決する
3. 進取の気性に富み、ブレークスルーを生み出す「意欲」を持つ
4. ステークホルダーと共に人と地球にやさしい未来をつくり続ける「志」を持つ
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、キャッシュ・フロー(CF)を常に意識した経営を展開しており、「ROE (Return On Equity)」と「自己資本比率」をKPIと捉え、自己資本の効率性向上による中長期的な企業価値最大化と財務の安定性維持に取り組みます。
なお、取締役(社外取締役及び監査等委員であるものを除く。)、執行役員及び理事を対象とした現行の業績連動型株式報酬制度においては、その評価指標として、本制度の対象期間における各事業年度の期初に定める営業利益目標及び3ヶ年の中期経営計画に掲げる営業利益を採用しています。また、金銭の業績連動型報酬(年次役員賞与)においては、当該連結会計年度における連結ROEに加え、売上高、営業利益及びESG/SDGs目標の達成度等の指標を用いています。
(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等
今後の見通しにつきましては、情報通信分野においては、5Gの更なる技術革新や利活用分野への進展に伴い、今後も5G関連の需要は拡大していくことが見込まれます。また、データセンター等でのネットワーク・インフラの拡充に向けた需要の拡大も期待されます。一方、半導体不足の長期化に伴う部品調達リスクについては、今後も継続すると見込んでいます。このような事業環境の中、当社グループは、経営理念・経営ビジョン・経営方針及び中長期経営戦略のもと、中期経営計画「GLP2023」(計画期間: 2021~2023年度)の達成に取り組み、5Gビジネスを中心に、更に5G利活用分野への広がりやネットワーク高速化の需要拡大に的確に対応したソリューションをタイムリーに提供することで、競争力優位を確立し、5G/IoT社会を支えるリーディングカンパニーを目指します。
① 中長期的な経営戦略及び中期経営計画
当社グループは、主力の通信計測事業を軸に、情報通信サービスに関わるビジネスを展開しております。現在の5Gシステムに代表される通信インフラの様々なイノベーションは、社会を劇的に変革するとともに、人類に「つながる」ことの豊かさを提供し、グローバル社会の進歩を生み出してきました。「誠と和と意欲」、”オリジナル&ハイレベル”を経営理念とするアンリツは、情報通信における品質の見える化のために研ぎ澄ましてきた「はかる」技術を、食品・医薬品分野にも水平展開し、安全・安心な社会に貢献しています。
当社グループは、2021年4月に新たな経営ビジョンのもと、3ヶ年の中期経営計画「GLP2023」を策定し、その実現に向けた取組みを進めています。
当社のコンピテンシーである「はかる」を極めていくとともに、内外の異なる発想や技術を更に掛け合わせ、従来の「はかる」を超えた価値や新領域を開拓していくことで次の事業の柱を成長させ、攻めの姿勢で今までのアンリツの限界を超えてまいります。関係するあらゆるステークホルダーとともに持続可能で魅力的な未来を次世代に繋いでいくという思いを込めた経営ビジョンのもと、2030年度には安定した収益を上げる企業としての2,000億円企業を目指してまいります。
「GLP2023」の3年間は、5G計測市場のピークに向けた成長の3年であり、新たな芽を成長させる3年でもあります。4つのカンパニーと先端技術研究所の体制のもと、重点的に新たに成長させる4つの分野を 1)EV(電気自動車)、電池測定、2)ローカル5G、3)光センシング、4)医療・医薬品と捉え、それぞれの分野で外部との連携やM&A等を行うことで成長を加速させてまいります。
また、その先の将来も見据え、6GやNEMS(Nano Electro Mechanical Systems ※1)の基礎研究も開始しております。組織の枠を超え、会社の枠を超え、今までの概念に縛られず、前進してまいります。
「GLP2023」の主な経営数値目標及び当連結会計年度である2021年度の実績は、下表のとおりです。2021年度は「GLP2023」における計画初年度であり、主力の通信計測事業では、5Gチップセット及び携帯端末の開発需要やデータセンター等でのネットワーク高速化に向けた開発・生産関連需要を獲得しました。一方、世界的な半導体不足や米国でのCバンド(※2)商用化スケジュールの遅れが影響し、前期比で減収となりました。引き続き、資本コストを意識した成長投資(含むM&A)と資本効率の改善で、企業価値KPI(ROE)の向上を目指します。
※1 NEMS:半導体加工技術をベースとするマイクロマシンを更に小型化したnmオーダーの機械構造を持つデバイス
※2 マイクロ波帯を分割する際の一つの周波数帯(4~8GHz)の呼び名
|
2021年3月期 (実績) |
2022年3月期 (実績) |
2023年3月期 (業績見通し) |
2024年3月期 (GLP2023目標) |
|
売上収益(億円) |
1,059 |
1,053 |
1,150 |
1,400 |
|
営業利益(億円) |
196 |
164 |
190 |
270 |
|
当期利益(億円) |
161 |
128 |
140 |
200 |
|
通信 計測 事業 |
売上収益(億円) |
748 |
733 |
780 |
1,000 |
営業利益(億円) |
177 |
152 |
175 |
230 |
|
PQA 事業 |
売上収益(億円) |
214 |
219 |
240 |
270 |
営業利益(億円) |
13 |
11 |
13 |
27 |
|
ROE(%) |
15.8 |
11.5 |
12 |
15 |
