業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度(2021年4月1日から2022年3月31日まで)におきましては、海外向け空調機および電子デバイスの売上が増加し、連結売上高は2,841億2千8百万円(前年度比7.0%増)となりました。

損益につきましては、海外向け空調機の販売物量拡大や売価改善効果はあったものの、素材・部品価格や海上運賃の高騰、生産地国通貨高などの影響が大きく、営業利益は84億4千4百万円(同54.9%減)、経常利益は114億2百万円(同44.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は37億2千2百万円(同71.4%減)となりました。

なお、海外向け空調機の受注は引き続き堅調で、調達面でも以前に比べ改善傾向が見られるものの、工場出荷後の海運・港湾・陸運での物流停滞で深刻な影響を受けるとともに、自社工場や関係仕入先での新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動制限が散発的・断続的に発生し、さらに3月に入り上海市が都市封鎖されたことも重なり、売上高、各利益とも本年1月公表予想を大きく下回る結果となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

<空調機部門>

空調機部門では、夏期の天候不順等の影響を受けた国内向けの販売は減少しましたが、重点市場である北米、インド、欧州向けを中心に海外向けの販売が増加し、売上高は2,524億5千3百万円(同8.3%増)となりました。営業利益は、海外向けの販売物量拡大や売価改善効果はあったものの、素材・部品価格や海上運賃の高騰、生産地国通貨高などの影響が大きく、51億5千2百万円(同63.2%減)となりました。

 

〔海外向け〕

売上高は、1,991億8千9百万円(同16.4%増)となりました。

 

米州では、北米において、好天や在宅需要の高まりから需要が堅調に推移するなか、省エネ性能に優れたルームエアコンの販売が増加するとともに、VRF(ビル用マルチエアコン)も販売が伸長したことなどから、売上が増加しました。なお、寒冷地向け機種をはじめとしたラインアップ拡充や米国南部における販売網の強化など、販売拡大に向けた取り組みを進めています。

 

欧州では、南欧の市況回復等によりルームエアコンの販売が増加するとともに、ATW(ヒートポンプ式温水暖房システム)においても、環境負荷の低減を目的とした補助金政策を背景に販売が大幅に伸長し、売上が増加しました。なお、今後も需要増が見込まれるATWのさらなる拡販に向け、販売網の強化や設置性に優れた新商品の開発を進めています。

 

中東・アフリカでは、一部で市況が回復しつつあるほか、前年度からの出荷延伸に伴う上半期の売上増やプロジェクト案件の納入により、売上が増加しました。

 

オセアニアでは、サービスメンテナンス業務は回復基調にあるものの、部品不足等に伴う生産影響によりルームエアコンの出荷が減少したことから、売上が減少しました。

 

アジアでは、主力市場のインドの市況が回復していることに加え、ラインアップ拡充等の効果もあり、ルームエアコンの販売が市場を上回って伸長しました。また、ソリューションビジネスにおいても、販売拠点の拡大により受注が好調に推移し、売上が増加しました。なお、インドでのさらなる販売拡大に向け、専門店の拡充など販売網の強化を進めるほか、本年には現地での生産を開始する予定です。

 

中華圏では、ルームエアコンの販売は前年度を上回りましたが、VRFの大型プロジェクト案件の販売減などにより、売上が減少しました。

 

〔国内向け〕

売上高は、532億6千4百万円(同14.2%減)となりました。

住宅設備ルート向けの販売は堅調に推移しましたが、量販店ルートでは、夏期の天候不順に加え、普及価格帯を中心に採算性を重視した売価政策をとった影響や、部品不足による一部機種の生産減の影響もあり、売上が減少しました。

 

<情報通信・電子デバイス部門>

情報通信・電子デバイス部門では、電子デバイスの販売は増加しましたが、情報通信システムの販売減により、売上高は292億1千4百万円(同3.6%減)、営業利益は21億7千万円(同46.3%減)となりました。

 

〔情報通信システム〕

売上高は、156億7千9百万円(同20.8%減)となりました。

公共システムにおいて、デジタル化商談の一巡に伴い、防災システムの納入案件が減少していることから、売上が減少しました。なお、民需システムにおいては、外食産業向け店舗システムは引き続き厳しい状況が続いていますが、人材ビジネス、BPOサービスといった新たな分野の事業拡大に取り組んでいます。

 

〔電子デバイス〕

売上高は、135億3千4百万円(同29.0%増)となりました。

車載カメラの販売は自動車減産等の影響により前年度を下回りましたが、産業用ロボット向け電子部品・ユニット製造において、設備投資需要の増加を背景に販売が増加したことから、売上が増加しました。なお、エレクトロニクス製品の小型化・高効率化に寄与するパワーモジュールについて、本年1月より当社VRF向けに量産開始しており、今後は外販も進めてまいります。

 

