研究開発活動

5 【研究開発活動】

当社グループは、お客様に満足して頂ける製品を創造するために常に技術を磨き、「技術の池上」と評価を頂けるよう、積極的に研究開発活動を行っています。研究開発は、プロダクトセンター(宇都宮市)とシステムセンター(藤沢市)において、事業毎に要素技術・機能開発・製品化開発を行っています。 また、グループ外企業との分業と連携により、自社のコア技術開発とスピードある製品開発を実現しています。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、 1,685 百万円です。

 

(1) 放送システム事業関連

放送システム事業関連では、番組制作から放送番組の送出・基幹網伝送に渡るデジタル放送機器に注力した研究開発を進めています。特に総務省の推進する超高精細映像技術4K・8Kのロードマップを重視した撮影機器、有線/無線中継機器、ネットワーク機器、および将来を見据えた新しい制作のワーキングスタイルに着目した研究開発に取り組んでいます。

 

放送用カメラでは、今年度、以下の開発成果がありました。

 

スタジオ番組制作および屋外中継向けに、大型レンズとの組合せ運用に特化した4K/HDカメラ「UHK-X750」を開発しました。本機は従来のポータブルカメラにビルドアップユニットを用いた場合と比較し、大型レンズの装着・セッティングを容易にすることで運用性向上を図るとともに、ビューファインダーをレンズの光軸に近い位置に設置可能な構造とすることで、カメラマンにとって良好なカメラワークを提供します。さらに、屋外運用で重要な砂塵対策として筐体にワンピース構造を採用し、安定した動作を実現しました。

また、中継現場での長距離映像伝送を実現すべく、カメラヘッドへの送電能力を強化したカメラコントロールユニット「CCU-X100」の開発も行いました。これにより、「UHK-X750」、「UHK-X700」との組みあわせで幅広い中継制作の運用性向上を提供します。なお、機能向上にも関わらず最新の回路技術を駆使することで3Uラックマウントサイズながら従来機種に比べて軽量化を実現しました。

カメラの機能面では「UHK-X700」、「UHK-X750」の映像制作の幅を広げる共通のオプション機能としてHFR(High Frame Rate)撮影機能の開発を行いました。4Kフォーマットで2倍速、HDフォーマットでは8倍速の高速撮影への対応により、スロー再生映像が要求されるスポーツ撮影用途等において威力を発揮します。

その他のオプション機能として、MoIP(Media over IP)インタフェースの開発も行いました。放送システムのIP化が進む中で、国際的な標準規格SMPTE ST 2110に準拠し、NMOS IS-04/05に対応しています。このオプション機能であるMoIPインタフェースの実装により、海外を中心にIPシステムへの導入が始まっています。今後、国内でもIP化の要求が進むことが予想されています。

 

放送映像音声スタジオ機器では、今年度、以下の開発成果がありました。

 

昨今、地方放送ローカル局、末端小規模設備更新の需要増加に応えるべく、ビデオスイッチャ「MuPS-5000」シリーズの大型、中型ラインアップ製品に加え小型ラインアップとして、省スペース、廉価版モデルの開発をしました。

本小型スイッチャは従来の小型ジャンルで実績を伸ばしてきた3Uラックマウントサイズを踏襲し、当社独自の回路技術により省スペースながら内蔵エンジンは強力な映像制作機能を搭載しました。これにより4K/2K映像フォーマットのいずれも入出力数は40入力20出力を実現し、4Kでも2Kと同様の映像システム系統が組めるアドバンテージとなっております。さらに、4Kと2K間の解像度、HDR/SDR、色域変換機能を搭載すると共に、サイマルキャスト制作までサポートをしています。さらに、2K映像制作は、従来HDスイッチャの4倍以上の機能搭載を実現し、多系統マルチビューワ出力機能と共に、小規模システムにおける高付加価値の提供を可能にしました。現在見込み生産活動、販売活動に入っており、2022年7月から順次納入開始して参ります。今後、キー局、準キー局のスタジオサブ、大中型中継車システムに納入実績に引き続き、小規模廉価市場に対しても、高い映像制作ソリューションを伴って訴求すると共に、非放送分野の映像制作市場に単体製品として販売を強化して参ります。