※ 億円未満を切り捨てて表示しています。なお、2023年3月期の業績見通しは、2022年4月28日に公表した「2022年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」に基づいています。
また、「GLP2023」では、下表に記載のとおり、当社グループのサステナビリティ目標を掲げています。
これらのうち、温室効果ガス排出量の削減については、「Scope1+2」では、そのCO2排出量の大部分がエネルギー消費によるものであるため、工場・オフィスでの省エネ活動及び再生可能エネルギーの太陽光自家発電増設による取り組みのほか、電力調達先のCO2換算係数の改善により、前期より削減が進みました。「Scope3」では、取引先様との協働や省エネ製品への切替が進み、購入した製品・サービス及び販売した製品を使用することによるCO2排出量を削減しました。また、本社及び主要拠点への太陽光発電設備の導入等の再生可能エネルギー自家発電の取り組みは計画どおりで、自家発電比率は2023年度目標に向けて進捗しています。
ダイバーシティ経営の推進については、幹部職に占める女性の割合が、現状では国内2.8%、グローバルで10.9%となっており、目標の実現に向けて途上にあるものの、女性幹部職登用を促進する取組みは、技術系の女性を核とした新卒採用や中途採用の強化、柔軟な働き方に向けた制度面でのサポート、ライフワークバランスをより重視したキャリアパス新設による幹部職コースの複線化などにより展開しています。これらの活動内容等は、サステナビリティ推進会議、取締役会等でも報告されています。高齢者活躍の推進は、今後の社会や労働環境の変化を背景にした中長期的な会社の成長戦略上の課題と認識しており、エンゲージメントの向上による人財活力最大化を図る施策として、全従業員が働きがいを抱き、かつ安心して働き続けられることを目的とした人事制度・処遇の改定について、2022年度から実施しています。また、2021年9月1日に子会社株式会社ハピスマを設立し、障がいをお持ちの方が個性と能力を発揮できる就労環境を整備しました。同社は2022年1月14日に「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社として厚生労働大臣の認定を受けました。これにより、障がい者雇用推進に向けて掲げた法定雇用率充足の目標は達成しています。
|
KPI |
GLP2023 サステナビリティSDGs目標 |
左記目標に対する進捗(2021年度) |
E 環境 |
・温室効果ガス(Scope1+2) |
2015年度比 23%削減 |
23%削減(参考値) |
・温室効果ガス(Scope3) |
2018年度比 13%削減 |
14%削減(参考値) |
|
・自家発電比率(PGRE 30) |
13%以上(2018年度電力消費量を基準) |
12%(参考値) |
|
S 社会 |
・女性の活躍推進 |
女性幹部職比率15%以上 |
10.9%(グローバル 2022年3月末) |
・高齢者活躍推進 |
70歳までの雇用及び新処遇制度確立 |
70歳までの雇用及び新処遇制度制定 |
|
・障がい者雇用促進 |
職域開発による法定雇用率2.3%達成 |
特例子会社立上げにより法定雇用率充足 |
|
・サプライチェーンDDの強化 |
3年累積10社以上 |
6社実施 |
|
・CSR調達に係るサプライヤへの情報発信2回/年以上、教育1回/年以上 |
情報発信3回、教育1回実施 |
||
G ガバナンス |
・取締役会の多様性の推進 |
社外取締役比率50%以上 |
社外取締役比率50%継続(10名中5名) |
・海外子会社の内部統制構築 |
全海外子会社が統制自己評価(CSA)の基準を満たす |
2023年度の評価に向けて、CSAの判断基準や各社に求められる水準を定義中 |
※ Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)/ Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出/ Scope3:Scope1・Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)/ 当社ではScope3のKPIにカテゴリ1及び11を採用
② コーポレート・ガバナンスの充実
当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などの従前からの取組みに加え、社外取締役比率50%以上を確保することにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。
当社グループのコーポレート・ガバナンスに関する事項は、後記第4「提出会社の状況」の4「コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
③ サステナビリティ推進活動、ダイバーシティ推進等