<その他部門>

売上高は24億6千万円(同23.0%増)、営業利益は11億2千万円(同65.1%増)となりました。

 

②財政状態の状況

Ⅰ 資産、負債および純資産の概況

当連結会計年度末の総資産につきましては、現金及び預金の減少はありましたが、海運・港湾・陸運での物流停滞等の影響を受けて棚卸資産が増加したことにより、前連結会計年度末比172億5千4百万円増加し、2,686億3千3百万円となりました。

負債につきましては、支払手形及び買掛金ならびに短期借入金の増加などにより、前連結会計年度末比118億8千5百万円増加し、1,371億7千8百万円となりました。

純資産につきましては、為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末比53億6千9百万円増加し、1,314億5千4百万円となりました。なお、本年度7月に譲渡制限付株式報酬としての新株式を発行したことにより、資本金および資本剰余金がそれぞれ35百万円増加しております。

この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は1.4%減少し、47.0%(前連結会計年度末は48.4%)となりました。
 

Ⅱ キャッシュ・フローの概況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、税金等調整前当期純利益の計上、減価償却費を源泉とした収入はあったものの棚卸資産の増加による運転資本の増加により、149億4千5百万円の支出(前連結会計年度は250億1百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、開発・生産設備、ITシステムへの投資などにより78億7千1百万円の支出(同112億6千7百万円の支出)となりました。この結果、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローは228億1千7百万円の支出(同137億3千3百万円の収入)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、金融機関から資金調達による収入はありましたが、配当金の支払などにより、9億7千1百万円の支出(同58億2千5百万円の支出)となりました。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、前連結会計年度末比225億5百万円減少し、142億2百万円となりました。

 

 

③生産、受注および販売の実績

Ⅰ 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

空調機(百万円)

246,762

6.6

情報通信・電子デバイス(百万円)

25,095

△6.2

合計(百万円)

271,857

5.3

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

Ⅱ 受注実績

当社グループ(当社および連結子会社)の製品は、需要予測による見込生産が主体のため、受注実績を記載しておりません。

Ⅲ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

空調機(百万円)

252,453

8.3

情報通信・電子デバイス(百万円)

29,214

△3.6

報告セグメント計(百万円)

281,668

6.9

その他(百万円)

2,460

23.0

合計(百万円)

284,128

7.0

 (注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.総販売実績に対する割合の10%以上を占める相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

当連結会計年度は、販売面では、海外向け空調機および電子デバイスの売上が増加し、為替を除く売上高は前連結会計年度比3%増となりました。損益面では、海外向け空調機の販売物量拡大や売価改善効果はあったものの、素材・部品価格や海上運賃の高騰、生産地国通貨高などの影響が大きく、営業利益は84億円と前連結会計年度比103億円(前連結会計年度比55%減)の減益となりました。経常利益は114億円(同45%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は37億円(同71%減)となりました。

なお、当連結会計年度の銅価格および主要通貨の為替レートは記載のとおりであります。

 

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Ⅰ 売上高

当連結会計年度の売上高は2,841億円と前連結会計年度比186億円(同7%増)の増加となりました。このうち空調機部門では、夏期の天候不順等の影響を受け、国内向けの販売は減少しましたが、重点市場である北米、インド、欧州向けを中心に海外向けの販売が増加し、売上高は2,524億円と前連結会計年度比192億円(同8%増)の増加となりました。情報通信・電子デバイス部門では、電子デバイスの販売は増加しましたが、情報通信システムの販売減により、売上高は293億円と前連結会計年度比10億円(同4%減)の減少となりました。その他部門の売上高は、24億円と前連結会計年度比4億円(同23%増)の増加となりました。

 

 

Ⅱ 営業利益

当連結会計年度の営業利益は84億円と前連結会計年度比103億円(同55%減)の減益となりました。

空調機部門においては52億円と前連結会計年度比88億円(同63%減)の減益となりました。変動要因は、海外向けの販売物量拡大や売価改善効果により92億円増益、素材・部品価格の高騰により原価低減が進まず113億円減益、海上運賃の高騰等により77億円減益、生産地国通貨高による為替影響で25億円減益、固定費の抜本的低減などにより35億円増益となっております。

情報通信・電子デバイス部門においては情報通信システムの販売減などにより、21億円と前連結会計年度比19億円(同46%減)の減益となりました。

その他部門においては11億円と前連結会計年度比4億円(同65%増)の増益となりました。

 

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Ⅲ 経常利益

当連結会計年度の経常利益は114億円と前連結会計年度比91億円(同45%減)の減益となりました。営業外損益は純額で30億円(益)となり、前連結会計年度比12億円良化いたしました。この主な要因は、為替差益が増加したことなどによるものであります。

 

Ⅳ 親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の114億円から、特別損失として計上した海外事業等再編費用および税金費用ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を控除し、37億円と前連結会計年度比93億円(同71%減)の減益となりました。