システム構成時のキーデバイスの一つである周辺機器「OnePackⅡシリーズ」では、映像コンテンツの制作・配信で重要となる映像変換機能として高品質な映像変換を実現した3D LUT(Look Up Table)を開発しました。開発した3D LUTは当社独自の「フィルタ補間方式」により、他社採用のアルゴリズム(三角錐補間、立方体補間等)と比較しバンディングノイズを大幅に低減しました。この3D LUT採用により、単なる計算式による映像方式変換ではなく、例えば、映像制作現場の4K HDR⇔2K SDR変換における各種Logカーブ要求や、ドラマ、映画撮影のグレーディング収録要求など、映像の異なる色空間への変換、或いは色そのものを変換するグレーディング用途への拡大を可能としました。今後は放送ライブ市場にとどまらずドラマ制作市場にも訴求して参ります。

その他、放送ライブシステムの運用で重要となるタリー制御システムにおいて、制御ソフトウェアの一新を図り、多系統化、および、従来のドットマトリクス表示器からグラフィック液晶表示パネルへの変更等のリニューアル開発をしました。これにより、ベクトルフォント表示によるデザイン性向上、表示情報の高自由度化など機能性の向上が図られたと共に、放送モニタ棚の新たな提案材料として、SI’erへの販売含め訴求して参ります。

 

放送システムにおいては、今年度、以下の開発成果がありました。

 

放送市場のIP化の流れの中、放送システムにおいては柔軟なシステム構築と運用性の実現が期待されるMoIP(Media over IP) 方式への感心が高まっており、関連する装置およびソフトウェアの開発を進めております。MoIPの導入にあたっては、映像伝送の既存方式であるSDI(Serial Digital Interface)との混在したシステム構築が欠かせないことから、キーデバイス装置としてSDIとMoIPを相互に変換するIP Media GW(Gateway)の開発を進め、SMPTE ST.2110のメディア伝送規格に準拠し、AMWA NMOSによるシステム制御に対応した機能開発とMoIPモジュールの開発を行いました。現在、2022年度中の製品化に向けて装置の仕上げと接続性検証を継続して参ります。

また、MoIPシステム構築の要となるソフトウェアのブロードキャストコントローラ(BC)の基本機能開発を行いました。BCはMoIP機器の管理、メディア間のコネクション制御と管理、通信や装置の状態監視などシステム構築の中核機能を担うものになります。今後はシステムアップからシステム運用に至るGUIを開発して参ります。

この他、放送番組内で使用されるテロップ、静止画およびタイトル動画などの映像配信の3Dファイルフォーマットの主流と注目されるglTF(GL Transmission Format)形式に対応した2K/4K送出のソフトウェア機能を開発しました。報道番組をはじめ今後多種多用な番組製作に活用できる技術として期待できます。

 

無線伝送・通信機器では、今年度、以下の開発成果がありました。

 

放送局向け4K対応FPU装置「PF-900」のFPU受信基地局更新需要への対応のため、さらなる受信性能向上の開発と、電波受信状況の監視利便性を目指しリアルタイム監視を可能とする受信状況データ伝送機能を開発し追加実装しました。特に後者の機能は、パソコン端末で表示することで、複数のFPU受信装置から送られてきた受信状況データをPC端末で表示することで、同時に監視することを可能とし、オペレータ業務の負担軽減に寄与します。

 

(2) 産業システム事業関連

セキュリティー機器関連では、高画質化、ネットワーク化の市場ニーズのほか、様々な顧客ニーズに対応したシステム、ソリューションの提供を推進しています。

 