国際社会のサステナビリティ課題は、2015年9月、国連総会において全会一致で「持続可能な開発目標(SDGs)」として定められました。当社は、温室効果ガスの排出削減計画をSBT(Science Based Targets)イニシアチブに提出し、2019年12月には、この計画に掲げた目標が気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change )の気候科学に基づく削減シナリオに整合しているとして、この計画を承認いただきました。これには再生可能エネルギー(以下、「再エネ」といいます。)電力証書の購入も計画しておりましたが、当社グループの事業遂行に必要な電力を自前でも発電していく取組みがSDGsの目指す姿に適うものと考え、再エネ自家発電(PGRE:Private Generation of Renewable Energy)を重視することにしました。そこで、2020年4月に「Anritsu Climate Change Action PGRE 30(以下、「PGRE 30」といいます。)」を策定し、温室効果ガス削減に向けて果敢に挑むこととしました。PGRE 30は、一部の子会社を除いた2018年度の当社グループの電力使用量を基準に、再エネの一つである太陽光自家発電比率を、2018年度の0.8%から2030年頃を目途に30%程度にまで高めていく野心的な目標となります。主要拠点である神奈川県厚木市、福島県郡山市、米国カリフォルニア州Morgan Hillの3地区に自社消費用の太陽光発電設備を導入・増設し、PGRE 30に取り組むことで、SDGsの目標7のターゲット7.2に掲げる「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再エネの割合を大幅に拡大させる」という目標達成に貢献してまいります。なお、当社は、2021年6月30日付で気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。サステナビリティレポート2021では、当社の事業活動において影響度の大きいリスクや機会について2℃シナリオと4℃シナリオ別に分析するなど、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」などTCFDのフレームワークに準じた開示を行っています。今後も気候変動への取り組みとTCFD提言に基づく情報開示に努めてまいります。
当社グループは、誠実な企業活動を通じてグローバルな社会の要請に対応し、社会課題の解決に貢献してこそ企業価値の向上が実現されると考えています。その基本的な考え方を定めた「サステナビリティ方針」には、国連で採択されたSDGsアジェンダの5つのP、すなわち、People、Planet、Prosperity、Peace、Partnershipの要素が包含されています。当社グループは、「安全・安心で豊かな社会の発展への貢献」、「人と地球にやさしい未来づくりへの貢献」、「人権の尊重と健康で働きがいのある職場づくりの励行」、「公正で誠実な活動の実践と経営の透明性の維持向上」、「ステークホルダーとの強固なパートナーシップの構築」を目標に据え、「誠と和と意欲」をもってグローバル社会のサステナビリティ及び世界共通目標SDGsに貢献することを通じて、企業価値向上を目指してまいります。
当社グループにおける従業員の採用においては、技術職、事務職を問わず、外国籍人財のほかジェンダー平等に配慮した人財の採用を進めており、国内においては女性の積極採用、教育研修プログラムの改善等により女性社員の比率、女性幹部職の人数が徐々に高まっています。仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。加えて、従業員向けの自己啓発プログラムについては、自らの価値観・強み・ライフスタイルに基づき、「学びたいとき、学べるときに、学びやすい方法で、自ら学ぶ」をコンセプトに、自らが学ぶテーマを内発的に設定し、自己向上を図ることを目指すものとして刷新されています。諸制度の利用を希望する者が、性の別を問わず、共に安心して仕事と育児等の両立が図れるように、ダイバーシティ推進を総合的に所管する部門が中心となって、すべての従業員に対し、関連する情報の提供・周知、意識啓発等を行い、理解促進に努めています。自覚しにくいアンコンシャス・バイアスに対する気づきを行動変化につなげていく趣旨のeラーニングも採り入れました。これらの取組みにより、最近の傾向として、男性従業員による育児休職制度の利用が進んでいます。また、当社は、働き方の改革“ライフワークバランス”の推進に向け、就業時間管理の徹底、会議の時間短縮・効率化の推進等を通じた長時間労働の削減にも努めており、これは従業員の健康を守るとともに、育児、介護等を行いやすくすること、ひいては生産性を向上させてイノベーションを起こし、企業価値の向上につながるものと考えております。
なお、当連結会計年度末時点におけるグローバルにみた女性の活躍状況は以下のとおりです。
■ 幹部職に占める女性の割合 (女性幹部職数÷全幹部職数) (単位:%)
|
2016年度 |
2017年度 |
2018年度 |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
日本 |
1.3 |
1.0 |
1.1 |
1.8 |
2.3 |
2.8 |
米州 |
24.7 |
23.0 |
20.2 |
18.3 |
17.9 |
21.6 |
EMEA ※ |
19.7 |
22.1 |
23.5 |
21.6 |
24.2 |
20.3 |
アジア他 |
21.7 |
21.6 |
24.1 |
23.4 |
24.0 |
23.7 |
グローバル連結 |
10.2 |
9.9 |
10.5 |
10.4 |
10.8 |
10.9 |
※ EMEA(Europe, Middle East and Africa): 欧州・中近東・アフリカ地域
当社グループは、皆様とともに進歩と進化へ向けて歩み続けていきたいという強い思いを込めて、2021年度からブランド・ステートメントを「Advancing beyond」に刷新し、皆様に発信しています。さらなる高みを目指すとともに、お客様のビジョン実現を通じ社会のサステナビリティに貢献したいという姿勢を示しています。今後とも経営資源を最大限に活かして安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。
お知らせ