この結果、1株当たり当期純利益は35.57円となり、前連結会計年度比88.75円減少いたしました。

 

Ⅴ 経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「2 事業等のリスク」に記載しております。そのなかでも、為替レート、素材・部品価格の市況変動が経営成績に与える影響は直接的であり、かつ、重大なものと認識しております。

為替については、当社グループの海外売上高比率が約71%あり、かつ、主力の空調機セグメントは主に中国・タイの工場で製品を製造しているため、外部および関係会社間の外貨建取引の割合が高くなっていることから、為替レートの変動が急激な場合、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、グループ各社の仕入通貨と販売通貨をマッチングさせるなど、為替リスクの軽減を図っております。また、外貨建債権債務に対しては、為替予約等によりリスクヘッジを行っております。さらに、グループ各社の為替ポジションを当社財務経理部門で把握しており、為替レートの変動に対して適宜対応できる体制をとっております。

素材・部品については、戦略的提携等を通じて基幹部品の供給確保に努める一方で、調達を外部の取引先に依存しているため、コンプレッサーや電子部品などの調達部材の供給環境が著しく悪化した場合や、銅およびアルミなどの市況が急激に変動した場合には、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼします。この影響を軽減させるため、銅については価格のヘッジ等を行うとともに、部材のマルチソース拡大、設計の標準化、内製化の拡大、調達先との関係強化等によるコスト削減と安定調達に努めております。

上記に加え当社グループは、トータルコストダウンの推進や商品構成の改善などにより、為替レート、素材・部品価格の市況変動に伴う損益影響を極力低減すべく、たゆまぬ努力を重ねてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況 Ⅱ キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。

当社グループにおいては、事業上必要な運転資金および設備投資資金は、利益と資金効率で生み出したキャッシュで賄うことを基本方針としております。その上で、成長投資のための多額のキャッシュが必要となった場合は、銀行借入や社債等の調達手段のなかから、適宜、最適と判断する手段にて調達する方針としております。

当社グループは、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を資金効率の指標とし、売上債権の圧縮、棚卸資産および買掛債務の適正化を図ることで、自己資金を生み出す力の強化を図っております。

なお、当連結会計年度末における借入金残高は8,535百万円、リース債務を含む有利子負債残高は9,563百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高は14,202百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、連結貸借対照表上の資産および負債の計上額、ならびに連結損益計算書上の収益および費用の計上額には、過去の情報および将来の予測等をもとに行った合理的な見積りおよびその基礎となる仮定が含まれており、実際の結果は異なる場合があります。

当社グループが連結財務諸表に適用している重要な会計方針等は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある見積りを含む会計方針は以下のとおりであります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

Ⅰ 貸倒引当金

売上債権、貸付金等の債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財務状況の変化などにより回収不能見込額が変動した場合には、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅱ 製品保証引当金

販売した製品の無償アフターサービス費用に備えるため、経験率および個別見積りに基づき計上しております。経験率の見直しなどにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅲ 海外事業等再編引当金

空調機事業強化に向けた各地域の販売体制強化・再構築に係る費用等を合理的に算定し計上しております。海外事業動向の変化および為替レートの変動などにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅳ 独禁法関連引当金

独占禁止法に基づく排除措置命令及び課徴金納付命令に関連して発生の可能性が高い支払いに備えるため、損失見込額を合理的に算定し計上しております。本件につきましては、現在、裁判において係争中のため、今後の裁判の進展などにより、引当金の追加計上または取崩しが必要となる可能性があります。

 

Ⅴ 退職給付費用および債務

従業員の退職給付に備えるため、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、昇給率、年金資産の長期期待運用収益率などが含まれており、実際の給付が前提条件と異なる場合または前提条件が変更された場合、将来期間において認識される費用および債務に影響を与える可能性があります。

 

Ⅵ 繰延税金資産

将来の課税所得の十分性およびタックスプランニングをもとに、回収可能性があると判断した金額を計上しております。経済環境および経営状況などの変化により、回収可能性の評価時に使用した将来の利益計画およびタックスプランニングを変更する必要が生じた場合、繰延税金資産の金額が増減する可能性があります。

 

Ⅶ のれんの評価

各連結会計年度において、減損の兆候の有無を把握し、減損の兆候があると判断したのれんについては、経営者が承認した将来事業計画の割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に減損損失を認識しております。

減損損失の測定に使用する回収可能価額は、同様に経営者が承認した将来事業計画を基礎とした将来見積キャッシュ・フロー等に基づき算定しております。

これらに使用する事業計画等の仮定は、使用する時点において入手可能な情報に基づく最善の見積りと判断により策定しておりますが、将来の事業環境の変化等の影響により見直しが必要となった場合には、減損損失が発生し、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

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