各種環境プラント市場では、システムの中核となるモニタリング制御システムについて新たに「TPC-110」を開発しました。これにより、旧機種の「TPC-100」から、動画性(フレームレート)、解像度の性能アップを図り、現場状況をより明瞭、精細に確認・監視することを可能としました。さらに、クレードル型として無線通信に対応し可搬型としたことで中央制御室からの持ち出し運用も可能となり、利便性の高いプラント監視を可能にしました。また、VMS(Video Management System)への対応を図ったことで他社カメラもサポート可能となりました。これにより、既存の他社システムとの融合、連携が可能となり、映像による遠隔での支援機能の充実と効率的かつ安定したプラント施設の監視・運営のソリューションを提案して参ります。

鉄道市場においては、全国的に進む駅のホームドア設置や省人化によるワンマン運転化に向けた安全確認用監視システムのソリューションを提供して参りました。今後とも、無線伝送システムを始めとする装置の開発を進め、安全確認用監視システムの拡張性・利便性向上を図り、プラットホームでの乗客の乗降や列車出発時の安全確保に貢献して参ります。

 

メディカル機器関連では、微細手術の高度化を支える映像装置の研究開発を進めています。

 

内視鏡カメラでは当社独自の画像処理技術によって、手術時の生体内組織の同定・区域特定等をサポートするICG蛍光観察における視認性向上技術、および手術映像の強調機能技術等の開発を行いました。本機能を当社の既存カメラに組込みアップデートすることで様々な手術への応用が可能となることから、OEM供給している医療機器メーカーから好評を博しています。

今後とも他社との差異化を図るべく機能改善の開発を継続し、低侵襲手術を始めとした医療技術の向上、発展に貢献して参ります。

また、手術にまつわる手術室、機材管理等の間接業務の効率化にも着目し、間接業務の統括管理システムおよび手術室を想定した制御アプリケーションの開発、さらに、医療従事者の使いやすいGUIなどの開発に取り組んでいます。

今後も最先端のデジタル映像技術を駆使し、医療現場に真に求められる新たなソリューションを展開して参ります。

 

検査機器関連では、お客様の製品品質の向上を支えるために、画像処理とメカトロニクスを融合した検査装置システムの研究開発を行い、事業拡大に努めています。

 

医薬市場では 近年、超高齢化社会の進行と、ジェネリック医薬品の使用促進による医薬品生産量の急速な増加を背景として、より高速で高精度な医薬品検査を行い、品質を担保する検査装置に対するニーズが高まっています。その中で錠剤の外観検査においては、高い水準で安定した品質を維持するために、錠剤全周の異物付着や汚れ、割れ、欠け、形状不良など様々な不良を高精度で検出するとともに、刻印錠、割線錠のように凹部を持った錠剤の形状欠陥検査においても精度向上が求められています。

この状況において2020年11月に新製品として市場投入した錠剤外観検査装置「TIE-10000」に対し、2021年度は検査品質向上や生産性向上のソリューションとして、不良検出のシミュレーション機能を開発いたしました。本機能により検査品質基準を効率よく設定でき製品品質の安定化に寄与すると共に、生産ラインへのフィードバック情報としても活用が期待されます。今後は蓄積したAI技術を活用し、さらなる製品価値向上の開発を推進して参ります。

また、製品ラインナップとして、生産終了したTIE-9000シリーズでしたが、市場からの強い要望もありをTIE-9000Aシリーズとしてリニューアル開発を行い、2022年3月より市場で稼働開始しています。さらに、錠剤印刷装置のTIE-9000P/4500Pに、錠剤外観検査装置に搭載されている「3D形状欠陥検査機能」と「側面検査機能」を搭載可能とするための開発を行いました。これにより、錠剤印刷装置1台で錠剤への印刷と全数外観検査を実現し、2022年3月にPress Releaseしました。

産業市場の自動検査の要求が一段と増える中、枚葉検査装置「PIE-650M」の新機能開発として、フィルム等のコシのない被検査体、いわゆる軟性フィルムの搬送を特殊なチャッキングと搬送構造を開発し、2021年度より市場投入を開始しました。ニーズを捉えたことで引合いが増えており、今後、他企業との技術アライアンス等も含め、更なるソリューションを提供して参ります。

人から自動化への流れは速く、検査システムに関してのワンストップソリューションを目指し開発提供して参ります。

 

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